魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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アットノベルスでも戦記編を投稿はしたいのですが、何故かページの追加ボタンをクリックすると、検索のトップページへと飛んでいくという不思議……。


ライダー戦記編 1

時の狭間には、誰が最初に語ったのか、実しやかに語り継がれる伝説がある。

 

それは過去、現在、未来をあるべき姿へと安定させる楔。

 

あらゆる時代の、複数の世界に楔は打たれており、その全てが破壊された時、世界はあるべきバランスを失い、破壊されてしまうというものだった。

 

そしてこの楔は、時の狭間の歴史にも残らない、はるか過去に不安定だった世界を救う為に時の狭間を生きていた一人の女性が自らの存在と引き換えにして、世界を崩壊の危機から救ったのだそうだ。

 

楔は彼女の存在した証。

 

ただ、この伝説は語り継がれているというだけで、それが実際に起こった史実であるかどうかは誰にも分からない。

 

しかしこの楔は確かに実在している。

 

楔は、時結びの鎖と言われ、様々な形で過去、現在、未来に散っているのだ。

 

時結びの楔は、物である場合もあれば、植物でもあり、動物な時もある。

 

更にはその場所や、空間自体がそうであるという場合もある、千差万別な存在であり、この時結びの鎖には何人とも触れてはならないと、されていた。

 

そして、今まではこの戒律を破ろうとする者は、善人は元より悪人にも表れる事は皆無だった。

 

だが長らく守られてきたこの戒律を破り、世界を無に帰そうとする者が活動を開始したのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……そいつの名はディアス。こいつを止めないと、世界は崩壊してしまうという訳さ」

 

一通りの事情を話し終えたフィリップ君は、喉の渇きを潤す為にコーヒーカップに口をつける。

 

かなり不思議なフレーバーがカップの表面からはみ出ているが、そんなのはお構いなしに飲み干しているのには、素直に凄いなと思う。

 

ちなみに全国の飲食店の人達の名誉の為に言っておくのだが、先程フィリップ君が飲み干した奇々怪々なコーヒーと呼んでいいのか分からない飲料を出すお店は存在しない。

 

だからと言って、俺の家という訳でもないのは当然の事で、ふと近くの窓を見渡せば、まるで砂漠と岩ばかりが続く荒野を走り抜けているという光景が広がっている。

 

ここは時を駆ける列車、デンライナーの中の食堂車両なのだ。

 

街で暴れていたドーパント達を倒した俺達は、落ち着いて話が出来る場所に行こうという事になり、ここに来たのである。

 

「大変な事になってるというのは分かりましたけど、どうして良太郎君と翔太朗さん達が一緒に?」

 

大体の話を聞いた後に、俺は一つ目の質問を口にした。

 

「それは私が説明しましょう」

 

聞き覚えのある声がしたと思えば、食堂車のドアが開き、ステッキを片手にデンライナーのオーナーが俺達の横を通過して一番奥の席に座ると、ナオミさんが小さな旗付きチャーハンをテーブルに置き、オーナーは何処からともなく銀のスプーンを取り出して、チャーハンに差し込む。

 

相変わらず独特な雰囲気を醸し出すオーナーに、俺達は苦笑いを浮かべるが、出来るならば早く続きを話してほしい。

 

「ディアスが狙っている時結びの鎖です。その場所を特定する為に、フィリップ君の地球《ホシ》の本棚が必要だったのですよ」

 

「そういうこと」

 

オーナーの説明に、フィリップ君が頷く。

 

「まあ、世界が危ない何て聞いたら、このまま放っておけないからな」

 

それに続き、翔太朗さんもニヒルな笑みを浮かべる。

 

『大まかな話は分かったのだが、その首謀者であるディアスとは何者なのだ?』

 

話が一区切り付き、メカ犬が新たな質問をぶつけた。

 

俺も、そのディアスというのが、どんな人物なのか気になる。

 

「それが分からないんだ」

 

メカ犬の質問に答えたのは良太郎君だった。

 

敵の正体が現時点で分かっていないというのは、それで仕方がない事かもしれないが、どうも良太郎君のニュアンスだと、妙な違和感を感じる。

 

「正直なとこを言えば、俺らもまだ信じられないからな」

 

俺の考えがそのまま顔に出ていたらしく、ナオミさんが新たに淹れた桃色フレーバーがカップの淵からはみ出たコーヒーを飲んでいたモモさんが口を開く。

 

「モモさんは、そのディアスって人を知ってるんですか?」

 

どうにもモモさんの言い方だと、知っている様な感じに受け取れる。

 

いや、それ以前に先程の良太郎君の分からないという発言も、何者か謎だと言うよりもどうしてこの人がというニュアンスに聞こえるのだ。

 

「はい。ディアス……彼は本来ならば時結びの鎖を遥か昔から守護してきた守人なのです」

 

俺の疑問を補足する様に、オーナーが説明する。

 

守人。

 

オーナーの話によると、守人とは時の狭間から、幾重の世界に散らばる楔を守護してきた者に贈られた称号なのだそうな。

 

先程の良太郎君とモモさんが言っていた事も、どうしてそんな人物が? という意味だったのである。

 

「じゃあ……さっきのドーパント達も、もしかしてディアスが?」

 

「その通りです。彼は元は世界を繋ぐ楔の守人。ですから過去から未来へとあらゆる時間と世界に対して、強い影響力を持っているのです」

 

世界の断りに干渉する程の力を持つ存在……。

 

俄かに信じられない話ではあるのだが、現に海鳴市街で暴れていたドーパント達と、こうして電王やWが動いているとなると、信じずにはいられない。

 

だけどこれが真実だとするならば、時結びの鎖の一つは……。

 

俺の考えが顔に出ていたのだろう。

 

オーナーは頷くと、予想通りの台詞を口にする。

 

「そして私達が純君達の居る時代に来た理由ですが、この世界のこの時間。この海鳴の街に時結びの鎖が存在しているからです」

 

俺はオーナーの言葉に対して、咄嗟に返す言葉をも無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で俺達が、こんな場所で張り込んでなくちゃならねぇんだよ」

 

「そう言わないでよモモタロス。きっとオーナーにも考えがある筈なんだと思うし」

 

「あのおっさんがそんな事まで考えてると思うか?」

 

「た、多分……」

 

良太郎君とモモさんのやり取りを聞き、俺は相変わらず仲が良いなと思いながら苦笑いを浮かべた。

 

現在、俺とメカ犬、良太郎君とモモさん、そして翔太朗さんの四人と一匹は、虫の鳴き声も聞こえなくなった深夜の時間帯。

 

フィリップ君の地球の本棚によって、楔の大体の位置を特定し、昼間にドーパント達が暴れていた市街地から程近い、公園で張り込みをしていた。

 

「静かにしていないと奴等に気付かれるぞ」

 

流石は本職の探偵と言えるのか。

 

翔太朗さんは落ち着いた様子で、モモさんを窘める。

 

普段はモモさんが騒ぎ出すと、ウラさん辺りが静かにしてないと釣った魚が逃げちゃうよ先輩とでも言って窘めるところなのだろうが、この場に居ないので貴重な突っ込み要員と言えるだろう。

 

ちなみに良太郎君との契約イマジンがモモさん以外に居ない事には、理由がある。

 

それは時結びの鎖の特異性にも関係しているのだが、過去に現在と未来。

 

時結びの鎖は世界と時間を超越して、様々な形で同時に存在しているのだ。

 

他のイマジン達はその楔を守る為に、その時代に飛び守っているらしい。

 

「だけど、世界に直接干渉出来るなら、原因のディアスを倒さないと同じ事の繰り返しになるんじゃないかな?」

 

モモさん程ではないけれど、ただ待ち続けているという行為に対して、俺も聊か飽きを感じていたのか、思った事がそのまま誰に対してという訳でも無く、自然に口から出てしまう。

 

『うむ。確かにマスターが言う事にも一理あるな。その辺りはどうなのだ?』

 

俺の疑問にメカ犬も共感したらしく、良太郎君に視線を向ける。

 

「うん。その辺りは大丈夫だよ」

 

意外な事に、良太郎君は自信有り気に首を縦に振った。

 

「奴が世界に干渉するのにも、色々と制限があるらしくてな。昼間に暴れていたドーパント達を倒した後、黒い霧になって消えていっただろ?」

 

話の続きを翔太朗さんが引き継ぎ、確認を取って来たので、俺は頷き肯定の返事で返す。

 

確かに倒したドーパント達はガイアメモリではなく、黒い霧となって四散して消えてしまったのは事実だ。

 

「オーナーの話だと、ディアスはこの世界に干渉する為に、コアと言われてる自分の分身みたいのを送りこんでくるらしいんだ。それでコアを倒すと、もう同じ時間には二度と干渉出来なくなるだって」

 

更に続きの説明を、良太郎君が続けてくれた。

 

「ようは目の前の敵をぶちのめせば良いって事よ」

 

最後にモモさんが、乱暴にまとめに入るが、言い得て妙とも言える。

 

確かにモモさんの言う通り、ディアスの分身であるコアを倒せば、少なくてもこの世界の楔にはもう手出しが出来なくなる筈だ。

 

「お喋りはここまでみたいだな」

 

俺が考えを纏めていると、翔太朗さんが正面を見据える。

 

目の前に広がるのは暗闇のみ。

 

だけど俺にも分かる。

 

暗闇の更にその奥。

 

街灯の光も届かない闇の中に、確かに蠢く大量の存在を。

 

やがて時間を掛ける事無く、街灯の明かりの下へとその蠢く存在は姿を現す。

 

昼間に出て来た大量のマスカレードドーパント達。

 

だけどそれだけじゃない。そのドーパント達の中央には予想外の姿があった。

 

全身を覆う白いボディーに、顔の半分近くを覆う黄色い複眼と、その白いボディーとは対照的な漆黒のマント。

 

あの姿は間違い無い……。

 

「……エターナル」

 

絞り出す様に、翔太朗さんが呟く。

 

そう。

 

今俺達の前に居るのは、かつて風都の街を混乱の渦中へと誘った存在。

 

仮面ライダーエターナルだったのである。

 

俺達は身構えるが、その次の瞬間には、エターナルが特徴的な腕の青いプロテクターを俺達の方へと翳す。

 

それを合図に、後方に控えていたドーパント達が一斉に俺達に向けて襲い掛かって来た。


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