魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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仮面ライダーシード&仮面ライダーW ミックスワールド・クライシス【第二章

「ここが噂のホラーハウスやな……」

 

幾つかのアトラクションを巡り、この風都ホラーハウスという、簡単に言えばお化け屋敷なアトラクションに辿り着くと、はやてちゃんが、妙に真剣な表情で呟いた。

 

「ここってそんなに怖いの?」

 

記憶が変換されなかった俺は、この風都ランドパークの前情報が何一つ無いので、素直に質問をぶつけてみる。

 

「純……あんたはそんな事も知らないの?」

 

それに対して、アリサちゃんが、呆れながら返答してくる。

 

「……ここはね、出るんだよ」

 

続いてすずかちゃんが、怪しげに言葉を紡ぐ。

 

「出るって、何が?」

 

何となく答えは分かったが、ここまで聞いたら最後まで質問し続けるのが、礼儀だと思い、俺は質問を続ける。

 

「決まってるやろ……本物の、幽霊や」

 

「にゃああああああああああああああああああ!?」

 

最後にはやてちゃんが、締めくくるのと同時に、なのはちゃんが叫び声を上げて、俺の腰に背後からしがみ付いてきた。

 

「ごめんな、なのはちゃんがそんなに怖がるとは思わなかったんや」

 

震えるなのはちゃんを見ながら、はやてちゃんは苦笑いを浮かべつつ、謝罪の言葉を口にする。

 

どちらかと言えば、幽霊そのものよりも、皆の話し方のせいで、恐怖感が煽られた様に思えるのは、気のせいでは無い筈だ。

 

次の予定は、このホラーハウスを回る事になっていたのだが、なのはちゃんのこの様子を見て、無理そうなら止めておこうかと、俺が提案したのだが、なのはちゃんは俺の腰にしがみ付いて震えながらも、行くと言って意見を変える事はしなかった。

 

このアトラクションは、最大二人組みになり、徒歩でコース内を進んでいくというタイプのものなのだが、なのはちゃんが、俺の腰を離さない為、自動的に俺となのはちゃんが、ペアで行く事に決まったのである。

 

ここで入る順番だが、俺となのはちゃんが、一番手となる事に決定した。

 

それというのも、なのはちゃんの強い要望で、順番が後になると、余計な恐怖心が高まりそうになるからだそうだ。

 

「それじゃあ行こう。なのはちゃん」

 

俺は腰にしがみ付くなのはちゃんを、取り敢えず引き離して手を繋いだ状態にした後、アトラクションの係員さんに、促されながら、ホラーハウスの内部へと進んで行く。

 

ホラーハウスは、怖いというよりも、幻想的な作りになっており、お化け屋敷に入ったというよりは、妖精が出てくる様な異世界に迷い込んだという方が、しっくりする感じである。

 

なのはちゃんも、暫くは恐怖に、表情を歪めていたが、歩き続けるにつれて、この幻想的な雰囲気を楽しみ始めるまでになっていた。

 

この幻想的な場所を歩きながら、改めて思うが、何故こんな場所で、幽霊が出るなんて噂になったのだろうか?

 

内装や演出が、入った人達を恐怖させる仕様になっているのであれば、まだ納得も出来るのだが、今の所そんな様子は見受けられない。

 

火のない場所に煙はたたない、なんて言葉があるが、他に何かの要因があるとでもいうのだろうか?

 

「ねえ、純君」

 

「ん、どうしたの?なのはちゃん」

 

もう少しで出口という所で、なのはちゃんが、何処か不安げな顔で、俺に話しかけてくる。

 

「今、何か聞こえなかった?」

 

「……声が?」

 

俺はなのはちゃんに言われるがまま、耳をすませてみるが、スピーカーから流れる幻想的なBGM以外には、特に聞こえてこなかった。

 

「ほら!また聞こえたよ!?」

 

しかしなのはちゃんには、確かに声が聞こえ続けているらしく、更にその表情に不安を募らせる。

 

「兎に角ここを出よう。なのはちゃん」

 

俺も言い知れない不安を覚え始めたので、なのはちゃんの手を握り直すと、急いでこのホラーハウスを出る為に走り始めた。

 

走り続けて出口に辿り着いた瞬間、握っていたなのはちゃんの手が、異常な震え方をした様な気がしたのだが、その次に起きた出来事の、あまりのインパクトで、その事を気にする余裕は何処にも無くなってしまう。

 

俺となのはちゃんが、ホラーハウスから出た直後、すぐ近くから、大きな爆発音が周囲に響き渡ったのである。

 

「な!?」

 

突然の爆発に驚きながら、俺が爆発のあった方向に視線を向けると、其処には異形の存在が居た。

 

『何だあれは!?ホルダーではないのか!?』

 

ショルダーバックからメカ犬の声が響く。

 

メカ犬の言う通り、あれはホルダーなんかじゃない。

 

実際に目にするのは、俺だって勿論初めてだが、その存在だけは、良く知っている。

 

魚と虫を合わせた様な姿。

 

それは遥か古代を生きた生物、アノマロカリスという生き物に酷似していた。

 

当然だろう。

 

何せ奴は、この地球の記憶から、アノマロカリスの記憶を引き出しているのだから。

 

「ドーパント……」

 

それがこの異形の名前だ。

 

ホルダーとは違うが、奴もまた脅威となる存在である。

 

ドーパントは此方に振り向くと、口から何かを吐き出す。

 

「やばい!?」

 

俺はなのはちゃんの手を引きながら、この場から飛び退く。

 

その直後、ドーパントが吐き出した何かが、凄まじい勢いで、先程まで俺達が居た場所の、後方にあるベンチを跡形も無く破壊した。

 

何故かは分からないが、このドーパントは、俺達を標的に定めた様である。

 

『どうするマスター』

 

俺は恐怖の為に、一言も喋れずにいるのか、沈黙し続けるなのはちゃんを背中に庇いながら、この先どうするべきか思案する。

 

「……迷ってる場合じゃないよな!!!」

 

一度だけなのはちゃんに視線を向けてから、俺はタッチノートを取り出す。

 

『良いのかマスター?』

 

「ああ、正体とか以前に、守れなかったら、何にもならないだろ!!!」

 

俺はメカ犬に答えながら、なのはちゃんを後ろに下がらせて、タッチノートを開き、ボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

音声が流れると同時に、ショルダーバックから飛び出したメカ犬は、ベルトに変形して、俺の腹部に巻きつく。

 

「変身」

 

音声キーワードを入力した俺は、タッチノートをベルトの溝に差し込んだ。

 

『アップロード』

 

白銀の光が俺の全身を包み込み、メタルブラックのボディーを持つ、一人の戦士へと、その姿を変える。

 

「行くぞ!」

 

シードへの変身を無事に完了させた俺は、そのままドーパントに突っ込む。

 

ドーパントは先程と同じものを口から何発も吐き出して、迎撃を試みて来るが、俺はその全てを拳で弾き飛ばしながら、構わず突っ込み続ける。

 

「はあ!」

 

攻撃の届く範囲内に接近を果たした俺は、ドーパントに対して、容赦無く拳と蹴りを連続で叩き込んでいく。

 

「たああああ!」

 

最後に俺はドーパントの背中に蹴りを叩き込み吹き飛ばす。

 

『マスター!』

 

「分かってる!」

 

メカ犬が言おうとしている事を理解した俺は、ベルトからタッチノートを引き抜こうとするが、ここで予想外の出来事が起こる。

 

突如として無数の銃弾が、俺の足元に撃ち込まれたのだ。

 

「何でお前がここに!?」

 

俺は銃弾の飛んで来た方向に視線を向けて、その銃弾を撃った人物を目撃して、驚愕する。

 

其処に居たのは、海鳴市で、何度も戦ってきた灰色の怪人。

 

『何故貴様がこの風都に居るのだ!?メルト!!!』

 

メカ犬はその名を高らかに呼ぶ。

 

「ふん。まさか私も、ここでお前達に会うとは思っても居なかったぞ」

 

メルトはそう言いながら、銃を構えると、再び俺に狙いを定める。

 

「ちょっと待った!!!」

 

臨戦態勢を取る俺達の間に、一際大きな声が響く。

 

今度は何かと思い、声のした方向に再び視線を移すが、俺はその声の主を見て、先程以上の衝撃を受けた。

 

黒いソフト帽を目深にに被り、ドラマに出てくる様な探偵ルックな服装に身を包んだ一人の青年。

 

俺はその人を画面越しから、何度も見てきた。

 

左翔太郎。

 

それが俺の知る青年の名前だ。

 

「行くぜフィリップ」

 

赤と黒と銀を基調とした物体、ダブルドライバーを取り出した翔太郎さんは、この場には居ない相棒の名前を言いながら、自身の腹部へと宛がう。

 

ダブルドライバーが一瞬の内にベルトとして装着されたのを確認すると、続いてJのイニシャルが刻まれたUSBメモリに良く似た物体、切り札の記憶が内包された、御馴染みのガイアメモリを取り出してボタンを押した。

 

『ジョーカー』

 

辺り一体にあの音声が響き、更に翔太郎さんは、ジョーカーメモリを持った手を引きながら、ポーズを取る。

 

「変身」

 

その言葉を口にした直後、ダブルドライバーの中央に二箇所設けられている差込口の右側に、Cのイニシャルが刻まれた疾風の記憶を内包するガイアメモリ、サイクロンが装填される。

 

翔太郎さんは、サイクロンメモリを、深く押し込むと、続いてジョーカーメモリを差し込んで、両腕をクロスさせる様にしながら、ダブルドライバーを展開させた。

 

『サイクロン』

 

『ジョーカー』

 

再び鳴り響く音声と共に、翔太郎さんの周りを、細かい粒子が取り囲む様に纏わりつき、二人で一人の戦士へとその姿を変えていく。

 

緑色の右半身と、黒色の左半身に、額に輝くW型の角飾り。

 

両目の赤い複眼に、首に巻かれた銀のマフラー、ウィンディスタビライザーが、風都の風を受けて揺らめく。

 

その姿は見間違う筈も無い。

 

風の街、風都を守る二人で一人の仮面ライダー。

 

仮面ライダーW。

 

それが今の彼等の姿である。

 

「「さあ、お前の罪を数えろ」」

 

翔太郎さんとフィリップ君の声が重なり、あの台詞を口にした。

 

「……どうやらこの場には、厄介な奴等が集まって来る様だな」

 

Wを見ながら、メルトは淡々と呟く。

 

此方に駆け出すWに対して、銃を構えるメルトを見た俺は、我に返って、急いで行動を開始する。

 

「させるか!」

 

俺は一気にメルトとの距離を詰めて、メルトの銃の弾道からWを外す為に、拳を振るう。

 

「くっ!?」

 

メルトの舌打ちとほぼ同時に、Wはこの場を走り抜けて、ドーパントの元へと向かって走り続ける。

 

「邪魔をするな!」

 

近距離で振るわれる拳を避けながら、俺は一旦距離を取り様子を窺う。

 

『答えてもらおうかメルト!あの杭は何だったのだ!貴様達の本当の狙いは何だ!?』

 

「言った筈だろう。これは実験だと」

 

メカ犬の質問に、メルトは、銃を此方に乱射しながら答える。

 

「やっぱりこの現象は、あの時の杭が原因だったんだな!?」

 

俺はメルトが撃ち出す銃弾の嵐を避けながら、自らの確信を口にした。

 

「今この世界は不安定なバランスの中に成り立っている。だからこそ私達は新たなる実験に、着手するのさ」

 

休み無く銃弾の雨を俺に降らせながら、メルトは饒舌に語り続ける。

 

続けて俺が避けながらも、新たな質問をしようとしたところで、メルト目掛けて、ドーパントが吹き飛ばされてきた。

 

「ふん。どうやら話しはここまでにしておいた方が良いらしいな……」

 

吹き飛ばされてきたドーパントを一瞥したメルトは、ドーパントを庇う様に、一歩前に踏み出す。

 

それと時をほぼ同じくして、俺の隣にWがやって来た。

 

「よう、話してる所を、邪魔して悪かったな」

 

「君も仮面ライダーみたいだけど、あれは何なんだい?もう片方の灰色はドーパントでは無い様だけど……」

 

翔太郎さんが喋るのに続き、フィリップ君も、俺に話し掛けてくる。

 

「いえ、気にしないでください。それとあいつはメルト。俺にも良く分からないんですが、本人はホルダーの上位存在だと言っていました」

 

俺は目の前のメルトとドーパントの動きに注意を払いながらも、Wの質問に答えた。

 

「聞け!仮面ライダー!」

 

メルトが突如として声を張り上げ、俺達に宣言してくる。

 

「これから、この街は大きな実験場になる!止めたいならば、精々足掻いてみる事だな!」

 

そう言いながら、メルトは俺達の足元に銃弾を乱射した。

 

止め処無く撃ち出された数々の銃弾は、視界を奪う白い煙を大量に巻き上げ、その煙が晴れると、メルトもドーパントも、共にその姿を忽然と消してしまう。

 

「……逃げられたみたいだな」

 

Wは煙が晴れて辺りを見回してから、そう呟いた後、変身を解いて翔太郎の姿へと戻る。

 

それに続いて、俺もシードの変身を解いて、元の姿に戻った。

 

「子供!?」

 

変身を解いた俺を見て、翔太郎さんが、驚きの声を上げる。

 

考えてみれば驚くのは当然かも知れない。

 

変身している間は、大人サイズになってる訳だし、普通に考えれば、変身を解いたら子供だと考える人間は、殆どいないだろう。

 

「色々と話したい事はあるんですが、今は少し待ってもらって良いですか?」

 

驚く翔太郎さんに対して、そう言った後、俺はなのはちゃんの下に駆け寄る。

 

取り敢えず、今の翔太郎さんと同等か、それ以上に驚いたであろうなのはちゃんに、簡単な事情だけでも説明しようと思ったのだ。

 

「ごめん。なのはちゃん。今まで黙っていて……」

 

俺は今も沈黙を守り続けるなのはちゃんに、まずは今まで仮面ライダーとして黙っていた事を、正直に謝る事にした。

 

「……」

 

しかしなのはちゃんからの反応は、何も返ってこない。

 

「……なのはちゃん?」

 

幾ら怖かったとはいえ、ここまで何も反応が無いのは、おかしいと思い、俺は再度なのはちゃんに呼びかける。

 

「あ……だ……れ……」

 

耳を澄ますと小さな声だが、確かになのはちゃんの声が聞こえた。

 

俺は再度、聞き逃すまいとして、なのはちゃんの声に耳を澄ませる。

 

「あなた、誰なの?」

 

「え!?」

 

しかしなのはちゃんが発した言葉は、俺が予想すらしていなかった言葉だった……


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