魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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ちょっと真面目な展開が続いたので箸休めに……という訳では無いのですが、サブタイトルだけはっちゃけてしまいました。

果たしてこの作品を読んでくださる読者様層の中で、どれだけの需要があるか分からない内容ではありますが、楽しんでいただけたら嬉しいです。

ではでは。


第51話 魔法の男の娘爆誕?【前編】

「あんまり根を詰めてると、体に毒だぜ。教授」

 

パソコンのキーボードに指を叩き、延々とデータを入力し続ける森沢教授に、鳥羽が肩に軽く手を置きながら声を掛けた。

 

「鳥羽君か。心配してくれるのは嬉しいが、あれの完成を急ぎたいのでね」

 

「……まあ、教授がそう言うなら、止めはしないけどよ。程々にして休憩もしといた方が、効率だって良くなると思うぜ?」

 

会話をしながらも、キーボードを打つ手を止めない森沢教授に、鳥羽は苦笑いを浮かべる。

 

特にする事も無く、鳥羽が森沢教授が作業をしている部屋の中に鎮座する大人の男性一人ならば余裕で横になれる大きなソファーで、転寝《うたたね》を始めてから、一時間が経った頃。

 

「これで人間の破壊衝動のデータが充分に集まった。次に集めたいデータは……」

 

「迷っているのならば、以前にも集めようとしていた恋愛感情などはどうですか?」

 

作業を終えた森沢教授の呟きに対して、ドアを開ける音と共に、予想外の返答が返ってきた。

 

その返答した人物の正体は、森沢教授の呟きとほぼ同時に、室内へと入ってきた常に紫のスーツを好んで着る加山である。

 

「恋愛感情ですか。以前は思い人が居る方にプログラムを渡してデータを取りましたが、確かに不十分でしたからね。加山君がそう言うという事は、逸材となるお方に、心当たりがあるのですかね」

 

「ええ、一ヶ月程前に、プログラムを渡したのですが、最近になって、中々に面白い能力を発現しましてね」

 

「ほう、それは楽しみです。良いでしょう、今度の収集データは、人間の恋愛感情のデータという事で、鳥羽君も頼みますよ」

 

寝ながらも二人の会話は聞こえていたのか、鳥羽は森沢教授の声に反応して、ソファーに寝た姿勢のまま、軽く片手を上げて返事とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

森沢教授が、病院に通院していたという事実を知る事が出来たのは、偶然が重なった結果だった。

 

ヤスの治療を担当した医師が、大学から運ばれて来たヤスを海鳴大学の学生と間違えた事と、その医師が森沢教授の担当医師だったという、偶然の一致。

 

そして森沢教授が、本来ならば通院日の筈なのに、顔を出さなかった上に、本人と連絡が取れなかった為に、何か知らないかと尋ねられたからこそ、この事実が発覚したのである。

 

だが、俺達が得る事が出来る情報は、森沢教授が病院に通院していたという事実確認までだ。

 

その病名等に関しては、余程の事が無い限り、本人か親族以外に、簡単に教えてはくれないだろう。

 

森沢教授も、高齢なのだから、何かしらの持病を患っていても不思議では無い。

 

だから、そこまで気にする必要も無いのだろうが、どうも引っかかる。

 

それに、今は少しでも多くの情報が欲しい。

 

なので俺は、怪我をしたヤスに、無理をしないで休めと言い渡した後、長谷川さんを通じて、警察に森沢教授のカルテの提示を病院側にしてもらう様に頼んでおいた。

 

メカ犬もジャックに依頼をしたという事なので、取り敢えず今の俺達に出来る事はしたので、今日の所はそのまま家に帰って来た訳なのだが、我が家に予想外な来客が居た……。

 

「あら、遅かったわね純。お邪魔してるわよ」

 

俺の部屋で、我が物顔でくつろいでいるミルファが、本当の部屋の主である俺を出迎える。

 

でもそれだけじゃない。

 

「あ、久し振りだね。元気そうでなによりだよ純」

 

来客はミルファと、もう一人居たのだ。

 

俺と同い年で、少女と見紛う容姿の金髪の少年。

 

ミルファと共に、試練の光の情報を求めて、異世界に行った先で知り合ったユーノ……の筈なのだが。

 

『ワタシの記憶では、ユーノの性別は男だったと記憶していたのだがな』

 

「いや、俺もユーノは男だと思ってたんだけど……」

 

メカ犬の言葉を否定しようとは思うのだが、ユーノの姿を見なおす度に、自信が無くなっていく。

 

それもそうだろう。

 

「あんまり見られると、その……恥ずかしいよ」

 

あまりにも無遠慮に俺が見ていたせいで、ユーノが頬を朱色に染めて、恥ずかしそうに視線を泳がせる。

 

正直にすまないとは思うが、部屋に入った瞬間にユーノがこんな姿をしていたら、つい見てしまうのも無理は無いだろう。

 

白を基調とした、清楚なイメージの上着とワンセットになっているロングスカート。

 

正直に言えば、普段から見慣れた服装ではある。

 

何故なら、その服装は俺やなのはちゃんが通う学校の制服なのだから……ただし女子の制服だという注釈が必要ではあるけれど。

 

「あの、何でユーノは女子の制服を着てるんだ?」

 

「そ、それは……」

 

俺の質問にユーノが答えようとした、その時だ。

 

凄い勢いで、廊下を駆けてこの部屋へと近付いて来る二人分の足音が聞こえてきた。

 

程なくして勢い良く、俺の部屋の扉が開かれる。

 

乱暴に扉を開けて入って来たのは、この家の住人の一人であるアリシアちゃんと、俺の母さんの学生時代からの友人であり、事ある毎に刺激的なネタを求めて、暴走する漫画家の燐子さん。

 

二人の手には、アリシアちゃんの衣服が握られており、何だか血走った眼でユーノを凝視しながら、にじり寄っていく。

 

何だこの状況は?

 

「さあ、ユーノキュン! 今度はこのお洋服を着てみましょうか!」

 

「こっちの服もユーノには似合うと思うんだ! 私のお気に入りだし、絶対に似合うと思うんだけど!」

 

荒い息をあげつつ、怪しげな笑顔を張り付けて、ユーノに迫る二人を見て、何となくだがユーノが女子用の制服を着ている理由を察した。

 

きっと、あの制服もアリシアちゃんの物なのだろう。

 

ユーノとアリシアちゃんと背丈は殆ど変らないので、互いの服を着るのは、当然ながら可能な訳だし……。

 

というか、アリシアちゃんが今着ている服も、ユーノが以前に着ていた民族衣装である。

 

例のフェレットチックな小動物モードになれば、ユーノもこんな事にはならなかったのかも知れないが、アリシアちゃんや、父さんと母さんの前ならともかく、何の事情も知らない燐子さんの前で、魔法を使うのは流石に躊躇ったのだろう。

 

被害者であるユーノには悪いが、御愁傷様としか言い様が無い。

 

「こ、怖いよ純……」

 

このカオスな状況で逆に冷静になった俺が、細かく分析していると、ユーノが涙目で俺の腰にしがみ付いて、助けを求めてきた。

 

本人を前にして、言うのは避けようと思うのだが、その格好で涙目と上目使いをされると、もう完璧に可憐な美少女にしか見えない。

 

アリシアちゃん達も、本気でユーノを辱めている訳では無く、楽しんでいるだけなのだろうが……いや、それはそれで問題だとは思うのだけれど、これ以上はやり過ぎというものである。

 

「安心しろ、ユーノ。俺が必ず守るから!」

 

「じ、純……」

 

俺はそう言って、ユーノを安心させる為に、腰に回されていた手を優しく手に取って立ち上がらせた。

 

「俺の後ろに隠れてろ」

 

「うん!」

 

ユーノを背に庇いながら、俺は今も荒い息遣いでこっちを見続ける二人と対峙して、説得を試みようとしたのだが……。

 

「ハァ、ハァ、ハァ……何だろう? 純お兄ちゃんと、ユーノが見つめ合ってるのを見たら、何だかドキドキしてきたよ……」

 

「グエフフュ! 地味系男の子と金髪僕っ子美少年男の娘のダブルショタな、禁断の関係……良いわ! 良いわよ! どんどん漫画のアイデアが溢れて来るわ!」

 

何かの呪詛を呟きながら、俺とユーノに絡み付く様な熱い視線を送る二人に対して、俺の背筋に嫌な汗が滑り落ちていく。

 

この視線には、少しだけ覚えがある。

 

俺の前世の頃の友人に、幼馴染の女の子が居たのだが、中学生時代の夏休みに遊びに来たという事で、顔を合わせる機会があったのだけれど、俺と友人が夏の暑さで乾いた喉を潤す為に買ったジュースを回し飲みをしていたら、今のアリシアちゃんと燐子さんと同じ視線でガン見してきたのだ。

 

そしてのそ直後……。

 

「描くわよおおおおおおおおお!」

 

「手伝いまああああああああす!」

 

……今の二人と同様に、奇声を発して、何処かへ走り去ってしまった。

 

まあ、燐子さんの場合は、何が琴線に触れたのかは分からないが、俺とユーノを見て漫画のインスピレーションが降って湧いたのだろう。

 

他にプロの漫画家には会った事は無いけれど、母さんが言うには、あの発作は職業病だそうなので、あまり気にしない様に努めている。

 

最近はアリシアちゃんも、家に良く入り浸る燐子さんに懐き、漫画のお手伝いをしているので、少しそれが移ったのかも知れないな。

 

「ねえ、純。あの二人を放って置いて大丈夫なの? 何だか怖くて、さっきまでユーノを生贄にしてたんだけど、あの尋常じゃないテンションを見てたら、何だか不安になってきたわ……」

 

『うむ。燐子先生は、漫画のネームを考え始めると、大抵はあんな調子だし、珍しい事ではないぞ』

 

ミルファの質問に、俺よりも先にメカ犬が、何でもない無い様に答える。

 

先程まで我関せずの態度を取っていたのは、あの二人のテンションが怖かった様だ。

 

流石にユーノを生贄に差し出すのは酷いとは思うが、気持ちが分からないでも無い。

 

あのテンションは、耐性の無い人には少々キツイ部分もあるだろう。

 

「そ、そうなの。今更だけど、この家って純とメカ犬に限らず、個性的な人達ばかりよね」

 

「別にそんな事は無いと思うけどな?」

 

まあ、燐子さんがちょっと変わった人だとは思うけど、俺の家なんて、お隣のなのはちゃん家と比べれば、普通の部類に入るだろう。

 

メカ犬は存在自体が論外として、父さんと俺は日本家庭の普通を体現した様な存在だし、母さんだって底抜けな天然成分に眼を瞑れば、普通と言える筈だ。

 

強いて普通の家に無いものと言えば、俺の部屋の押し入れを改造して設置したメカ犬を始めとした、メカーズ達の居住スペース、通称メカ長屋と呼んでいる住処くらいしか思い浮かぶものは無い。

 

「怖かったよ……本当に怖かった……」

 

まだ恐怖で震えているユーノを落ち着かせる為に、優しく頭を撫でながらミルファと話していた俺だったが、ユーノの女装姿と、ハイテンションな燐子さんとアリシアちゃんの強烈なインパクトで、すっかりと忘れていた。

 

「それで、何でユーノがこっちの世界に来てるんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とミルファとユーノは、ほぼ横一列となって、ミルファの仮住まいとなっているアパートを目指して、夜の街を進軍していた。

 

それというのも、家で話すにはまた何時、あの二人が来襲するか分からず、落ち着いて話をする事が出来ないという、満場一致の意見を採用した為だ。

 

特に、ユーノは必死に早くこの家から離れようと提案していた……一応は、俺の家でもあるのだけれどな。

 

失礼なという憤りよりも、ユーノの幼心に妙なトラウマが残らないか。

 

そっちの方が、心配だったりする。

 

「……それで、何でメカ犬はそんな恰好してるんだよ?」

 

軽く溜息を吐きつつ後ろを向き、俺は後ろから以前にも見覚えのある恰好をしたメカ犬に質問を投げ掛ける。

 

『うむ。ちょっと燐子先生に参考資料の収集を頼まれてな』

 

俺の質問に答えたメカ犬の背中には、録画状態で括り付けられたビデオカメラ。

 

そのカメラのレンズは、明らかに俺と、今もアリシアちゃんの学生服に身を包んだユーノにピントが合わされている。

 

例の民族衣装は今もアリシアちゃんに奪取されたままなので、出かける前に、俺の服を貸そうかと勧めてみたのだが、断られたという経緯がある上に、そのまま外を歩くユーノは顔を茹ダコの様にして恥ずかしがりながら、俺の片腕を掴み、少しでも人に見られる面積を少なくしようと努力をしている姿に違和感を感じていたのだが、どうやら色々と燐子さんが先手を打っていたらしい。

 

 

「だ、だって勝手に着替えたら、今度は水着の撮影会をするって言うんだよ! 僕、男の子なのに……女の子の水着でそんなのしたくないよ!」

 

「何だか、その……色々とごめん」

 

俺が謝っても意味の無い事かも知れないのだが、あまりにも悲痛なユーノの主張に、俺は自分の母の友人と妹が仕出かした所業に対して、代わりに謝罪せすにはいられなかった。

 

せめて今が夜であり、大通りでも人の行き来が少ないというのが、ユーノにとっては不幸中の幸いだろうか。

 

というか、改めて今の状況を冷静に分析してみると、ミルファは一応は実年齢でも十代後半で社会人であり、俺もこの近辺の警察の人とはコネがあるので、心配は無いのだが、傍から見れば小学生の女子二人と男の子一人が、背中にカメラを背負ったフルメタル犬を連れて夜の街を徘徊しているという構図をしているので、いつ補導されても不思議じゃないな……。

 

そんな事を脳内で考えながら、参考資料の収集という役目と共に、体の良い監視役であるカメラフォルムメカ犬を引き連れて、目的地を目指す俺達だったが、無事に辿り着く前に、大きな問題が発生してしまう。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』

 

タッチノートから響く、警報音。

 

「こんな時にホルダー反応かよ!?」

 

『反応した場所も近いぞマスター!』

 

俺はメカ犬の背中のビデオカメラを急いで引き剥がして、メカ犬と共に反応のあった場所へと走り出す。

 

「待って! 私も行くわよ!」

 

「ぼ、僕も!」

 

俺達を追って、ミルファとユーノも走り出す。

 

メカ犬の言っていた通り、反応のあった場所は、俺達が居た道からそんなに離れてはいなかった。

 

静まり返った夜の公園。

 

ホルダーの反応は、確かにこの場所だとタッチノートは示していた。

 

「この場所で合ってる筈だよな……」

 

『油断するなマスター。こんな夜の人気の無い場所にホルダーとは、偶然では無いかも知れないぞ』

 

「それってもしかして」

 

メカ犬の言っている事が正しいとするならば、そんな事を実行に移す者は、必然的に限られてくる。

 

「よう! こんな遅くにご苦労さん」

 

夜の公園に聞こえる、ノリの軽い挨拶。

 

声のした方に振り向けば、其処には夕方にも会った良く知っている一人の男性の姿。

 

「……やっぱり鳥羽さんですか」

 

俺の予想通り、声の正体は鳥羽さんだった。

 

「一日に二回も悪いが、森沢教授に頼まれたんでな。嫌でも相手をしてもらうぜ」

 

そう言って、鳥羽さんはこれ以上の言葉はいらないとばかりに、ベルトを腰に巻きつけ、カードケースを翳す。

 

「問答無用って事ですか……メカ犬!」

 

『うむ!』

 

俺の呼び掛けに隣に居たメカ犬が力強く頷く。

 

『バックルモード』

 

タッチノートを操作する事によって、メカ犬はベルトに変形して俺の腹部へと巻きつき、俺は手に持ったタッチノートを片手に構える。

 

「「変身!」」

 

俺と鳥羽さんはほぼ同時に、力ある言葉を紡ぎ、其々の手に持ったタッチノートとカードケースをベルトの中央に差し込む。

 

『アップロード』

 

『アクセスリンク』

 

ベルトから響く音声と共に、俺の全身が光に包まれ、鳥羽さんの身体は、浮かび上がった緑色に光る紋章と重なり、戦う戦士へと互いにその姿を変える。

 

シードに変身した俺と、アクセスに変身した鳥羽さん。

 

静寂はほんの一瞬。

 

俺達は、勢い良く地面を蹴り、互いの距離を縮めて拳を交差させる。

 

振るわれるアクセスの剛腕を上体を逸らして避けて、俺はそのまま拳を叩き込む。

 

本来は顔を狙った俺の拳は、アクセスが繰り出した拳とは逆の手によって、強引に弾かれる。

 

互いに出した先手は、不発に終わった。

 

だけど、これは始まりをい告げる挨拶に過ぎない。

 

それに格闘戦のエキスパートである鳥羽さんに、俺の拳が早々に当たる等という、甘い考えは最初からしていない、その考えは鳥羽さんだって分かっているだろう。

 

一旦後ろにバックステップをした俺の顔面スレスレを、アクセスの回し蹴りが通過していく。

 

俺は、その一瞬の隙を逃すまいと、再び接近するが、アクセスは更に身体の軸を回転させて裏拳を放つ。

 

だが、その攻撃は俺も事前に予測していた。

 

「はあっ!」

 

俺は再び繰り出そうと構えていた拳を脇に寄せて、そのままアクセスの裏拳による一撃をガードする事に成功する。

 

「やっぱりやるねぇ~。戦いはこうじゃなくちゃな!」

 

心の底から楽しそうにアクセスはそう言うと、間髪入れず、更に打撃を主体とした連続攻撃を繰り出す。

 

『マスター。ホルダー反応があった事から、敵がアクセスだけとは考え辛い。気を抜くな!』

 

アクセスと戦いながら、ベルトからメカ犬の注意の声が響く。

 

メカ犬に言われるまでも無く、ホルダー反応がした上に、アクセスがこの場に来ていたという時点で、これは俺を誘き出す為に仕組まれた罠だったのだと見て、まず間違い無いだろう。

 

それはつまり、この公園の何処かに伏兵が潜んでいるという事を意味している。

 

「ミルファ! ユーノ! たぶん近くにホルダーが居る筈だ!」

 

「余所見してる暇は無いぜ!」

 

俺はミルファ達に注意を呼び掛けるが、アクセスの猛攻を抑えるのに手一杯で、それ以上の余裕は持てそうにない。

 

「あら、アターシの相手はこのリトルレディ達なのかしらん?」

 

アクセスと戦っているその最中、やけに野太い声でお姉言葉という、やけに既視感を覚える口調で、公園の茂みの中から、異形の存在がその姿を現す。

 

異形は、パステルカラーな色合いの表皮の布を、全身に巻き付けた筋骨隆々とした肉体美と、薄化粧を施されたドクロ顔にベレー帽を被った、なにやら凄い見た目のホルダーだった。

 

「あら? ただの女の子だと思って舐めない方が良いわよ」

 

そんなホルダーに対して、強気で応対するミルファ。

 

「何とか時間を稼いでくれ! なるべく直ぐに加勢に入るから!」

 

俺はミルファに向かって叫ぶ。

 

アクセスを簡単に戦闘不能に出来るとは考えていないが、何とか隙を突いて分身体を出せれば、こっちの時間を稼ぐ事も可能な筈だ。

 

今のアクセスの猛攻に対して攻防を繰り返している現状では、フォルムチェンジをする暇すらないが、チャンスきっとある。

 

それにミルファだって戦えない訳じゃないのだ。

 

ただ、暴走プログラムに対して、魔法による直接攻撃は、無効化されてしまい、ほぼ無力だと、以前にホルダーと直接戦った際にミルファが言っていたので、どっちにしても急ぐ必要がある。

 

「行くわよプリズム! セットアップ!」

 

『任せるのじゃ!』

 

ミルファの声に応えて、彼女のデバイスである普段はブレスレット状態となっているプリズムが光を放ち、ミルファの身を包む衣装に大きな変化を引き起こす。

 

普段から着ているタイトなスカートの茶系スーツから、鮮やかな青いチャイナドレスに変わり、ミルファ自身の背丈程もある、大きな杖を手にした。

 

その姿は、相変わらず何処から見ても魔法少女だ。

 

「そう簡単にはやられたりしないんだからね!」

 

『闇雲に突っ込んでも、魔法そのものが効かんのじゃ。無茶するでないぞい』

 

「私だって考えてるわよ! 純が加勢に来るまで、上手く引っ掻き回してやるわ!」

 

「サポートは僕に任せて!」

 

戦闘モードになってホルダーに突っ込むミルファに、ユーノが両手を前に突き出して宣言してから、以前に聞いたのと同じ呪文の詠唱を口にし、ホルダーの足下には淡い光を放つ魔法陣が浮かび上がった。


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