魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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超・電王トリロジーアフター・エピソードシルバー 帰ってきたクライマックス刑事!ミッションコードはギャラクシードリームプロジェクト!?【追跡編】

「久しぶりだな。お前達」

 

ネガタロスは、ネガデンライナーから俺達を見下ろしながら、言葉を紡ぐ。

 

「やっぱりお前だったんだな……」

 

侑斗さんは、そう吐き捨てる様に言うと、上空にいるネガタロスを鋭い眼光で睨み付ける。

 

「ふん!貴様らに付き合っているほど、俺も暇では無いんでな。お前達はこいつ等とでも遊んでいろ」

 

そう言うとネガタロスは、封印の鍵を持つ手とは逆の手を出す。

 

「それは!?」

 

ネガタロスの手にはあるものが、大量に握られていた。

 

俺はそれを見た瞬間、驚愕の声を上げる。

 

黒いビー玉の様な物体。

 

『あれはやはり以前ガルドという輩が、所持していた模造品か!?』

 

俺の隣に居たメカ犬が叫ぶ。

 

メカ犬が言うのなら間違い無いのだろう。

 

あれは確かに、以前ガルドが作り出した暴走プログラムの模造品で間違い無さそうである。

 

ネガタロスはそれを思い切り握りこむと、己の身体全体の表面に砂が発生して行き、その砂が、模造品に吸収されていく。

 

そして全ての暴走プログラムの模造品を、地上に向けて投げ放つと、空中で激しい変化を起こし、模造品はホルダーに姿を変えて、次々と地上に舞い降りる。

 

「如何だ?今度の俺の部下達は?今回の部下は以前の奴等とは違い、俺の命令には忠実だぞ!」

 

俺は先程の一連の流れを見た事で、一つの確信を得た。

 

博物館で倒したホルダーが何故砂になったのか。

 

あくまで俺の予想だが、イマジンは本来不安定な存在だ。

 

そして確かな存在になりたいという思いに、あの模造品が反応して、ホルダー化するという形で、夢を叶えている。

 

詳しい原理は、科学者でも何でも無い俺には、理解できないが、あながち的外れな考えでは無いと思う。

 

「俺はこれで失礼させてもらうぞ。何せ最後の鍵を取りに行かないといけないんでな」

 

ネガタロスはそう言うと高笑いをしながら、ネガデンライナーに乗り込み、時の狭間へと消えて行った。

 

「早く追わなくちゃ!」

 

良太郎君が言うのと同時に、一体のホルダーが、良太郎君に襲い掛かってくる。

 

「危ねえ!」

 

それに逸早く気付いたモモさんが、コハナさんの一撃のダメージが既に抜け切ったのか、ギリギリの所でホルダーに横から蹴りを入れて吹き飛ばす。

 

「でも、こうも邪魔されちゃ、追いかけるどころじゃないね」

 

ウラさんがウラタロッドを振り回し、ホルダーに攻撃しながら、良太郎君に意見する。

 

「確かにそうやな」

 

その脇では、キンさんがホルダーに突っ張りを喰らわせながらウラさんに同意している。

 

「うりゃ!」

 

少し離れた位置では、リュウ君がリュウボルバーをホルダー達に乱射している。

 

「おい野上!お前等はネガタロスの後を追え!ここは俺が何とかする」

 

現状を見た侑斗さんが、一本のベルトを腹部に巻きつけながら叫ぶ。

 

「でもこの人数じゃ「それなら俺が助太刀するよ」え?」

 

良太郎君が侑斗さんに意見する声が、突如ゼロライナーの扉が開くと同時に、中から出てきた人物によって、遮られてしまう。

 

「えっと……誰?」

 

唐突にゼロライナー中から出てきた人物に、良太郎君は目を丸くする。

 

「その声はまさか!?」

 

しかし俺にはその声に聞き覚えがあり、思わず凝視してしまう。

 

その人物の正体は……

 

「Tさん!?」

 

俺はその人物の名前というか、知っていた当時のコードネームを呼ぶ。

 

「やあ、板橋君。久しぶり。相変わらず事件に巻き込まれてるみたいだね」

 

久しぶりの再開だと言うのに、如何にも軽いノリで、俺に皮肉な挨拶をしてきたTさん。

 

その様子を見る限り、Tさんも相変わらずらしいが、今はそんな事を考えてる場合じゃない。

 

「何でTさんが、ゼロライナーに乗ってるんですか!?」

 

予想外にも程がある。

 

「実は危ない所を、彼に助けられてね」

 

Tさんはそう言って侑斗さんに親指を向ける。

 

簡単に話を纏めると、Tさんはシルバーライト島にある、ガルドの研究施設に残っていた、暴走プログラムの模造品を、組織にサンプルとして持ち帰ったらしいのだが、保管の最終手続きをしている際に、ネガデンライナーの強襲を受けたらしい。

 

突然の強襲による混乱に乗じて、模造品を奪われたが、駆けつけたゼロライナーのお陰で、何とか助かったのだそうだ。

 

Tさんは、そのまま去ろうとするゼロライナーを強引に止めて、侑斗さんに模造品の危険性を説明すると、専門家に協力を求めようという事で、ここに来た……というか!

 

良く生身一つで時の列車を止めたなと感心したり、専門家って間違い無く俺の事だろうと、突っ込み所があり過ぎる。

 

「まあ、そんな訳で、ここは俺達に任せて、板橋君達は、奴を追ってくれ」

 

一通り話した後、Tさんはそう言って、何時かの未来チックな銃を構えると、侑斗さんの近くに降り立つ。

 

「急げ野上!」

 

Tさんが近くに来ると同時に、侑斗さんが再び良太郎君を急かしながら、緑のラインが入った一枚のカードを取り出す。

 

腹部に巻きつけたベルトの上部分をスライドさせると、俺も前世で画面越しに良く聞いていたメロディーが流れ出した。

 

「変身」

 

侑斗さんはそう力強く言い、ベルトの横から、カードを挿入する。

 

『アルタイルフォーム』

 

音声が流れると同時に、侑斗さんの全身を黒と銀と緑を基調とした鎧を纏い、最後に電王と同じく顔に仮面が装着される。

 

その姿は俺が、前世で観ていた仮面ライダーゼロノス、まさにそのものだった。

 

「最初に言っておく」

 

侑斗さんはそう言って、腰に備え付けられている。ゼロガッシャーを連結させて、大剣サーベルモードに変形させると、それを大きく円運動させながら、言い放つ。

 

「俺はかーなーり強い!」

 

そしてサーベルを構えた状態で、Tさんと共に、ゼロノスはホルダーの大群に走り出す。

 

「急げ皆!」

 

デネブさんが、手の指から放つ銃弾で、威嚇射撃をしながら、俺達に早く行けと合図を送る。

 

俺達はこの場をTさん達に任せて、ネガタロスを追う為に、この場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがデンライナーの中か……」

 

俺はあまりの感動で、思わずそう言葉を漏らす。

 

今この時も、Tさん達が戦っているという事を考えれば、不謹慎だと自覚はしているのだが、仮面ライダーファンとして、本物のデンライナーに乗車したとなっては、感動しない訳が無い。

 

現在俺達は、図書館のホルダー達を、Tさん達に任せて、デンライナーで、ネガタロスの後を追っている。

 

良太郎君は、モモさんを憑けた状態で電王ソードフォームに変身して、今は専用バイクデンバードの格納庫も兼ねている操縦席で、運転を行っている最中だ。

 

ちなみに俺の専用バイクとも言える、オッサンボイスの新宿二丁目乙女系なチェイサーさんは、万が一という事も考えて、デンライナーの後部車両に乗せてもらっている。

 

それ以外の人は、俺も含めて、全員が食堂車両に、集合していた。

 

「あ!見えたわよ!」

 

暫く時の狭間を走らせると、ネガデンライナーを窓の外から、視認する事が出来た。

 

それを見つけて、コハナさんが、第一声を上げる。

 

相手も俺達が来た事に気付いたのだろう。

 

複数の車両のハッチが開き、攻撃態勢に入る。

 

そこから先は、激しい砲撃の撃ち合いだ。

 

当然の様に、横に縦に斜めに、おまけに一回転の宙返りと、縦横無尽に時の列車同士の戦いが繰り広げられる。

 

中に居る俺達も、バーテンのシェイカーに入れられたカクテルの材料の様に、何度もシェイクされて、電車酔い?を引き起こしそうになる。

 

途中気絶していた、長谷川さんが目を覚ますが、すぐに頭を座席に強打させて、再び気絶してしまった。

 

あの場所に置き去りにするのは、危ないと思って取り敢えず連れては来たけど、こっちもあまり変わらなかったかも知れない。

 

砲撃合戦は熾烈を極めた時、ずっと置物の様に、微動だにしなかったオーナーが、その重い口を開いた。

 

「如何やら……間も無く目的地に着く様ですね」

 

その言葉を聞き、窓の外に視線を移すと、確かに線路の先には光が見える。

 

恐らくは、あの光の先が、目的地という事なのだろう。

 

もうすぐ辿り着くのだと、確信を得た直後、激しい衝撃に見舞われる。

 

その直後何故か車両の中だというのに、食堂車両全体に突風が吹き荒れた。

 

突然の突風により、吹き飛ばされそうになる身体を、何とか座席に掴まって、支えながら風の吹き荒《すさ》ぶ方向を見ると、壁に大きな風穴が開いていた。

 

如何やら先程の大きな衝撃は、ネガデンライナーの攻撃が直撃した為の様だ。

 

この穴がその証拠であろう。

 

他の皆も突然の突風に己の身を守る為に、何処かしらに掴まっている……ただ一人を除いて。

 

気絶している長谷川さんは、全くの無防備状態のまま、穴の方に飛ばされて行く。

 

「不味い!?」

 

俺はそう叫ぶと、座席の掴む手を離して、長谷川さんの服の襟を辛うじて掴み、穴の端に足を引っ掛けて、何とか踏み止まる。

 

考え無しに、咄嗟に実行したが、上手く行って良かった。

 

今と同じアクションをもう一度やれと言われても、多分無理だろう。

 

まさに今のは、俺の本日一番のファインプレーである。

 

しかし問題はここからだ。

 

何とか掴めたが、所詮は子供の身体である俺には、大人の長谷川さんを引き上げるだけの力は無い。

 

「誰でも良いから引き上げてえええ!!!!」

 

俺は残る力を振り絞りながら、助けを求める為に、叫び声を上げる。

 

「今行くから待っとき!」

 

最初に俺の助けに答えてくれたのは、キンさんだった。

 

キンさんとウラさんは、その手に長いロープを掴んでいる。

 

「すぐ行くから待ってて!!!」

 

そのロープの先には、リュウ君が括りつけられていた。

 

「頼むよリュウタ」

 

「任せといてよ!」

 

ウラさんの頼みに、元気良く答えたリュウ君は、勢いをつけて、俺と長谷川さんの引っ掛かっている穴の横に、飛び込んでくる。

 

「早く掴まって!」

 

俺の真横まで来たリュウ君が、そう言って手を伸ばす。

 

「俺は後で良いんで、先に長谷川さんをお願いします!!!」

 

はっきり言って俺の握力は限界だ。

 

何時手を離してもおかしくない。

 

「うん!君もすぐに助けるから、もう少し頑張って!」

 

リュウ君はそう言ってから、長谷川さんを掴む。

 

俺はそれを確認してから一旦手を離す。

 

手を離した瞬間、両手の感覚を全く感じなかった事から、本当に後少し遅れていたら、危なかったのだと実感してしまう。

 

「カメちゃん!クマちゃん!一回引き上げて!」

 

「「せーの!!!」」

 

リュウ君の合図に合わせて、ウラさんとキンさんが、リュウ君達を引き上げる。

 

無事に引き上げられた長谷川さんは、ウラさんが掴んで、再び突風で吹き飛ばされない様にしていた。

 

その様子を見て俺は安心したのだが、それは甘かったと次の瞬間思い知る。

 

俺の足が引っ掛かっていた場所が壊れて、支えを失った俺は、そのまま突風に煽られて、デンライナーの外に吹き飛ばされる。

 

『マスター!!!!!』

 

メカ犬の叫びがまるでスローモーションの様に俺の耳に聞こえてくる。

 

「間に合え!!!」

 

咄嗟にリュウ君が飛び出して、俺に手を伸ばす。

 

それに答える様に、俺もリュウ君の手を掴もうと手を伸ばした。

 

互いの手が触れ合おうとした瞬間、俺の全身が光に包まれる。

 

目的地に辿り着いたのだろう。

 

しかしこの光により、俺とリュウ君の視界が遮られ、掴めた筈の手が、互いに宙を切る。

 

しまったと思った瞬間。

 

俺の意識は光に包まれると共に、自分自身が光になるかの様に、消えて行くのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

目蓋の上からでも、眩しいと思える光を感じた。

 

暖かく緩やかな風が、髪を撫でながら、少しずつ俺の意識を浮上させていく。

 

俺は今まで何をしていたのだろうか?

 

未だぼやける思考を働かせながら、最後に意識を失った時の状況を、思い返す。

 

段々と思い出していく中で俺は……

 

「は!?」

 

その最後の瞬間を思い出した俺は、声を上げて、一気に己の意識を覚醒させた。

 

辺りを見回すと、白を基調としたシンプルな部屋に、微かに香る薬品の匂い。

 

そんな部屋の中で、俺はベッドの中に居た。

 

俺の想像が正しければ、ここは何処かの病院だろうか?

 

更に辺りを見渡すが、他に現状を確認出来そうな、情報は何も無かった。

 

如何やら個室の様なので、俺以外には誰も居ない。

 

このままこうしている訳にもいかないので、新たな情報を求めて、取り敢えずベッドから出ようとした所で、部屋の扉が開く。

 

「あ!目が覚めたんだ!」

 

部屋に入ってきたのは、一人の女の子だった。

 

ベッドから出ようとしている俺を見た女の子は、人懐っこい笑顔を浮かべながら、俺に近づいてくる。

 

見た目で言えば、今の俺の肉体と同じ年齢か、少し年下だろうか?

 

金髪に緑のリボンがとても似合っている。

 

「心配したんだよ。海岸にうち上げられてるのを、見た時は、死んでるかと思っちゃったんだから」

 

女の子はそう言いながら、ベッドの脇に、備え付けられている椅子に腰を下ろした。

 

「お医者さんが言うには、特に怪我も無いみたいだし、意識さえ戻れば大丈夫だろうって言ってたから、これで一安心だよ」

 

俺は突然部屋に入ってきた女の子のマシンガントークに、何も答えられずにいた。

 

しかしこの女の子の言う事を、照合すると、俺は何とか時の狭間の外まではやってくる事が出来たらしい。

 

多分その直後に海にでも投げ出されて、岸に流れ着いたのだろう。

 

これが場所によっては、とんでもない事になっていたかと思うと、背筋がゾッとする事この上ない。

 

そしてこの女の子は、そんな俺を初めに発見して、救急車を手配してくれたのだろう。

 

それだけでも、大助かりなのに、ここまで親身になって貰えるとは、この女の子の優しさが窺い知れる。

 

「ねえ、お兄ちゃん」

 

女の子が俺に向かって、言ってくる。

 

「お兄ちゃんって俺の事?」

 

「そうだよ。他に誰も居ないでしょ。お兄ちゃんは如何してあんな所で倒れてたの?それに……」

 

女の子は再びマシンガンの様に喋り出し、俺に幾つもの質問をぶつけて来る。

 

「ちょ、ちょっと待って!一度にそんな沢山答えられないから、質問は一つずつにしてよ!」

 

これは堪らないと、俺は女の子にストップをかける。

 

「あ!そうだね。それじゃあまずは……お兄ちゃんのお名前は?」

 

如何にか静止を聞き入れてくれた様で、女の子が最初の質問をしてくる。

 

これまでの経緯を全て話すのは、不味いかも知れないが、俺の名前ならば、取り敢えず問題無いだろう。

 

「俺の名前は板橋純。それで君の名前は?」

 

俺は自分の名前を言いながら、そう言えばこの女の子の名前を知らなかったなと気付き、逆に質問してみた。

 

「何か珍しい名前だね。それに私の名前って……」

 

女の子は俺の名前を聞きながら、そう言うと、考え込む表情を浮かべた後、何かに気付く様な表情に変わる。

 

「あ!そう言えば私の名前って、まだ教えて無かったね」

 

女の子はそう言うと、椅子から立ち上がり、優雅にクルッと一回りした後、軽くお辞儀をして俺に、可愛らしい笑顔を向けた。

 

「私の名前は、アリシア・テスタロッサだよ。よろしくね。純お兄ちゃん」

 

女の子、アリシアちゃんはそう言うと再びお辞儀をした。


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