吾輩は、逸見エリカですが、何か?   作:蒼騎亭

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連続投稿になります。

こちらは試作的な意味で投稿となりますが、気にせず読んでくださると幸いです。


第七話[出前します]

 蒼白色の氷壁とホイップクリーム色の雪絨毯に包まれた極寒の海洋をプラウダ高校の学園艦が氷河の間をすり抜けるように航行していた。

 その床壁がすべて赤で統一された応接間には、突如訪問したダージリンを出迎えるプラウダ高校の隊長カチューシャとその副隊長のノンナの二人。

「準決勝 残念でしたね」

「…昨年、カチューシャを破った黒森峰に負けるなんて…弱すぎでゲソ」

「ゲソ…って、勝負は時の運というでしょう…ありがとうノンナ」

 ダージリンは、紅茶を出しながら残念そうに言うノンナに礼を言いながら出されたイチゴジャムを紅茶に入れようとした時だった。

「ちょっと待ちなさいよ。ジャムは入れて飲むじゃないの。…こうして舐めながら食べるのゲソ」

「ついてますよ」

「うるさいゲソ!」

 ノンナに頬にジャムがついていることを指摘され、恥ずかしそうにノンナに怒鳴りつけたカチューシャ。そんなカチューシャにダージリンは、プラウダ高校との対戦相手である大洗の隊長、西住みほの事を話す。

「ところで、練習しなくてよろしいのですの?」

「無名校に海底資源が持ったいないゲソ。」

「―――隊長は、あの西住流よ」

「! ノンナ、どうしておしえなかったのよ!」

 それを聞いて隣に立つノンナに怒鳴るカチューシャ。だが、ノンナは何度もカチューシャに話したと淡々とした口調で答える。

「何度も言いました。」

「ただ、まほさんじゃなく妹のみほさんだけどね」

「なーんだ。よかったゲソ。……みほ? あのミホーシャ⁉」

 まほじゃないとわかってほとっとした顔で座り直すカチューシャ。だが、みほの名を聞いた途端、驚愕した顔で再び身を乗り出す。

「ウチらの攻撃で、川に落ちた戦車の搭乗員らを救ったあのミホーシャ! そしてその時に今までなかった戦法でこちらの車輛すべて撃破した…灰色の虎…」

 話している内に顔を青ざめていくカチューシャ。そんなカチューシャの代わりにノンナが話す。

「実はあの時、我々もあの場所にいたのです。―――私達が三両目を仕留めた時には、…私が乗るIS-2とカチューシャのT34-85だけになっていたんです」

「ノンナの122ミリで倒そうとした時、―――…いつの間にか私達の後方に回り込んできたパンターに履帯を切られ…」

「そこにティーガーⅠの砲弾と残りの車輛の集中砲火を浴びて…撃破されたです」

「その時ね、灰色の虎が撃破された私達をキューポラから見下ろしていたわ。その灰色の髪に、遠くなのにそのマリンブルーの瞳がまるで虎が獲物を捕縛する際の殺気発った光を放っているようだった。」

「―――その特徴から考えて逸見さんかしら?」

 怖がる二人を見ながらそうつぶやくダージリン。それを聞いてさらに青ざめるカチューシャを母のように宥めるノンナ。そんな二人を見てダージリンは考える。

「(みほさんも、まほさんもそうだったけど。胸の奥にある獣を飼っているみたいけど。逸見さんも恐ろしい獣…野獣を飼っているようですわ)」と、内心で呟きながらその日のカチューシャたちとのお茶会は終了した。

 お茶会後、ダージリンはプラウダ高校の校門前に向かう。

「(あのお二人をあそこまで怖がらせる逸見さんって…昨年の決勝戦に何かあったのかしら)」と、内心で思いながら校門前に到着するとそこには、ニコリとダージリンの帰りを笑みで浮かべるオレンジペコとダージリンよりもお姉さまの雰囲気を漂わせる遊佐千紘ことリゼの二人がランドローバー・シリーズⅠの前でダージリンを出迎える。

「お帰りなさい、隊長」

「どうでした、カチューシャ隊長たちは?」

「―――普段通りだったわ」

 リゼの質問にニコリと笑いながらランドオーバーに乗り込むダージリン。それに続くように助手席にオレンジペコ、運転席にリゼが座り、ランドオーバーは走り始める。

 そして走行中、ダージリンは遠ざかるプラウダ高校の校舎を見つめながら二人には聞こえない小さな声で言う。

「―――こんな格言を知っているかしら《追われる者、追う者、最後はお互いが見つめ合う鏡である》と」

 

 

 

―――大洗とプラウダの試合が翌日に迫った日、二校の戦いを観戦するため、防寒の支度を整える隊長と私。だが、出発直前、普段モードで現れたしほさん。

そして「逸見は、ここに残りなさい」と、隊長の留守の間、私が隊長代理として黒森峰に残るように言われた。

「―――了解です」と無表情で答えた私は、その日、少し普段以上に不機嫌顔で皆と訓練に明け暮れていた。

 目が吊り上がり、常に睨んでいる顔で、虎弐で指示を飛ばす私。

「十五号車、隊列が乱れているぞ! もっと速度合わせなさい! こら! 周りも気を回しなさい!!」

 怒鳴りつけるように砲門が少し味方に当たりそうになるのを注意する。それを聞いてしっかりとした言葉で返事をする各車両の車長たち。だが、その声に緩みがある。

「―――おい、パンター部隊。今日は随分と余裕があるようだな。」

《は、はい?》

 突然の私が放った言葉に不思議がるパンター部隊の車長たち。

「今日は、天気もいい。少し鬼ごっこしないか?」

 その言葉を最後に…私は、練習を一旦終了させる。そしていらん子中隊専用ガレージにある時速70キロ以上で走行を可能にした一号戦車C型(ⅠC)を持ち出して、パンター部隊と鬼ごっこをすることにした。

「ルールは簡単よ。一両でも私達が乗るⅠCを撃破すること。見事撃破したら……私の手料理二日分食べさせてあげるわ。そして一両も撃破できなかったら…一週間、肝油を使った地獄料理を食べてもらう」

『?!』

 私の言葉にパンター部隊の子達は、仰天した顔で私を見つめる。…ここで言うのもなんだけど、私の手料理って機甲科では、何故か幻扱い。それが食べれるとなれば、皆やる気を出るってもんだわね。だけど、―――そう現実は甘くないのよ。

 お互いスタート地点に向かい、私の号令で試合が開始された。訓練通りに隊列を組みながら私らを探す。そして地面に埋め込んだ発煙筒が点かし、パンターの視界を遮る。

それに慌てふためくように混乱するパンター部隊。

―――そこから私達いらん子中隊の隊長車輛が、車体の小ささと加速で煙幕内から突如現れるように出ていき、パンター部隊の間をすり抜けるながら次々とパンター部隊の履帯を切り続ける。もちろん、装填手兼車長は私で、砲手は歩、操縦手は小梅の三人で、擬似の大洗ヘッツァーことカメさんチームである。

  履帯が切られて身動きが取れないパンター。そしてパンターの装甲は、私達の砲弾じゃ歯が立たないので…相討ちをするように…小梅の神の腕ハンドルコントロールで誘い出し、砲撃寸前回避運動を取り、仲間の車輛を撃たせる。それを永遠という地獄が30分間続いた。そして最後の車輛のエンジンルームの零距離を倒したところで練習は終わりと告げた。

「―――試合終了だ」

 その練習終了後、パンター部隊の面々は、皆煤だらけで履帯復旧作業を黙々としていた。そして鬱憤が少しはれ、機嫌が直った私は、頑張りましたの気持ちを込めて肝油入りの手料理をご馳走する。

 皆、肝油の独特な不味さで顔をしかめながらも、おいしそうに食べるパンター部隊。それを見て他の隊員たちが叫ぶ。

『うらやましい!』その言葉で結局全員分を作る私。…大勢の料理は大変だが、やりがいがある。と某弓兵のように鼻歌を口ずさみながら厨房で次々を料理を作る私だった。

 そんな時、隊長から出前のコールが…。何故、私が料理をしていることが分かったの?! って言葉を発しないまま驚く私。電話出た。

「は、はい!」

 私の返事を聞いて隊長は凛とした口調で言う。

《―――私の固有魔法をお忘れてない? ―――体が温まる料理の出前お願いできるかしら?》と、灰色の狼の尻尾と耳を生やした西住まほ隊長の姿が目に浮かんでしまう。…こんなに似合うのって、やっぱりGuPに関係者にSWがいるからなー。と思う私。

「―――了解です,まほ隊長」

 やっぱり隊長にはかなわない、と頭が上がらない自分に少し笑みを溢しながら寒い中でも暖かくなる料理を急遽作り、隊長たちがいるプラウダ高校VS大洗女子学園の試合会場に出前するため、ドラッヘで向かう。

 

 

 みほとカチューシャらの会場に到着した私は、急ぎ隊長の許に向かう。

そこには、凛として座る隊長としほさん。だが、若干であるが二人とも雪化粧化寸前まで凍えていた。私の姿を見た途端、お二人は私に抱きついていた。そして冷えた体を温まるように頬を私の肌にスリスリしてきた。

「た、隊長…。それにしほさんも…今、料理を出しますから一旦離れてください!」

『早く温めて』と、ウルウルした瞳で私を上目遣いで見上げる二人。何故か、二人が小動物に見えていしまうのは…私も、心が病んでるのだろう、いい意味で。

 小動物的な二人に私逸見特性のジャガイモとろりスープを入れたカップを手渡す。それを両手で受け取った隊長たちは、冷えた体を温まる。

 そんな二人を横目にみほらの試合状況が映し出されているモニターをみる。

そこには廃墟の教会に逃げ込んで大洗とそれを包囲陣形で囲むプラウダの配置図が表示されていた。―――あんなに警告しておいたのに、やっぱりプラウダらに囲まれている大洗。

そんな大洗のその場の勢いにかける言葉が見つからない。

「はぁ…」

 本当に呆れてため息しかでないわ。と思いながら隊長の横の席に座る。

「―――お二人の予想は?」

「―――…プラウダは、一気に攻める」

「―――…私、私もお母様と同じです」

 自分が作ったスープを飲みながら答える二人。若干隊長は何か言いかけたが、それを飲み込み、しほさんと同じだという。それを聞いてしほさんは私を見る。

「逸見さんは?」

「そうですね…。みほは、ここであきらめる子じゃない、は言えると思います。ただ、周りが―――圧倒的な火力と戦略に気力が低下しているでしょう。それとプラウダは呑気に暖かいスープと火を囲んでいます。それを遠くから見ている大洗の面々は、大いにお腹を空かしていると思います」

「つまり、大洗はここで潰れると」

「―――雪を味方にしない限り、この戦いは大洗の不利。もし雪を味方にし、ここでプラウダが砕き、大洗が決勝戦に上がってたところで―――我々黒森峰…王者の戦い方で大洗の進行を踏みつぶせばいいだけです」

 しほさんの問いかけにいろいろ自分の知る知識が含んだ言葉できっぱりと答える。私の言葉を聞いたしほさんは、ニコリと笑う。

「―――それでいい。…まほ」

「はい、お母様」

「―――西住流は、」

「何があっても前に進む流派です」

 その言葉を聞いてしほさんはスッと立ち上がる。

「―――あとはあなた達で見ていきなさい。私は先に…“敗北”したみほに勘当言い渡す準備をしてきます」

と、スタスタと観客席から居なくなったしほさん。その背中を見送ったのち、再びモニターを見て私はボソッと呟く。

「―――そろそろ、かしら」

 その言葉が白き吐息とともにモニターに動きがあった。

 不邪気なあんこう踊りをして統括をはかるみほの姿に大洗のメンバーが元気を取り戻す。しかし教会の入り口から中の様子が映される、二列に並んだ大洗のあんこう踊りに私は頬が引きずり苦笑いする。

「―――初めてあんこう踊りを見たけど……沙織たちの言うとおり、これじゃマジで嫁いけず、全国の笑い者になるわね」

聖との練習試合のペナルティとしていわれたことを沙織たちに話したときのオーバーな反応たったが、改めて生で見てそれが納得いった。

 そして隣に座る隊長は、無言で背筋を直立したまま鼻から鼻血を出していた。…隊長にはあんこう踊りは過激だったようだ。

「…隊長。ティッシュです」

「……すまない」と、鼻栓をする。

 そして生徒会チームの38(t)を先頭に建物から一気に出撃する。そして一番厚いカチューシャたちが居る方に戦車を走らせる。それに驚くカチューシャは応戦する。

その応戦の中、38(t)はその小柄な車体をまるでダンスをするように85の砲弾を回避、カウンター攻撃で34の砲門を無力化に成功。そこを横切る事に成功する大洗メンバー。

自分らの横を通り過ぎた大洗を後方支援の戦車が砲弾を撃つ。そこに一人向かう38(t)。その後姿を見送るようにみほ達は丘を目指す。

 後方支援の砲撃を回避しつつ次々と履帯を切り、零距離で34を二両撃破。そこから離脱する直後、IS-2の122mmが38(t)の左側面を射抜き、その爆風で車体が三回転したのち、逆さまで停車する。

『動ける車輛は、速やかに移動しなさい』

 38(t)を射抜いたIS-2のキューポラから身を乗り出して冷静な口調でいうノンナ。

一方、丘を乗り切ったみほは暗闇に紛れるように八九式と三式、M3Lee、B1は真っ直ぐ進行する。そして三突と四号は、雪の陰に隠れてやり過ごす。

やりすぎたのち、再び町に戻る。そしてフラッグを見つけるが、追跡の途中KV-2と遭遇。だが、一発撃ったのち装填時間がかかるKV-2に砲門を向けた三突と四号は、KV-2を撃破する。

 中々追いつかない時、秋山が四号から離れ、一番高い塔に上がりプラウダのフラッグの動きを観察する。

そしてフラッグ車は同じ場所を回っていることを知った秋山は、みほにそれを伝え、三突を道ドリフトしながら雪の中に隠れる。

そこにフラッグ車を引き込むように機関銃で操作する。

―――そして最後の最後で、大洗のフラッグ車である八九式は捨て身でプラウダの攻撃から逃げ切り、プラウダ高校のフラッグ車は雪の中に息を潜めた三突によって撃破、大洗は勝利した。

 それを見た隊長は、そっとため息をこぼす。姉として妹の活躍は嬉しい。だけど“黒森峰の隊長”としては喜べない部分があるのだろう。と隊長の心中を察する私。そんな私たちのところにしほさんは少し残念そうな顔で観客席に戻ってきた。そして私達に言うのだ。

「まほ、…そしてエリカさん。決勝戦では、王者の戦い方を見せてやりなさい」

「―――…西住流の名に賭けて必ず叩き潰します」

「この身に賭けて完膚なきまで叩き潰してみせます」

 西住の当主としての表情をしながら私達に訊ねるしほさんに私達はそうハッキリと決意の言霊が籠った言葉で返事をする。

それを聞いてしほさんは、小さく頷いたのちもう一度みほら大洗が映るモニターを見て一瞬だが、母親としての顔をした私が乗ってきたドラッヘに向かい始める。

 私達もその後をついていくように観客席から立ち上がる。

そして最後…

「次にあった時は――…敵同士だ、みほ」

「精々、足掻かないようにがんばりなさいよ、みほ」

 みほ…大洗らに向けてその言葉を残した私達は、ドラッヘで黒森峰に帰るのであった。




―――若干プラウダ戦の話が統括性ないような気がしますが、気のせいです!


エリカさんは、料理が得意です。そしてある一定のプラグが立つと目が青色…に!?

それじゃ 次回に向かって!! パンツァーカイルです!!

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