魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
「ねえ、純。あんたの…その…見せなさいよ」
「えっと、今ここでって事?」
俺が今いる場所は、なのはちゃんの両親である士郎さんと桃子さんが経営する喫茶店、翠屋だ。
イケ面な店主に超絶美人のパティシエと、これまた美少年と美少女のお手伝い。
これだけでも話題性は抜群だと思うがこれに加えてパティシエである桃子さんが作るお菓子はどれも絶品な味なのである。
そんな訳で翠屋は日々繁盛している。
今日は日曜日の昼下がりという事もあり、お客さんの入りも中々でかなり混雑している。
本来の俺は、わざわざ休日に絶対混雑すると分かっている場所に自ら赴くなんて蛮行をすることはしない。
それならば、何故俺が今こんな所に居るのかと言えば答えはいたってシンプルだ。
呼び出されたのだ。
呼び出した相手は俺の友人の一人であり、美少女三人組の一角、ビジュアル的にももっとも目立つ金髪碧眼の外人ツンデレ娘のアリサちゃんである。
特に予定があった訳でもないし、友人に頼み事があると言われれば、多少面倒と思う物の断る程に俺は薄情な人間でもないつもりだ。
なので俺は待ち合わせ場所に指定された此処、喫茶翠屋にやって来たわけだ。
店内に入ると士郎さんが俺の存在に気づいて挨拶をしてきた。
俺もそれに軽く挨拶を返すと、士郎さんは予め俺が待ち合わせでここに来たのを知っていた様で、俺を席に案内してくれた。
案内されてやって来た席には呼び出した張本人であるアリサちゃんがイチゴのパフェを美味しそうに食べながら座っていた。
なのはちゃんとすずかちゃんも呼んでいると聞いたのだが姿が見えない。
どうやら俺が一番に着いたのだろう。
古来から年齢に関係無く女性は出掛ける準備に時間が掛かるという伝説が脈々と伝承されているので、男の俺が一番先に到着するのは自然の摂理なのかもしれない。
俺は士郎さんに礼を一言述べてアリサちゃんの座る席に歩き出した。
それを見送った士郎さんも自分の仕事に戻って行く。
お客さんの数を見る限り、自分の仕事も忙しいのに娘の友人の為に多少とは言え時間を割いてくれるのだから、士郎さんを始め高町家の人々は人外魔境な部分を除けば本当に良い人達だ。
俺の接近にアリサちゃんも気づいたらしく、手を大きく振りながらこっちに来なさいと言ってくる。
俺もアリサちゃんに軽く手を振り替えしながら分かったと返事を返して席に着いた。
今日は休日なので、俺もアリサちゃんも当然の事ながら学校の制服など着ているはずも無く、私服姿だ。
男の俺の描写等気にする奴は皆無だと思うが一応黒いTシャツとブルーのジーンズそれにオレンジのショルダーバックを肩から提げている、という事だけは言っておこう。
アリサちゃんは若草色のワンピースを着ており犬の肉球がプリントされた白地のハンドバックを自分の席の隣に置いている。
小学一年生なのでそんなに着飾るといったことはしていないが、元が良いのとその日本人ではない外見からあいまってハリウッド映画の子役俳優にも見える。
この麗人揃いの喫茶店で見るその光景はまさに、映画のワンシーンをそのまま切り抜いて現実に持って来た様な錯覚に陥ってしまうほどだった。
席に座った俺に、アリサちゃんが言った言葉が冒頭のそれだった。
俺はその台詞があまりにも周りから見たら意味深に聞こえそうなので思わずそう言い返してしまった。
「そうよ。純の…あれよ。私に見せなさいよ」
アリサちゃんがもう一度言い直した。
「いや、でもこんな人の沢山居る場所ではちょっと…」
俺はアリサちゃんの要求に難色を示す。
すると、アリサちゃんはその返答が気に入らないらしく、テーブルを跨いで俺の上に覆いかぶさる様に迫ってきた。
完全に目が据わっていらっしゃる。
「良いじゃないのよ。ここで見せてくれたって、誰も気にしないし減るもんじゃ無いでしょ。それになのはは何度も見てるのに私やすずかは一度も見てないなんて不公平じゃない」
もはや馬乗りとも言える体制でアリサちゃんが俺に捲くし立てる。
余りにも近いその距離にアリサちゃんの女の子特有の甘い香りと先程食べていたパフェのせいか微かなバニラの香りが俺の鼻腔を擽る。
アリサちゃんは誰も気にしないなんて言ってるけど店内のお客さんメチャクチャ見てるからね。
それに減るよ。
主に俺の精神的な何かが現在進行形で急激なまでに浪費されているからね。
「そ、そんなに見たいの?」
俺は周りの視線に狼狽しながらも何とかアリサちゃんに問い返す。
アリサちゃんは俺の言葉に何度も力強く頷いて見せた。
そこまでにして見たいらしい。
「分かったよ。見せるから、だから取り敢えず俺の上から降りてくれるかな?」
「あ!」
俺の言葉にアリサちゃんも正気を取り戻した様で、頬を赤くしながら、
「わ、悪かったわね…」
と言いながら素直に俺の上から降りてくれた。
何やら俺とアリサちゃんを取り囲む周りの空気が妙な感じになっている気がするが気にしたってしょうがない。
俺はアリサちゃんとの約束を守る為に、早速行動に移す事にした。
「それじゃあ、見せるよ」
「う、うん」
俺はジッパーに手を掛けながらアリサちゃんに確認を取った。
アリサちゃんは期待と緊張を孕んだ短い頷きを返すと、今にもかぶり付きそうな勢いで俺が手を掛けているジッパーの先を凝視している。
ついでに周りのお客さんもなんだなんだと注目してくる。
はっきり言って恥ずかしい。
できることなら、今すぐこの場からオサラバしたいが、アリサちゃんと約束してしまった手前それも叶わない。
ならば今の俺にできる事は、少しでも早く現状を先に進めて今を綺麗な思い出へと昇華することだけだ。
「それじゃいくよ」
俺はそう声に出して一気にその手に持ったジッパーを引き下ろした。
引き下ろしたその先から見えるものは先程からアリサちゃんが言っていた例のブツである。
『初めましてだな、アリサ嬢。君の話はマスターやなのは嬢から良く聞いているぞ』
俺が持参したショルダーバックのジッパーを引き下ろして中から出てきたブツは、全身メタリックカラーの手乗りサイズのロボットな犬であり流暢に喋っても見せた。
「か…」
『アリサ嬢は無類の犬好きと聞いていたのでワタシも会えるのを楽しみにしていたぞ』
アリサちゃんと初対面を果たしたメカ犬は尚もアリサちゃんに喋りかける。
メカ犬はナチュラルに会話を繋げようとするがアリサちゃんは、壊れたラジオのようにメカ犬に視線を集中させたまま、同じ言葉を呟いている。
今までが異様なまでに普通の反応だったので、言葉が出なくなっている程の反応を見せたアリサちゃんに俺はある種の新鮮さを覚える。
本来ならこうなるのが当たり前なのだ。
普通にお客さんとして家に上げて乾電池をお茶代わりに出してきたり、何の疑問も抱かずに自己紹介しだす方が何処かずれているってもんだ。
やっぱりアリサちゃんは常識人だなと感心する俺だったが、何時までもこの状態にしておく訳にもいかないので、アリサちゃんに現実世界に帰還してもらうべく声を掛ける事にした。
「ねえ、アリサちゃん…」
「…か…い」
俺がアリサちゃんに正気に戻ってきてもらおうと声を掛けた直後、さっきまで壊れたラジオ化した様に呟いていた声のトーンが急に変わった。
「え?」
「…い。かわ…い…」
何やらプルプルと震えだした。
ショックで気でも触れたのかと俺がもう一度声を掛けようとしたら、アリサちゃんが突然勢い良く立ち上がった。
「かわカッコイイ!!!!!!!!!!!!」
アリサちゃんの魂までも振るわせる様な雄たけびが喫茶翠屋に響き渡った。
それと同時に俺の常識人名簿からアリサバニングスという一人の少女の名前が抹消される事と相成った。
「アリサちゃんは犬さんの事になると性格が変わっちゃうからしょうがないよ」
「そうだね」
アリサちゃんの魂のシャウトから暫くしてなのはちゃんとすずかちゃんも翠屋に辿り着いた。
現在メカ犬を抱き上げながらトリップしているアリサちゃんを視界にに捕らえながら俺は二人と談笑している。
ちなみにすずかちゃんとメカ犬のファーストコンタクトは中々にシュールなものだった。
アリサちゃんにより抱え上げられ振り回されているメカ犬と、それを少し離れた場所から見ていたすずかちゃんが、互いに宜しくと言って頷くだけで終了となったのだ。
多分にアリサちゃんの暴走の為にこうなってしまったと思える部分が垣間見えるがそれでもあっさりしすぎな気がする。
だからと言って慌てふためくすずかちゃんというのも想像できないとまでいかなくても、実際中々見れないので、ある意味正しいのかとも思う。
十分にトリップしてアリサちゃんも現実に帰ってきた所で、やっと四人プラス一匹?による会話が再開された。
「私がみんなを呼んだのは別に純にこのメー君を見せてもらいたかっただけじゃないのよ」
現実回帰したアリサちゃんがそう言って話を切り出した。
ちなみにメー君とはメカ犬の事だ。
俺はこいつの事をいつの間にかメカ犬と呼んでおり、メカ犬もそれを否定する事もしないのでこの呼び方が定着してしまっていた。
チェイサーさんも名前?が有った事からこのメカ犬にも正式な名称があるのだと思い聞いてみた所、システム上の名称はあるがメカ犬の固体を表す名称は存在しないそうだ。
一応はバディーシステムというらしいがあまり名前といった感じがしない。
それを言ったらチェイサーさんも同様ではあるけれどメカ犬の名称と比べれば名前として使う分には違和感は感じない。
名前を考えようかと話もでたのだが俺とメカ犬の間では今更な気もして俺は今でもメカ犬と呼んでいる。
詳しい経緯は話さないが俺がこのメタリック犬をメカ犬と呼んでいる事を掻い摘んで伝えたところ、猛反発してきたのが、美少女三人組であり、中でも犬好きであるアリサちゃんは凄まじかった。
俺を含めた三人とプラス一匹?が軽く引く程に凄まじかったのだ。
その後様々な案が出されたがそれはそれは全てメカ犬本人により却下された。
まあ、フランソワとかグングニ-ルにシュバルツ等、名付けられる方としては勘弁願いたいのだろう。
もっともその名を多く口にする事になる俺としても、その気持ちは痛いほどに分かる。
結局新たな名前は決まる事は無く、それならばせめてもう少し可愛い感じに呼びたいと言う意見によりメカ犬の頭を取って三人はメカ犬をメー君と呼ぶ事に落ち着いたのである。
「それで何のお話なの、アリサちゃん?」
なのはちゃんが代表するようにアリサちゃんに聞いた。
俺とすずかちゃんもその言葉に同意の頷きをする。
「うん、私ね、昨日の帰り道で子犬を拾ったのよ」
アリサちゃんはそう言うと犬の肉球がプリントされたバックから一枚の写真を取り出した。
写真に写っていたのは所謂ダックスフンドという犬種の子犬だった。
ダックス特有の長い胴と短い足。
この子犬は短毛種の様で色は薄めのブラウンだ。
首には赤い首輪を付けている。
「拾ったその日に首輪を付けてあげたの?アリサちゃん」
写真を見て最初にそういったのはすずかちゃんだ。
確かにアリサちゃんは昨日拾ったと言っていたがこの写真には良く目立つ赤い首輪がはっきりと写っている。
昨日拾ったその日の内に付けたのか、今日俺達と会う前に付けてあげたという事かも知れないが何となくそうでは無いなと思う。
「それって、この子犬は最初からこの首輪をしていたって事かな?」
俺は直感的にそう思いアリサちゃんに聞いてみた。
「ええ、そうよ」
アリサちゃんは肯定して続きを話し出した。
「この子ね、最初から首輪を付けてたし、見つけた時も殆ど汚れてなかったのよ。だからこの子は野良じゃ無くて迷子なんじゃないかと思って保護したの」
犬ってのは帰巣本能があるって聞くけど、子犬にそれができるか確かに分からないからな。
アリサちゃんの判断は間違っていないと思う。
「それで俺達に頼みたい事ってのはこの子犬の事かな」
「そうなのよ。他でも調べてもらってはいるんだけど、拾ったのはこの近くだし子犬には自力でそんなに離れた場所まで移動できないなって思うから、みんなにこの近くを探すのを手伝って欲しいの」
俺達はアリサちゃんの頼み事に二つ返事でOKと返した。
困っている時に助けるのは友達として人として当たり前の行為だし、何より子犬に帰る場所があるのなら少しでも早くその場所に返してあげたいといった気持ちからだ。
取り合えず俺達は二手に分かれてこの付近を聞き込みする事にした。
女の子が少人数で動くのは物騒かもしれないと言う事で、美少女三人組と、翠屋でお手伝いをしていた美由希さんが偶然にも俺達の話を聞いていた様で、一緒について来てくれる事になった。
俺には目視出来るほどに凄まじい殺気を飛ばす恭也君が一緒に来てくれると声を掛けてきたのだが、俺はそれを丁寧に全力全開の土下座をする事で何とか切り抜けてメカ犬と共に捜査をする事になった。
あの翠屋でのやり取りで、何が気に入らなかったのか分からないが、このまま一緒に行動していたら俺は確実に亡き者にされていた。
士郎さんの方としても、これ以上の労働力の消費はまずいと考えたのか俺の援護に回ってくれたので、本当に助かった。
そもそも恭也君は常日頃からギャルゲーと少年漫画の主人公的な日常生活を過ごしているんだから、俺の様なモブキャラ等放っておいて欲しいと思うのだ。
恭也君からしてみれば俺は溺愛する妹に寄って来る悪い虫に見えるかもしれないが俺にはそもそもなのはちゃんとどうなるつもりも無い。
確かに現時点では親しい幼馴染だし俺もなのはちゃんを大切に思ってる。
なのはちゃんも俺に対してそれなりの好意を抱いてくれているとは思うがそれは恋愛感情とは別種の物だろう。
いずれはなのはちゃんも幼馴染離れして恋をして彼氏を高町宅に連れてくる筈だ。
恭也君の凄まじいまでの戦闘力はその未来の彼氏にこそぶつけるべきなのだ。
その時は俺も僅かながらではあるが力を貸そう。
『マスター、考え中の所悪いがワタシの話を聞いてくれないだろうか』
俺が幾分ダークサイドな考えに思考が傾きかけた所でメカ犬から声が掛かった。
俺達は現在なのはちゃん達とは別ルートで聞き込みを行っている最中だ。
「如何したメカ犬?」
『うむ、このまま闇雲に探していてもらちが明かないと思ってな』
「だからって言ってもこれ以外に探す方法も無いだろう」
『いや、確実とは言えないがワタシに一つだけ心当たりが『キンキュウケイホウキンキュウ…』新たなホルダー反応だマスター。ここから南に3kmだ』
ポケットに入れておいたタッチノートから警報が流れる。
場所が余り現在地から離れていない為かメカ犬も反応を察知した様だ。
「こんな時にホルダーか。行くぞメカ犬」
『了解だマスター』
俺はタッチノートを開いて黄色のボタンを押した。
『チェイサー』
タッチノートから聞こえる音声と共にこちらに激しいエンジン音が近づいてくる。
『おん待たせ~』
猛スピードで近づいてきたのは黒い弾丸とも言える様な勢いだった。
それは一台の真っ黒なバイクであり乙女口調なオッサンボイスである。
俺のある意味もう一人?の相棒になるライダーバイクのチェイサーさんだ。
『さあ、急ぐぞマスター』
メカ犬が早く乗るように急かして来る。
「ちょっと待ってくれ」
だが俺はそれに待ったを掛ける。
「乗る前にこれだけは言わせてくれ」
俺は一匹?と一台?に対して神妙な顔で問い掛ける。
「乗る前に変身させてくれ」
このまま乗れば前回のらめえええ!!!にまたなる事受けあいなので俺はそう進言した。
いや、マジ辛かったんですよあれ…
「また凄い事になってるな」
『うむ、そうだな』
『ほんとにね~』
ホルダーの反応があった場所、俺達が居た場所から南に3km程進んだ商店街に俺達はやって来た。
メカ犬は既にバックルモードになっており俺も変身済みだったりする。
チェイサーさんもリミットオフで完全なライダーバイク化しているので、何時でも戦闘準備は万端だ。
だが肝心のホルダーの姿が見えない。
商店街の惨状に映るのは犬だ。
大量の犬だ。
飼い犬、野良犬が所構わずあちらこちらで商店街を蹂躙している。
食べ物を扱う店に無断で侵入する犬。
電柱に親の敵と言わんばかりにマーキングする犬。
トイレの便器に入った水を飲んだ後に近くの人の顔を舐めようとする犬。
これ以上は文章で表すのは恐ろしすぎる事をしている犬達。
「まさに地獄絵図だな…」
『うむ、そうだな…む!マスター、ホルダーを目視できるレベルで発見したぞ』
メカ犬の声に反応してメカ犬の言う方向を見ると、そこには確かに人に似ながらも人では無い者がいた。
青白い体毛が全身を覆っており、その両腕には鋭い爪、耳は尖がっており口も大きく前に突き出された上で裂けてその口の中からは鋭い牙が見える。
『犬型のホルダーだな』
犬型とはタイムリーな話である。
『それじゃあ突っ込むわよ~!』
『うむ、犬型とはワタシとキャラが被る可能性があるからな』
相変わらず物騒な発言をする新宿二丁目バイクと、妙なライバル心を剥き出しにするフルメタル犬がいるが俺はあえて突っ込みは入れない。
何故かここで突っ込んだら負けな気がするからだ。
それに急いで終わらせて聞き込みの続きをしないといけないからな。
チェイサーさんが猛スピードでホルダーに迫る。
ただでさえバイクでは有り得ない素早さを誇る上に今はその枷が外されているのだ。
人外の強さを誇るホルダーといっても簡単に避けれる類の物じゃない。
大分近づいた事でホルダーも俺達の存在に気づくが既に手遅れだった。
「きゃいいん!?」
見た目のわりに甲高い声を上げながらきりもみ回転して飛んでいく犬型のホルダー。
俺はその光景を何処か遠くの出来事の様に思いながら、交通安全第一だと硬くその心に誓った。
この一撃で完全に逝ったかと思われたホルダーだがどうやら無事だった様で、よろめきながらも何とか立ち上がった。
「い、いきなり、何してくれんのあんた?」
ホルダーが俺に話しかけてきた。
実際はチェイサーさんの独断特攻で俺の意思は何処にも介入してないんだが、ホルダーから見れば俺が轢き殺す勢いで突っ込んできた様に見えるだろうから俺が恨まれるのは仕方ない事なのか?
取り合えず、誰だと聞かれれば答えるのが何とやらって奴だ。
「俺は仮面ライダーシードだ」
「仮面ライダー?なんだか良く分からないけど邪魔するってんなら容赦しないよ」
ホルダーが吼える。
その姿は正に闘犬といった感じだ。
「やっぱりこの騒動の原因はお前なんだな。どうしてこんな事を…」
「あんたにはわからないさああああ!!!!」
ホルダーはそう叫ぶと、その両腕の鋭利な爪を武器に俺に襲い掛かってきた。
しかしチェイサーさんの特攻が余程効いたのか動きは幾分鈍く俺はホルダーの攻撃を難なく裁ききる。
「たあっ!」
俺はカウンターを合わせるまでも無いと、自らホルダーに飛び蹴りを叩き込む。
「ぐぎゃあ」
ホルダーは勢いの付いた俺の飛び蹴りをいなすことができずに後ろに吹き飛ぶ。
『今だ。マスター』
「ああ」
俺はメカ犬の言葉に短く答えてバックルからタッチノートを引き抜く。
緑のボタンを押す事で画面に全体図が表示される。
さらに画面の右足をタッチしてからバックルに再び差し込んだ。
『ポイントチャージ』
バックルから放たれる白い光が銀のラインを伝って右足に集まる。
「こいつで決めるぜ」
俺がその場から飛ぼうとしたその時だ。
俺の足に何匹もの犬が纏わり付いてきた。
「な、何だよこれ?」
下手に外そうとすれば今の俺ではこの犬達を傷つける可能性が高いので俺は身動きが取れない。
『そうか、これが奴の能力か』
「これがか?」
『恐らくは音波の一種を操る事が出来るのだろう。その波長が犬達に影響を与えて命令を下していたんだ』
メカ犬の言葉に俺は驚愕した。
そしてその能力を持つ本人にもう一度向き直るがそこにホルダーの姿は無かった。
「いない!?」
俺は犬達を何とか傷付けずに引き剥がしてからホルダーの居た近くに行くものの既に痕跡すらなかった。
『反応もロストした。悔しいが逃げられたな』
メカ犬がそう告げる。
「如何するんだよ。このままにしておくのはまずいだろう」
俺はメカ犬にあたっても仕方ないと分かっていながらもそう言わずにいられなかった。
『うむ、それでこの事も含めてさっきの話に戻りたいのだマスター』
しかしメカ犬から返ってきた返事は意外な答えだった。
「タッチノートが反応する直前に何か言おうとしてたけど、今回の事と関係あるのか?」
『ああ、情報屋に聞こうと思ってな』
何やらまたこいつから意外な言葉が出てきた。
「情報屋?」
『ああ、海鳴市を調べていた一週間の間に知り合った。報酬さえ支払えばどんな情報でも持ってきてくれる筈だ』
俺は突っ込まねえぞ。
もう、ここまできたら俺もボケに回ってメカ犬と一緒にボケ倒してやる。
「報酬って言ったって、小学生の俺に大金なんか用意できないぞ」
『それなら心配無い。奴に用意する報酬は現金ではないからな』
そう言ってメカ犬が俺に用意する様に要求してきた報酬に対して俺は…
思わず突っ込みを入れてしまった。