魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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仮面ライダーシード&仮面ライダーW ミックスワールド・クライシス【第四章】

 

「探して欲しい人が居るんです」

 

なのはちゃんが、真剣な表情で、このガレージに集まっている俺達に訴えかけてきた。

 

『先程から気になっていたのだが、今日のなのは嬢は、普段と随分雰囲気が違わないだろうか?」

 

普段から接する機会の多いメカ犬が、先程から俺もずっと気になっていた事を口にした。

 

「どういう事だい?」

 

全く事情を知らないフィリップ君が、俺達に説明を求めてくる。

 

「この子は、なのはちゃんと言って、俺の幼馴染なんですが、ドーパントに襲われた辺りから、どうも様子が変なんですよ……」

 

俺は自分で分かる範囲内で、翔太郎さんとフィリップ君に、何があったのかを説明した。

 

「最初は襲われた時のショックで、一時的に混乱しているのかと思っていたんですけど……」

 

説明の最後をそう締め括った俺は、改めてなのはちゃんに視線を向ける。

 

見慣れた顔の筈なのに、何故か今のなのはちゃんの表情は、全く別人の様に思えてならない。

 

「まあ、色々と込み入った事情があるみたいだが、俺はさっきも言った通り、調査に行って来るぜ。どっちにしても、今は出来るだけ情報が必要だからな」

 

翔太郎さんは頭に被った帽子の位置を直しながらそう言うと、今度こそガレージを後にする。

 

この場に残った俺達は改めて、なのはちゃんが先程言った言葉の意味を問い質す事にした。

 

「話しを戻すけど、誰を探して欲しいの?それに君は……なのはちゃんじゃ無いよね?」

 

『何を言っているのだマスター!?』

 

俺がした質問に対して、メカ犬が驚愕の声を上げる。

 

確かに今のなのはちゃんは、何処か何時もと違う部分が見受けられるが、その容姿は間違い無く、なのはちゃん本人だ。

 

それはほぼ毎日顔を見ている俺が言うのだから、間違い無いだろう。

 

だからこそ、先程の俺の発言に対して、メカ犬があれ程の反応を示したのである。

 

ならば何故俺は、こんな質問をしたのか。

 

俺は少し前に、ホラーハウスでした、なのはちゃんとのやり取りを思い出す。

 

以前から騒がれていた幽霊の噂に、俺には聞こえなかった声が、なのはちゃんにはずっと聞こえ続けていたという事実。

 

そして今目の前に居るなのはちゃんの、まるで別人と思える言動……

 

非科学的ではあるし、何の根拠も有りはしない推論だが、俺はそれを一つの真実だと仮定して、話しを続ける。

 

「なのはちゃん……いや、君は最近あのホラーハウスで有名になっていたっていう幽霊なんじゃないかな?」

 

『マスター!?』

 

「それは興味深い話だね……」

 

俺の発言に、メカ犬とフィリップ君が、其々に反応を見せる。

 

「……」

 

この場に居る全員の注目を浴びながら、暫く無言で何かを考える様な表情をしていた彼女だが、やがてその重たい沈黙に終止符を討つ。

 

「……私は気付いたら、あの場所に居ました。私自身が誰なのか、どうしてこの女の子の身体に入ってるのか、残念ですが、説明する事も出来ません……ただ」

 

「ただ?」

 

「一つだけ覚えている事があります。私にはもう一度だけ、会わなければいけない人がいるんです」

 

彼女は胸の前に両手を持って握り込むと、まるで天に祈りを捧げる様な仕草で、俺達に語りかけてくる。

 

「無理を承知で、お願いします。私をもう一度あの人に……兄さんにもう一度会わせてほしいんです……」

 

「君はそれ以外に、何も覚えていないんだね?」

 

「……はい」

 

フィリップ君が現状を確認する為に質問をして、なのはちゃんに憑いた幽霊の彼女は、その質問に対して肯定の返事を返す。

 

「俺も聞きたいんだけど、今の君が動かしている身体の本来の持ち主……なのはちゃんはどういう状態になってるのか分かるかな?」

 

俺は一番の懸念事項を目の前にいる、なのはちゃんの身体を借りた幽霊に聞く。

 

「あの子は今……眠ってます」

 

「眠ってる?」

 

「はい。多分ですけど、私とこの女の子の波長が完全に合わさったから、私はこの身体に引き寄せられたんじゃないかと思います……気付いたらこうなっていたんで、これ以上は上手く説明出来ませんけど」

 

「なのはちゃんは大丈夫か分かる?」

 

たどたどしくも質問に答えてくれる幽霊に対して、俺は更に質問を続ける。

 

「今の所はこの子の意識は眠っているだけなので、大丈夫だと思います。ただ、どうやってこの子の身体から出れば良いのか分からないので……」

 

そこまで言うと、なのはちゃんの表情を曇らせて、幽霊は言葉を濁してしまう。

 

『俄かに信じ難い話ではあるが、本当になのは嬢に、幽霊が憑いているという事か』

 

俺と幽霊のやり取りを聞きながら、メカ犬がなのはちゃんを観察する。

 

ここではあえて言葉にする事はしないが、俺にとっては、メカ犬だって俄かには信じられない未知の物体Xだ。

 

はっきり言ってしまえば、異世界からやって来た超技術を搭載した犬型ロボットも、現代知識を有した一般人の理解を超えた存在だという意味では、幽霊と対して変わりはしないだろうと俺は思う。

 

「検索してみよう」

 

更にメカ犬の隣では、フィリップ君が、地球の本棚で、幽霊についての検索を始めてるし……

 

これは俺が翔太郎さんの代わりに突っ込んだ方が良いんだろうか?

 

俺はこの場には居ない、鳴海探偵事務所の若き所長が持つ、緑のスリッパに想いを馳せる。

 

「……あの」

 

我が道を行くフリーダムな一人と一匹を見ながら溜息を吐いていると、なのはちゃんに憑いた幽霊が、遠慮しがちに、俺の服の裾を引っ張ってくる。

 

「やっぱりこんな身勝手なお願いは、聞いて貰えませんか?」

 

そう聞いてきた幽霊の表情は、俺が見たくない幼馴染の泣き顔へと変わりつつある。

 

最初から選択の余地は無かったが、こんな顔を見せられたら、もう迷う事も出来ない。

 

「協力するよ。俺に何が出来るか分からないけど、君のお兄さんを、一緒に探そう」

 

「……本当ですか」

 

俺が返した言葉を聞き、幽霊の表情は一転して華やぐ。

 

自分でもつくづく思うが、俺は本当にこの表情には弱いみたいだ。

 

一度だけ溜息を吐いて、気持ちを切り替えた俺は、話を再開する。

 

「それで君は、さっき何も覚えていないって言ったけど、せめて何か手掛かりになる様な事は覚えてないかな?」

 

「……手掛かりですか」

 

その言葉に幽霊は、考え込みながら首を捻る。

 

「検索が終了した!」

 

暫く幽霊が何かを思い出すのを待っていると、突然フィリップ君が、叫び声を上げる。

 

何時の間にかホワイトボードには、幽霊についての情報を幾つも書き上げられており、それでは足りなかったのか、床にまで文字が綴られていた。

 

「ん?」

 

所狭しと書き殴られたメモを見ていた俺は、其処に気になる一文を見つけた。

 

その文章について、フィリップ君に確認をしようとしたのだが、その直前で事態は急速な変化を向かえる。

 

「どうやら、何か翔太郎に進展があったみたいだね……」

 

フィリップ君の腹部には、浮かび上がってきたダブルドライバーが装着されている。

 

「僕の身体を頼むよ」

 

俺にそう言うと、フィリップ君は、Cのイニシャルが刻まれたガイアメモリ、疾風の記憶を宿すサイクロンメモリを取り出して、メモリに付いたボタンを押す。

 

『サイクロン』

 

音声が流れるのを確認しながら、フィリップ君は腕を回してポーズを決める。

 

「変身」

 

力強くそれを言葉にしたフィリップ君は、ダブルドライバーの右側のスロットに、サイクロンメモリを差し込んだ。

 

すると差し込んだ筈のサイクロンメモリは、光に包まれながら、忽然としてその姿を消してしまう。

 

「よいしょ!」

 

それと同時に意識を手放して倒れていくフィリップ君を、事前に頼まれていた俺は、身長差があるので、倒れていくフィリップ君の腰を支えながら、頭をぶつけない様にして、出来るだけ慎重に床へと下げていく。

 

『マスター。彼は一体どうしたのだ?』

 

事の一部始終を見ていたメカ犬が、俺に質問する。

 

出会って間もないが、メカ犬なりにフィリップ君を心配しているのだろう。

 

「大丈夫だメカ犬。フィリップ君は戦いに行ったんだよ」

 

『戦いに?』

 

「ああ」

 

俺はメカ犬の質問に答えながら、今頃は激しい戦いを繰り広げているであろう、二人の無事を心から願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「計画は順調に進んでいる様ですね」

 

「ふん。多大な支援を感謝していると、感謝の言葉を送れば満足か?」

 

何処かの研究組織と思わしき場所で、ビジネススーツに身を包んだ無表情な女性と、灰色の身体を持つ、異形の怪人が対峙して会話をしているという、異常な光景が繰り広げられていた。

 

「その必要はありません。これは双方の利害が一致した事により、正式に行われたビジネスによるものですので」

 

女性はその無表情を崩す事無く、抑揚の無い声で返答する。

 

「それならば、それで構わん。お前達が提供してくれたガイアメモリという物は、仮面ライダー達の意識を背けるには絶好の餌だからな。精々利用させてもらうさ」

 

「私達は試験開発段階の物と、廃棄が決定していた不良品を渡したに過ぎません。データを取らせて貰えるのであれば、別にどう使っていただいても問題はありません」

 

「ふん。ならばもう一つ、用意して貰いたいものがある」

 

「何ですか?」

 

灰色の怪人と無表情な女性が繰り広げる淡々とした会話の中で、一つの新たな提案が出される。

 

「……分かりました。此方で準備致します」

 

「頼むぞ」

 

これで全ての会話が終了したのか、女性は踵を返すと、灰色の怪人に背を向けて歩き始めた。

 

「……一つお聞きしますが、これで一体何を始めようとしているのですか?」

 

無表情な女性は、途中で振り向き、灰色の怪人に対して、去り際に疑問の言葉を口にした。

 

「ただの実験だ。それ以上でも、それ以下でもない」

 

その問いに対して、灰色の怪人は淡々と返答する。

 

「……そうですか」

 

女性の声と表情からは、感情が読み取れないが、その答えを聞くと、再び背を向けて今度こそこの場を後にした。

 

それを見送ってから、灰色の怪人は、己の暗い歓喜の感情を押し殺しながら呟く。

 

「……もうすぐだ。次の段階の実験が成功すれば、また一つ目標に近づく事が出来る」

 

灰色の怪人は、己の欲望が満たされるその瞬間を待ち侘びながら、一人静かに歓喜の声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがウォッチャマンが、言っていた場所か……」

 

少し時間は遡り、鳴海探偵事務所のガレージを出て、調査に向かった翔太郎は、少し前まで居た風都ランドパークの園内にある、管制塔の前に立っていた。

 

この管制塔では、風都ランドパーク内の監視及び、電気系統の管理がされている、何処の遊園地にでもある様な、珍しくも無い建物なのだが、ウォッチャマンの情報によると、この管制塔の中に明らかにここのスタッフでは無い、怪しい人物が入っていったという。

 

普通ならば警察に連絡等をするのが、妥当なのだが、それはある理由で出来ないでいた。

 

それは今回引き受けた依頼にも、大きく関係している。

 

「見た所、怪しい場所じゃないけどな」

 

そう言いながら翔太郎は、カタツムリを模した形をしたゴーグルを取り出す。

 

そのゴーグルの正式名称はデンデンセンサー。

 

主に鳴海探偵事務所のメンバーが使う、ガイアメモリの技術を組み込んだ特殊ツール、メモリガジェットと呼ばれるシリーズの一つで、様々な用途に使用されるのだ。

 

更にこのメモリガジェットは、同色のガイアメモリを元に作られた、ギジメモリを差し込む事で、更に特殊な力を発揮する。

 

例を挙げるとすれば、先程翔太郎が取り出した、デンデンセンサー。

 

これは、そのまま使えば普段は目に見えない物を捕捉出来る上に、ギジメモリを差し込めば、ライブモードという完全な自律行動が可能となって、カタツムリの形をとりながら、頭部のセンサーを使い、あらゆる光や波長をキャッチして、使用者に伝える事が出来るのである。

 

「ビンゴだな」

 

ゴーグル越しに、建物内部を見た翔太郎は、素早く次の行動に移す。

 

取り敢えず出入り口と思われるドアを開けようと試みるが、内側から鍵が掛かっており、開かない。

 

続いて翔太郎は、五階建てとなっている管制塔の外付けされた階段を上がって行き、その途中のドアが開いていないかを全てチェックする。

 

しかし結果は、全てのドアに鍵が掛かっていて、内部に侵入する事は叶わなかった。

 

だが、翔太郎は外の階段を上る最中に、三階の窓が開いていた事を確認していた。

 

「あそこから行くしかないか……」

 

翔太郎は覚悟を決めて、左腕に装着している腕時計型のメモリガジェット、スパイダーショックを先程窓が開いているのを確認した所に目掛けて、ワイヤーを射出する。

 

付近に見ている人間がいない事を確認してから、翔太郎は開いていた窓の先に引っ掛けたワイヤーを命綱にして、飛び移る。

 

何とか無事に管制塔内部へと辿り着いた翔太郎は、伸ばしたワイヤーを元に戻してから、帽子の位置を正して、気合を入れ直すと、先程デンデンセンサーで確認した、目的の場所へと歩き出して行った。


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