魔法少女リリカルなのは~ヘタレ転生者は仮面ライダー?~   作:G-3X

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仮面ライダーシード&仮面ライダークウガ 繋がる絆【第二十一章】

「超変身!」

 

クウガの叫びと共に、ベルトのアークルに嵌め込まれたアマダムは赤から緑へと変化を遂げて、それに呼応する様にして、複眼も緑となり、上半身を覆っていた赤い鎧も緑となって、よりシャープなデザインの形に変形した。

 

変化はそれで留まらず、右手に握り締めていた拳銃がその存在を変質させて、このペガサスフォームの能力を最大限に活かす事が出来る武器、ペガサスボウガンへと生まれ変わる。

 

「その姿であれば、確実に彼の【闇】の核となっている部分だけを撃ち抜ける筈です!」

 

ペガサスフォームに変身して改めて、ビートチェイサーに跨ったクウガに、空が一度説明した内容を改めて、伝える。

 

このフォームは、他のフォームと比べて、極端に変身していられる時間が限られている為、言葉で返答せず、サムズアップで答えたクウガは、空の返事を待つ事無く、空をトンネル内部に残して、トンネルの入り口を目指してアクセルを切り走り出す。

 

程無くしてトンネルの入り口を抜けたクウガは、止まる事無く意識を周囲に集中させる。

 

様々な音や声などの情報が、クウガの中に入り込む。

 

その膨大な情報の中から、クウガは意識を更に絞込み、上空へとその意識を集中させると、コウモリの様な翼を羽ばたかせる音と漆黒の身体を持つボマーの姿を捉えた。

 

だがボマーを攻撃するのはまだ早い。

 

クウガの目的は、ボマーを倒す事に変わり無いが、それはただ倒すというだけでなく、【闇】から開放する事なのである。

 

だからこそクウガは、その【闇】を絶つ為に、限界まで意識を研ぎ澄ます。

 

ボマーの身体に流れる、エネルギーの流れ……

 

空の言っていた事が正しいのであれば、クウガにもその流れを感じる事が出来る筈なのだ。

 

クウガはその言葉を信じて、ボマーの身体からその流れを感じ取る。

 

その集中力は今までの限界を超えて、新たな領域へと踏み込んでいく。

 

それまでクウガの意識にあった様々な情報が、一点に集約され、無駄なノイズが遮断されて、ボマーの中に何か黒い塊の様な部分を浮かび上がらせたのだ。

 

「見えた!!!」

 

クウガはその一点に狙いを定めて、上空のボマーに構えたペガサスボウガンの引き金を引く。

 

引き金を引くと同時に、高密度に圧縮された空気弾が、【闇】を封じる封印エネルギーを纏いながら、射出されてボマーの身体を撃ち抜いた。

 

「……え?」

 

それから少しの間を置き、ボマーは動きを止めて、驚きの声を発した。

 

「……動く?……僕の身体が自由に……動くんだ……はは……良かった……」

 

指の小指までゆっくりと、順序良く自らの身体を動かして、ボマーは歓喜の声に打ち震えるが、急にその動きを止めて落下を始める。

 

漆黒の身体は元のブラウンを基調として、上半身を覆う銀のプロテクターと青い複眼を持つ以前の状態と戻ったのだ。

 

それに伴い翼も消滅してしまい、飛ぶ手段を失ったのである。

 

更に変化はそれで終わる事は無く、ボマーは既に意識すら手放しているのか、その変身が解けて、黒谷大地の姿となって落下を続けていく。

 

ボマーはかなり上空に居た為に、その高度は凄まじく、そのまま地面に激突すれば、悲惨な事態となる事は確実であったが、それが実現する事は無かった。

 

何故ならば気絶した大地は、地面に激突する事無く、宙に浮いていた為である。

 

だからと言って、彼が自力で浮かんでいる訳ではない。

 

落下する大地を受け止めて、空中に浮かんでいる存在が居たのだ。

 

それは黒と金の色をしており、クワガタに酷似した形状をしていた。

 

クウガと共に、古代から現代まで共にあり続けた存在、ゴウラム。

 

それが大地の命を救った存在の名称である。

 

ゴウラムが大地を助ける場面を見届けたクウガは、制限時間が来る前に、変身を解き、五代雄介の姿となって、それに伴い元mの形状となった拳銃に自然を向けた。

 

「……力を貸してくれてありがとうございます。一条さん……」

 

五代は拳銃に向かって、その拳銃を届けてくれた一人の大切な友人に感謝の言葉を述べた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『コール・ライガー』

 

分身体を操るメカ犬に、一時的にハンターの相手を任せた俺は、その間にタッチノートを操作してメカ虎を呼び出す。

 

タッチノートから音声が流れて、さして間を置く事も無く、メタルグリーンのボディーを持つ小さな虎が、瓦礫の数々を駆け抜けて、俺の目の前へとやって来る。

 

『また呼んだじゃんマスター!!!』

 

俺の目の前にまでやって来たメカ虎が、その場で何故か宙返りをしながら言う。

 

「ああ!今日も頼むぞ!!!」

 

メカ虎の言葉に相槌をしながら、俺はタッチノートの操作を続けていく。

 

『スタンディングモード』

 

流れる音声と共に、アタッチメントパーツへと変形したメカ虎を握り締めながら、俺はタッチノートを再びベルトに差込みつつ、左側をスライドさせて、素早くアタッチメントパーツを差し込んだ。

 

『パワー・ライガー』

 

アタッチメントパーツを差込んで、音声が鳴り響いた瞬間に、俺の周囲にメタルグリーンの追加装甲が展開して、パワーフォルムのクリムゾンレッドのボディーへと次々に装着されて行く。

 

「行くぞメカ虎!」

 

『OKじゃん!』

 

パワー・ライガーへの変身を完了させた俺は、分身体とハンターの戦いに参入する為に、脱兎の如く駆け出す。

 

本来ならばパワーフォルム特有の為に、著しく低下する機動性を、ライガーモードの特徴である、俊敏性の強化が補い、ベーシックフォルム以上の素早さを実現させる。

 

「たああああああああああ!」

 

俺はその速さを上乗せした重い拳の一撃を、ハンターへと叩き込み後退させた。

 

『待っていたぞマスター』

 

その隙にある程度の間合いを取ったメカ犬が、俺の横に並んで声を掛けて来る。

 

しかもその分身体を見れば、身体全体から光の粒子が漏れ出ていた。

 

「何とか間に合ったかな」

 

『うむ。これ以上は分身体が持たなかっただろうからな。しかしどうする?あのハンターの速さと力に対抗する為に、此方もパワー・ライガーを選択したが、あまり先程の攻撃が効いた様には見えないぞ』

 

メカ犬の言った通り、ハンターは先程の一撃にも然程のダメージを受けた様子を見せず、ベルトに手を翳すと、その身体と同様に、漆黒に染まったナイフを生成して、此方へ向かって駆け込んで来た。

 

「まあ、やるだけやってみるさ!」

 

『そうか』

 

そう言った俺の言葉に返事を返した直後、分身体は完全に光に帰り、その役目を終わらせた。

 

『男は度胸じゃん!』

 

『うむ。時には真っ向から向かっていくのも、戦いには重要なファクターだ』

 

分身体が消えてからすぐに、アタッチメントパーツになっているメカ虎と、分身体の操作を終えたメカ犬の声がその本体となっているベルトから聞こえて来る。

 

「言われなくてもそうするさ!!!」

 

俺はメカ犬とメカ虎の励ましに答えながら、ベルトの右側をスライドさせて、黄色いボタンを押す。

 

『パワーブレード』

 

ベルトから音声と共に、光が発生してその光が赤い刀身の剣、パワーブレードへと生成されていく。

 

生成されたパワーブレードを握り締め、俺は黒い刃のナイフを逆手に持って、迫り来るハンターに、迎撃態勢を取る。

 

「「はああああああああああ!!!」」

 

俺とハンターは、ほぼ同時に其々の武器を振り上げて、互いの一撃をその刃で受け止める。

 

一回、二回、三回と切り結ぶ中で、長剣と短剣という得物の違いから、お互いに有利に戦える距離を模索していく。

 

短剣を扱うハンターは、その切り替えしの良さと、短いがゆえにネックとなる距離を埋める為に、何度も俺の懐に飛び込んで来ようと果敢に向かって来る。

 

それとは逆に俺が使うパワーブレードは長剣であり、短剣と比べると、どうしても手数が出せなくなってしまう。

 

だから俺はライガーモードの恩恵によって得た機動性と、長剣だからこそ放てる高い威力を活かすべく、基本はハンターの攻撃を捌く事に重点を置き、ハンターが攻撃した直後や、切り替えしの際に、稀に生まれる隙をカウンターとして突く戦法を心掛ける。

 

「……何でだ。何でお前みたいなガキが其処までして戦うっていうんだよ!!!」

 

お互いに決定的な一撃を決められないまま、何度も攻守を入れ替える中で、ハンターが攻撃の手を緩める事無く、叫びとも呼べる問いを俺にした。

 

「俺は……自分に出来る事をしてるだけだよ。守りたい大切な人達が居るから、だから戦うんだ!」

 

俺はハンターに対して、自分の気持ちをぶつける様に、叫びに似た言い方で返答しながら、ハンターと切り結んだナイフの刃を押し返す。

 

「守りたい人達ね……良い子のお手本みたいな陳腐な答えだな!!!」

 

ハンターは俺の答えを一蹴すると、切り結んでいた刃を下げて、一旦距離を取った。

 

「陳腐な答えかも知れないけど、あんたにだって、守りたい人が居るんじゃないか!?」

 

「俺はそんな事思わないね!どんなに大切に思ってたって、人は平気で簡単に、驚くぐらい残酷に他人を裏切るんだぜ!そんな奴らを守りたいと誰が思う!?」

 

「……確かにそんな人が居ないなんて言えないけど、それが人間の全部じゃないだろ!!!」

 

互いに間合いを計り合いながら、俺とハンターは自身の他者に思う考え方を吐露していく。

 

「そんな奴らが居るって分かってるだけで充分だろ?俺達は利害が合えば一緒に居るし、気に食わない事が多けりゃ敵にだってなる。誰だってテメエの都合で動いてるだけだ!!!おい糞ガキ!お前だって結局は自分の為に戦ってるんだろ?」

 

ハンターの言っている事を、間違っているなんて俺は言えなかった。

 

確かに俺が戦うのは、突き詰めれば、自分がそうしたいからそうしているだけで、本質的な部分では、ハンターの持っている思想と何一つ変わらないのかも知れない……

 

……だけど!

 

「言ってる事は正しいかもしれない。確かに人は何をする時だって、最期は自分の為なのかも知れないさ……でもそれが、他の誰かを傷付けて良い免罪符になる訳無いだろ!!!」

 

例え自分を殺そうとする相手に拳を振るったとしても、その拳を痛める以上に、相手を殴ってしまったという事実に、心の痛みを覚える人だっている。

 

「そんな事は俺が知ったことじゃねえんだよ!俺は俺のやりたい事を、やりたい様にやる!それで他人がどうなろうが……何だ?」

 

ハンターが途中まで言い掛けたところで、会話を中断して、戸惑いとも取れる声を上げた。

 

しかも先程までの動きとは打って変わり、何処か電池の切れ掛かったオモチャの様な動きを見せ始める。

 

『マスター!!!』

 

「どうしたメカ犬!?」

 

『ハンターの中のエネルギー反応が、異常な流動を繰り返している!この様な状態では……』

 

俺がメカ犬の話に耳を傾けていたその時、ハンター新たな動きがあった。

 

「か、身体が勝手に動きやがる!?」

 

そう言いながら、何かに抵抗する様に言い放つハンターの言動とは裏腹に、ハンターは逆手に持ったナイフで付近の瓦礫を無差別に攻撃し始める。

 

「どうなってるんだメカ犬!?」

 

『恐らくだがハンターの中で、流動的に動き続けている異質なエネルギーが原因だろうな。あの異常なまでの能力強化を可能にしたのがそのエネルギーなのは間違いなさそうだが、先程まで安定していたそのエネルギーが今は、その制御を離れている様に見える……だがこれは』

 

「……はは!良いぜ!俺の都合なんてどうだって良い!!!やるなら徹底的にやれよ!!!別に俺がやりたい事に変わりはねえ!!!何もしなくても俺の目の前のむかつくものを全部壊してくれるって言うんだからよ!!!!!!逆に感謝するぜ!!!!!!!!!!」

 

メカ犬の声を遮る様にして、何処か壊れた笑い声を上げながら、ハンターは既に粉々になってしまっている瓦礫に対して、更にナイフを叩きつけて粉砕しようと試みている。

 

『な、何かあのライダーの言ってる事やばいじゃん!?』

 

『うむ。身体を自由に動かす事が出来ないという状況は、時には極度なストレスとなる場合があるからな』

 

ハンターの暴走とも言える行為に対して、メカ虎に続きメカ犬も意見を述べる。

 

確かにハンターの言葉は、既に正気とは言えない様にも思えるが、俺には何故かその声が、助けを求める声に気がしてならなかった。

 

「なあメカ犬。あれを止めるにはハンターを倒せば良いんだよな?」

 

『うむ。奴の暴走も結局は暴走プログラムの一部だからな。それを元から破壊してしまうのが一番早い解決方法なのは間違いないだろう』

 

俺の問いに返されたメカ犬の回答は予想通りのものだった。

 

だから俺はもう一つ、これからやろうとしている、自分でも無謀とも思える質問をメカ犬にする。

 

「じゃあさ……ハンターを倒さないで暴走だけを止める手段ってあるかな?」


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