吾輩は、逸見エリカですが、何か?   作:蒼騎亭

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今回は、長目かもー? って、虎Ⅱの勝率低ぅ?! 誰か援護攻撃を~(>〇<)ノ!


第四話[観戦中は、お静かにです]

 ゆっくりと雲が流れ穏やかな空の下、M4A1シャーマンとM4無印シャーマン、そして独立改造型のシャーマン・ファイアフライのサンダース大学付属高校。それに対して四号戦車を指揮車両とする三突,38(t),M3Lee,89式中戦車,3式中戦車の大洗女子学園。

本日は大洗の一回戦。初参戦の大洗の応援席には、何か所かに人溜まりができている程度。そんな両校の対戦を一望できる小さな丘の上から観戦する私達、黒森峰と何故か紅茶を啜り、優雅に時間を堪能している聖グロリアーナ女学院のダージリンとオレンジペコの二人が横にいる。

「―――…隊長、各装置の設置完了しました。」

車両から今年のサンダースの技能を知るために録画器具を各方面に設置、撮り損ねないように配置を終えた私。その報告を双眼鏡を覗きながら隊長が答えてくれた。

「ご苦労」

その凛とした横顔を見ながら私も双眼鏡で覗く。そして双眼鏡に入り込んだのは、試合前の腹ごしらえを他のメンバー達と過ごすみほの顔だった。

「―――(相変わらず愛らしい顔しやがって…)」と内心の声を零さないように無言で見続ける。

「―――(…みほ。やっぱり私の妹だ。なんて愛らしい顔を…)」

 無言で、試合開始までみほを追い続ける私達だった。

 

 そして審判員の掛け声とともに試合が始まった。

大洗は、前方にある森の中へ六両が進む。そして森の中から南に三両が、西に八九式とM3Leeが、北には、フラッグ車の38(t)を守るように三突と三式、そして指揮車輛の四号が警護につく。

そんな大洗チームを動きをサンダースは、手のひらの上に踊らせるように不敵な雰囲気を漂わせていた。

M3Leeが森の入り口近くまで進攻し、偵察に出ている。

そんなM3Leeの前方にシャーマン三両の姿を現す。それを発見したM3Leeは、無線でそれを報告する。だが、いつの間にか他のシャーマン二両の左から現れ、じわじわと囲まれるM3Lee。

その場所から逃げるM3Lee。それを嬉しそうに追うのは、ケイ率いるサンダースの機甲部隊。それを聞きつけた四号は、三突ともにM3Leeの援護に向かう。

《きゃあ!》

《エッチ!》となど悲鳴を上げながら逃げまわるM3Leeが進行する方面から四号戦車と三突が現れる。

一度すれ違うもすぐに右側に逃げ込む。だが、再び三両の前方から別のシャーマン三両が丘から現れる。それを見て砲撃するのかと思われた大洗チームだったが、そのまますれ違うように突入する。そして四号とシャーマンの左履帯を擦れ合わせながら通過し、そのまま左右に車体を揺らしながら山を乗り越え難を逃れる。

 それらの試合内容を双眼鏡で見届けながら私は、一言こぼすようにつぶやく。

「……ルールブックの穴探しは、アメ公の得意分野って言いたいのかしら?」

 戦車道ルールブックの禁止項目には載っていない行為を易々とやり遂げるサンダースの副隊長アリサを思いながらそうつぶやく私に隊長は、双眼鏡を外し、私を見つめながら言う。

「逸見。アメ公って言葉は、乙女の口から言うもんじゃないわ。」

 その各国のエースオブエースが集う某戦闘航空団を纏める隊長のような優しくて真っ直ぐ眼差しで言われた私は…素直に謝った。

「す、すいません、隊長。今後、気を付けます」

「―――」

 私の返事を聞いて隊長は、何も言わずニコリと笑いながら再び双眼鏡を覗き直す。私も双眼鏡で大洗の行方を見守る。

 

サンダースの包囲から逃れた大洗。そんな中、みほは易々と自分たちの居場所を見つけ出すサンダースが自分らの通信傍受していることに気づいたのか、勢いよくキューポラから身を乗り出して空を見上げる。

 その視線の先には、気球型の通信傍受機が打ち上がっていた。それを見るみほのその顔は、とても凛々しくやっぱり西住流に相応しい表情を浮かべていた。

「……やっと気づいたみたいね」と、みほと同じように通信傍受機を見上げる。―――本来、本部に通達するのが戦車道…フェアプレイなのだが、おそらく審判員らもアレには気づいているだろう。しかし、それでもあえて目を瞑っているところが、“平等”を守る法の番人なのかもしれないわ。

どんな状況でもやり遂げる、のも戦車乗りの宿命なのかもしれないわね。と、思いながら喉が渇いたので、珈琲でも入れようかなと隣に座る隊長に尋ねる。

「隊長。私、珈琲を飲みますが、隊長はどうなされます?」

「………抹茶、ミルク砂糖多めの抹茶、お願いできるかしら」

「畏まりました…」と、早速用意する。

 軽装甲無線車Sd.Kfz.223に戻り、トランクから軽食セットを取り出し、インスタントコーヒーの粉を入れたカップと抹茶と砂糖、ミルクを入れたカップににお湯をゆっくりとかき混ぜるように注ぐ。

 注ぎ終えスプーンで攪拌したのち、簡易テーブルにカップを置く。

「隊長。できました」

「ありがとう。逸見」 

 テーブルに置いたカップを手に取り、口元に運ぶ。それを横目に見つつ私もインスタントコーヒーを一口飲む。

……にがぁ…。

 今日は少し珈琲粉が多かったようで、口の中がインスタントコーヒーの独特の苦みが広がる。

顔をしかめて飲む私の顔を見て、隊長は頬を少し吊り上げるように微笑み。

「砂糖いるかしら? エリカ」

「……大丈夫、です。私、ブラック派ですから…」 しかめ面を隊長に見せまいと顔を背けるように唇を尖がらせながら言うと、隊長は優しく私の頭を撫で始める。

「……私は子供じゃありません」

「…あら? 私から見たら、エリカはまだまだ子供よ。我儘で、周りに気づかいはできるけど、肝心な時に視界が狭くなる。またまだ教え甲斐がある妹分よ」

 真っ直ぐな瞳でそう言われた私の顔は、真っ赤…砲撃した直後の薬莢のように熱くなり、本当に恥ずかしくなり俯きつつ足をモジモジしてしまう。

 そんな自分らの百合フィールドをほのぼのとした眼差しで紅茶を啜りながら見守るダージリンとオレンジペコの二人だった。

 

 ―――試合は、大洗がサンダースの通信傍受を逆手により、ニセ情報を流し敵車輛を撃破ポイントに招き入れる。そして本命の指令は、武部の自慢…メールの早打ちで各車両と通信を行っていた。

 そしてまんまと大洗が集合地点にやってきた二両のサンダースの車輛。その車輛が草原から砲身だけをこちらに向けている三突に気づいた時にはすでに遅すぎた。

《ジーザス?!》

《うてぇ!》

 三突のかけ声で一斉に砲撃。

 その一斉砲撃で一両撃破したあたりから雰囲気が変わり始めた。そんな大洗が先行しはじめたのを見て一番興奮していたのは、意外なダージリンだった。

「知っているかしら。……四本の足を持つ馬も躓くって」

「……少し口を慎んだらどうなのよ、聖グロリアーナ女学院のダージリン隊長」

 さっきから大洗とサンダースの戦いが激戦するたびに各国の有名人の名言を呟くダージリンに激怒寸前の声で、さらにいつの間にか私達のすぐ横にきていたことにあきれながら釘を差すように睨んで言ったら

「………」

 無言で紅茶を啜りダージリン。その横に座るオレンジペコは、少しほっとした顔をしていた。…あんたもこんな隊長の妹に見込まれて大変ね。といったようなまなざしで見つめる。

 一方、M3Leeと別れた八九式が、みほよりあらかじめ教えられていたフラッグ車がいるかもしれない二か所のポイントの一か所に走行していた。竹藪を節潰しながら進む中、小さな丘が登り始める。

 そしての登り切った場所にサンダースのフラッグ車両と出くわす。

《あ…》

《…あ》

と、お互い10秒ほど見つめ合ったのち、八九式の車長が砲塔を二回叩き、右に旋回してその場から逃げ出した八九式。その八九式を砲撃しつつ、その後を追いかけ始めるフラッグ車のシャーマン。

 

 八九式からの連絡を受けたフラッグ車を護衛している大洗チームは、八九式が合流ポイントに向かって移動開始する。

それを知らないアリサのフラッグ車は、八九式を追い続ける。その途中、自慢のコントロールでシャーマンに煙幕代わりに、発煙筒をぶち当てるバレー部キャプテン磯辺。それにより視界が煙で隠され、砲撃が掠り始める。そして煙幕が晴れた瞬間、自分らの目の前に大洗の全車両が現れ、さらに真横に砲身を自分の方に向けている四号を見た途端、操縦手に急停止を叫ぶ。

《停止!》

 急停車したシャーマンの前を掠るように四号の砲弾が通過、右の地面に着弾する。それを見てアリサは、急いでその場を離脱するように指示を出す。

《後退!!》

 大洗全車輛に囲まれたフラッグ車は、その場から逃げ出す。そしてアリサから受けた報告を聞いてケイは激怒する。

《ばかもおおおう! あれほどフェアプレイでっていつも言ってるでしょう! 早くその場から離れなさい!!》

《イエス・アム》

 それに怯えるように車内で体を縮ませるように謝るアリサ。そのまま背を向けながら逃亡し始める。

《……通信傍受してて全車両で向かうのも…よし決めた!》

 ケイは、自分の車輛を含むシャーマン三両とファイヤフライの一両を引き連れてフラッグ車であるアリサの援護に向かう。

キューボラから身を乗り出して何か叫ぶアリサ。……後で、アリサの相談に乗ってやるか。と思いながら双眼鏡で見守る私。

ファイヤフライの17ポンド砲の砲撃音で、大洗は先程までの勢いが削れ始める。最初に三式、続いて八九式とM3Leeがファイヤフライの砲撃に撃破されていく。そして残ったのは、フラッグ車の38(t)の後方を走行する三突に四号だけとなった。

 段々と諦めモードが大洗チーム内に流れ広がる。だが、五十鈴や秋山達の励ましいを聞いて息を吹き返すようにみほが全車両に話す。

「まだです! あきらめたらそこで終わりです!」その言葉に励まされる他のメンバーたち。

 そして四号は、シャーマンの横にある丘を登り始め、それを追うようにファイアフライも登る。そして少し足が遅くなった四号目掛けて砲撃する。だが、着弾寸前横滑り…ドリフトしながらファイアフライの砲撃を回避、そのまま丘の上に再び走り出す。

《チィ!》ファイヤフライの砲手の舌打ちが耳に聞こえるように感じる中、砲撃ポイントに到着した四号。そこから砲塔を回転、さらに車体を旋回しながらフラッグ車シャーマンを捉えはじめる。

そして…

《―――発射》

花を活ける時のような集中力で見極めた五十鈴の引くトリガーが先となり、その後にファイヤフライのトリガーが引かれた。短砲身から放たれた砲弾が逃げ走るシャーマンの後方部に吸い込まれるように着弾。爆破する。その後、四号もファイヤフライの砲弾が着弾爆破する。

一同その場に佇むように停車、ケイは一人無線に耳を傾けていた。

《―――サンダース大学付属高校フラッグ車走行不能! よって大洗女子学園の勝利!》

そのジャッジの放送が観戦席らに響き渡る。

それを聞いて数十年ぶりに復活した大洗の戦車隊の応援に来た大洗の住人達が喜びの声を上げる。

さらに勝つとは思っていなかった大洗チームは、少し一テンポ遅く喜びの大声を上げる。

 

 

 それを見届けた私達は、撤退準備をしようと立ち上がった時だった。

「まほさん、少しばかり逸見さんをお借りしますわ」

「……なるべく早めに返してくれ」

 大洗の戦いが終わった途端、私の両腕をホールドするダージリンたちに捕まった私は…そのまま人気がない場所に連行される。

「たいちょおおおおおお!」と叫びながら助けを乞うが、隊長は小さなため息をこぼすように私に口パクでつぶやいた、

「お・し・お・き♪」と。

「ふこうだああああああああ!」その言葉に私は…マジで上条語を本気で叫ぶのであった。

 ―――西に太陽が半分沈みかかった夕方。やっとあの百合バナが大好きな紅茶学院からBダッシュで逃れてきた私。

「……早く隊長を見つけて…」と思っていた以上に時間が喰われたことに慌てて周りを見渡して隊長を探す。するとサンダースのケイと一緒にいる隊長を見つける。

「隊長…」

 少し不機嫌そうにつぶやきながら隊長に近づくと隊長は私に気づき若干だが安堵の表情を浮かべる。

「……やっと帰ってきたか、逸見。あまりにも遅いから…ケイに学園艦まで送ってもらおうかと考えていたころだったわ」

「……私が遅くなった文句は、あのバカ百合娘に言ってください。」

 先ほどまでの自分に質問責めをしていたダージリンらの顔を思い浮かべながら怒りが籠った口調で呟く私。そんな私の言葉を聞いてケイは苦笑いをする。

「ははは…ご苦労様、逸見。」

「ケイさんもありがとうございます。私が居ない間、隊長と一緒にいてくださって、改めて感謝します」

「いいのよ♪ お互い長い付き合いなんだし~。それじゃ、またどこかで!」と、笑顔で手を振りながら自分らが乗ってきたサンダースの拠点地となる地元の三八五と書かれたバスに乗り込むケイ。その後ろ姿を見送る私達。

「帰るぞ」

「はい、隊長」

 学園艦に戻るために自分らが乗ってきたヘリポートに向かい始める。その途中、一回戦を突破した大洗の…みほ達が必死に靴下を脱ごうしている冷泉を何かを言いながら止めていた。

それを見た隊長が五人に近づく。

五人の会話、冷泉の祖母が病院に運ばれたという。それを聞いた隊長は、さらに一歩踏み出しながら五人に言う。

「私たちが乗ってきたヘリを使いなさい。逸見、操縦を頼まれるかしら」

「―――了解」と、呟きながら急いでヘリ《フォッケアハゲリスFa223 ドラッヘ》の元に戻り、エンジンを始動させる。

コクピット内で、外にいる隊長と通話で話す。

「頼んだぞ」

「…お任せください」

 隊長に一礼してドラッヘに乗り込む冷泉。その後を追うように武部も乗り込む。その二人を乗せたの確認した私は、ゆっくりとスロットルを引き上げるとドラッヘが陸から離れる。

 ある程度高度に到着した時、私は冷泉らに話しかける。

「…冷泉、と武部だったかしら?」

「そうだが…」

「―――そうよ」

 私の突然の話かけに少し半信半疑なトーンが低い声で答える冷泉。そして、まだ戦車カフェでのやり取りが引っかかっているのか、私の方を目を細めて睨む武部の目線が後頭部に感じていた。

 そんな二人に私は、はっきりした声で言う。

「大丈夫よ。私が無事に貴女を届け上げるから…飛ばすからしっかりと捕まっていなさいよ!」

 冷泉達にそう叫びながらスロットを最大にして大洗の病院に急ぐ私だった。

 ―――数分後、冷泉の祖母が運び込まれた病院近くのひらけた場所にドラッヘを着陸させ二人を下ろす。

「……世話になった。」

「ありがとう」と、私に礼を言いながら二人は急いで病院に向かう。

「……さて私も隊長を拾って帰るかー」再びドラッヘを離陸させる。そして…隊長と連絡を取ると大洗にいるのこと。

「まったく厄介な場所にいることで」と、隊長の行動力に感服しながらドラッヘを大洗の学園艦に向かって進路を変える。

 

 一方、ドラッヘが離陸した後、逸見が戻ってくるまでの時間をどう潰そうかとまほは悩んでいると、妹のみほがある提案を出す。

「お、おねえちゃん。良かったらウチ(大洗)に寄っていく?」

「……外部者がいってもいいのか?」

 心配そうに尋ねる姉に妹は、少しソワソワしながら小さく頷く。

「だ、大丈夫だと思う。」

「―――…それじゃ逸見が戻ってくるまで、世話になるわ」

「うん♪」

 まほはみほの下宿先である大洗の学園艦に乗艦することになった。そしてみほ一人だけはと思い、まほは秋山達を見る。

「……あなた達も一緒に乗りなさい。送っていくわ」

「「……お邪魔します」」

 こうして四人で軽装甲無線車Sd.Kfz.223に乗り込み、まほの運転で大洗学園艦に乗艦する。

その乗艦するまでの間、秋山と五十鈴との間に合った戦車カフェでのモヤモヤ感が大分薄れたのか、今ではまほと普通に話せるようになった秋山達。

「…さすが西住殿の姉上殿です!」

「―――秋山、さんも知識が豊富で…もし対戦した時は、正々堂々と戦わないといけないわ…」

「いいえ! 私なんか…皆さんの足元にも及ばないです~っ」

 軽装甲無線車の運転を続けるまほに、顔半分だけ後ろに向けながら褒められ、クセ毛の髪を掻きながら照れる秋山。

「西住さん…まほさんは、どうして戦車カフェの時、みほさんにあんな言葉を?」

 今とあの時の態度の違いに疑問を感じた五十鈴は、それを追及するかのようにまほに質問する。

「………家庭の事情ということで、理解してもらえるかしら…」

「…そうですか。わかりました」

 言葉を濁らせるように言ったまほの答えに五十鈴も自分も先ほど似た場面に出くわしていた。だからこそ、それ以上聞くことを辞めた。

そんな五十鈴とまほの会話を助手席に座っているみほは目を丸くして驚いていた。

「……お姉ちゃんがこんなにおしゃべりするなんて…少し意外」

「………私だって…女の子よ。」と、少し不機嫌そうにみほに言う。それを聞いて慌てて訂正をするようにオロオロしてしまう。

「ご、ごめん。私…」

「―――大丈夫よ。みほはみほの道…“自分が自分らしくなれる道”を探しなさい」

「……お姉ちゃん、ありがとう」

 うろたえるみほの姿を見てまほはハンドルから右手を外し、みほの頭を撫でながら言った。それを聞いてみほは、幼いころに言われたまほの言葉を思い出し、再び姉からその言葉を聞いて小さく頷きながら少し元気を取り戻した。

 話しているウチに大洗女子学園の校門前に到着した。

「ありがとうございました。西住さん、今日はお疲れ様でした」

「それじゃ西住殿! お疲れ様でした!」

「うん。華さん、優花里さん、今日はお疲れ様でした」と、手の振りながら解散した。

「それじゃ、みほのマンションまで案内して頂戴」

「うん。まずは…」

 みほの案内で車を走らせる。到着した途端、逸見からの連絡が入る。

「こちらまほ」

《今、お二人を送り届けました。隊長、いまどちらにいらっしゃっていますか?》

「今、みほのマンション…大洗の学園艦にいるわ」

《……今から20分以上かけて迎えに行くので、着地しやすい場所に発煙筒を焚いてください》

「了解したわ」

 通信を終え、まほはみほを見る。

「20分ほど、お邪魔してもいいかしら?」

「いいよ。少しちらかっているけど…」

 と姉を自分の部屋に案内するみほ。その後ろをついていくまほ。そして逸見が大洗に来るまでの18分間、少しギクシャクした会話だが、久しぶりの姉妹の会話を楽しむ二人であった。

「それじゃ」

「あぁまたな」

と、みほと別れを告げたまほは、逸見と合流するため車を走らせる。

そして大きく拓けた場所、裏山にたどりつく。まほは光を発しない発煙筒を焚く。そしてそこに逸見が操作するドラッヘが低空飛行しながら現れ、そのままゆっくりと着陸する。

「…お待たせしました」と、言いながらワイヤーを取り出し車にくぐりつける。

「ご苦労。……少しだけだが大洗の間取り図を手に入れたわ」

「さすが抜かりがないですね。」

 自分たちが考えれないほど自然で大胆に敵陣のスパイをやりとげるその行動力に逸見は、苦笑いを浮かべながら車の固定を済まし、まほを乗せて素早く離陸し、大洗を離れる。

どんどん小さくなる大洗を見つめるまほ。

そんなまほに逸見はマイク越しに聞く。

「……隊長、大洗はどうでしたか?」

「……規模は小さいが、やっぱりなくなるのは惜しい艦だとは思うわ。」

 寂しげな声でそう小さく言う。

「後で、みほがお世話になっている人たちにあいさつ回りをかねてゆっくりと訪問しましょうか。今度はお土産持参で」

「……それまで残っていればいいのですが…」と、大洗が措かれいる事情を知る者として、この全国大会で…11連覇を目指す自分らを倒すくらい大洗の戦車道が強くなるのか、疑問視する黒森峰たち。…いや、必ず上がってくる。何せ…私は……みほたちの“結末”を……。

喉まで出たその言葉を飲み込みながら私は、我が黒森峰女学園にドラッヘを飛ばすのであった。

 

 

 翌日、黒森峰の学園艦は戦車道運営委員会よりルーレットで決まった戦場に向かうべく北上していた。そんな時、セブンイレブンの定期便の輸送艦と平行航行していた時、デカデカと私宛の荷物がクレーンで下ろされ、数人の手で副隊長室に運ばれてきた。

「……送り主は…サンダース? 荷物の中は生もの?」と、書かれていた。おもむろに荷物を開けると中には、涙目で口枷と手足に枷を付けられたサンダースの副隊長アリサと手紙が入っていた。

「誰か、アリサを箱から出してやれ」といらん子中隊の面々にいいながら私は手紙を読む。

「―――……要件は理解したわ。アンタもあんな巨乳バカに恋をするなんてね…」

 と解放され…まだ手足にかせがつけたまま口だけが外されていた。

「け、ケイ隊長が…逸見に聞けば解決するって…」

「…まぁ、他の奴よりは男心は理解しているつもりだが…で、何を聞きたい?」

「―――自分に振り向いてもらう方法が、知りたい」

 真剣なまなざしで自分を見つめるアリサに小さくため息をこぼすように助言する。

「…まず、自分の気持ちは伝えたの?」

「いいえ。まだ、です…」

「手料理作戦は? 男ってな、女の子から自分が好きなものの手料理を貰うと結構うれしいものだ」

「な、なるほど…」と、手枷が外され、早速メモっていた。

「次に、相手がアニオタだったら好きなアニメ…の話をするのも一つの手だ。これは狭い世界感で唯一共通できることに、男とわず女もこれで少し心が開いていくぞ。」

「参考になります」

 真面目顔、乙女の顔でこちらを見つめる。なので、ここにお灸を据えてみる。

「―――今はこれを試してみなさい。あと…大洗戦の敗北理由を教えてあげるわ」

「―――散々、ケイ隊長に反省会で叱られました」

「……私から説教よ、…“敵を疑え”。敵が自分たちの作戦を知っているという前提で、策略を練る事だ。今回のアリサ、お前の無線傍受は敵の動きが音声でわかる。だが、実際その通りに動くかわからない。だからこそ、自分の目…となる偵察車を一両から二両導入し、遠くからでもいい実際に敵の動いているか確認した上で、隊長に知らせる。もう一つ、フラッグ車が味方の支援が無い中で前に出たら、負けるわよ」

「―――…ごもっともです」

 もっともらしい言葉にアリサはしょんぼりする。

「まぁ、今日はこれくらいにして…アリサ、このあと暇でしょう? 少し私に付き合いなさい」と、アリサの意見を聞かずにそのまま両腕をホールドして、黒森峰特製の懺悔室に連行する。

そこで…言葉にできない快楽をアリサに与える。

―――数時間後、懺悔室から出てきたアリサは屍だった。全身の水分が抜け落ちたように萎れ、ミイラ状態だった。…実際は、目の前で両腕や両足を落とされ血だらけの少女を過激に演技する演技部の部員らによって、深層に恐怖を植えつけられ、その光景がフラッシュバックされ、次は自分なのかと、青ざめているだけだけどね。

「これで今年度のサンダースに配備されている車輛の内部情報は得たわね。…アリサの記憶を改ざんしたのち、サンダースに送り返してやれ」

「了解です、副隊長!」

 嬉しそうにアリサを調整室とよばれる食堂に連行するのであった。…女ってさ、甘いものを食べればすべて忘れてしまうという手軽な記憶改ざんの方法だと思うこの頃だったりする。

―――そして自分も甘いものには…心底弱くなったものだ。

 




大洗の一回戦のエリカ目線っぽく書いてみました。 下手だ―。と自分で思うだよねー。

まぁ、それがアタイの限界だよね。



それじゃー 次回に向かって パンツァーカイル!!!!

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