魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第42話 とても危険な潜入調査【前編】

「本当に僕達だけで行くの?」

 

「うん。暴走プログラムの存在が分かった以上、このまま放って置く訳にはいかないからね」

 

『そろそろ例の地上げ屋の事務所の近くだ。気を抜くなよマスター』

 

俺とメカ犬、そして真昼君改め真昼ちゃんの二人と一匹は、山頂で戦ったその翌日、買い物をしてくるという理由で山を降り、例の地上げ屋が住んでいるという事務所を目指していた。

 

何故そんな事になったのかというと、先日の夜に俺が真昼ちゃんに相談された事に起因している。

 

真昼ちゃんの話では、地上げ屋は過去にも玄大さんにあの土地を寄越せと強要したらしいのだが、その度に返り討ちにあっているらしい。

 

つまりあの地上げ屋が来たのは一度や二度ではないのだ。

 

今も山に立ち入ってきたり、何処から手に入れたのか、暴走プログラムまで使って脅しに掛かってきた事から、かなりの執念すら感じる。

 

最近のオーバーやメルトが使っているのとは、明らかにタイプの異なる暴走プログラムを所持している人間が増えてきた中で、誂えたかのような地上げ屋の一件。

 

どうにも偶然とは思えず、この話をメカ犬に話した結果、もしかしたら何か糸口が掴めるかもしれないという事になり、俺達はこういった情報に精通している恵理さんから、地上げ屋が居るという事務所の所在を聞き、こうしてやって来た訳だ。

 

「もしかしたら危ない事になるかもしれないから、やっぱり真昼ちゃんは戻った方が良いんじゃ……」

 

「今更何を言ってるのさ純。元々僕達の問題なんだから、放って置くなんて出来る筈がないじゃないか!」

 

ここに来るまでに、何度か俺と真昼ちゃんがした問答を繰り返すが、真昼ちゃんの答えはどうやら変わらないらしい。

 

山でホルダーに直接危害をを加えられそうになって、怖いという態度が俺にでも分かるし、何度も俺とメカ犬だけで行くのは危ないから止めろと言ってくるにも関わらず、それでも行くというならば自身もついて行くと聞かないのである。

 

真昼ちゃんにとって、それほどまでに玄大さんとあの道場は大切なのだろう。

 

「……分かったよ。でも本当に危ないと思ったら、迷わず逃げてね。俺とメカ犬は大丈夫だからさ」

 

俺の忠告に納得はしていないと顔に書いてある表情を隠そうともしない真昼ちゃんだったが、取り敢えず頷いてはくれたので、俺達は改めて行動を開始する。

 

恵理さんの話によると、あの地上げ屋は五階建ての貸しビルの最上階を拠点としているらしい。

 

入り口はビル内部の階段と外側に設置された非常階段の二箇所のみ。

 

一応窓はあるのだが、ベランダは設置されておらず、隣接する建物との位置関係から考えても、人間が侵入するのは極めて困難だ。

 

ハシゴでも使えば不可能ではないだろうが、一般の歩道から丸見えとなってしまうであろう事を考えると、現実的ではない。

 

「やっぱり、普段はあまり使われてない非常階段から様子を見てみるのが一番かな?」

 

『うむ。通常のルートから行くのは鉢合わせする可能性が高いだろうからな。ワタシもマスターの提案がこの場ではベターな判断だと思うぞ』

 

「僕も二人がそれで良いなら別に」

 

特に反対意見も出なかったので、俺達はなるべく足音を立てない様に、非常階段を登っていく。

 

数分掛けて五階に辿り着いた俺達は、上半分が透明のガラス張りとなっている扉から、こっそりと中の様子を窺ってみる。

 

目の前には例の地上げ屋達の姿は無く、細い廊下が続くだけで、目に付く物と言えば非常用に設置された消火器だけだった。

 

どうやらこの廊下の先に、幾つかの部屋がある作りとなっているらしい。

 

通路の蛍光灯が点いている事から、誰かしらが居る可能性は高いが、すぐに人が廊下に出て来そうな気配は無いようだ。

 

慎重に非常用の扉のドアノブを回すと、幸いな事に鍵はかかっておらず、潜入は容易に成功した。

 

「取り敢えず上手く忍び込めたけど、ここからどうするかな?」

 

『兎に角このフロア全体を探ってみる他あるまい。どちらにしても何時までもここに居ては見つかる危険が高いからな。ワタシが生体反応が感じられない部屋に誘導するから、二人共ワタシの後に着いて来てくれ』

 

俺と真昼ちゃんはメカ犬の提案に頷き、足音を立てない様に慎重に廊下を進んでいく。

 

メカ犬の話によると運が良い事に、どうやら地上げ屋達はこのフロアで一番大きな部屋に集まっていて、他の部屋は全て無人となってるらしい。

 

俺達はその一番大きな部屋の探索は諦め、誰も居ない二番目に大きな部屋へと足を踏み入れる。

 

部屋には複数のデスクとパソコンに、整頓されたファイルが収納された棚が設置されていた。

 

単純に考えるのであれば、ここは地上げ屋のメインとなっている作業場なのだろう。

 

隅に山積みとなったダンボールがあったのが視界に入り、前世の頃にゲームで見た事のある蛇的なコードネームの人を思い出し、何となく少し似ているこの状況から、同じ行動をとってみたくなるという欲求が浮上するが、今はそんなふざけた事をしている場合ではないので、真面目に捜査をを開始する。

 

まず俺達が取り掛かったのは、棚のファイルだ。

 

二人と一匹で分担してファイルに閉じられた書類に目を通していくが、どれも地上げした土地のデータ等で、俺達が求める情報は無かった。

 

棚のファイルを調べた後は、各々が怪しいと思われる場所を探索する事にした。

 

「……そう言えば、まだパソコンのデータを見てなかったな」

 

俺はデスクの引き出しを漁っていた際に、パソコンが視界に映り、一応の確認をしようと思いながら一番近くにあったパソコンを起動状態にさせる。

 

デスクトップには基本的なアイコンの他に、幾つかのフォルダがあったので、それを順番にチェックしていく。

 

その殆どは先程もファイルで見た地上げに関するデータが殆どで、特に目新しい情報は無い。

 

特に新たな発見の無いまま、最後のフォルダを開こうとしたその時だ。

 

「あれ?このフォルダだけ、パスワードが必要なのか」

 

開こうとしたら、パスワードの入力画面が表示された。

 

そもそも今までチェックしたデータだって、部外者や他の同業者に見られたら不味いデータばかりだった筈だ。

 

寧ろ今まで何のパスワードも設置されていなかった方が、おかしいと言えるかもしれない。

 

『どうしたのだマスター?』

 

俺の様子を見て気になったのか、別の場所を探していたメカ犬が、デスクに飛び乗って俺に問い掛けてきた。

 

「いや、パソコンのデータを漁ってたんだけど、どうやらこの先のデータを見るにはパスワードが必要らしいんだよ」

 

『……うむ。ならばワタシが解析してみよう』

 

事情を説明すると、メカ犬はそう言って、パソコンのプラグの差込口に前足を引っ掛けた。

 

すると、パソコンの画面上に様々な英数の羅列が流れ始め、パスワードの入力画面の入力部分が一つずつ黒い丸の表記で埋まっていく。

 

「メカ犬……お前はこんな事も出来たんだな」

 

既に一年以上の苦楽を共にしてきた相棒の新たな能力の発覚に、俺は驚愕しながらも感嘆の声を上げる。

 

それから十秒もしない間に、全ての空白部分が黒い丸で埋まると、メカ犬が前足をプラグから離した。

 

『終わったぞマスター。これでデータを確認出来る筈だ』

 

「あ、ああ」

 

俺はメカ犬の合図に従い、マウスを操作する。

 

すると新たな画面が表示され、パスワードによって見る事が制限されていたデータの一覧が、俺とメカ犬の視界へと広がった。

 

「……え?これって……」

 

『まさか、こんなデータがここに……』

 

俺とメカ犬がそのデータの一覧を見て発した最初の言葉は、どれも驚愕を表すものだった。

 

データの内容は、言わば個人情報と言えるものだった。

 

しかしそれは今までのような土地に関してではなく、完全に個人を対象とするパーソナルデータだったのである。

 

最近撮られたであろう顔写真を初め、名前や住所に家族構成や当人しか知りえないであろう小さな情報。

 

しかし、俺とメカ犬が驚いた部分は其処ではない。

 

俺達は、そのデータの人物達の顔を全て知っていたのだ。

 

名前までは知らない人も多数居る。

 

だが、どんな例外も無く俺とメカ犬は、そのデータに映る顔写真の全てと、一度は遭遇したと確信を持って言う事が出来ると断言出来た。

 

何故ならば、その顔は全て……。

 

「……どうして、暴走プログラムを所持していた人達のデータが?」

 

俺は思わず答えを返してくれる相手が居ないと知りながらも、そう言葉にせずには居られなかった。

 

一通りのデータを見て気付いたのだが、全ての暴走プログラムの所持者が載っている訳では無いという事が分かった。

 

しかもデータには一貫した法則性が存在していたのである。

 

『どうやらこのリストに載っているのは緋色の暴走プログラムを所持していた者達だけらしいな』

 

「……そうみたいだな」

 

メカ犬の言う通り、このデータのリストに載っているのは、俺の知る限り、例の赤い暴走プログラムでホルダー化した人達ばかりである。

 

こんなリストがどうしてこの地上げ屋のパソコンに、データとして保存されていたのか現状の持っている情報だけでは、どうにも理解出来ない部分が多過ぎる。

 

「もしかしたら、ここは俺達が思っている以上に重要な場所なのかもしれない」

 

だとしたら、本来はホルダー関係と無関係な真昼ちゃんを、これ以上この場に留まらせておくのは危険だ。

 

『取り敢えず、一旦この場を離れた方が良いかも知れないな』

 

メカ犬も俺と同様の事を考えていたのか、一時この場から撤退する事を推奨してくる。

 

「ああ、そうだな。ここは一度戻って……」

 

俺がメカ犬に返事をし終える前に、何処からかノイズの様な音が響く。

 

良く耳を澄ますと、そのノイズ音は天井近くから聞こえた音だった。

 

視線を上に向けると、其処には黒いスピーカーが備え付けられている。

 

恐らく先程のノイズ音は、あのスピーカーから漏れていたと思って間違いないだろう。

 

だが一つの謎が解けた事に対して、俺は安心するどころか、この事態に異様な胸騒ぎを覚える。

 

そしてこの胸騒ぎは、数秒と掛からない間に、現実のものへとなってしまう。

 

【「態々こんな場所まで来て頂いた御客さんなんだ。もう少しゆっくりとしていったらだうだい」】

 

スピーカー越しから、最近聞き覚えのある男性の声が聞こえて来る。

 

「その声は!?」

 

スピーカーから聞こえる男性の声に対して、真昼ちゃんの声に怒りの感情が宿る。

 

それで確信したという訳では無いが、どう考えても先程のスピーカーから聞こえた声は、先日に山で遭遇した地上げ屋の一人に間違いない。

 

確か紫のスーツを着ていた男の声の筈だ。

 

「……ゆっくりしていって欲しいなら、せめてお客さんには御茶ぐらい用意するのが最低限の礼儀じゃないですかね?」

 

皮肉を込めた言い回しをしながら、俺は部屋全体を見回して、こうなった要因を探る。

 

俺達の潜入がばれていたという事は、何処かしらに監視カメラでも設置されていると思ったのだが、そういった類のものは、何処にも見当たらない。

 

【「それは気が利かずに申し訳ないですね。ところで先程から何かお探しのようですが?」】

 

監視カメラは見当たらないが、俺の姿を離れた場所から見ているのは、スピーカーから聞こえる声から明らかだ。

 

ただ単に俺のような素人には発見が困難なカメラが何処かに設置されているのか、それとも……。

 

「もしかして!?」

 

俺はある一点に視線が向った際に、まさかという思いから、それに手を伸ばす。

 

「どうしたの?」

 

『もしかしてそれが原因なのか?』

 

俺の行動に、真昼ちゃんとメカ犬が疑惑の声を投げ掛ける。

 

確証は持てないが、俺が今掴んだこれ以外に、この場所を他の位置から見るのは考え辛い。

 

俺が手にしたのは、パソコンに後付けで取り付けられたタイプのWEBカメラだった。

 

【「おや? 思ったよりも早く見つかってしまいましたね」】

 

スピーカーから聞こえる、少し残念そうな声を聞き、俺は確信する。

 

「パソコンを起動した時に、このカメラも同時に作動してこの部屋の画像が、筒抜けになってたって事で良いのかな?」

 

【「中々に滑稽で楽しかったですよ」】

 

どうやらパソコンの電源を入れてしまった俺のせいで、見つかってしまったようだ。

 

その点については大いに反省しなければと思うが、それ以上にパソコンの中に入っていたデータを見つけた事も大きな発見の一つである。

 

「見つかったなら、ついでに聞いておきたい。このパソコンに入っていた個人データはどういう意味だ?」

 

【「どういう意味に思えますか? 仮面ライダーさん」】

 

俺を仮面ライダーと呼ぶという事は、まず間違いなくこの男は何かを知っていると見て良いだろう。

 

ここまできたら、少しでも多くの情報をこの男から得ておきたい。

 

「少なくてもここが、ただの地上げ屋の事務所だとは思えないって位かな?」

 

【「いえいえ、とんでもない誤解ですよ。私達はただのしがない地上げ屋です」】

 

「ただの地上げ屋にしては、物騒過ぎるんじゃないかな?」

 

【「ははは。私達の業界は多少なりともそういった場合も多々としてありますが、それは言い過ぎでしょう」】

 

あくまでもただの地上げ屋だと言い張る男の言葉は、この状況から誰がどう考えても嘘くさいとしか思えない。

 

【「何か大きな誤解をされているようですが、あくまで私達の本業は地上げ屋でしてね。そのリストに関して言えば割の良い副業なんですよ?」】

 

『副業だと?』

 

「……随分と物騒な副業だ」

 

地上げ屋の言葉には、何も信憑性も感じられないが、もしも仮にこの声が嘘偽りの無い証言をしていたとするならば、これは……。

 

【「さて、楽しいお話はこれまでにしておきましょう。お茶は出せませんが、代わりにこれから私達の手厚いおもてなしを受けて頂きましょうかね」】

 

俺が思考を巡らせて、一つの仮説を組み上げたのとほぼ同時に、スピーカーから聞こえる声が、不穏な言葉を口にする。

 

『キンキュウケイホウキンキュウケイホウキンキュウケイホウ……』

 

更にそれとほぼ同時に、タッチノートから警報が鳴り響く。

 

『マスター!』

 

メカ犬の呼び掛けに答えるよりも早く、俺は真昼ちゃんの抱え込む様に、その場から咄嗟に飛び退く。

 

その数瞬後、壁の一部が吹き飛び、一体の異形の怪物、ホルダーがその姿を現した。

 

茶色の毛全身を覆われた身体と、鋭く尖った耳に鋭利な牙を剥き出しにする口。

 

腰の付け根からは、ふわりとした長い尾が垂れている。

 

人間と酷似しながらも、明らかに人間とは違うその特徴が何に似ているのかと例えるのであれば、狐が一番近いと言えるだろう。

 

「真昼ちゃんは下がってて!」

 

俺はホルダーとの間に壁の様に立ち塞がりつつ、真昼ちゃんを後ろへと下がらせる。

 

『行くぞマスター!』

 

「ああ!」

 

メカ犬に返事をしつつ、俺はタッチノートを開きボタンを押した。

 

『バックルモード』

 

タッチノートから流れる音声と共に、俺の隣に居たメカ犬がベルトに変形して俺の腹部へと巻き付く。

 

「変身」

 

音声キーワードを紡ぎ、俺はタッチノートをベルト中央部分の溝へと差し込む。

 

『アップロード』

 

それと同時に俺の全身は光に包まれ、その姿を一人の戦士へと変えていく。

 

メタルブラックのボディーに、赤い二つの複眼という特徴的な概観にV字型の角飾りと、ベルト部分から四肢へと伸びる銀色のライン。

 

仮面ライダーシードへと変身を果たした俺は、ホルダー目掛けて飛び掛る。

 

俺とホルダーはそのまま揉み合う形のまま、壁に突っ込みビルの外へと飛び出した。

 

外へと飛び出してから、一旦飛び退いて距離を置くと、ホルダーの尾の先端にオレンジ色の炎が灯る。

 

『来るぞマスター!』

 

メカ犬が俺に呼びかけた直後、ホルダーが尾を勢い良く振り被り先端に灯っていた炎が俺に向って放たれた。

 

「はっ!」

 

俺は既にメカ犬の呼びかけと同時に、左方向へと側転を開始していた事により、何とか飛んでくる炎の猛威を回避する事に成功するが、ホルダーの尾には既に第二の炎が灯っている。

 

体勢を立て直した直後には既にホルダーが尾を振り被る動作に入っており、俺は再度として側転で飛び掛る炎を回避して難を逃れた。

 

「そっちが飛び道具で来るならこっちも!」

 

俺じは三度目となる炎の猛攻を斜め後ろにバックステップで避けながら、ベルトの右側をスライドさせて青いボタンと黄色のボタンを順番に押していく。

 

『サーチフォルム』

 

『サーチバレット』

 

メタルブラックのボディーは鮮やかなスカイブルーへと染まり、右手にはこのサーチフォルムの専用武器である銃、サーチバレットが光の中から生成される。

 

「このっ!」

 

標準をホルダーが放った炎に合わせて引き金を引く事によって、撃ち出された数発の光弾が炎を掻き消す。

 

その後も何度か同じ展開を繰り返すが、ホルダーの方が俺が引き金を引くよりも炎を灯すのが遅かった事もあり、サーチバレットから放たれた光弾の数発が、ホルダーの身体へと届き、火花を散らせながら後退させる。

 

このまま一気に押し切れば勝てる。

 

そう確信した直後、光の球体が上空から舞い降り、ホルダーの体内へと吸収された。

 

「こんな時に!?」

 

『気をつけろマスター!』

 

俺とメカ犬はその光の球体、試練の光がもたらす影響を知っているからこそ、更に厄介な事態へと発展した事に、苦渋の声を上げてしまう。

 

その間にも試練の光を吸収したホルダーの身体が、大きな変化を始める。

 

まず全体を覆っていた茶色の体毛がその色を濃くして限りなく黒に近い色へと変化していく。

 

更に一尾だったはずの尾が、九尾へと増え、その先端には常に炎が灯されている状態へとなってしまった。

 

明らかに強化されたホルダーを前に、俺は先手を打つ為に、駆け寄りながらサーチバレットによる銃撃を浴びせ掛け続ける。

 

銃撃を仕掛けながら接近して、その勢いのままホルダーの腹部へと正面から蹴りを見舞うが、吹き飛ばされるどころか、びくともしない。

 

そのままホルダーは俺の足を掴み、無造作に投げ飛ばす。

 

だがそれだけでは終わらない。

 

投げ飛ばされた直後、俺に追撃を仕掛けるように、九尾から放たれた炎が一斉に俺を襲う。

 

俺は投げ出されて不安定なままの状態で、サーチバレットを構えて、何とかその炎の全てを撃ち抜くが、かなりの無理をしながら迎撃した為に、受身の取れないまま、地面へと倒れてしまう。

 

更なる追撃が来る事を予想し、痛みを堪えながら素早く立ち上がるが、強化されたホルダーの強さはかなりのものだという事を、俺は改めて実感した。

 

高い威力の遠距離攻撃と、堅牢なまでの防御力。

 

これらを打ち崩すにはどうするべきか……。

 

『このまま攻撃を続けてもジリ貧になってしまうぞ』

 

「そうだな。それなら……」

 

それなら更に攻めるだけだ!

 

俺はメカ犬と会話を交わしつつ、ベルトからタッチノートを引き抜き操作を開始する。

 

『ガイア・コール』

 

タッチノートから音声が響き、俺の耳に奴の近付いて来る足音が聞こえて来る。

 

『お待たせしましたマスター!』

 

何故かビルの屋上から颯爽と舞い降りてくるメカ竜を前に、何でそんな場所からやってくるんだと思いながらも、俺は更にタッチノートの操作を続ける。

 

『スタンディングモード』

 

更に響く音声と同時に、アタッチメントパーツへと空中で変形したメカ竜を掴み、俺はベルトの左側をスライドさせながら、アタッチメントパーツとなったメカ竜を差し込む。

 

『サーチ・ガイア』

 

俺の周囲に展開されたメタルレッドの追加装甲が、次々と全身に装着されていき、俺は通常時のサーチフォルムでは到底出しえない力を発揮する事を可能とする姿へとなる。

 

その直後に、再び九つの炎が俺目掛けて飛び掛るが、俺は慌てる事無くアタッチメントパーツのレバー下のボタンを押した。

 

『ガイアブレイガン』

 

鳴り響く音声と同時に放たれる光が生成したメタルレッドの銃、ガイアブレイガンを左手に掴み、俺はサーチバレットと両手撃ちで全ての炎を撃ち抜き四散させる。

 

俺は一瞬だけたじろくホルダーに向かい、この戦いを終わらせる決意と共に言い放つ。

 

「この悪夢はここで終わらせる」


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