魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
取り敢えず、遅れたぶんはこれ位で、取り戻せたかと思えるので、また少しペースを通常に戻しながら書いていきます。
それでは今回も楽しんでいただけたら幸いです。
「……なるほど、大体分かった」
晴人さんお魔法使い発言に、頭を痛めつつも俺がこの世界に居る理由を説明し終えると、士さんが番組内でも度々使っていた台詞を口にする。
その台詞を聞いて、毎回思ってはいたがその当事者となった今、本当に分かったのかと不安に駆られるのは仕方が無い事だろう。
説明しながらドーナツも食べ終え、腹を満たした俺達は、これからの行動に関して話し合う事にした。
現状では、可能性が高いとはいえど、士さんが持っている魔法石が、時結びの鎖だと決定した訳ではない。
それならば、この近辺で他に魔法石が無いか、探してみようと話が纏まりかけたその時だ。
「あら~ハルくんってば、難しい顔しちゃってどうしたのぉ?」
ドーナツ屋さんお店員のお兄さん? もしくはお姉さん? ここはきっとお姉さんと言っておかないと、身に危険が及ぶ可能性が高そうなので、限り無くお姉さんに近い存在だと言っておこうか。
具体的に表現するならば、この人はチェイサーさんと同種な人だ。
間違い無い。
ここまで心の中で予防線を張ったところで改めて、お姉さんが晴人さんに気軽に話し掛けて来た。
どうやら、このドーナツ屋は晴人さんが普段から贔屓にしているらしく、二人は知り合いの様だ。
「いや、たいした事じゃないよ、店長」
「んも~ハルくんと私の仲じゃない! ここは私が奢ってあげちゃうから、好きなのを食べてぇ。ちなみにお勧めは新発売のオレンジドーナツよん!」
「それじゃあプレーンシュガーで」
お姉さん的な存在、改め店長さんは晴人さんの返答を聞くと、明らかに落ち込んでいた。
何気に後ろで二人のやり取りを聞いていた、もう一人の男性の店員さんまでもが、異様な落ち込みを見せている。
一体彼等店員さん達と晴人さんとの間に、何があったというのだろうか。
まあ、当人達の問題だろうから、口を挟むのは止めておこうと思う。
「フィリップ君が言っていたヒント通りなら、ドーナツ屋に居た士さんの持ってた魔石が楔だってことになると思うんだけど、まだ違う可能性もある訳だしな」
『その事なのだが、少し良いか? マスター』
「どうしたんだよメカ犬?」
『うむ。マスターの疑念も分かるのだが、悠長に考えている時間は無い様だぞ」
いきなり何を言い出すんだと、俺は訝しげに尋ねるが、士さんや晴人さんの様子に加え、更に先程までの和やかな雰囲気が、ガラリと変わった事から、メカ犬が何を言おうとしたのか、察しがついた。
「どうやら、俺の持っている魔法石が、純の言っていた物で間違いないみたいだな」
士さんはそう言いながら、席を立ちディケイドライバーを腹部へと宛がい、一枚のカードを取り出す。
「話が通じる相手って訳でも無さそうだな……」
続いて晴人さんが指に嵌めた黒い手形の指を腹部に宛がった。
『ドライバーオン』
そうすると音声が鳴り響き、中央部に黒い手形のマークが目立つベルトが晴人さんの腹部に出現する。
晴人さんが巻いているベルトは、俺が初めて見るタイプだった。
それが意味するのは、晴人さんが俺の知識に無い一人の戦士だという事である。
「俺達も行くぞ!」
『うむ!』
俺はタッチノートを開きつつ、メカ犬と共に此方に歩み寄る集団を迎え撃つ。
此方へと迫り来る集団は、銅色のプロテクターを纏い、その顔の部分は何も特徴の無い丸い能面。
その姿を、俺は知っている。
仮面ライダーファイズの劇場版に、一万人という規格外な数が導入された事でも有名である、他には類を見ないライダー。
その名は、仮面ライダーライオトルーパーという、量産を目的としてスマートブレインが作った仮面ライダーである。
ライダーの分類には入っているが、固体としての戦闘力はあまり高くない。
基本的に、高い能力を持ち一人で戦う事が殆どである筈の、多くのライダーに対して、ライオトルーパーはその数の利を活かした、集団戦闘を得意とする。
それが、集団で迫って来ているのだ。
「きゃあああああああ!? 何なのあれえええええええええ!? ハルくん助けてえええええええええ!」
店長さんがライオトルーパーを見て絶叫しつつ、晴人さんの腰に抱き付く。
何とかそれを引き剥がす晴人さん。
その間に俺もタッチノートを操作して、メカ犬をベルトに変形させて、腹部へと装着する。
「変身!」
俺がベルトを巻いている間に、士さんがディケイドライバーを展開させて、カードを装填した。
『カメンライド……ディケイド!』
ディケイドライバーから音声が響き、士さんの身体が瞬時にモザイク状の光に包まれて、マゼンタ色が特徴的な一人の戦士へと、その姿を変える。
「変身」
続いて俺もタッチノートをベルトの中央の窪みへと、差し込む。
『アップロード』
差し込んだ瞬間に俺の全身は光に包まれて、メタルブラックのボディーの戦士へと変貌を遂げる。
俺と士さんはシードとディケイドへの変身を果たし、一足先に俺達はライオトルーパー達に向かって駆け出す。
そして、漸く店長さんを引き剥がす事が出来た晴人さんは、ベルトに手を掛けたのだが……。
『シャバドゥビタッチ・ヘーンシーン! シャバドゥビ……』
次の瞬間に、晴人さんのベルトから、ラップ調の音楽の歌が制限無く流れる。
「変身!」
更に晴人さんは先程ベルトを出現させる時に使った黒い手形のマークとは違う、赤い宝石が嵌め込まれた指輪の飾りを引き下げて、ベルトの中央部へと宛がう。
『フレイム』
音声と同時に、晴人さんが指輪を嵌め込んだ手を横に伸ばすと、不思議な赤い光によって描かれた丸い模様が出現する。
『プリーズ』
その模様は、少しずつスライドして、晴人さんの手から始まり、全身を通過していく。
『ヒー! ヒー! ヒーヒーヒー!』
その模様が最後まで通貨した直後、晴人さんの姿が俺の見た事の無い一人の戦士へと、その姿を変えた。
変身する際に使った、赤い宝石と酷似した頭部。
黒いローブを動き易い形にした上に、赤いプロテクターを着けた様な、独特のフォルム。
その姿は、確かに魔法使いという言葉を彷彿とさせた。
「さあ、ショータイムだ!」
俺の知識には無い戦士へと姿を変えた晴人さんが、そう言うと俺達に一足遅れてライオトルーパーの集団の中へと飛び込む。
「晴人さん。その姿は……」
「言っただろう。俺は魔法使いだってな」
すぐ近くに晴人さんが来たので、言葉を投げ掛けると、周囲のライオトルーパーに華麗に舞う様な蹴りを浴びせつつ、返答をしてくれた。
そして最後に一言。
「俺はウィザード。指輪の魔法使いさ」
宣言した晴人さん改め、ウィザードは再び指輪をベルトに宛がう。
『コネクト』
音声と共に、再び浮かび上がる、今度は変身した時よりも小さな丸い模様、いや魔法使いならば、この模様は魔方陣と言うべきだろうか。
その魔方陣の中に、ウィザードが手を突っ込むと、その魔方陣の中から、黒い手形のマークが付いた白銀の銃を取り出した。
ウィザードが、ライオトルーパーに銃口を向けて、引き金に指を掛けると光弾が、次々とライオトルーパーを撃ち抜き、火花を散らす。
「俺も負けてられないな」
ウィザードの猛攻を見て、ディケイドがライドブッカーから、一枚のカードを引き抜き、展開したディケイドライバーへと装填する。
『カメンライド……シード!』
意外な事に、ディケイドが使用したカードは、以前に共に戦った時に手に入れたシードのカード。
カードの効果によって、ディケイドの身体が光に包まれ、その光が飛散すると、中から出現したのは、メタルブラックのボディーである、ベーシックフォルムのシードだった。
唯一の違いがあるとするならば、ベルトの部分がディケイドライバーだという事だけだ。
「そういう事ならこっちも!」
シードへとカメンライドしたディケイドに触発され、俺もベルトの右側をスライドさせて、黄色いボタンを押す。
『ベーシックファントム』
ボタンを押すと同時に、大量の光がベルトから溢れ出し、メカ犬が操作する灰色の複眼を持つ、シードの分身体を作り出す。
「行くぞ! メカ犬!」
『うむ!』
俺は分身体のシードに背中を預け、周囲のライオトルーパーに格闘戦を繰り広げていく。
こうして、かなり変則的な条件下ではあったが、ここに三人のシードが共闘するという状況が作り出された。
「はっ!」
更にもう一人の共闘者であるウィザードは、魔方陣から取り出した銃を、剣の状態へと変形させて、ライオトルーパーに斬り掛かる。
次々と蹴りや拳、若しくは銃弾に斬撃にさらされたライオトルーパー達は、黒い霧となって消えていく。
この事から、ライオトルーパーの集団が、ディアスの送り込んで来たコアから生まれてきた存在なのだと確信する。
そのライオトルーパー達が襲って来たという事実から、士さんが持っていた魔法石が、奴等の狙いなのだという可能性も、格段に跳ね上がった。
「このまま一気に決めるぞ!」
ライオトルーパーの数が、かなり少なくなってきたところで、シードへとカメンライドしたディケイドが、そう言いつつ、一枚のカードをディケイドライバーに装填する。
『ファイナルアタックライド……シ、シ、シ、シード!』
スクラッチする音声と共に、右足に光が集約していく。
俺もタッチノートをベルトから引き抜き、分身体の背部のベルトの溝へとスライドさせてから、再びタッチノートをベルトに差し込む。
『アタックチャージ』
ベルトにタッチノートを差し込んだ事によって、音声が流れて俺の右足と分身体の右足に光が集約される。
「これでフィナーレだ!」
更にウィザードも、また別の指輪を取り出して、ベルトの中央へと宛がう。
『チョーイイネ! キックストライク! サイコー!』
ベルトから流れる音声もそうだけれど、その時には既に、変身時とは別のラップ状の音楽と歌が流れていたりと、かなり賑やかだ。
ここ最近になって出会うライダーは、戦い方が独創的だったり、ベルトが一人ライブ状態だったりと、個性豊かである。
兎にも角にも、ウィザードもその足に激しい炎を纏った事から、次の一撃によって、一気に勝負をつける算段なのだろう。
俺達も、そのタイミングに合わせて、準備を整える。
「はぁっ!」
まず最初に、シードへとカメンライドしたディケイドが上空に飛び上がる。
「『こいつで決めるぜ!』」
そして俺と、メカ犬が操る分身体も同時に飛び上がり、最後にウィザードが激しく燃え上がる炎をその足に宿しながら、身を翻して飛び上がり、俺達は残存するライオトルーパー達に向かって足を突き出し、一撃必殺の攻撃を叩き込む。
「「「『はあああああああああああああっ!』」」」
放たれた強烈な攻撃を受けて、ライオトルーパーは、爆発と共に吹き飛び、黒い霧となって四散して、この戦いは、取り敢えずの終わりを向かえた。
そして、これは癖なのか。
「フィ~」
その光景を前にして、無事に着地したウィザードは、溜息を吐くかの様に、そんな呟きを零した。
しかし、これで一時的にでも一つの戦いが終わったと思ったのは、早計だったと言わざる得ない。
「相変わらずみたいだね」
淡々とした拍手と一緒に、聞き覚えのある声が、俺の耳へと届いたのである。