魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
それでは今回も楽しんで頂けたら嬉しいです。
アンダーワールド。
晴人さんの説明によると、其処はゲートと呼ばれる、魔力を持った人の意識が作り出した精神世界なのだという。
そしてその世界は、ゲートの記憶で構築されている。
つまり、もしも晴人さんが言う様に、俺の意識が本当にアンダーワールドに行っていたとしたら、あの時見た光景は、実際に起こった過去の出来事だという事だ。
ただ本来ならば、俺がアンダーワールドへと行ける可能性は、限り無くゼロに等しいらしい。
それと言うのも、通常アンダーワールドに行けるのは、指輪の魔法使いだけで、しかも俺みたいに精神だけが飛ぶのでは無く、現実世界の肉体ごと向かう事になるそうだ。
だからこそ、あの光景が本当に誰かのアンダーグラウンドだったのか、確証が持てない。
もしかしたら、俺が見た光景はただの白昼夢だったのかも知れないが、そうすると晴人さんがネックレスから感じたという魔力にも説明が着かないので、話は振り出しに持ってしまう。
それに個人的に俺が感じた事を述べるならば、あれをただの夢だと断じてしまうには、無理がある程に明確なものだった。
どちらにしても、今の情報だけでは答えを出す事は出来ない。
それならば、この場で何かしら知っていそうな人に意見を聞いてみるのが得策だろう。
「海東さん。このネックレスは何なんですか?」
俺はこのネックレスを、ディアスから奪ってきたと宣言した張本人である、海東さんに質問を投げ掛けてみる。
「ん、その質問をするって事は、少年君もあの景色を見たのかい?」
「……はい」
どうやら、海東さんも既に俺と同じものを先に見ていたらしい。
その上で、こうして落ち着いた態度を維持しているという事は、やはり海東さんがこのネックレスについて、何かを知っている可能性は高いだろう。
「そのネックレスに加工されている石は、ある世界で取れる貴重な鉱石でね。別名で、想い石と呼ばれているそうだ」
「想い石ですか?」
「うん。この石は長く持ち続けた人の思い出を、精神世界で繋ぐ事が出来る特性を持っていてね。空気中の微細な魔力を集める事で、直接この石を手にした人物の意識だけを、一時的に持ち主の精神世界に飛ばす事が出来るんだ」
「じゃあ、俺が見たあの光景は、このネックレスの所有者の記憶って事で……」
最後の言葉を言うのに、俺は少しだけ躊躇うが、まず間違いないだろう。
「そう。あの精神世界は、ディアスの記憶から作り出されたものだ」
俺が濁した部分を、海東さんがはっきりと肯定した。
だからこそ、俺は分からなくなる。
こんな穏やかな記憶を持つ人物が何故、世界を崩壊させよう等と、企むのか。
今までは、ただ世界の危機だという事実を知り、それを止めなくてはならないと、戦い続けて来た。
その意思は、今だって変わりはしない。
でも、それ以外に、俺はあの景色の中で浮かべていた笑顔を見て、どうしてディアスがこんな事をしようとしたのか、知りたいと思った。
「そしてこの想い石には、それ以外にも、もう一つある特性が備わっているんだよ。それはね……」
一度は手にしたお宝だからなのか。
海東さんが饒舌に追加説明をしてきたのだが、俺はそのもう一つの特性を耳にした直後。
俺の、いや、俺達の足元に大量の火花が散った。
『大丈夫か!? マスター!』
「ああ、心配ない。それよりも、他の皆は?」
メカ犬の心配する声に答えつつ、周りを見渡すが、どうやらこの場に居る全員が無事の様だ。
俺は、その事実に安心してから、改めて視線をある一点へと向ける。
其処には、予想通りライオトルーパーの軍団の姿。
先程の火花の原因は、まず奴等のせいとみて、間違い無いだろう。
「さっき以上の大軍で御出ましか」
そう言いながら、士さんが一枚のカードを掲げて、腹部にはディケイドライバーを宛がう。
『ドライバーオン』
晴人さんも既に、自身の腹部へと、ベルトを展開している。
「行くよ! リュウタロス!」
「イェイ!」
そのすぐ横では、良太郎君も、リュウくんに呼び掛けながら、ベルトを巻いていた。
『ワタシ達も行くぞマスター!』
「分かってるさ!」
その流れに乗って、俺もタッチノートを取り出して、メカ犬をベルトに変形させて、腹部へと巻き付けて、これから始まるであろう、激しい戦いへの準備を整える。
「「「「変身!」」」」
駅の停発時に流れるメロディーに酷似した音楽や、ラップ状の歌に俺も含めたベルトから流れる音声が盛大に鳴り響く中、俺達は叫ぶと共に、その姿を戦士の姿へと変えていく。
良太郎君は、リュウくんを憑依させた状態で、紫の装甲を持つ、電王のガンフォームとなり、士さんと晴人さんと俺も、其々に、ディケイドとウィザード、それにシードへと変身を遂げて、ライオトルーパーの大軍の中へと突っ込む。
「倒すけど良いよね? 答えは聞かないけど!」
電王は周りのライオトルーパーの攻撃をダンスを踊るかの様な立ち振る舞いで避けつつ、腰に収めた四つのパーツとなって別れている、デンガッシャーを組み合わせて、ガンモードにして、ブレイクダンスの様に地面を転がりながら、近くに居たライオトルーパー達を撃ち抜いていく。
「さあ、ショータイムだ!」
更にその近くでは、ウィザードが例の如く、小さな魔法陣から銀色の剣を取り出して斬り掛かる。
「はあっ!」
ディケイドも似た様に、ライドブッカーをソードモードにして、迫り来るライオトルーパー達を、斬り伏せていく。
「こんな悪夢はここで終わらせる!」
俺も他の皆に負けずと、徒手空拳でライオトルーパー達を薙ぎ倒して行くが、ここで一つ小さな疑問が浮かび上がる。
どれだけ周りを見ても、コアの本体と思われる敵が居ないのだ。
今までの戦いでは、この規模の集団が出て来た時には、例外無くそれを統率する存在、つまりコアを保有する強力な力を持つ奴が、必ず居たのだがその姿が何処にも見当たらないのである。
以前フォーゼと共に戦った時の、ダークカブトのクロックアップの様に、こっちでは視認出来ない能力を持った敵という可能性も無い訳では無いのだが、そうだとしても動きが無さ過ぎるのは不気味だ。
俺が感じたこの不気味さが、ただの気のせいだったら、どんなに良かった事だろうか。
そんな希望的観測は、間違いだったと、俺は直ぐに気付く事となる。
「……あれは!?」
俺達が戦っている場所から少し離れた場所。
其処で他のライオトルーパーとは、明らかに違う動きをしている、四体の固体が居た。
四体のライオトルーパーは、腹部に巻いている筈のベルトを外しており、その代わりに違うベルトをその手にしている……。
その四つのベルトに、俺は見覚えがあり、ライオトルーパーが出て来る仮面ライダーファイズの特色を考えると、その先の行動は、容易に想像出来た。
本来のライオトルーパーが巻くべきベルトとは違う、ベルトを巻き付けていく、四体のライオトルーパー。
「……まさか」
その行為を見て、俺は急いで四体のライオトルーパーの下へと急ぐが、、目の前に立ち塞がる圧倒的な数の敵のせいで、簡単には近づく事すら出来そうにない。
『『『『コンプリート』』』』
行く手を遮られている間に、耳に届く四つの電子音声。
その音に反応して、周囲のライオトルーパーを薙ぎ倒しながら、音のした方に視線を向けると、例の四本のベルトを装着したライオトルーパーの身体に、新たなフォトンフレームと呼ばれる、光の線が鎧の様に展開されその姿を異なる形へと変えていく。
「やっぱりか!」
俺は光が収まると共に、この場に現れた新たな戦士達に、脅威する。
四人の戦士は、何れも仮面ライダーファイズの劇中及び、映画の中で登場したライダー達だ。
ベルトの装着者となった人物が一部の例外を除き、全て死に至らせた、呪われたベルトと呼ばれていたのは、黄色いエックス状の頭部の間から見える、紫の複眼が印象的な、仮面ライダーカイザ。
そして赤くシャープな二対の鋭角な複眼と、黒を基調としたボディーに対称的な白いラインを走らせるのが仮面ライダーデルタ。
丸い一つ目にも見える複眼と、全体の殆どのボディーが白という、見た目にも特徴的なのは、劇場版でもファイズと激しい戦いを繰り広げた、仮面ライダーサイガ。
最後に王の風格すら漂う黒い鎧を纏った戦士が、仮面ライダーオーガ、劇場版でもファイズの最大の敵とされた強力な力を持ったライダーだ。
性能差や得意な攻撃距離等もあるが、この四人のライダーは、単体の力量で言えばライオトルーパーとは比べ程にもならない実力を持っているのは間違い無い。
今から思えば、仮面ライダーファイズという作品の特色を考えれば、この展開は充分なまでに予測が出来た事だと言える。
ファイズまでの従来のライダーは、一部を除きほぼ変身者が決まっているのが常だった。
一つの作品内で出て来る主人公ライダーではなく、サブライダーに位置するライダーならばまだしも、主役ライダーの変身者が目まぐるしく変わるのは、後にも先にも、ファイズを置いて他に無いだろう。
俺がそんな考察をしている間に、カイザ達がライオトルーパーに混ざって、俺達を強襲する。
「ちっ。また厄介なのを……」
「やけに強いなこいつ等!?」
舌打ちするディケイドと、この戦場への新たな乱入者に驚くウィザード。
やはり、ライオトルーパーの軍団を相手にしつつ、カイザ達とも戦うのは無理があるかも知れない。
「うわっ!?」
戦いの拮抗は、すぐに崩れる。
ライオトルーパーを相手にしながら、立ち回っていた電王が、オーガの攻撃によってバランスを崩されてしまったのだ。
『電王を助けるぞマスター!』
「間に合ええええ!」
バランスを崩した電王に、追撃を仕掛けようとするオーガを止めるべく、俺は駆け出す。
先程は、四体の変身を止める事が出来なかったが、今度は間に合わなかったでは済まされない。
俺はこのまま走っても間に合わないと早々に悟り、近くのライオトルーパーの両肩を掴み、走る勢いのまま、思い切り地を蹴ってライオトルーパーの上で直立に逆立ちをするという、かなりアクロバティックな体勢となる。
だが、それも一瞬の事だった。
重心を前へと傾けて、俺の脚は再び地面へと向かって動き出す。
それと反比例するかの様に、今度は掴んでいたライオトルーパーの足が、地面と別れを告げる。
この勢いのまま、俺はライオトルーパーを一つの投擲武器としてオーガに向かって撃ち出した。
流石にこんな、思い付きの力技で、オーガに有効なダメージを与えられるとは最初から考えては居ないが、それでも電王への追撃を防ぐには、充分な時間を稼ぐ事に成功したのは事実である。
何とか電王はこの短い時間の内に、体勢を立て直して、俺の近くへと緊急避難してきた。
「ありがとう。お陰で助かったよ」
聞こえて来た御礼の言葉は、良太郎君のものだった。
どうやら、リュウくんの方は、まだ咄嗟の動きで危機を脱した直後だからか、まだ息が整っていないらしい。
「御礼は後で良いです! それよりも問題は、コアを保有している敵が分からないって事ですよ」
「うん。確かにそれも、問題だね」
俺の言葉に、電王も頷く。
そうなのだ。
今までは、コアを持つ敵は分かり易かったのだが、今回は全く見当が着かない。
順当に考えれば、カイザ達、四人内の誰かと見るべきだろうが、あの四人は元は他と同じライオトルーパーなのだ。
それを踏まえると、あの四人の中でコアを保有している奴がいるとは思えない。
分からない時は、幾ら考えても分からないので、出来る事をやっていくのが一番だろう。
「こうなったら、怪しいのから順に潰していくしかないか」
『それしかないかも知れないな』
俺は一つの決断を下し、行動へと移す。
ベルトからタッチノートを引き抜き、操作する。
『ガイア・コール』
タッチノートから音声が響くと共に、見覚えのあるメタルレッドの手乗り恐竜が、俺の前に姿を現す。
『お待たせです! マスター!』
「力を借りるぜメカ竜!」
俺は駆けつけてくれたメカ竜と、短い言葉を交わし、更にタッチノートを操作して、メカ竜をアタッチメントパーツへと変形させて、ベルトの左側をスライドさせ、溝部分へアタッチメントパーツを差し込む。
『ベーシック・ガイア』
音声が響くと同時に、メタルブラックのボディーの上に、メタルレッドの装甲が展開されて、次々と装着されていく。
「まずはこいつから行くぞ!」
俺はガイアモードとなると同時に、近くに居たデルタへと攻撃を開始した。