魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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第32話 交わされる拳【前編】

「良く来てくれたね」

 

海鳴大学のとある一室で白髪で細身の初老の男性、つまりこの部屋の管理者である森沢教授が一人の来客をにこやかに微笑みながら迎え入れる。

 

「……いや、挨拶は良いんだが森沢さん……この部屋にだけ局地的な台風でも来たのかい?」

 

招き入れられた客人は一人の若い男性だった。

 

日本人の成人男性としては高めと思われる長身に、同じく日本人らしい黒髪は短く刈り込まれている。

 

シックなジーンズと薄手の黒いジャケットという服装の上からでも十分に分かる引き締まった肉体は、見る者にこの人は普段から何かしらのスポーツをしているのではと連想させるであろう。

 

そんな男性が生まれつきなのか、野性味を帯びた鋭い瞳を部屋の周囲に視線を泳がせながら呟いた。

 

男性が疑問に思うのも当然の事である。

 

森沢教授と男性が今居る室内は、本来であれば何百冊にも及ぶ本が本棚に納められているであろう筈なのに、それを収納する棚の殆どが破損した状態になっている上に、その棚にしまわれていた本の数々が無残に床に転がっているという状態だったのだ。

 

更に部屋の窓ガラスが破れているという悲惨な状態であり、いきなりこの様な部屋を見せられたら、空き巣にでも遭ったか、先程の男性が言った通り、部屋の中に超局地的な台風が起こったとでも思うしか無い。

 

「ははは。実は昨日に色々とあってね……まあ、そんな事よりも用件を済まそうじゃないか。君も帰国したばかりで疲れているだろうしね」

 

男性の質問に対して森沢教授は、軽く笑いながらこの部屋の惨状を軽く流すと、男性の前に一つのアタッシュケースを差し出した。

 

この惨状を笑い話で流す事など普通であれば、容認出来る事では無いが男性は特に気にした素振りを見せる事も無く、森沢教授が己の目の前に差し出したアタッシュケースに目線を移した。

 

「俺を態々ここに呼んだって事は……完成したんだな?」

 

男性はそのアタッシュケースの中身が何なのか理解している口振りで森沢教授に確認を取る。

 

「そう。これが私の研究の一つの到達点とも言える、リンクシステムを搭載したプロトモデルだ。君には以前に話したた通り、このプロトモデルのテスターになって貰いたい」

 

「分かってますって。そういう契約だからな。その代わり報酬はたっぷり頼みますよ?」

 

「ああ。君にはその仕事に応じて、十分に満足のいく報酬を準備しよう」

 

「それじゃあ、改めて契約成立って事で!」

 

森沢教授の言葉に納得した男性は差し出されたアタッシュケースを手に取り踵を返す。

 

「ああ待ちたまえ。君にもう一つ渡すものがあるんだ」

 

部屋を出て行こうとする男性に待ったの声を掛けた森沢教授は、一枚のカードを男性に手渡した。

 

「これは?」

 

「そのカードを常に携帯しておいてくれたまえ。まあ簡単に説明すれば、車を運転する際に必要となる免許証みたいな物だ。困ったらそれを見せて説明すれば大丈夫だろう。他に必要な物はそのケースにほぼ入れてあるから、何か必要なものが出たら、私に相談すると良い」

 

「……なるほどね。それじゃあ改めて俺は行きますよ。久し振りにこっちに帰って来たんで、久し振りに顔を見たい奴がいるもんで」

 

森沢教授からカードを受け取った男性はそう言うと、今度こそ部屋を後にした。

 

男性が部屋を出てから暫くして、森沢教授は遠くに視線を泳がせながら静かに一言だけ言葉を零す。

 

「もうこれで……後戻りは出来ないか……」

 

その声を聞く者は、その言葉を発した本人以外の誰にも届く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ純君。最近のヤスさん元気が無いと思わん?」

 

海鳴市で知る人ぞ知る喫茶店、翠屋。

 

美男美女の店員ばかりと噂のこの喫茶店の中で、何故か一人平凡な顔立ちをした子供店員として、すっかり常連客の皆さんの認識に定着してしまった俺、板橋純に一人の少女が話し掛けてきた。

 

その少女は俺の友人の一人でもある、客席の代わりに普段から愛用している車椅子に腰を下ろしているはやてちゃんである。

 

俺が空いた客席に置かれた食器類を片付けていた所、近くの席に居たはやてちゃんが声を潜めながら話し掛けてきたのだ。

 

「……そうなんだよね。何だか三日位前から様子が変なんだよ」

 

はやてちゃんと同様に俺も声を潜めながら、返事をしつつ視線を店内のカウンターへと向ける。

 

其処には俺と同じくこの翠屋でアルバイトをしている店員であり先程の話題に上がったワイルド系なイケメンがカウンターを布巾で拭いているのだが、しきりに溜息を零していた。

 

「ああやって仕事中にも溜息ばっかり吐くし理由を聞いても、何でも無いんで気にしないでくださいの一点張りなくせに、時々こっちを見て何か言いたそうにするし……気にするなって言う方が無理な話だよ」

 

「何か悩みでもあるんやないかな……」

 

「悩みって例えばどんな……はっ!?」

 

俺はヤスの挙動を見ながらはやてちゃんと会話を続ける中で、突如として危機感を感じ後ろを振り返った。

 

それは今までの経験から分かり切っていた事だというのに……俺はヤスに心の中で謝罪の言葉を紡ぎながらその危機感の正体達に声を掛ける。

 

「……何時から後ろに居たの?なのはちゃん達」

 

その危機感の正体は俺とはやてちゃんの後ろに陣取っていた幼馴染のなのはちゃんを始めとして、すずかちゃんとアリサちゃんにエミリーちゃんというお馴染みの面々が聞き耳を立てていた……

 

「三日位前って辺りから居たよ」

 

俺の質問に律儀に返事を返すなのはちゃんの言葉により、ほぼ最初の辺りから聞いていた事が分かった。

 

「心配だねヤスさん……」

 

「純。本当に心当たりは無いの?この中じゃ純が一番親しいでしょ」

 

続いてすずかちゃんがヤスを見ながら心配そうに呟き、アリサちゃんが俺に詰め寄って来る。

 

すずかちゃんの言う通り、俺もヤスの事は心配だが、残念だが俺には全くもって心当たりが無い。

 

先程もアリサちゃんが言っていたが、確かにこのメンバーの中では俺が一番ヤスと親しく話す機会も多いが、はやてちゃんにも話した通り、頑なに話そうとはしないのだ。

 

「まあ、待つのじゃアリサ」

 

其処でエミリーちゃんが、尚も詰め寄るアリサちゃんに待ったの声を掛ける。

 

「そうやでアリサちゃん。純君に聞くのはお門違いや。それよりも……」

 

更にはやてちゃんが止めに入ったかと思うと、エミリーちゃんとはやてちゃんは互いに視線を交わした後、不敵な笑みを浮かべた。

 

「な、何を考えてるのよあんた達……」

 

その不敵な笑みに、毒気を抜かれたのかアリサちゃんが若干引き気味に質問をぶつける。

 

俺となのはちゃんとすずかちゃんは、その光景を苦笑いしながら見守る事しか出来なかった。

 

「何って……そんなん決まってるやろ?」

 

「分からぬのならば、本人に問い質せば良いのじゃ」

 

はやてちゃんとエミリーちゃんが直球ストレートな回答を答えるが、それが出来ていれば最初から苦労はしない。

 

第一この店で働いている人間は俺も含めて全員が一度はヤス質問をしているのに、その誰一人にも教えていないのだ。

 

今更聞いた所で、ヤスが教えてくれるとは思えない。

 

思えないのだが……あまりにも自信に満ちた二人の微笑みを前に、嫌な予感が込み上げて来るこの感覚を、残念ながら気のせいだと一蹴する術を俺は持っていなかった。

 

そんな嫌な予感が込み上げる笑顔を浮かべたはやてちゃんとエミリーちゃんは、俺と同様に引き気味のなのはちゃん達を近くに来る様に呼び寄せると、まるでアメフト選手達がスクラムを組むかの如く円になって集まると何やらコソコソと密談を開始する。

 

何やら時々少し大きめの声が俺の耳にも届き、女の武器だとか、イチコロだとか、落とす……等という単語が聞こえてくるのは、疲れている俺の耳が幻聴を捉えているからだと信じたい……

 

暫くして話がついたのか、なのはちゃんが円の中から抜け出すと、桃子さんがお菓子作りをしているキッチンの中へと消えていく。

 

程無くしてなのはちゃんがキッチンから戻ってくると、その手には小さな小箱が握られていた。

 

その箱を持って再び円の中へ戻っていくと、何やらにわかな賑わいを見せてから、はやてちゃんの掛け声の下、全員が拳を上に振り上げてオーと気合の入った声を張り上げる。

 

最初は俺と同じく引き気味だったなのはちゃん達が、何時の間にかノリノリになっているのが気になるし、今からその被害者となるであろうヤスが何処か不憫にも思えたが、ヤスが何を悩んでいるのか、俺も激しく気になるので、俺はバイトの仕事を真面目にしつつ、なのはちゃん達の動向を見守る事にした。

 

「なあ、ヤスさん」

 

すずかちゃんに車椅子を押してもらい、ヤスの目の前にまで来たはやてちゃんが、ヤスに綺麗な微笑みを向けながら話し掛ける。

 

「……ああ。どうしたんですかい?はやての嬢さん」

 

先程から続いていたなのはちゃん達による密談サミットにも気付いていなかったのだろう。

 

はやてちゃんに呼ばれた事によって、ヤスの意識が現実世界に舞い戻ったたらしく、返事をするが先程なのはちゃん達が行っていた奇行について何も触れないという事は、気付いていなかったと考えて間違い無さそうだ。

 

これは思った以上に重症かもしれない。

 

「ねえヤスさん。最近何だか元気が無いみたいですけど、やっぱり何か悩みがあるんじゃないんですか?」

 

更になのはちゃんが、はやてちゃんの呼び掛けによって現実世界へと意識を取り戻したヤスに対して、この翠屋の全員が一度はした質問をぶつける。

 

「なのは嬢さん……何か皆に余計な心配をさせてしまってすみません。でも、本当に何でも無いんで心配しないでください」

 

やはりヤスの口から返ってきた返答は、俺達に対するものだった。

 

俺達の場合は、此処から先は無理に問い詰める訳にも行かないと思い身を引いたのだが、彼女達が次に移した行動によって店内の空気が一変してしまう。

 

……ヤスを取り囲む五人の少女の頬に、一滴の涙が伝い落ちた。

 

「な!?ど、どうしたんですか!?」

 

「……だってヤスさんが心配なのに……何も話してくれなくて……」

 

その様子に慌てふためくヤスに、すずかちゃんが目元を両手で押さえて涙を拭いながら答える。

 

「私達……本当に心配してるんだからね!」

 

「そうじゃ……それともヤスは我らがお主を心配するのは迷惑だと思っておるのか?」

 

すずかちゃんを後ろから的確に援護射撃するアリサちゃんとエミリーちゃんも、同じ様に目元に手を当てて涙を拭う。

 

……さて。

 

この様な光景を前にして何故俺がこんなにも冷静な態度でいるかと言うと、これがはやてちゃんとエミリーちゃんによる作戦だと知った上で、更にそのカラクリを直接この眼で見てしまったからである。

 

丁度俺が今居る位置からすると、舞台の劇を観賞するが如く、ヤスとなのはちゃん達が側面で横に並ぶ形に見えているのだが、ヤスからは見えない死角の位置。

 

つまりはやてちゃんがヤスに見えない様に、後手に持っている目薬が全てを物語っていた為だ……

 

そしてこの戦法を知ったとしても、実際に俺が使われる立場になったら無条件降伏する事態になるであろう事は言うまでも無い。

 

「い、言います!言いますから泣き止んでえええええええええええええええええ!!!!!!!!!」

 

なのはちゃん達の涙(嘘泣き)を前にしてヤスが全面降伏の叫びを上げるまで、一分と時間は掛からなかった。

 

女性の涙……特に自分と親しい異性のそれは、どんな武器よりも高い威力を誇る最終兵器と言えるかも知れない。

 

そしてはやてちゃんとエミリーちゃんに、この様な悪辣な入れ知恵をしたのが俺の母さんだという事を俺が知るのはそう遠くない未来の話である……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、ヤスは一体何を悩んでるんだ?なのはちゃん達のやり方を肯定する訳じゃないけど、皆ヤスを心配してあんな事までしたんだ。そろそろ話してくれても良いだろ?」

 

「……そうですね。純の旦那の言う通り、俺が皆さんに心配させたのは事実……私的な悩みですが俺の話を聞いて貰えますか……」

 

はやてちゃんとエミリーちゃん主導による嘘泣き作戦が功を奏したのか、頑なとも言える態度を貫いていたヤスの意識も上手い具合に周囲に向いたのだろう。

 

ヤスは先程のなのはちゃん達の頬から伝い落ちた涙が嘘だと承知した上で、俺の言葉に素直に頷きながら話し始めた。

 

ちなみに俺以外にもなのはちゃん達がヤスを囲む形で席についているこの様子を、何も知らない他人が見たら若い青年を小さな少年少女達が真剣な表情で喫茶店内で取り囲むという異様な光景に映るだろうが、幸いな事に現在この店内に居るのは常連客ばかりなので、然程気にする様子も無くヤスの話は淡々と紡がれる。

 

「純の旦那は、俺が以前空手道場に通っていた事は知ってますよね?」

 

「ああ。そう言えば前にそんな話も聞いたな」

 

確か以前にゲームセンターで会った照屋兄弟の家が空手道場をやっていて、小さい頃にヤスはその道場に通っていたという話を本人が言っていた事を思い出す。

 

「実はその道場に通っていた時の先輩が……最近まで海外に居たんですけど、もうすぐ日本に帰国してこの海鳴市に帰ってくるって話を聞いたんです」

 

まるで明日に世界が滅亡しますよと告げられた様な絶望感を漂わせながら話すヤスには悪いが、どうしてその話題でヤスがこんなにも悩んでいるのか、俺には理解出来なかった。

 

寧ろあの道場の先輩が海外から帰ってくると聞いたら、後輩としては喜ぶ場面では無いだろうか?

 

しかし今のヤスからは嬉しさという感情は微塵も感じる事は無く、代わりに恐怖という絶対的な意思が渦巻いている。

 

「……なあヤス。その道場の先輩と何かあったのか?」

 

本来こういった個人的な人間関係に探りを入れる質問をするべきでは無いと分かってはいたが、ヤス本人が話すと言った事と、目の前であまりにも狼狽するその姿に一抹の不安を覚えた俺は、思い切って踏み込んだ質問を試みる事にした。

 

「そんな!?あの人と諍いを起こしたら俺は今こうして生きてないですよ!?」

 

俺の質問に対して過剰なまでの反応を示したヤスは首を何度も横に振りながら否定すると、やがて肩を震わせながら、その先輩について語りだす。

 

「あの人は人の皮を被った別の生物です……俺はあの人に妙に気に入られて、特訓に熊と戦うと言い出して山の中を引き擦り回されたり、他にも……」

 

聞き取れたヤスの言葉は話し始めた序盤の部分のみであり、後半はあまりにも声が小さく呟く様に喋っていたので何を言っていたのか定かではないが、その聞き取れた序盤の部分の内容だけで少なくてもヤスがここまで恐れる先輩がとても破天荒な人物だということだけは理解出来た様な気がする。

 

「その先輩って……」

 

アリサちゃんが新たな質問を投げ掛けようとしたその時、翠屋の扉が開かれる。

 

新たなお店への来客によって其処で話は一旦中断となり、俺とヤスはすぐに立ち上がり、店員としてしての接客を開始する為に急いで入り口へと向かう。

 

「いらっしゃいませ」

 

「いらっしゃ……あ!?」

 

俺に続いてヤスも接客の挨拶をしようとするが、途中でその言葉は途切れ、何事かとヤスの顔を見てみると、その表情は驚愕の色に染まっていた。

 

続いて先程来店したお客さんの方に視線を移してみると、若い一人の男性がヤスとは対象に嬉しそうな笑みを浮かべている姿が俺の視界に映りこむ。

 

「よっ!久し振りだなヤス!」

 

驚愕の顔で固まり続けるヤスに対して、男性はフレンドリーにヤスの肩を軽く叩きながら軽い挨拶を交わす。

 

「……せ、先輩!?どうしてここに!?」

 

若干の間を置いた後、ヤスが漸く言葉を発した。

 

「先に道場に寄った時に、雅人の坊主からお前がこの店でバイトしてるって聞いて顔を出しに来たんだよ。しっかしヤス。お前は随分と雰囲気が変わったんじゃないか?ずっとポリシーだとか言って続けてたリーゼントもバッサリと切っちまって……失恋でもしたか?」

 

「お、俺にも色々と心境の変化ってもんがあるんですよ!それに俺はまだ失恋なんかしてませんって!!!!……確かに保奈美さんとは全然上手くいってなくてデートにも誘えて無いですけど……」

 

冗談交じりに言う男性の言葉に、否定の返事をするヤスだったが、失恋の部分についてはかなり小声で弱気な言葉を口にする。

 

二人の会話から察するに、この人がヤスの言っていた先輩と考えて間違い無いだろう。

 

だがヤスの話していたイメージの割には普通の人に思えるのは俺だけだろうか?

 

確かに服の上からでも分かる程に身体を鍛えているのは分かるが、空手を長年やっていると聞けば納得のいく範囲内だ。

 

それにこの明るい人柄から、ヤスがここまで戦々恐々とする意味が理解出来ない。

 

だがその考えが間違いだった事を、俺はすぐに思い知る事となる。

 

ヤスとの絡みを一通り終えたその直後、ヤスの先輩から急激な殺気が放たれると共に、右拳が降り注ぐ。

 

俺はその右拳に敢えてトップスピードに乗るよりも早く飛び込み、自身の右手をその右拳に添えて受け流す。

 

それは考えるよりも早く、今までの戦いの勘が可能とした結果だったが、少し間違えていたら大怪我は免れなかったであろうレベルだった。

 

「小さいのにやるね~最初は寸止めするつもりだったんだけど、まさか反応して受け流すなんて思って無かったよ」

 

既に殺気は跡形も無く消え去っており、にこやかな笑顔と共にヤスの先輩は俺に握手を求めてきた。

 

「……はあ」

 

俺は何とか平静を保ちながら、その握手に応じる。

 

「俺は鳥羽直己《とばなおき》だ。まあ、知ってるかも知れないが、昔ヤスと同じ空手道場に通ってた先輩って奴だ。今度から仕事の都合で海鳴市に暫く居るだろうから、暇な時に組み手でもしような」

 

「えっと板橋純です。特に格闘技をやっている訳では無いんで組み手は遠慮しておきます……」

 

鳥羽さんは間違い無くあの人種だ。

 

握手を交わす間、俗に言うバトルジャンキーという単語が、俺の脳内で何度も再生されたのは改めて言うまでも無い……


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