魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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以前にディエンドの活躍はこれで終わりと感想の返信で書いてしまいましたが……実はもう一回だけ見せ場がありました。

そんなわけで今回も楽しんでいただけたら嬉しいです。


ライダー戦記編22

「つまり海東さんは、最初からディアスの狙いに気付いていたって事ですか!?」

 

「全部って訳じゃないけどね。色々と回りくどいやり方をしていたから、最初から変だとは思っていたよ」

 

ダーク鎧武の攻撃を二人で避け、時に払いつつ、俺は何のつもりか加勢してくれるディエンドと会話を続ける。

 

「それじゃあ、海東さんが魔法石を狙ったのも……」

 

「まあ、少なくともこの世界の楔をディアスが狙っているって事は分かっていたから、僕が手に入れておけば、そう簡単には利用出来ないだろうと考えていたんだけど」

 

「なら、最初からちゃんと説明してくださいよ」

 

何であの場で、問答無用とばかりに襲い掛かって来たんだこの人は?

 

俺としても、既に何度か襲われているという事もあるし今更なのだが、前世の頃にテレビでディケイドを視ていた時から、もう少し戦う前に話し合う余地があるだろうと何度、画面越しに突っ込みを入れた事だろうか。

 

もしかしたら、出会い頭に襲い掛かる事が多いのは、この人の生まれながらの習性なのかも知れない。

 

「過ぎた事を気にしても仕方が無いさ。それよりもこれからどうするかが、僕は大切だと思うけど」

 

明らかに目線を背けながら言ってるけど、それで誤魔化せると、この人は本気で思っているのだろうか……。

 

まあ、ここで過ぎた事を気にしても仕方が無いのも事実であり、そんなに余裕も無い。

 

「……今はそれで良いですけどね……あれ? でも海東さんもその理由で魔法石を手に入れようとしていたんなら、いっその事、この場であの魔法石を壊しさえすれば、急場を凌ぐ位は出来るんじゃ?」

 

確かディアスも、楔を全て壊せば、世界は崩壊すると言ってはいたが、それは逆に考えると、一つ位ならば壊しても世界が崩壊するなんて事は無いとも捉える事が出来る。

 

如月さんの様な、人間や場所が楔というならば、そんな事を実行に移すなんて真似は、しようとも思えないが、ただの物であれば、そんなに抵抗は無い。

 

「それは止めておいた方が良いね。全ての世界が崩壊する事は無いだろうけど、覚醒した楔に下手な事をすれば、一つの世界くらいはどうにかなるかも知れないよ。仮にそのリスクを負って、多少の時間が稼げたとしても、違う世界の楔を覚醒させてしまえば、それで済むだろうし、あまり得策だとは言えないね」

 

咄嗟に考えたにしては、良い案なのではと思ったのだが、その作戦はディエンドに即座に否定されてしまった。

 

確かに、僅かなリターンに対してハイリスクだし、この世界の人達を犠牲に出来る筈も無い。

 

「でも、このまま黙ってここで戦い続けていても埒が明かないですよ。何か良い手は無いんですか?」

 

「最初に僕が言っただろう。少年君は残りの体力を温存しておくべきだって。この場に居る誰かがディアスを追って、力尽くで止めれば全部解決さ! シンプルで分かり易いと僕は思うけど」

 

「ディアスを追うって……海東さんはディアスの居場所に心当たりがあるんですか!?」

 

「まあね。少年君、さっきから、あのジッパーの中から、インベスっていう怪物が出て来てるのは見えてるだろうけど、あのジッパーの先が何処に繋がっているか分かかい?」

 

そう言った、ディエンドの声に頷きつつ、俺は今も怪物、改めディエンドが言うにはインベスが雨の様に降り注ぐ更にその上の、空間の上に直接絵を描いた様に出現したジッパーを見る。

 

「あれはクラックと呼ばれる、異なる世界を繋ぐ不安定な出入り口だ。あの先はヘルヘイムの森と呼ばれる場所に繋がってる。そしてディアスも、その森のある場所に居る筈さ」

 

「それって本当なんですか?」

 

ご都合主義とばかりに、打開策を即時に提案してくれるのは有難いのだが、ここまで準備が良いと、何だか胡散臭くすら思えてきてしまう。

 

「当然さ。僕と少年君の仲だろう?」

 

「それだと俺、素直に信じられなくなるんですけど……」

 

分かっている限り、俺達の関係は加害者と被害者の関係というのが、一番しっくりとくるのではないかと。

 

「そう冷たくしないでくれたまえよ。ここは僕に任せて、少年君はディアスの居る場所へ行くと良い。僕は君がディアスの計画を阻止してくれると信じているよ!」

 

「……そうですか」

 

ワザとらしいぐらいに良い台詞を言われて、俺は気が付いてしまった。

 

この人は、別に嘘を言っているわけじゃない。

 

ただ単に、俺に一番の面倒事を押し付けて、エスケープするつもりなんだって。

 

……だけど、例えそうだとしても、ディエンドの案は、この場で俺達が実行出来る、一番の良案だと言えるのも、紛れもない事実である。

 

「さあ、迷っている時間は無いよ、少年君! 急がないと本当に世界が崩壊してしまうかもしれない」

 

「……分かりました。その言葉、今だけは信じますからね!」

 

確かに迷っているのは時間の無駄だ。

 

だから俺は、ディエンドを……海東さんの言葉を信じると決めた。

 

「そういう事なら、俺も協力するぞ。純、海東」

 

俺とディエンドの会話を聞いていたらしく、ソードモードのライドブッカーを振るいながら、ディケイドが声を掛けながら近づいて来る。

 

「じゃあ一緒に行こうか、士」

 

「そっちこそ遅れるなよ、海東」

 

ディエンドのに、肩を叩かれつつ、ディケイドは軽口を返しながら、マゼンタと黒を基調とした中央に大き目なディスプレイがある、ディケイドのパワーアップツールであるケータッチを取り出していた。

 

だけど、それだけじゃ無い。

 

隣に並ぶディエンドも似て非なる物、マゼンタの部分がシアン色となっているケータッチを取り出していたのである。

 

『クウガ』

 

『アギト』

 

『龍騎』

 

『ファイズ』

 

『ブレイド』

 

『響鬼』

 

『カブト』

 

『電王』

 

『キバ』

 

ディケイドがケータッチを操作する中で、ディエンドも同じく、色違いのケータッチを操作していく。

 

『G4』

 

『リュウガ』

 

『オーガ』

 

『グレイブ』

 

『歌舞鬼』

 

『コーカサス』

 

『アーク』

 

『スカル』

 

そして最後の操作を終えた、ディケイドとディエンドは、ケータッチをベルトの中央へと宛がう。

 

『ファイナルカメンライド……ディケイド!』

 

『ファイナルカメンライド……ディエンド!』

 

ディケイドとディエンドの身体が、瞬間的にモザイクの様な光に包まれ、ボディーの形が変形を果たし、その胸部に歴代のライダー達のカードが並び、更にその額には、ディケイドと、ディエンド自身のカードが展開する。

 

「危ない!」

 

コンプリートフォームとなった二人に対して、俺は注意する様に声を上げた。

 

何故ならば、二人がコンプリートフォームになるとほぼ同時に、ダーク鎧武が、斬り掛かって来たのである。

 

しかし、俺の心配は杞憂だった。

 

振り下ろされようとしていたダーク鎧武の両腕は、その標的となっていた、ディケイドとディエンド自身の腕によって止められたのだ。

 

更に二人は、そのまま抑え付けたダーク鎧武の腕を、外側へと押しやり、無防備になった腹部に向かって、同時に膝蹴りを放つ。

 

「一気に蹴散らすぞ。海東」

 

「任せたまえ」

 

強烈な反撃を受けて後退するダーク鎧武をしりめに、ディケイドとディエンドは、一時的にバックルに装着したケータッチを外してから、ディスプレイを指で操作して、再びベルトへと装着する。

 

『カメンライド……ファイズ・ブラスター』

 

『カメンライド……オーガ』

 

音声が響くと同時に、召喚されたのは、ファイズの最強フォームである赤いボディーカラーが印象的なブラスターフォームのファイズと、先程の戦いで俺とウィザードが協力して倒したオーガ。

 

「あ! 僕も混ぜてよ~」

 

召喚されたファイズとオーガも加わり、四人のライダーが並ぶ中に、更に電王までもが加わる。

 

ディケイドとディエンドが、カードを装填する動きを、ファイズとオーガもなぞり、電王もライダーパスをベルトの中央にセタッチさせた。

 

『ファイナルアタックライド……ファ、ファ、ファ、ファイズ!』

 

『ファイナルアタックライド……オ、オ、オ、オーガ!』

 

『フルチャージ』

 

各々の必殺技を放つ際に流れる音声が響き、ディケイドはファイズの持つファイズブラスターに似せて、ライドブッカーを構え、ディエンドもオーガが持つオーガストランザーと呼ばれる剣を構えるのと同じ動きを、本来であれば銃である筈のディエンドライバーで再現し、電王も紫の光を迸らせながら、上段に構えたガンモードのデンガッシャーを、正面へと持っていく。

 

その直後、ディケイドとファイズが放った閃光が、周囲のインベスを一掃して、光の巨大な剣をディエンドとオーガが振るえば、また別の地帯に居た大量のインベスを薙ぎ払う。

 

更に、電王が放った紫の光球がダーク鎧武に直撃するのだが、ダーク鎧武は電王の攻撃を喰らいながらも、近くのクラックの中へと消えてしまった。

 

「さあ、道は作ったよ。少年君は急いで行きたまえ」

 

召喚されたファイズとオーガの姿が掻き消えると同時にディエンドに呼び掛けられた俺は、返事をする間も惜しみ、感謝の念を送りつつ、全力で駆け出した。

 

先程の連続同時攻撃によって、敵が全滅するとまではいかなかったのだが、それでも俺がクラックへ行くだけならば、何とかなるかも知れないスペースが出来上がったのである。

 

俺は一番近くのクラックを目指して走り出したのは良いのだが、まだ生き残ったインベスが、俺の行く道を遮ろうと襲い掛かってくるが、それでも先程と比べれば、まだ何とかなる数だと言えた。

 

しかし事態は、一気に深刻な状況へと推移していく。

 

『不味いぞマスター! クラックの入り口が閉じ始めた!?』

 

「間に合え!」

 

メカ犬が注意したと同時に、視線をクラックに向けると、空間に出現した時の逆再生を見ているかの様に、ジッパーが閉まっていき、閉じるとクラックそのものが、霞の様に消えてしまう。

 

先程までは、大量にあった筈のクラック、最後にインベスを吐き出すと、次々にその入り口を閉ざしていく。

 

しかもその吐き出されたインベスが、先程の攻撃で生き残った奴等と共に、俺に襲い掛かろうとしてくるのだ。

 

ディケイド達も、何とか俺をサポートしてくれようと、周囲のインベス達を蹴散らしてくれはするのだが、それでも、さっきまで開かれていた筈のスペースを埋めてしまうかのように、新たに投入されたインベスがまだ開いているクラックがある場所に群がる。

 

「純! 早く乗れ!」

 

このままでは間に合わないのではないかと、焦り始めたその時だ。

 

頭上から、ウィザードが俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

見上げれば其処には、メカニカル風貌をした空を飛ぶ西洋風ドラゴンに乗るウィザード。

 

「は、はい!」

 

驚きもしたし、詳しくそのドラゴンについて聞きたい衝動があるのは当然なのだが、今はその時間すらも惜しい。

 

だから俺は短く返事だけをして、勢い良くドラゴンに飛び乗る。

 

俺とウィザードは、ドラゴンに跨り、目の前のインベス達を吹き飛ばしながら、まだヘルヘイムの森へと続くクラックの場所へと辿り着く。

 

だが、そのクラックも既に閉じるまで僅かな時間しか残されていない。

 

最後の抵抗とばかりに、そのクラックの周辺を固めるインベス達。

 

「こいつ等の相手をしてたら、クラックが閉じる!?」

 

『もう、間に合わないか』

 

諦めたくはない。

 

だが非常な現実は、容赦無く俺達に絶望を突き付ける。

 

「まだ諦めるには早いさ。純の事を絶対にあの場所に届けてみせる。だから信じろ! 俺が最後の希望だってな!」

 

しかし、そんな俺とメカ犬の言葉を聞いたウィザードは、諦めるなと鼓舞し、更にドラゴンがその速度を引き上げていく。

 

「はっ!」

 

そしてクラックの頭上に到着すると同時に、ウィザードが新たに指輪を填めながら、ドラゴンから降りて、新たな魔法を発動させる。

 

『バインド』

 

魔方陣の中から現れた大量の鎖が、インベスをその場に縫い付けて動きを塞いでいく。

 

確かにこれならば、戦っている間に、クラックが消えてしまうという心配も無い。

 

「ここは俺が押さえておく! 今の内に行け!」

 

「分かりました。必ずディアスは俺が……俺達が止めてみせます!」

 

俺はウィザードに促されて、同じくドラゴンから飛び降りる、

 

だがこの時、予想外の出来事が起こった。

 

大量のインベスがウィザードの魔法で生み出された鎖によって身動きが出来ない中で、一体だけその縛りが甘かったのか、鎖を通り抜ける様に抜き出して、猛然と俺に向かってきたのである。

 

このインベスの不意打ちだけで、俺が倒されるとまでは言わない。

 

だが、このインベスの相手をしたとしたら、確実にクラックは消えてしまう。

 

しかし、俺の予想は現実とはならなかった。

 

耳に聞こえたのは、一発の銃声。

 

その銃声が耳に響いた直後、俺に襲い掛かろうとしたインベスは、その銃の威力によって、明後日の方向へと吹っ飛んでいく。

 

着地するまでにはまだ時間があった為に、その銃声が聞こえた方向に目を向けると、其処にはディエンドライバーを構えた、ディエンドの姿があった。

 

俺の視線に気付いたのか、ディエンドは俺の方に向けて、ディエンドライバーを持っていない方の手を銃の形に見立てて、狙い撃つ素振りを見せると、一枚のカードをドライバーに装填して、その姿を消してしまう。

 

おそらく、お得意のインビジブルを使って、この場から退散してしまったのだろうと、すぐに想像出来たが、俺は、今も閉まろうしていくクラックの中に飛び込みながら、本人には聞こえていないと分かりつつも、口を開いていた。

 

「ありがとうございます。海東さん」


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