魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~ 作:G-3X
マッチョな大男が街で破壊活動を行っている。
街は大パニックだ。
しかしそこに、可憐な四人の少女が駆けつけた。
「行くわよ皆!」
「「「うん!」」」
四人の少女達が右手を空に向けて突き出す。
「「「「マジカル・ミラクル・メイクアーップ!!!」」」」
その言葉を合図に四人の少女が黄金の光に包まれる。
光の中で彼女達の服装は学校の制服から、戦う為の聖なる衣へと変化する。
帽子は魔女を思わせるトンガリ帽子。
服装は短めのスカートをしたドレスで、その上からレースがあしらわれたエプロンを着けている。
そして胸の部分には、赤い十字マークが強く自己主張をしている。
四人は同じデザインで色違いの衣装を身に包んでいた。
「純白の乙女!マジカルナノネ!」
白いドレスに身に纏った少女がポーズを取りながら名乗りを決める。
「真紅の乙女!マジカルアリス!」
マジカルナノネと名乗った少女と同じデザインで赤色のドレスを身に纏った少女も名乗りを上げる。
「蒼穹の乙女!マジカルスズノ!」
青いドレスを纏った少女が名乗る。
「漆黒の乙女!マジカルハヤメ!」
最後に三人と同じ様に黒いドレスを身に纏う少女が名乗る。
「世界の悪は許さない!」
白いドレスの少女ナノネが叫ぶ。
それに合わせる様にして、次の台詞を四人が声を合わせて言い放つ。
「「「「私達!マジカルナースメイドプリンセス☆」」」」
四人のバックには、演出過多と思える程の花びらが大量に巻き上がる。
「くっ!やはり来たな!マジカルナースメイドプリンセス☆どもが!!!」
四人の登場に動揺を隠せないでいる、世界の悪?と思われる大男。
この人物は唐突な登場に思われるかもしれないが、彼は最初から街で破壊活動を行っており、それを阻止する為にマジカルナースメイドプリンセス☆はやって来たのである。
「悪事もそこまでよ!ゴクアクーダ!!!」
マジカルナノネが街で暴れていた謎の大男、ゴクアクーダに言い放つ。
「ふん!しゃらくさいわー!!!」
ゴクアクーダはその言葉に対し怒りの咆哮を上げると、マジカルナースメイドプリンセス☆達に口から強力なビームを放ち攻撃する。
「「「「きゃあああ!!!」」」」
その攻撃に吹き飛ばされるマジカルナースメイドプリンセス☆。
「がはははははは!その程度か!マジカルナースメイドプリンセス☆」
勝利を確信したのか下品な笑いを高らかに上げるゴクアクーダ。
だがマジカルナースメイドプリンセス☆は誰一人として諦めない。
「私達を甘く見ないで!」
「そうよ!」
「どんな時でも希望を捨てたりしない!」
「それが私達マジカルナースメイドプリンセス☆なんだからね!」
四人は立ち上がり、先端に其々のドレスと同色の宝石がはめ込まれたバトンを取り出す。
「「「「集まれ!!!正義のマジカルパワー!!!!!」」」」
四人の叫びに呼応するかの様に、バトンに付けられた宝石が眩い光を放つ。
「「「「マジカル・リリカル・ハイパーキャノン!!!!!!!!」」」」
四人の言葉で、先程ゴクアクーダが放った以上の極太ビームがゴクアクーダに向けて発射された。
「ぎゃあああああああああ!!!!!?」
その極太ビームにゴクアクーダは飲み込まれ断末魔を上げながら消滅する。
ちなみにその後ろにあった、ビルも全壊する。
「「「「正義は絶対勝つのです!!!」」」」
見事ゴクアクーダを倒したマジカルナースメイドプリンセス☆の四人は決め台詞とポーズを決めた。
「今日も最高に面白かったね!マナメプ☆!!!」
テレビから流れるエンディング曲を聴きながら、俺は少し興奮気味のなのはちゃんに、取り敢えず相槌を返しておく。
俺は現在高町宅でなのはちゃんとテレビを観ている。
最近は翠屋のバイト続きであまり一緒に居られなかったので、その埋め合わせもかねて、なのはちゃんの好きな番組を一緒に観賞していたのである。
マジカルナースメイドプリンセス☆とは、今日本全土で小さな女の子達と、一部の大きなお兄さん達に絶大なる支持を受けている、大人気アニメである。
ちなみになのはちゃんが言っていたマナメプ☆とは、マジカルナースメイドプリンセス☆ファンが名付けた略称だ。
なのはちゃんは現在このアニメの大ファンで、毎週欠かさずこの番組を観ている。
それだけではなく、アリサちゃんにすずかちゃん、そしてはやてちゃんまでもが、このアニメにご執心なのだ。
はやてちゃんは出会いこそあれだったが、すぐになのはちゃん達と仲良くなった。
今では三人とすっかり馴染んでおり、見事なムードメーカーの役割を担っている。
その分、はやてちゃんの悪戯による、俺の心的負担が増えたが、そこはあえて触れないで置こう。
考える事を放棄する様に、俺はマジカルナースメイドプリンセス☆のエンディングを映すテレビに視線を向ける。
丁度エンディングが終わりをむかえる所であり、普段はこの後次回予告をやってそのまま終わるのだが、今日は何時もと違い、マジカルナノネがアップで映ると、告知を始めたのだ。
【いつもテレビから応援してくれてる皆にお知らせがあるよ!】
「!!!!」
そのマジカルナノネの声を聞いたなのはちゃんの顔が、普段は見れない程のレベルで真剣な表情になる。
よっぽど好きなようだ、マジカルナースメイドプリンセス☆・・・
【特別イベント!!!君も今日からマジカルナースメイドプリンセス☆を開催しちゃいます!!!】
謎のポーズを決めたマジカルナノネ。
俺もアニメは好きな方だが、如何にもこの番組のテンションには着いて行けない・・・
この告知の内容だが、一言で表すのなら、ファン主体のコスプレコンテストを開催するという事らしい。
ファン主体ではあるが、テレビや雑誌の取材もかなりの数が来るそうで、コンテストの優勝者には番組の収録現場を見学出来る権利が与えられると言っていた。
参加者は、完全な応募制で当選した人だけが、参加資格を得るんだそうだ。
【応募先はこちら・・・】
「純君!メモ!早くメモ!!!」
マジカルナノネが応募先を言い始めた事で焦るなのはちゃん。
俺は、バイト上何時も持ち歩く様になっていた、メモ帳とボールペンをなのはちゃんに渡してあげた。
何とか無事に応募先の住所を書き上げると、なのはちゃんは絶対に当選してナノネに会いに行くんだからと、気合いの入った雄叫びを上げて、大量のハガキを持ってきた。
何でも去年の年賀状を書くときに、多めに買った物が高町宅に、大量保管されていたらしい。
「さあ!書くよ純君!!!」
俺にハガキの束を手渡すなのはちゃん。
これは、あれですか?
俺に手伝えと、そういう事ですか、なのはちゃん?
「取り敢えずノルマは五十枚だよ!」
なのはちゃんはそれだけ言うと、マジカルナースメイドプリンセス☆のテーマソングを鼻歌で歌いながら、嬉々として、ハガキを書き始める。
一度暴走すると、中々止まらないのは、高町家の血筋なのだろうか?
この状態になったなのはちゃんを止める術は俺には無いので、俺もなのはちゃんの隣に座り黙って作業を開始した。
結局作業は夜通し続き、俺は高町さん家で夕飯をお呼ばれされる事と相成った。
「「「「はあ・・・」」」」
なのはちゃんの強制ハガキ書き事件から一週間後。
翠屋のテーブルの一つを囲んだ美少女四人組みが落胆の溜息を吐いていた。
なのはちゃん以外の三人もあの日、マジカルナースメイドプリンセス☆の告知を見ていたらしく、揃って大量のハガキで応募をしたんだそうだ。
その四人がこんなにも暗い雰囲気をかもし出しているのは、その告知の件が関係しているのだ。
全員が応募に落選したのである。
四人とも大量のハガキを送ったにも関わらず、誰一人として当選出来なかったのだ。
まあ、こういった応募は、枚数を多く出せば必ず当たると言う訳でも無いので、そういう事もあるのだろう。
今日も翠屋でバイトをしていた俺は、残念会を開催し淀んだ空気を醸し出している四人を不憫に思い、奢りでオレンジジュースを配った。
「「「「ズズズズズズズ・・・はあ・・・」」」」
少しでも元気を出して欲しいと思いした事なのに、何故か更に残念な感じになってしまった・・・
今日はもう、そっとしておいた方が良いだろうと俺は考え、四人を放置して仕事に集中する事にした。
暫くウェイターに徹して、翠屋の店内のお客さんがほぼ常連さんだけになった頃、常連では無いが俺の知る顔のお客さんがやって来た。
「いらっしゃいませ・・・恵理さん!?」
「ヤッホー純君。久しぶりだね」
その人は今年の春頃、この翠屋を取材しに来た海鳴ジャーナルに勤める雑誌記者の風間恵理さんだった。
俺が仮面ライダーだって事を知っている数少ない人の一人だが、俺はこの人が如何にも苦手だったりする。
決して悪い人ではないのだが、何か裏があるんじゃ無いかとつい勘ぐってしまう。
「お久しぶりですね。恵理さん」
取り敢えず俺は無難に挨拶を返す。
「うん。改めて久しぶり。所で何でバイトしてるの?もしかして、またお小遣いカットでもされたのかしら」
恵理さんが不思議そうに聞いてきた。
「はははは。実はですね・・・」
俺は恵理さんに、俺が翠屋でバイトをする事になったまでの経緯を説明した。
「・・・という訳なんですよ」
俺の説明にうんうんと頷く恵理さん。
「なるほど。それは大変ね」
ちなみに美由希さんは未だに高町宅の自室で缶詰状態なのだが、恭也君は既に旅行から帰って来ているので、本来俺はそんなに頻繁にバイトに出る必要は無い筈なのだが、これには俺にとってあまり面白く無いエピソードがあったりする。
恭也君と美少女達との旅行で結局、恭也君のハートを射止め見事彼女の座を手にしたのは、すずかちゃんのお姉さんだった。
恭也君がモゲ無かった事を俺は非常に残念に思うが、それは今説明している事に対しての核心ではない。
つまり恭也君はこの夏に、めでたく彼女持ちとなったのである。
ここで考えていただきたい。
夏休みに初めて彼女が出来た高校生・・・
余程の事情が無い限り、一秒でも多く一緒の時を過ごしたいと思うのは世の常である。
恭也君もその例に漏れず、健康的な思春期男子なのだ。
翠屋の手伝いを全くしないという事は無いが、結構な量を、結局俺が引き続き継続する事になってしまったのである。
リア充にイラッと来る部分はあるが、その気持ちが全く理解できないという事も無いので、俺は快く引き受けた。
まあ、そのうちはやてちゃんあたりを参謀に迎え入れて、皆でこのネタを元に恭也君を弄り倒すのは、決定事項だが・・・
「こんな所で長話してすいません。すぐに、お席にご案内しますね」
俺は接客モードに切り替えて、恵理さんをカウンター席に誘導する。
「取り敢えずブレンドコーヒーを一つお願いするわね」
席に着いた恵理さんが、俺に注文をする。
「かしこまりました。ブレンドコーヒーを、お一つですね」
注文を確認した俺は、士郎さんに注文を伝える。
程なくして完成したコーヒーを、俺は恵理さんのもとへと運ぶ。
「お待たせいたしました。こちらブレンドコーヒーになりますね」
ありがとうと言う恵理さんの前に、俺は運んできたコーヒーを置く。
「所で純君に話したい事があるんだけど、ちょっとだけ時間良いかしら?」
恵理さんが両手を合わせてお願いのポーズを取ってくる。
確かに今は常連さんしか翠屋に居ないので、少しくらいは大丈夫だと思うが、仕事中である以上俺の独断で決定する訳にも行かない。
俺は許可を求めるべく、士郎さんに視線を向ける。
俺の視線に気付いたのか、士郎さんはこちらを向くと笑顔で頷いた。
どうやらOKらしい。
「じゃあ、少しだけなら・・・」
雇い主である士郎さんから許可が出たので、俺は恵理さんの隣の席に腰を下ろす。
「それで話したい事なんだけど・・・その前に、あれは何があったの?」
恵理さんは現在この翠屋で触れる事が、タブーとされているダークゾーンを指差した。
そのダークゾーンには、これでもかというほどに、暗い雰囲気を醸し出すなのはちゃん達が居た。
まあ、あの様子を目の当たりにして、気にするなと言うのも無理な話である。
俺は苦笑いを浮かべながら、恵理さんに事の経緯を説明した。
「・・・という訳でして、今日は皆して、ずっとあんな状態なんですよ」
俺の説明を聞き終えた恵理さん、はなるほどと頷いた後に、不適な笑みを浮かべた。
「ふふふ。これは好都合かもね」
その顔と言動はまるで悪の女幹部の様だ。
「えっと・・・どういう意味ですか?」
嫌な予感しかしないが、無視する分けにもいかないので、俺は仕方なく恵理さんにどういう事なのか、説明を求める。
「実はね、私が純君に話したいと思っていた事に、そのマジカルナースメイドプリンセス☆の特別イベントが関係してるのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。そのイベントに私の会社も取材に行く事になったんだけどね。うちの社長がそのイベントの最高責任者と昔から仲が良くて、一般の応募枠とは別にテレビ映えしそうな参加者を何人か見繕ってくれないかって頼まれたのよ」
恵理さんはやれやれといった感じで、コーヒーに一口飲むと改めて話を続ける。
「それで回りまわって私が参加者を連れてくる事になっちゃったんだけどね。子供番組の事は私は良く分からないから、子供の知り合いで一番話を理解出来そうな純君に相談しようと思って来たんだけ・・・」
恵理さんの言葉は最後まで言う事無く途中で黙ってしまった。
その顔を見ると、何やら凄く驚いた様な表情をしている。
俺の後ろに何かあるのかと思い俺は振り向いてみる。
「如何したんですか恵理さん?後ろに何かあ・・・」
俺も恵理さん同様に振り返った瞬間、固まる事となった。
あのような光景を見れば、俺や恵理さんの様になるのは致し方無いだろう。
先程までテーブルの隅で、暗い雰囲気を醸し出していた筈の四人組みが、いつの間にか俺の後ろにやって来ており、恵理さんを何かの期待を秘めた輝く瞳で、見つめていたのである。
「ど、どうしたのかしら皆?」
いち早く復活した恵理さんが辛うじてそう質問を返した。
その言葉に四人は、気合いの入った声を出して答える。
「「「「その話詳しくお願いします!!!!」」」」
その声は周りの空気を震わせる程に思えた。
「・・・はい」
この気迫の中で、返事を返す事が出来た恵理さんを、俺は素直に心から尊敬した。
「・・・良かったですね。恵理さん」
「・・・ええ、そうね」
恵理さんが探していたイベントの特別参加枠は、見事なのはちゃん達に決定した。
なのはちゃん達四人は恵理さんに口々にお礼を言うと、早速準備をしなくてはと、息巻いて翠屋を飛び出していった。
それにしても、なのはちゃん達がマジカルナースメイドプリンセス☆にかける情熱は、物凄いものを感じる。
四人に囲まれた恵理さんは精神的に燃え尽きたのか、俺に先程の返事を返した後は、カウンター席で項垂れていた。
恵理さんの口振からするに、最初からなのはちゃん達に頼むとは思っていたが、分かっていてこの様な状態にされる事から、その情熱の凄さと恐ろしさが垣間見える。
「・・・お水。お持ちしますね」
俺は燃え尽きて白い灰となっている、恵理さんを労わる様に話しかけた。
「・・・お願いするわ」
「かしこまりました」
早く潤さないと本当に灰になりそうなテンションをしていたので、俺は急ぎコップに水を汲み、恵理さんに与えることにした。
「ふう・・・助かったわ。純君」
水を飲んで潤いを取り戻した恵理さんは、完全とは言い難いが、何とか普通に会話が出来る程度までには回復した様である。
これならば続きを話しても大丈夫そうだ。
「それで、本題は何なんですか?恵理さん」
俺は恵理さんに質問してみる。
「あら、何の事かしら?」
俺の質問に、分からないという素振りを見せる恵理さんだが、悪戯に成功して喜んでいる子供の様なその表情をしている事から、それが嘘だという事は容易に想像できる。
「誤魔化さなくて良いんで、話があるんなら聞くだけ聞いてあげますよ」
この人が子供番組のイベントで相談しに来るというのは、如何にも怪しいと俺は思っていたのだが、先程の恵理さんの反応で、俺の中の疑惑は確信へと変わっていた。
暫く俺と恵理さんの無言の対峙が続いたが、恵理さんの一言でその沈黙は終わりを告げる。
「ふふふ。お姉さん、賢い子は好きよ」
先程のなのはちゃん達とのやり取りさえなければ、ミステリアスな感じになっていたのかもしれないが、今となっては、そのリアクションは如何したものかと思ってしまった。
俺の哀れさを同情する視線に気付いたのか、恵理さんは恥ずかしさの為か、頬を赤く染めて照れ始めた。
「い、一度、こういうやり取りをしてみたかったのよ!良いじゃない少しくらい乗ってくれたって・・・」
歳の割に可愛い事を言う恵理さん。
本来俺の中身の年齢は今の恵理さんと同じぐらいなせいか、妙に愛らしく見えてしまった。
まあ、傍から見たら、下手すれば親子程歳が離れている訳だけどね。
恥かしがる恵理さんに何やら癒されるが、俺はSでは無いので、そろそろ話しを進める事にした。
「ふざけるのはこれ位にして、本題を話しましょうよ」
「そ、そうね」
俺の助け舟に恵理さんも乗ることにした様で、一度大きく咳払いをしてから、その本題の話を始めた。
「さっき話していたイベントの話なんだけどね。あれも嘘じゃないんだけど、それとは別にもう一つ私は頼まれた事があるの」
「何なんですかそれは?」
「実はイベントの開催告知があった翌日に、イベント企画部宛てに脅迫文が届いたのよ」
「脅迫文?」
「ええ、最初は子供番組のイベントでって事で、タダの悪戯だろうと企画部の人たちは、その脅迫文を無視していたのよ。でもね・・・」
「何か無視できない出来事が起こったって事ですか?」
俺の予測に恵理さんは静かに頷くと続きを話す。
「そうなのよ。それから連日イベントの関係者が人間と同じぐらいの大きさの化け物に脅されたって証言が相次いでね。その脅しの内容が脅迫文に書かれている事を実行しろというものだったそうよ」
何となく話の流れから、恵理さんが俺にこの話をして来たのか、見当が着いてきた・・・
「その脅迫文の内容って何なんですか?」
俺の質問を聞いた恵理さんは俺に一枚の用紙を差し出してきた。
「これは?」
「企画部の人に頼んで脅迫文のコピーを貰ってきたのよ。それと同じものがイベント企画部に届いて、化け物がその内容を実行しろと関係者に脅しをかけてるの」
俺は恵理さんから用紙を受け取り、何が書かれているのかを、自らの目で確認してみる事にした。
【企画部へ告ぐ!!!
拙者はマジカルナースメイドプリンセス☆を心から愛する一ファンである。
今すぐ今回のイベントを中止成されよ!
崇高なるマジカルナースメイドプリンセス☆を愚かな現実世界で汚す事は拙者が許さん!!!
これは警告である!
もしもこの要求が通らず、イベントが開催されるのであれば、不本意であるものの此方も実力行使を省みない事をここに宣言する!!!
マジカルナースメイドプリンセス☆を愛する一ファンより】
「・・・」
「どう思う?」
恵理さんが紙に書かれた内容を全て読み終えた俺に質問する。
どうもこうもこれは・・・
「何から言えば良いのか迷うんですが・・・取り敢えず、この文がとても痛い文章だという事だけは理解しました」
こんな文書が送られてきたら、真面目に仕事している人は誰だって無視するのは当たり前だ。
「そんな文書で、直接脅しをかけてくるのも化け物だって話だから、警察も捜査してくれないのよ。だからせめて証拠さえあれば、警察も動いてくれるんじゃないかって事で、私が調べる事になったって訳なのよね」
「それでこの話を俺にしてきたのはやっぱり・・・」
恵理さんは何処か含みのある笑みを浮かべた。
「相手が化け物なら、専門家に頼むのが筋だと思わない?仮面ライダー君」
俺は苦笑いを浮かべながら、やっぱりこの人は苦手だと心底思った。