魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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だいぶ更新が遅れてしまい、申し訳ありませんでした。

以前にも貰った感想で、ライダーの二次創作は続けるべきか、このまま削除して、二次創作からは手を引くべきかと悩んでおりました。

真に申し訳ありません。

正直に言えば、一度自分で書き始め、読んでくださる読者の方が居るならば、完結するまでゆっくりでも書き続けたいとは考えてはいるのですが、このサイトでも仮面ライダーを書くべきでは無いのであれば、極端ではありますが小説の執筆から手を引こうかとも考えております。

少し暗い話をしてしまいましたが、今回も楽しんでいただけたら嬉しいです。




ライダー戦記編12

「急いで来いなんて言うから、何事かと思ったぞ……」

 

『ハハハ。驚かせてしまったみたいで、すまないなマスター』

 

俺の愚痴に、肩に乗ったメカ犬が、呑気に返事を返す。

 

呆れ混じりに溜息を吐きつつ、俺は視線を前へと向ける。

 

俺がメカ犬からタッチノートの通信を受けて、弦太郎さんと一緒に急いで駆け付けた後、如月さんの強い要望によって、足を運んだ場所は、意外な場所だった。

 

風の都、風都。

 

翔太郎さんやフィリップ君達が住む街であり、俺自身にとっても、忘れられない時間を過ごしていた場所である。

 

そして今、俺達が居る場所は、その風都のシンボルとも言える場所、風都タワー。

 

どうやらこのフォーゼが居るこの世界は、同一かどうかは謎だが、一号ライダーから都市伝説として、平成も含めた全てのライダーが存在しているらしい。

 

ならばこの世界に、Wが活躍した風都という、俺の前世に加え、現世でも存在しない筈だった架空の都市が現実にあったとしても、おかしくはないだろう。

 

その風都タワーを代表するマスコットキャラクター、ふうとくんに無邪気に抱き着く如月さんを見ながら、俺はそんな事を考えていた。

 

風の街と呼ばれるだけある風都に似合う、風車をイメージされたと一目で分かるビジュアルのふうとくんの周りには、如月さんだけで無く、他にも多くの子供や、観光客が集まり周囲を賑わせている。

 

本来ならば、狙われている立場である如月さんを、こんな人の多い場所へと連れてくる事には抵抗があったが、だからと言ってあんな不安定な状態の如月さんにこれ以上、窮屈な思いをさせるのには気が引けてしまう。

 

それは俺だけでは無く、メカ犬と弦太郎さんも一緒だったらしく、ならばその時は全力で守ろうという意見で纏まった。

 

不幸中の幸いとも言えるのは、ディアスが送り込んで来たコアが生み出した存在が狙う対象は、この世界の楔である如月さんだけである。

 

「お~い! 純達も一緒にふうとくんと記念写真を撮ろうぜ!」

 

如月さんと一緒にふうとくんと握手をしていた弦太郎さんが、俺達に向けて大きな声で呼び掛けて来る。

 

昔のドラマでしか見れないであろう、不良ルックな弦太郎さんがそんな事をすれば、嫌でも目立つ。

 

『行くぞマスター。心配なのは分かるが、何時来るか分からない敵を警戒し続けていたら、戦う前に疲れてしまうぞ』

 

「……そうだな」

 

メカ犬の言う事も最もだ。

 

俺も弦太郎さんを見習って、少しばかり、リラックスするべきなのだろう。

 

それに、念には念を入れて、事前にここに居る事は良太郎君達にも伝えてあるから、時機に合流出来る筈だ。

 

「ほらぁ! 何やってるのよ転校生! 早く来ないと写真に写らせてあげないわよ!」

 

少し前まで、笑顔の一つも見せなかった如月さんが、今は笑顔を振り撒きながら、俺に早く来いと呼び掛ける。

 

その笑顔を見ると、改めてここに来たのは、正解だったと思う。

 

「分かった。 すぐに行くから」

 

『急がないと、本当に写真に写してもらえなくなるぞマスター』

 

「ハハ。そうならない様に急がないとな」

 

特にここ最近は、強行軍で戦い続けていたせいもあって、俺もメカ犬も、何処か気負っていたのかも知れない。

 

だから、こんな穏やかな時間が、とても大切なものなのだと、改めて実感する。

 

思えば風都タワーは、以前に一度だけ訪れた事はあったが、のんびりと観光をしている余裕など無かったのだ。

 

今も、ただのんびりと構えている訳にはいかない状況ではあるかも知れないが、折角の機会なのだから、楽しまなくては損というものである。

 

俺はメカ犬と軽口に笑い返しながら、如月さん達の横に並び、ふうとくんを囲む形で、記念撮影をしてくれている、職員のお姉さんにカメラで一枚の写真を撮ってもらう。

 

多くの人が観光に来るという事もあり、その場ですぐにプリントアウトして貰えるサービスがあったので、記念に俺の分も手に入れる事が出来た。

 

『うむ。中々に良く写っているではないか』

 

「ああ」

 

肩の上越しに写真を見たメカ犬の感想に、俺も頷く。

 

本当ならば、俺はこの世界に居る筈では無い、別の世界の人間だ。

 

もしかしたら、二度とこの風都を訪れる機会は無いかも知れない。

 

だとしたら、余計にこの写真を大事にしたいと思ってしまうのも、仕方が無いだろう。

 

「……あのさ」

 

「ん?」

 

俺がメカ犬と写真の出来を確認していると、如月さんが俺に声を掛けて来た。

 

何だか言い難そうな態度はとっているものの、今の如月さんからは、少し前まで感じていた何処か剣呑とした様子は感じられない。

 

『どうしたのだ?』

 

「えっと……そのさ。ありがとうね、私の我儘に付き合ってくれてさ」

 

「どう致しまして。でもさ、俺も風都タワーはじっくりと見てみたかったから、お礼を言われる程じゃないよ」

 

「だとしてもよ。まだ信じた訳じゃないけど、本当なら私はあんまり出歩かない方が良いんでしょ? だからちゃんとお礼は言っておくわ」

 

「何だかそういうところは、弦太郎さんにそっくりだね」

 

如月さんは良くも悪くも不器用で、自分の決めた事に対して真っ直ぐな子なんだなと、俺は思う。

 

「弦にぃと似てるなんて何か嫌なんだけど、良く言われるのよねぇ……」

 

どうやら俺に言われたのが初めてでは無かったどころか、この反応を見る限り相当な数の人に、そういった見方をされている様だ。

 

もう聞き飽きたとばかりに、溜息を零す如月さんに、俺は苦笑いを返す事しか出来ない。

 

「おっ! どうやら、琴葉も純とダチになったみてぇだな!」

 

ある意味で、この微妙な空気を作り出した原因でもある存在である弦太郎さんは、そんな俺達の間に立つと、俺と如月さんの手を取って、握り拳を作らせてから、互いのこぶしを突き合わせて、上下でタッチさせるという良く分からない行動をさせて来る。

 

しかもついでとばかりに、メカ犬の前足まで持ち出して、如月さんと俺が先程までさせられた一連の動きをもう一度、今度はメカ犬と如月さんで再現して見せた。

 

どうやら弦太郎さんにとって、この一連の動作は、友情の証らしい。

 

そう言えば、最初の共闘の時の最後にも、同じ事をしていたと、今更ながら思い出す。

 

「ねえ、転校生! 友達になったんだから、ちゃんと名前を教えなさいよ! 今度はちゃんと覚えておいてあげるからさ」

 

「うん。それじゃあ改めて、俺の名前は……」

 

さっきから弦太郎さんが俺の名前を言っているのだから、如月さんが知らないという事は無いだろう。

 

それでも、こうして自己紹介をしろと言ってきたのは、きっと彼女なりのケジメなのだ。

 

なら、俺もそれにならい、改めて自己紹介をするするべきだろう。

 

そう思い、俺が口を開きかけた瞬間、この平和な時間は終わりを告げた。

 

「か、怪物だああああああああ!?」

 

何処からとも無く、響いた悲鳴と、慌ただしくなる人垣。

 

そして風都タワーの周囲に、異質な気配が漂い、その方向に視線を向ければ、反対方向に逃げて行く人達の隙間から見える、普通に考えれば現実には存在するとは思えない異形の怪物の集団。

 

『……どうやら、自己紹介は後にしておいた方が良さそうだな』

 

「みたいだな」

 

メカ犬の声に頷きながら、俺はタッチノートを開く。

 

「琴葉。お前は安全なとこに下がってろ」

 

弦太郎さんは、如月さんに風都タワーの奥に逃げ込む様に指示してフォーゼドライバーを自身の腹部へと宛がう。

 

『バックルモード』

 

俺もタッチノートを操作して、メカ犬をベルトに変形させて、自らの腹部へと巻き付けた。

 

弦太郎さんはフォーゼドライバーに差し込まれた四つのスイッチを順番に押していく。

 

そうする事によって、ベルトからカウントダウンが開始される。

 

『3』

 

迫り来る異形の怪物集団、ディアスのコアから生み出されたであろうワームが視界を埋め尽くす頃に最初のカウント音が鳴る。

 

『2』

 

続いて如月さんが風都タワーの奥に逃げ込むとほぼ同時に、二回目のカウント音。

 

『1』

 

そして俺がベルトにタッチノートを差し込む動作に入るのと、如月さんがポーズを決めた際に、三回目のカウント。

 

「「変身!」」

 

俺と弦太郎さんは同時に叫び、俺はタッチノートをベルトへ差し込み、弦太郎さんはフォーゼドライバー横のグリップを思い切り引く。

 

そうする事によって、俺達の姿は戦士の姿へと劇的な変貌を遂げる。

 

「宇宙来たあああああああああああああああああああああ!」

 

フォーゼへの変身を遂げた弦太郎さんが叫ぶ。

 

すぐ横に居た俺は、咄嗟の事で驚き、若干後ろへと下がるが、これはきっと弦太郎さんなりの気合の入れ方なのだろう。

 

「行きますよ。弦太郎さん!」

 

「応よ! タイマンじゃねえが、行かせて貰うぜ!」

 

俺はフォーゼと共に、ワームに向けて駆け出す。

 

『敵の数が多い。ここはサーチフォルムで、遠距離からなるべく数を減らしていくんだ!』

 

「OK!」

 

メカ犬の指示を受け、俺はベルトの右側をスライドさせて青いボタンと黄色のボタンを連続で押す。

 

『サーチフォルム』

 

『サーチバレット』

 

変身した直後であるベーシックフォルムを示す、メタルブラックのボディーが鮮やかなスカイブルーへと染まり、俺の右手には専用の射撃武器であるサーチバレットが生成される。

 

「ならこっちは、正面から行くぜ!」

 

俺がサーチバレットで、後方からワーム狙い撃つ最中、フォーゼはそう言いつつ、ベルトのスイッチを二か所入れ変えて連続で押していく。

 

『ホッピングオン』

 

『チェーンアレイオン』

 

すると、フォーゼの左足には大きなバネが仕込まれたホッピングが装備され、その跳躍力によって、一気にワームの集団の中へと舞い降りる。

 

更に、右腕には鉄球を装備して、ワームが大量に居る場所を飛び跳ねながら、鉄球を振り回して縦横無尽に暴れ回り始めたのだ。

 

最初の時にも思ってしまったが、やっぱりこうして目の前で見ると随分と個性的な戦い方だと、改めて実感してしまう。

 

でも、破天荒な戦い方だが、この強さはかなり頼もしい。

 

このまま戦い続ければ、俺とフォーゼだけでも、ワームを倒すには、そんなに時間が掛かる事は無いだろう。

 

だけど、今までの戦いから、そう簡単に事が運ぶとは思えない。

 

それに先程から、どうにも嫌な感覚というか、気配を感じるのだ。

 

今の俺がとっているサーチフォルムは、遠距離攻撃を可能にする以外にも、他のフォームと比べて感覚器官を鋭敏にするという特殊な能力があるのだが、どうにも今俺達が戦っているワーム達とは別に、妙な感覚が近くで動き続けているかの様な……そんな気がする。

 

最初は、ただの勘違いかと思った。

 

だが、ワームが居るという事は、今回の敵の中に、あの能力を駆使する奴が居たとしてもおかしくは無い。

 

そして、その俺の仮説は、すぐに真実へと変わる。

 

「おわっ!?」

 

ホッピングでジャンプをし続けていた筈のフォーゼが、ワームからの攻撃を受けていないにも関わらず、空中で火花を散らして、地面へと落とされてしまったのである。

 

いや、正確にはそうとしか見えなかっただけで、実際には敵からの攻撃を受けたのだろう。

 

「弦た……がっ!?」

 

何とかフォローに回ろうとした俺だったが、それよりも早く、俺の背中に衝撃が走り、その勢いによって吹き飛ばされる。

 

やっぱり、敵は確実にあの能力を使って、俺達に攻撃を仕掛けている。

 

『クロックオーバー』

 

倒れた直後に耳へと響く、電子音声。

 

何とか痛む背中に無理をさせて、立ち上がった俺は、先程までの見えない攻撃を仕掛けて来た奴の正体を、その視界へ捉えた。

 

 


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