魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第十八話 ズバリ解決!海鳴美少女探偵団?【前編】

それは海鳴図書館で、本を借りた翌日の出来事だった……

 

「ねえ純君」

 

「ちょっと聞いて欲しい事があるんやけど」

 

俺が相変わらず翠屋でバイトをしていると、美少女四人組の内の二人。

 

すずかちゃんと、はやてちゃんが、何やら真剣な表情で、俺に話しかけてきた。

 

こんなに真剣な表情で話し掛けてくるなんて、余程大事な話があるのだろうと感じた俺は、店内の仕事を一旦ヤスに任せて、二人の席へと近づいて行く。

 

「どうしたの二人とも?何か思いつめた様な顔をしてるけど」

 

俺は話しかけながら、二人に向き合う形で、空いている席に座る。

 

本当にどうしたというのだろうか?

 

「私達は今、大きな謎に直面してるんだよ……」

 

「そうなんよ。この謎が解けない限り、ろくに寝る事も出来んのや……」

 

重々しく口を開く、すずかちゃんとはやてちゃん。

 

その様子はまるで何処かで見たドラマの名探偵が、犯人を突き止める為に、推理をしている様である。

 

「一体何があったのさ二人とも。俺で良かったら相談に乗るよ」

 

俺はこの時、善意から今の言葉を発した訳だが、後にこの発言を心底後悔する事になる。

 

先程の言葉を俺が口にした後の、二人の反応は、まさに迅速の二文字に尽きた。

 

「ありがとう純君!純君ならそう言ってくれると、思ってたんだよ!」

 

「それじゃあ、さっそく調査開始や!!!」

 

「はい!?」

 

困惑する俺を、放置したまま、先程の重々しい空気は何処かへ吹き飛び、二人は嬉々として話を進めて行く。

 

「あ、あのさ、調査って何を調査するのさ?」

 

俺はこの場の空気に流されそうになりながらも、何とか確信に迫る質問をする事に成功する。

 

「何って……」

 

「そんなん、決まってるやろ……」

 

しかし、やけにテンションが高くなっている二人は、俺の会心の質問に対して、最大級に嫌な予感を感じさせる含み笑いを浮かべた。

 

何故だろう……

 

この二人の笑顔は、どういうわけか、あの人の笑顔を連想させる。

 

「今から私達は、名探偵なんだよ!」

 

「そうや!そして私達は、海鳴市の住民の誰もが知りたがっとる、奴の正体を見事に突き止めるんやで!」

 

「えっと……その……奴って誰の事?」

 

「「ズバリ仮面ライダー!!!」」

 

俺は完全にユニゾンさせたすずかちゃんと、はやてちゃんの声で、己の耳の鼓膜を震わせながら、二つの事を思い出す。

 

一つ目は二人の笑顔で連想したとある人物である。

 

定期的に俺に厄介な頼み事をしてくる、あの雑誌記者にそっくりなのだ。

 

どうりで嫌な予感が、全身を駆け抜けていく筈である。

 

そしてもう一つ思い出した事。

 

二人が昨日図書館で借りた本。

 

あれは確か、ロンドンを舞台に主人公の名探偵が活躍する、名作の推理小説だったという事を……

 

だが今は取り敢えず、冷静に……

 

「えええええええええええええええええ!!!!!?」

 

驚きの声を張り上げてみる事にした俺だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

街の雑踏を高層ビルの屋上から見下ろして、二人の異形の存在が佇んでいる。

 

「次の実験はどうするの?メルト」

 

「兎に角今は、より多くのサンプルが必要だ。それに……」

 

「それに?」

 

「あの日の夜に出てきた、奴の存在も気になる」

 

藍色の怪人オーバーと、灰色の怪人メルトは、強い風圧に煽られながらも、全く気にした様子も見せず、平然と会話を続けている。

 

「ああ、あの仮面ライダーに似た黄色い奴か」

 

「確実に作戦を遂行させる為にも、奴の戦闘データを集める必要があるだろう」

 

「ふ~ん……それじゃあ、これでもう少し様子を見てみようよ」

 

メルトの言葉を聞いたオーバーは、そう言うと、無数の藍色の球体を、辺りにばら撒く。

 

ばら撒いた藍色の球体は、地面に落ちると、急速な変化を始めて、成人男性台の大きさを誇る人型へと変貌する。

 

「ふん。しかし数だけ居ても、仕方ないだろう」

 

大量のホルダーモドキを生成したオーバーに、メルトは淡々と言い放つと、銀色の球体を一つ取り出して、ビルの屋上から眼下の雑踏へと、放り投げる。

 

銀色の球体、暴走プログラムは、地球の重力に逆らう事無く落下を続け、交差点を足早に歩く、ビジネススーツに身を包んだ、一人の男性へと直撃して、そのまま男性の体内へと吸収されていく。

 

「う!?」

 

その身体に暴走プログラムを吸収した男性は、その場で苦しみ始めて、その身を急速に変質させる。

 

「きゃああああああああ!?」

 

男性の変化に逸早く気付いた、通行人の女性が、その異形を目の当たりにして、悲鳴を上げる。

 

女性の悲鳴を皮切りに、他の通行人もその異常事態に気付き、先程までの日常は、脆くも崩れ去っていく。

 

その異形は、大きく飛び上がると、目の前の高層ビルに張り付き、壁を軽くよじ登り、オーバーとメルトが居る屋上へと辿り着いてしまう。

 

「相手の実力を測るのならば、これくらいしなければ、失礼というものだろう?」

 

屋上によじ登って来たホルダーを眺めながら、メルトはなおも淡々とした口調で語る。

 

「……なるほどね」

 

メルトの言葉に耳を傾けながら、オーバーは、納得した様に呟きを零した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……それで、どうするつもりなのだマスター?』

 

俺が愛用しているオレンジのショルダーバックの中から、頭だけ覗かせたメカ犬が、俺の耳にだけ聞こえる小さな声で話しかけてくる。

 

「どうするもこうするも、何とかして二人には諦めてもらう様にしないと駄目だろ」

 

ご機嫌な様子で前を歩くすずかちゃんと、車椅子を爽快に転がすはやてちゃんを視界に捉えながら、俺は小声でメカ犬に返答を返す。

 

翠屋で二人が、仮面ライダーの正体を暴くぞ宣言をしたすぐ後に、俺は名探偵には優秀な助手が必要だという事で、外に引っ張り出された。

 

幸いにも残りの時間は、ヤスが引き継いでくれたし、士郎さん達も、子供の本分は遊ぶ事にあるのだから、遠慮無く、行って来て構わないと、お墨付きを貰ったので、問題は無いだろう。

 

ちなみにメカ犬は、準備があるからと言って、翠屋の奥に引っ込んだ際に、タッチノートで連絡して、急遽駆けつけてもらった。

 

『しかし、何故すずか嬢とはやて嬢は、突然仮面ライダーの正体を暴くなどと、言い出したのだ?』

 

メカ犬が再び、小声で俺に質問してくる。

 

「ああ、それは多分昨日図書館で借りた小説が原因だろうな」

 

『小説が?』

 

「昨日は俺とすずかちゃんにはやてちゃんの三人で、図書館に本を借りに行ったんだけどな、そこで二人は有名な探偵小説を借りたんだよ」

 

『つまり今の二人は……』

 

俺がそこまで言った所で、メカ犬もおおよその予測が出来たのだろう。

 

「そう、どうも二人して、その小説にすっかり感化されたみたいなんだよな」

 

苦笑いを浮かべながら、俺はメカ犬に回答を告げる。

 

『マスターの言いたい事は分かるのだが、それが何故仮面ライダーの正体を暴く事に結びつくのだ?』

 

「二人が借りた小説はな、丁度正体不明の怪盗を追うっていう、推理とアクションが合わさった様な、内容だったんだ」

 

『うむ』

 

「その物語にドップリと浸かった後は、人にもよるけど、自分も似たような体験をしてみたいと思う訳だ」

 

『……まさか』

 

「自分達の住む街に頻繁に現れる、正体不明の超人……好奇心を存分に刺激する事間違い無いよな?」

 

俺は一つ一つ、丁寧にメカ犬に対して、ヒントを提示していく。

 

もう、ここまで言えば答えに辿り着いてもおかしくないだろう。

 

『厄介な事になったな』

 

「ああ、本当にな」

 

俺とメカ犬は静かに溜息を吐いた。

 

すずかちゃんもはやてちゃんも、決してバカじゃない。

 

寧ろ良く考えた上で、楽しめると判断したからこそ、仮面ライダーという結果に行き着いたのだと思う。

 

こういった場合、普通ならば、自分も事件に巻き込まれて、本格的な推理をしてみたい何て考える人が居るかもしれないが、実際にそんな場面に陥ったら、殆どの人がまともな思考で、推理をしている心の余裕など無い筈だ。

 

だがこれが正義の味方相手ならどうだろうか?

 

相手が悪人であれば、自分に危害を加える危険性がある為、近づきたいとも思わないだろうが、正義の味方ならば、そんな心配はしなくて済む。

 

それに二人のスタンスは、あくまでも遊びのレベルだろう。

 

見つからなかったら、見つからなかったで、探検ゴッコという形で楽しめる訳だし、もしも偶然に偶然が重なり、仮面ライダーの正体を知ったとしても、周りに言い触らす様な真似をする心配も無い。

 

ならば何が問題か。

 

それは二人の現在のベクトルと、俺が助手として、二人の近くに居るという事だ。

 

もしもこんな状況で、ホルダーが現れたとしたら、本当に正体がばれる可能性は高くなるし、俺としては出来るだけ自分が仮面ライダーだという事実は、すずかちゃんとはやてちゃんは勿論、この場に居ないなのはちゃんと、アリサちゃんにも隠し通したい。

 

『所で今ワタシ達は、何処へ向かっているのだ?』

 

取り敢えずの現状を理解したメカ犬が、更なる質問を俺にぶつけてくる。

 

「今は恵理さんの住んでるマンションに向かってる最中だ。恵理さんが仮面ライダーの独占インタビューに成功したって事は、二人とも本人から以前に聞いてたらしくて、これから情報収集するらしい」

 

『恵理殿か……大丈夫だと思うか?』

 

「何がだよ」

 

『……本当に聴きたいのか?』

 

「……遠慮しとく」

 

『賢明な判断だな』

 

何というか、今日は厄日という奴なのかもしれない。

 

せめて今日はホルダーが現れません様にと、普段は年明け位にしか神様にお祈りしない俺が、珍しく本気で祈りを捧げたのだが、神様はそんな俺の願いを叶えてくれる事は無かった。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』

 

無情にも、俺のズボンに忍ばせたタッチノートが、過剰なまでに警報を辺りに響かせる。

 

「は!?」

 

俺はタッチノートが警報音を上げ始めた直後に、突き刺さる様な視線に気付き、正面に視線を向けた。

 

その視線の正体は、今や美少女名探偵と化した、すずかちゃんとはやてちゃんである。

 

怒りとか、そういう激しい感情では決して無い。

 

どちらかと言えば、こうネットリと絡みつく様な、爬虫類系の生き物に見られているみたいな感覚が、俺の五感を支配する。

 

「ねぇ、純君」

 

「たま~にそのアラームが鳴るけど、実際の所、それって何なん?」

 

現在探偵モードとなっている二人は、いわば好奇心に足が生えて、辺り一体を闊歩している様なものだ。

 

一度興味を示せば、スッポンの如く、簡単には放してくれないだろう。

 

「えっと、これは、その……」

 

「これは?」

 

「その?」

 

背中に冷や汗が張り付き、気持ち悪いと思う暇も無い程に、狼狽する俺に対して、にじり寄って来るすずかちゃんとはやてちゃん。

 

『マスター。急がないと不味いぞ』

 

更に背中からメカ犬が急かしてくる。

 

「こうなったら……」

 

ある意味追い詰められた俺は、そう呟いた後、最終手段を発動させる事にした。

 

「あああああああ!!!!!!あれは何だ!!!!!!?」

 

俺は腹の底から、声を張り上げ、空を指差す。

 

「「え?」」

 

今だ!!!

 

二人の視線が一瞬だけ俺から離れた隙を突き、一気に駆け出す。

 

「「あああ!?」」

 

少し後ろの方で、すずかちゃんとはやてちゃんの声が聞こえるが、俺は振り返る事無く、全速力で駆け抜ける。

 

しかしこんな古典的な手に掛かるとは、やっておいてなんだが全く思ってもいなかった。

 

「メカ犬!ホルダー反応は何処から出てる?」

 

『うむ。反応はかなり近いぞ。ここから北に300m程だ!』

 

「本当に近いな!?」

 

『急ぐぞマスター!』

 

全力で走り抜けながら、俺はメカ犬と短く会話を交わして、現場へと急ぐ。

 

先程のメカ犬の言葉の通り、ホルダー反応はすぐ近くで、走り始めてから、数分程で辿り着いた。

 

『これは……』

 

「前に出てきたホルダーモドキか?」

 

俺達の視界には、以前にオーバーが作り出していた、人間を素体としていない藍色の身体を持つ、数十体は居るであろうホルダーモドキ達が、街の真ん中で破壊活動を行っている。

 

『行くぞマスター!』

 

「ああ!」

 

メカ犬の声に頷きながら、俺がズボンに忍ばせていた、タッチノートを取り出した瞬間、あまりにも聞き覚えのある声が、耳に入って来た。

 

「待ってよ純君!」

 

「私達からそう簡単に逃げられると思うんやないでえ!」

 

その声の主は、先程まで一緒に居た、すずかちゃんとはやてちゃんである。

 

俺は自分の浅はかさに、後悔する。

 

あの場に居たのは、すずかちゃんなのだ。

 

何故か通常の小学生の身体能力を遥かに凌駕するすずかちゃんを、少し隙を突いただけで、出し抜けるなんて、あまりにも考えが甘かったのである。

 

俺だって同年代では、かなり高い身体能力を誇っているが、所詮は常識の範疇なのだ。

 

はやてちゃんの車椅子を押しながらという、ハンデを背負ったとしても、充分なお釣りが来る事だろう。

 

だが今はそんな事で、感心している場合じゃない。

 

こちらに走ってくるすずかちゃんとはやてちゃんに対して、一体のホルダーモドキが狙いを定めて、襲い掛かろうとしているのだ。

 

「逃げろおおおおおおおお!!!!」

 

俺はそう叫びながら、全力で走り出すが、無情にもホルダーモドキの拳は、俺の大切な二人の友達へと、その猛威を振るう。

 

そしてもうどんなに急いでも、間に合わないそう実感した瞬間、奇跡が起きた。

 

俺の後方から銃声が聞こえると同時に、二人に猛威を振るおうとした、ホルダーモドキが、明後日の方向に、火花を上げながら吹き飛んだのである。

 

後ろを向けば、そこにはメタルイエローのボディーに青い複眼を輝かせる、一人の戦士が、右手に構えた銃の銃口から、煙を立ち上らせながら、白と黒の巨大なバイクに乗ってやって来た。

 

あれは恵美さんが、開発したESシステムを搭載した、対ホルダー撃退用ユニットE2。

 

装着者は長谷川さんだ。

 

以前翠屋に来た、恵美さんがこれからは極秘じゃないから好きなだけ喋れるわと言って、俺に呪詛の如く、四時間もぶっ続けで説明するので、すっかりと脳裏にこびり付いてしまったのである。

 

「二人とも!安全な場所まで運ぶから乗って!!!」

 

E2がそう言いながら、すずかちゃんと、はやてちゃんを、マシンドレッサーに強引に載せて行く。

 

取り敢えずこれで一安心だろう。

 

俺は二人がE2に保護される様子を見て、ホッと胸を撫で下ろした。

 

「板橋君!君も早くこっちへ!」

 

すずかちゃんとはやてちゃんを乗せたE2が、続いて俺に声を掛ける。

 

「俺は反対側から自力で逃げますんで、先に二人をお願いします!」

 

俺はE2の言葉に断りの返答を返す。

 

実際に俺と、E2達の間には、複数のホルダーモドキが居る。

 

俺がマシンドレッサーに乗り込もうとしたら、すずかちゃんとはやてちゃんを乗せた状態で、戦う事になってしまう。

 

だからこそ、この選択は正しいと言える。

 

「……分かった!すぐに戻ってくるから、絶対に無事で居てくれよ!」

 

「はい!」

 

苦渋の選択の末に、俺を置いて行く事を決めたE2は、一旦この場を離れるべく、俺に声を掛けた後、マシンドレッサーのエンジンを唸らせて、走り出す。

 

その姿が完全に見えなくなった事を確認した俺は、改めてタッチノートを開く。

 

「さっきは良くも、二人を襲おうとしてくれたな!」

 

『許さんぞ!』

 

俺とメカ犬は、怒りの感情を剥き出しに叫ぶ。

 

そして俺は、ショルダーバッグから、メカ犬が飛び出すのを確認しながら、タッチノートのボタンを押す。

 

『バックルモード』

 

音声が流れると同時に、銀のベルトに変形したメカ犬は、そのまま自動的に俺の腹部へと巻きつく。

 

「変身」

 

続いて音声キーワードを入力した俺は、バックルの溝にタッチノートを差し込む。

 

『アップロード』

 

差し込んだ瞬間に、白銀の光が俺の全身を包み込み、一人の戦士へと変えていく。

 

俺を包む光が飛散した時、中から現れたその姿は、メタルブラックのボディーに、腹部の銀のベルトから四肢へと伸びる同色のラインに、額に輝くⅤ字の角飾り。

 

そして二つの赤い複眼が、存在感をより一層高めている。

 

まさにその姿は、仮面ライダーだ。

 

「それじゃあ行くぞメカ犬!」

 

『うむ!』

 

俺とメカ犬は互いに気合を入れると、ホルダーモドキ目掛けて、一気に駆け出す。

 

通常のホルダーと比べると、随分と動きの鈍い奴等に対して、俺は容赦無く拳と蹴りを叩き込んで行く。

 

その状態を何分か続けていると、俺から少し離れた位置に居たホルダーモドキが、火花を上げながら吹き飛んでいく。

 

原因は明らかだ。

 

ホルダーモドキが吹き飛んでいった方向の反対側からは、金属が擦れる様な音を響かせながら、銃を構えたE2が走ってくる。

 

「仮面ライダーさん!この場に男の子は居ませんでしたか?」

 

俺の存在に気付いたE2が、ホルダーに攻撃を加えながら訪ねてくる。

 

間違い無く俺の事を言っているのだろう。

 

「安心してくれ!その少年は俺が逃がした!」

 

ホルダーモドキに拳を叩き込みながら、俺はE2の質問に答える。

 

「良かった!」

 

心底安心した様に安堵の声を漏らすE2は、ホルダーモドキを掻い潜りながら、俺の背後に背を着ける距離までやって来る。

 

「それにしても……強くは無いが数が多いな」

 

「そうですね……」

 

互いを背に会話をしながら、俺が一気に蹴散らす為に、フォルムチェンジをしようかと考えたその時、この状況に変化が起こる。

 

『マスター!強いホルダー反応を近くで感知したぞ!気を付けてくれ!』

 

「「な!!」」

 

メカ犬の忠告が聴こえた直後、俺とE2は同時に空を見て驚愕する。

 

まるで森に生息する野生動物の様に、ビルの谷間を飛び移りながら、深緑の毛並みを持った、異常に腕の長いサルの様なホルダーが目の前に現れたのである。

 

「く!?」

 

そのホルダーに逸早く反応したE2が銃で応戦するが、ホルダーは素早い動きで、それを尽く避けていく。

 

「うぃきゃああああああああ!!!!」

 

そしてホルダーは奇声を上げながら、俺達に飛び掛ってきた。


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