魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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長々と続いてきました戦記編も、これで何とか完結です。
気付いたらこのライダー戦記編の文章量だけで、ライトノベル一冊分に達していて戦々恐々だったりしますが……。
と言いましても、本編はまだ終わらないので、これからも楽しんでいただけたら嬉しいです。
ではでは。
ちなみにライダー戦記編の完結記念イベントとして、一つの企画を立ち上げようかと思っております。
詳細は近々アップすると思います、活動報告をご覧くださいませ。


ライダー戦記編 エピローグ

俺と鎧武の放った一撃が、遂にそれまでギリギリのところで踏ん張っていたディアスを、吹き飛ばす事に成功した。

 

万感の想いを込めた俺達の攻撃だが……それでもディアスを倒せたのかまでは分からない。

 

もしかしたら次の瞬間には、何事も無かったかの様に、立ち上がって来る可能性は、充分にある。

 

俺はそれを確かめる意味もあり、ゆっくりと倒れたディアスに近付いて行く。

 

「……ふ、フハハハハ!」

 

突然に倒れていたディアスが、高笑いを上げたので、近付いていた俺を含め、この場に居る全ライダーも身構えるが、ディアスが起き上がって来る様子は無い。

 

やがて、笑い疲れたのか、静かになると、そのままディアスの姿は、一瞬だけ光に包まれて、戦い始める前と同じ、人の姿に戻ってしまった。

 

「完敗だ……君達の勝ちだよ。仮面ライダー」

 

ディアスは、倒れた状態のまま何処か哀愁の漂う笑顔を浮かべながら、静かに言葉を紡ぐ。

 

これは、油断をさせる為の罠なのだろうかとも考えたが、どうやら本当に身動きが出来ない様なので、俺は更にディアスに近付いていく。

 

俺は、どうしても彼に確かめたい事があった為だ。

 

「ディアス。貴方に一つ聞きたい事がある」

 

「ん? 勝者が敗者に何の質問があるというんだい?」

 

自ら負けを認めたからなのか、既にディアスからは一切の敵意を感じない。

 

本当にさっきまで、お互いに命を賭けて戦っていた相手なのかと思えてしまう程だった。

 

「どうして最初から本気で戦おうとしなかったんだ? それに、もし本当に世界を滅ぼす気でこの計画を実行していたなら……」

 

ディアスの行動には、幾つも腑に落ちない点があった。

 

実際に目的である果実を手に入れてから、それは如実となっていたと、俺は思う。

 

暇つぶしだと言っていたが、それだけの理由なのだろうか?

 

それに、ディアスの力があれば、さっきの戦いの最中でも、約束を破って果実を使う事だって出来ただろう。

 

でも結果として、ディアスは最後まで、果実の力に頼ろうとはしなかった。

 

もしも俺の考えが正しいとしたら、ディアスは……。

 

「ディアスは、最初からこうなる事を……」

 

「既に勝負は決した。これ以上語る事は無いさ」

 

俺が先の台詞を口にするよりも先に、ディアスが言葉を被せる。

 

「今ある全ての世界が憎いというのは、今も変わらない。だがこの全ての世界は、俺の創造主が愛し、全てを投げ出して守った世界でもある……そしてこの世界にまだ、君の様な存在が居るのならば、まだ世界には存在する価値があるのかも知れないな」

 

ディアスの声を黙って聞きながら、俺は先程、口にしようとしていた言葉を、心の中で静かに呟く。

 

もしかしたらディアスは、自分を止めて欲しいと思っていたのではないかと。

 

今、存在する全ての世界が憎いというのは、きっとディアスの偽る事の無い真実なのだろう。

 

だけど、それと同時に、先代のディアスが愛したという全ての世界を、消すべきかどうか、心の何処かで迷っていたのかも知れない。

 

「そういえば、まだ勝者への景品を渡していなかったな」

 

「え?」

 

思い出した様に呟いたディアスの声に、俺がふと気を取られると、ディアスは、腕を自身の懐へと伸ばし、光る果実を取り出し、俺に向かって放り投げた。

 

「その果実の力を使えば、覚醒した楔を鎮める事も出来る。そうすれば世界が崩壊する危険性は無くなるだろう」

 

「ディアス……」

 

果実を受け取った直後、ディアスの身体は、淡い光を放ち始める。

 

「……どうやら俺の時間はこれで終わりの様だな。そしてきっと新たなディアスが生まれる。仮面ライダーよ。忘れるな、護りたいと願う意思を……もしも、世界に存在する価値が本当に無くなったその時は、いつか俺とは違うディアスがまた……」

 

ディアスは、俺達にそんな忠告を残して、光の粒子となってこの世界に溶け込んでしまう。

 

こうして、時間と世界を超えた長い戦いは、終わりを告げ、俺はあるべき自分の日常を取り戻した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そろそろ時間だよな」

 

俺は今、翠屋のドアを前に、ソワソワとしながら、立ち尽くしていた。

 

今日は士郎さん達に無理を言って、定休日の翠屋を貸切にさせて貰ったので、特に他人の目が気になるという訳では無いのだが、きっと他の人が見たら、挙動不審に見えるだろうと自覚してしまうが、それでも落ち着かないのだからしょうがない。

 

『少し落ち着いたらどうだ? マスター』

 

予想通り、すぐ近くに居たメカ犬に注意されるが、これから起こる事に対して落ち着けというのは、俺にとっては無理な話だと理解して欲しいものだ。

 

「どうして純君は、さっきからそんなにソワソワしてるの?」

 

「は、ハハハ……」

 

学校帰りに着いて来てしまった、なのはちゃんが首を傾げるが、流石に詳しく説明する訳にもいかないので、俺は何とか苦笑いで誤魔化してみる。

 

本当なら、今日ここに来ているのは、俺とメカ犬と他のメカーズだけだった筈なのだが、士郎さん軽油で、俺が定休日の翠屋を借りるという情報をリークしたお隣の幼馴染さんは、放課後になると同時に、ここまで着いて来てしまったのだ。

 

他のお友達も複数引き連れて……。

 

「純お兄ちゃん! 妹の私に隠し事は酷いよ!」

 

その一人である、突如として後ろから抱き付いて来たアリシアちゃんに、猛抗議されるのを皮切りに、この場に着いて来た全員が、俺に話し掛けて来た。

 

「大量のお菓子にジュースと……料理の材料と、お酒まであるね」

 

テーブルやキッチンを見て、すずかちゃんが疑問を口にする。

 

「これってどう見ても、パーティーの準備って感じだけど、何で料理はしないのよ?」

 

続いてアリサちゃんが一つの予測を立てて、新たな疑問を口にした。

 

正直に返せば、これからある人達を招いて、ちょっとしたパーティーをするのは確かなのだが、料理をしないのには、大きな理由がある。

 

それはこれから来る招待客の内、の何人かの料理の腕がかなりのものなので、その人達に任せようと考えたからだ。

 

だからその間の場を繋ぐ事も考えて、相当な量のお菓子も、既に準備してある。

 

「なんじゃ? パーティー会場なら我に言ってくれれば、シルバーライトの城の会場を貸してやったのじゃぞ」

 

続いてエミリーちゃんが、お姫様らしい、かなり壮大な提案をしてくるが、いくら何でもそれは恐縮してしまうと思う。

 

いや、これから来る内の何人かは、そんなお城に御呼ばれしても平気な顔をしているどころか、当然だと返してきそうな気さえするけれど。

 

「それで、純君は誰を呼んだんや?」

 

……いや、もう何で学校に行っていない筈のはやてちゃんまで一緒に居るのかとか、突っ込む気力も俺には無い。

 

『うむ。マスター、どうやら皆が到着したようだぞ』

 

「ほ、本当か!?」

 

メカ犬の声に反応して、翠屋のドアに視線を向けると、確かに複数の人影が見える。

 

これから始まるのは、共に激しい戦いを駆け抜けた戦友達との、小さな日常の一コマ。

 

俺は思うのだ。

 

世界は残酷で、時に慈悲すらも与えられず、悲しみを、怒りを増やし続け、終わらない負の連鎖が続いて行くのだと。

 

でも、それが全てじゃなくて、暖かな陽だまりの様な時も、慈愛に満ちた奇跡だって、確かにこの世界には存在しているという事を。

 

だから俺は、これからも護り続けるだろう。

 

この世界と、大切な人達を……。

 

それが俺に出来る、ディアスが言った、世界を護る事だと信じているから。

 

「皆さん! 待ってましたよ!」

 

ドアが開けられると同時に、俺は皆を笑顔で迎え入れた。

 

今日の海鳴は……全ての世界は、仮面ライダーが居る限り、平和である!

 

 

 

 

 

 

 


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