魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
ですが、真面目な戦いが続いた反動か、主人公がちょっと壊れ気味だったりしますのは、ご容赦くださいませ。
それとは別に、活動報告で、ライダー戦記編の終了記念の読者様参加企画もご案内していますので、宜しかったら、振るってご参加ください。
それでは、今回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
「これで準備はOKだな!」
皆がパーティーに興じて暫くしてから、俺は両手に抱えた大量のサイン色紙を、空いているテーブルの奥に置き一息ついた。
ディアスとの世界を賭けた激しい戦いも終わり、翠屋に皆さんを招待してささやかながらも、祝勝会を開いたのには、純粋に皆で楽しみたいという願いとは別に、もう一つ……俺にとって大きな計画があった為だ!
『マスターよ』
「うん? どうした、メカ犬」
『なぜ、マスターは大量のサイン色紙を持ってきたのだ?』
「……ふふふ。流石に戦ってる時に、その場でサインを要求出来る空気じゃ無かったからな。こうして改めて、集まる場を設けて、一気に収穫してしまおうと考えた訳さ!」
『良く分からんが、今のマスターにはあまり近付きたくないぞ』
折角これから楽しい事が始まるというのに、自分から話し掛けておいて、メカ犬は失礼な捨て台詞と共に、足早にパーティー会場である翠屋のホールへと消えてしまった。
……まあ良いだろう。
これより俺は、オペレーション、サインください! 平成ライダー編をスタートさせる!
〇津上 翔一の場合
「え? 俺のサイン?」
「はい! ぜひ記念に書いて欲しいんです!」
津上さんは、俺の要求に、困惑した表情を見せる。
少し前まで天道さんと一緒に、翠屋の調理場で今回のパーティーで食べる料理を作っていた津上さんだったが、今は他の皆と一緒に、料理やお菓子を食べつつ、パーティーを楽しんでいた。
そこにいきなり、俺がサインをおねだりしたのだから、そりゃあ驚きもするだろう。
「ま、まあ、俺なんかのサインで良ければ……」
「ありがとう御座います!」
苦笑いを浮かべながらではあったけれど、津上さんは快く俺の渡したサイン色紙にサインをしてくれた。
取り敢えず、これで一人目のサインをゲットだ!
だが、津上さんはその優しい性格から考えて、サインを書いてくれるのは、当然だと言える。
まだまだ、ここから個性豊かな平成ライダー達が後に控えている。本当の戦いは、これからだ!
〇城戸 真司の場合
城戸さんはお世話焼きなところがあり、今もパーティーの中で、なのはちゃん達に料理を小皿に取り分けてあげたり等、良いお兄さんをしていた。
正直に言えば、城戸さんも頼めばサインを書いてくれるのは間違い無い。
だけど、城戸さんは平成を代表する個性的なライダーの中ではかなり社交的な人であり、一人になる瞬間が中々に訪れず、サインを要求するチャンスを作るのが難しいのだ。
しかし、こんな事で諦めてはライダーファンの名が廃る。
「城戸さん! もうすぐテーブルのお菓子が無くなりそうなんで、奥の棚から補充して来たいんですけども、手伝って貰って良いですか?」
出来るだけ子供っぽく振る舞い、俺は城戸さんを誘い出す。
「ああ、良いぜ!」
「どうもありがとう御座います。 それじゃあ、一緒に来てください」
予想通り、城戸さんは二つ返事で頷き、俺の後に着いて来る。
……計画通り!
俺はこうして、一人となった城戸さんにサインを要求し、無事にゲットする事が出来た。
〇乾 巧の場合
さて、次に狙うはタっくんこと、乾さんなのだが、今度は城戸さんと逆の意味で難しい相手だ。
ちょっと人見知りなところがある乾さんは、皆と少し離れた場所で、一人でポツンと座り、料理を黙々と食べていた。
なので、サインを要求するのは簡単なのだが、普通にそうすると断られてしまう可能性も高い。
それならば、まずは乾さんの警戒心を解く事から始めるのが定石だろう。
「乾さん」
「……ん?」
俺はある物を手にして、乾さんへと接触を試みる。
案の定、乾さんは俺に対して、怪訝な視線を向けるが、本番はここからだ。
「良かったらこれどうぞ」
そう笑顔で言いつつ、俺はマグカップに入ったコーヒーを差し出した。
「……」
差し出されたコーヒーを前にして、無言で固まる乾さん。
まだテーブルの上には食べかけの料理が、まだ大量にありすぐ近くには、中身が空になったコップ。
つまり乾さんは、タイミング的に飲み物を欲している可能性が高い。
ならば、どうしてこの様な反応を返すのか。
それも簡単に説明出来る。
乾さんは、極度に警戒しているのだ。
別に俺に対してという訳では無く、俺の持って来たコーヒーに対して。
しかしそえすらも、計算の内だ。
「あ、すいません。俺ってばつい癖で温めに淹れてしまったんですけど、食べてる時に熱い飲み物って苦手で……やっぱり熱い方が良かったですかね?」
出来るだけ、笑顔と申し訳無さをプラスして、俺は乾さんに言う。
「……いや、折角だから貰うぜ。ちょうど飲み物が欲しかったとこだしな」
俺の言葉を聞き、乾さんは警戒を解いて、俺の手からコーヒーを受け取ってくれた。
乾さんは平成ライダーファンであれば、多くの人が知っている猫舌さんである。
その特性を逆に利用して、俺への警戒心をコーヒーに置き換えさせて、それを俺が解決する事で、個人に対しての警戒を薄くさせようと考えたのだ。
この作戦は、どうやら上手く行ったらしい。
俺は内心で、計画が上手く行った事を笑いながら、あくまでも純真な少年の笑顔で、サイン色紙を取り出す。
「あの、それで……良かったらサインを書いて貰っても良いでしょうか!」
「お、おう。それくらいで良いなら、別に構わないぜ」
こうして、俺は乾さんのサインをゲットする事に成功した。
〇剣崎 一真の場合
さて、お次のターゲットは、剣崎さんな訳だが、この人もまた一筋縄では無い相手だと言える。
それと言うのも、劇中での快活なイメージとは若干異なり、今日のパーティーに来てくれた剣崎さんは、何処か背中に哀愁を漂わせているからだ。
どうも、見た感じだと、剣崎さんはテレビでの最終話の後、二人目のジョーカーとなって、一人旅に出た状態らしく、こうした人の集まりに参加するのは、久し振りの様なのだ。
ディアスとの戦いで、ブレイドに変身した事から、一度は仲間の皆と再会はしているのだろうけれど、どういった関係を続けているのかは定かでは無い。
しかし、それはそれ! サインはサインだ!
ここは妙な小細工は抜きにして、正々堂々と立ち向かう他に、手段は無い。
「剣崎さん! ちゃんと食べてますか? 良かったらこれもどうぞ」
丁度、剣崎さんの座る席のテーブルの料理が尽き掛けていたので、小皿に料理を盛り付けて、俺は剣崎さんへと話し掛ける。
「ん? ああ、サンキューな」
もしかしたら今の剣崎さんが相手だと、断られてしまうかも知れないと、若干ながら不安ではあったけれど、思ったよりも友好的な対応なので、安心した。
なので、俺はもう少しだけ、剣崎さんとの距離を近付けてみる事にする。
「今日は楽しんでくれてますか?」
「……そうだな、何だか昔を思い出すよ。こんな風に、周りが騒がしいっていうのは……今の俺にはもう……」
何処か遠くを見る様な瞳をする剣崎さん。
きっと、彼の心の中には、今も大切な仲間達との思い出が息づいている。
だからこそ、その仲間達の為に、剣崎さんは襲い来る孤独とも戦い続けて来たのだろう。
「剣崎さんは、何も失ってはいないと……俺は思います。何が正しかったのかなんて、誰にも答えられないですけど、少なくとも剣崎さんは、自分の決断に後悔はしていないんですよね?」
「……ああ、俺は自分の出来る事をして、今も戦い続けてる。それで守れたものがあるんだ。後悔なんてしてないさ」
「それじゃあですね。俺にサインをください」
「は?」
流石に先程の文脈から、俺にサインを要求されるとは、予想していなかったらしく、剣崎さんの目が点になる。
「俺は絶対に剣崎さんと一緒に戦った事を忘れません。でも絆って言うのは大切ですけど、目には見えないですから、せめて形として残る物があっても良いかなって思ったんですけど……駄目ですか?」
「はは、良いぜ。その代わり、俺にも……えっと」
「板橋です」
「そう、板橋のサインを書いて、俺にくれよ」
「ええ、喜んで!」
こうして俺と剣崎さんは、互いにサインを書いて、交換した。
……まさか、俺がサインを書く事になるとは思わなかったが、兎にも角にも、剣崎さんのサインをゲット!
〇ヒビキさんの場合
少し難敵が続いたミッションだったが、今度は速攻で仕掛けさせてもらう!
「ちょっと良いですか?」
ヒビキさんが一人となった瞬間を狙い、俺は笑顔で話し掛ける」
「どうした? 少年」
「実は俺もこれからの戦いに備えて、鍛えていこうと思っているんですけど、ヒビキさんは普段、どんな特訓をしてるんですか? 参考にしたいんで、ちょっとメニュー表を書いて貰っても良いですかね」
「え、あ、ああ」
俺は有無を言わせず、ヒビキさんに紙とペンを差し出す。
「あ! それと、このサイン色紙にはサインをお願いしますね」
メニュー表を書き終えたのを見計らい、俺はヒビキさんに色紙を手渡した。
「おう、え、う、ううん?」
戸惑うヒビキさんではあるが、そのままサインを書いて貰えたので、俺は素早くサインと特訓メニューを回収して、この場を離脱する。
「どうもありがとう御座いましたあああああ!」
「……何だったんだ?」
後ろからヒビキさんの声が聞こえた気がするけれど、何はともあれ、これでヒビキさんのサインはゲット!
急いで次に向かうとしようか。
〇天道 総司の場合
天道さんの場合は、頭を捻る必要は全く無い。
「お願いします! これにサインをください!」
直球で言うのが一番だという訳で、俺は調理場で鯖の味噌煮を、追加で作っている天道さんに、頭を下げてサインをくださいと頼み込む。
「……ほぉ、子供にしては中々に見所があるな」
天道さんは、味噌煮の味見をしつつ、俺に視線を向ける。
その瞳からは、揺るがない絶対の自信が見えた。
「良いだろう 一生の宝にするのがいい!」
「あ、ありがとう御座います」
いや……あの手この手でサインを集めている俺が言うのもあれだけれど、天道さん……。
「お婆ちゃんがが言っていた……」
目的のサインはゲットしたので、俺は天道さんがおばあちゃんの名言録を発動させると共に、調理場から即時撤退する。
身代わりに、なのはちゃん達が来た事で、棚の影等に潜んでいたメカーズの中から、近くに居たメカ鳥を置いて来たので、問題は無い筈だ!
〇紅 渡の場合
さて、今度のターゲットは紅さんな訳だが、この人は、乾さんとは別のベクトルで人見知りが激しいお人だ。
当時の番組の中で、後半は改善された……というよりも、そんな余裕すら無かったという方が正しいかも知れないが、前半は特に人との係わり方が極端で、まともに話をするのも困難と言える……。
そんな相手に、ただ話し掛けるならまだしも、出会い頭にサインを要求するのは、些かハードルが高い。
だが、俺には秘策がある!
本人が駄目ならば、本人と仲の良い人に間接的にお願いしてみれば良いのだ!
「そんな訳で、お願いします!」
「別に良いぜ! それくらい朝飯前だ!」
俺の相棒と言えば、メカ犬と言う様に、紅さんにも、着かず離れずな相棒が存在している。
その相棒こそが、俺が頭を下げたお人でもあるキバットさんだ。
「お~い、渡! あの男の子がお前のファンなんだってよ。 折角だからサインを書いてやれよ~」
キバットさんは俺の頼みを、二つ返事で了承すると同時に、バサバサと飛んで行き、紅さんにサインを書く様にと進言してくれた。
「え!? ちょっとキバット、僕のファンってどういう事なの?」
「あんまりファンを待たすもんじゃねえぜ! ほら、さっさと書いた! 書いた!」
「あ、え、う、うん!?」
流石は付き合いが長いだけはある。
キバットさんは、紅さんに思考をする暇も与えずに、瞬く間にサインを書かせてしまった。
まあ、何はともあれ、これで紅さんのサインもゲット!
〇オペレーションは終わらない
これにて、まだ未入手だったサインは、粗方集め終えたので、俺はとても満足だ。
ディアスとの戦いの間の時間旅行で知り合った人達とのサインは、既に入手済。
火野さんとは、ファウンデェーション社で会った時に、既にサインを貰っている。
そして、何故かサインの他にも、パンツを一枚貰ったのは、良い思い出だ。
弦太郎さんの時も、月のラビットハッチで、要求したら、喜んで書いてくれた上に、ディアスとの直接対決の後で、他のライダー部の皆さんが書いてくれたという写真入りの寄せ書きまで貰ってしまった。
その中に一人だけ、見知った顔である如月さんも居たのだが、とても良い笑顔をで写真に写っていた……きっとあの笑顔が出来れば、すぐに学校でも友達が出来る事だろう。
晴人さんに関しては、既にサインを要求した相手である、士さんも居たので、何の遠慮も無く、真面目にディアスとの戦いを説明した直後に、サインをねだったら、魔法で出してくれた。
何でも、昔はプロのサッカー選手を目指していたとかで、当時はサインの練習とかをしていたらしい……。
そして紘汰さんからのサインも、ヘルヘイムの森の長い探索の途中で話題提供の一環として、既にゲットしてある。
これだけのサインを手に入れて、ライダーファン冥利に尽きるというものだが、俺の野望はまだ終わりはしない!
「さて、お次はこれだ!」
集めたサインを丁寧に使っていない奥のテーブルへと置き、今度はデジカメを片手に、俺は新たなオペレーションを開始する。
次のオペレーションは、平成の歴代ライダーとツーショット写真集だ!
「あ、五代さん! 一緒に写真をですね~」
俺は、はやてちゃんと談笑する五代さんに狙いを定めて、新たな戦いへと赴く。
まだまだ、楽しいパーティーは続くのである。
完