現在アインクラッド第56層・パ二では攻略組ギルドなどが集まり行われている。主なギルドは血盟騎士団、聖竜連合、風林火山などのギルドで、自分のようなソロプレイヤーなどはごく少数だった。
「フィールドボスを村の中に誘い込みます」
まず第一声に第一層ボス攻略の時にパーティを組んだ、アスナが言った。そして周りもざわついた。
「でも、アスナ……そんな事したら、村の人たちは」
自分が反論をしようとしたら、すぐにアスナは返してきた。
「それが狙いです。ボスがNPCを攻撃している間に、ボスを攻撃し、殲滅します」
「……その作戦には賛成できない」
「NPCは生きているとでも?あれは単なるオブジェクトです。例え殺されようと、またリポップするのだから」
確かにアスナの言っていることには一理ある。でも、それでも自分はその作戦に賛成することが出来ない。
「ごめん……アスナの言うことは、わかる。でも……それに」
彼等は生きている。確かにデータ何だろう。でもそれでも彼らはSAOと言う世界の中で生きている。それをデータだから、すぐにリポップするからと言って見殺しや囮に使うことは、この岸波白野にはできない。
「彼等は生きているよ……うん、それは出来ない。彼等はSAOの世界で生きているんだから、俺は何度でも言うよ。その作戦は反対だ」
自分はそう言う。例えデータだからと言って、消してはいけない。そう心の中で叫んで、感じている。
「今回の作戦は私、血盟騎士団副団長アスナが仕切ることになっています。私の言うことには、従って貰います」
そのまま会議は終わり、どうするかは次回に持ち越しになった。
「よう!」
会議が終わり、自分が外に出ると後ろから第一層で出会い、現在50層で故買屋もしている商人プレイヤーだが他の攻略組プレイヤーと変わらない実力を持っている。
「揉めたな」
先ほどのことを言っているのだろう。
「まぁ、そうだね。アスナの言うこともわかるんだけど」
「しっかし、お前と副団長さんは仲が悪いのか、仲が良いのかわからんな」
仲がいい?自分はそうでもないと思うが何故か?アスナとは第一層でパーティを組んで以来ボス戦以外で闘ったこともないし、ボス攻略会議で何度か意見の相違はありぶつかったこともある。
「わからないって顔だな。だってよ、あの副団長さんを面と向かって呼び捨てで呼んでいるのはそんなにいないぜ。それにあの副団長さんに面と向かって意見を言えるのも、お前ぐらいなもんさ」
確かに第一層でパーティを組んだ時と比べてアスナは強くなった。まるで攻略の鬼のようになり、SAO攻略ギルド1,2を争うギルド血盟騎士団の副団長だもんなー
「アスナはすごいと思うよ、」
ただ、まるで攻略のこと以外は必要ないと感じているのが心配だった。いつか壊れてしまうのではないか、そのような脆さがあることには気づいて欲しかった。
約一ヵ月後、自分は第59層ダナクにいた。この層ではいい天気で、気温も過ごしやすく、柔らかな日差しが空気を満たしていた。
「眠い……」
自分はそう呟きながら空を見ていた。最近は色々な迷宮に行き、こんなに穏やかに過ごしてはいなかった。ならば今日ぐらいはうたた寝ぐらいは許されるのではないか?それにSAOに来てこんなに過ごしやすい日は初めてと言ってもいいくらいだ。
「……何しているの?」
自分がのんびり日陰で日向ぼっこをしていると、突然声がした。そして顔を見上げるとこちらを睨んでいるアスナが立っていた。
「アスナ……」
「他のみんなが必死で迷宮区に挑んでいるのに何であんたは呑気に昼寝しているのよ!?」
確かにアスナが言いたいことはわかる。でも
「今日は……過ごしやすいんだ」
そう、ただただ今日は過ごしやすい。それだけだ。アスナが怒るのもわかる。でも今日ぐらいはうたた寝で過ごしたい。
「貴方ね、わかっているの?一日無駄にした分、現実での私たちの時間が失われていくのよ」
最近この現実と言うことに疑問を覚えるようになっていった。自分に帰る所はあるのか……それがわからないからだけかもしれないが、自分には帰る場所がない気がだんだんと日にごとに増えて言った。それでも今生きているのはこの世界である
「……うん、アスナの言うと通りだと思う。それでも今日はいい天気なんだ」
自分がそう言うと呆れて顔しながらアスナは溜息をついていた。
「アスナも数分こうしてれば、わかるよ」
自分はそう言った。そうしてまた目を閉じた。
最近はよく夢を見ている。燃え盛る街、崩れいくビル。この世界では夢は見ないはずなのに夢を見る。それがどのような意味を持っているのかわからないが、久しぶりに今日はのんびりすることができた。
しばらくし、自分は目をふと開けた。そして隣を見るとアスナが横になり、すやすやと熟睡していた。このまま寝かしておくと勝手にPKされてHPが0になって死んでしまうかもしれない。今日はのんびり過ごすと決めていたし、アスナが起きるまで待ってみるか。
そうして数時間後、この前見つけて買い貯めしていたあんみつを食べながら夕日を見ているとアスナが起きたのか変な声が聞こえた。
「うにゅ……」
アスナが起きたみたいなのでアスナの方を向いた。
「おはよう」
そう言うとアスナは赤い顔をしながら、震えながら何か小さな声で言っていた。
「……ご飯一回」
「え?」
「だから、ご飯一回奢るから……それでちゃら!」
ん……別にそういうつもりでやったわけではないが……
「私の気がおさまらないの!」
そう言うことでこの層の裏路地にポツンと立っているラーメン店愉悦に向かった。
「いらっしゃい、少年よ」
もうこの層に来て何度も足を踏み入れたラーメン屋に入ると店長のNPCがそう言い席に案内をされた。まぁ、自分たち以外はいないけど
「えっと、麻婆ラーメンを一つ、アスナは?」
「……私もその麻婆ラーメン」
「だめ、アスナは食べちゃだめ!」
自分は必死に止めようとする。この味はまだ人類には早すぎる!!
「そうか……わかった、少年よ……麻婆ラーメンを二つだな……おっと、取り消しはできないから存分に味わってくれたまえ」
くっ、間に合わなかったか
「今日はありがとう……」
「いや、うん……大したことはしてないよ」
本当に……このあと出てくる麻婆ラーメンを食べることになっているため、アスナにお礼を言われることを素直に……受け取ることができない。
「こんなに寝たの、ここに来て初めてかも」
……うん、本当にごめんね……アスナ、ごめんね……もっと寝られなくなるかもしれないしごめんね
「最近恐い夢ばかり……見て」
あれ?ここって夢を見るの?確か自分の記憶だとここでは夢を見ないような気がしていたのだが……
そして話していると、しばらくして麻婆ラーメンが運ばれた。いや、麻婆ラーメンっと言うか殆んど麻婆豆腐しかない。スープもないし、何度も食べているが麺だって申し訳ない程度に入っている。
「いただきます!」
そういい、自分は麻婆豆腐を食べているとアスナも食べたのか、震えている。辛いのだろう……
「食べようか?」
「……うん」
泣いている、あのアスナがマジ泣きしている
「じゃあ、いただきます」
そうしてアスナの分もいただき食べようとすると叫び声がした。
「きゃあああああああ!!」
そうすると、アスナはすぐに立ち上がった。
「店の外からだわ!」
アスナは走りだし、自分もついて行こうとするが
「おっと待ちたまえ……少年。まさか麻婆ラーメンを残すつもりなのか?」
ここの店主に止められた。そして何とか食べ終わると、本来だったら奢ってもらえるはずだったのに、ここのお金も自分で払った。ここのラーメン高いんだよなー
「はは、少年よ……女性を待たせるとは、涙を流して耐えるといい、ははこのザマァ」
店主にむかつくことを言われてアスナを追い、街の中央に向かうと教会らしき建物の二階に一本のロープが垂れ、その先端に分厚い鎧を全身に着込んだ男がいた。そして男の胸に突き刺さった槍があった。
周りがざわめいていると、その瞬間男は無数の硝子が砕け散るような音ともに消えて行った。それは前にも見た光景に似ていた。HPが0になり、消えた。つまり死んでしまったのだが、何かあの男に違和感を覚えた。いや、確かに消えたのだろうが……何か見落としているのだ。そう考えているとアスナが窓から顔を覗いていたのでアスナの所に向かった。
「駄目、デュエルのWIN表示が出てなかったわ」
アスナの所に向かうとアスナはそう言った。確かにこの圏内で相手を殺す方法、またはダメージを減らす方法はデュエルしかない……でも、WIN表示がないってことは考えられることは、誰かが裏技を使い、圏内での殺人方法を見つけたのか……そして先ほどの男は死んではしないかのどちらかだ。
「このまま放置はできないわ……何とか見つけないと大変なことになるわ」
「うん、そうだね……」
「……なら解決するまで協力してもらうわよ。呑気にご飯なんか食べてる暇はないのだからね!」
うん、それは自分が悪いわけではないが……黙っておこう。
「うん、第一層以来だけど……よろしく、アスナ」
そう言いアスナとぎゅっと握手をした。
「まずは事情を聴かないと」
そうして教会から降りて皆にこの出来事を最初から見ていた人を探してみると、一人だけ見ている人がいた。
「ごめんね、怖い思いしたばかりなのに……貴方お名前は?」
アスナそうフォローしながら名前を聞いた。
「私……ヨルコって言います」
おびえながらそう言った声には一度聞いたことがあった
「もしかして最初の悲鳴は?」
自分がそう聞いてみると
「は、はい……私さっきの人と、カインズと……友達だったんです。今日は殺された人とご飯を食べに来ていたんです……でもはぐれて……そしたら、いきなりこの教会の窓から、彼が……落ちてきて胸に槍が刺さっていて……」
ヨルコと名乗った女性は震えながら、状況を説明してくれていた。
「その時誰かを見なかった?」
アスナは今にも泣き出しそうなヨルコの肩を抱きながらゆっくりと聞いた。
「一瞬何ですが……彼の後ろに誰かが居たように気がしました」
「それに見覚えは?」
「……」
その質問には黙って首を振っていた。
「その、カインズさんは誰かに狙われていたとか?」
その質問に数秒、間をおいて首を横に振った。
その後ヨルコさんを最寄りの宿まで送り、明日また話しを聞くことを約束し、アスナと会議を始めた。
「まず持っている情報を整理しましょう……あのスピアの出ろ頃がわかれば、それから犯人を追えるかもしれない」
それには賛成だが、鑑定スキルが必要となる……あ、一人上げている数少ない友人がいた。
「アスナ、鑑定スキルを上げている人に心当たりがいる」
「……でも、今ってみんな迷宮区から帰ってくる時間だし、忙しいんじゃない?」
「でも、大丈夫でしょ」
半ば強引にアスナに言い、アスナと共に第50層に向かった。ちゃんと事前にメッセージを送っておいたし大丈夫だろう。
そして店につき中に入った。
「よぉ、来たか待っていたぞ、白野」
「いきなりで悪かったね、エギル」
そういい、拳を合わせるとアスナも続いて入ってきた。
「って白野!お前ソロのお前が何でアスナと一緒に!?」
そういい、自分にしか聞こえないように言って来たがどうやら、アスナには聞こえていたらしい。
そうしてエギルが落ち着いた所で今回の事件のことを説明した。
「圏内でHPが0に!?デュエルじゃないのか?」
説明を聞きことの重大さに気づいたエギルは信じられないように言った。
「いや、どこを見てもWIN表示が出なかったんだ」
「それにヨルコさんと直前まで歩いていたのなら睡眠PKの線はないし」
そこまで言うとエギルに今回使われた武器を鑑定してもらった。
「PCメイドだ。制作者はグリムロック……聞いたことはねえな、一線級の刀匠じゃねし、珍しいスキルもねぇ……」
そうか、ならそのスピアが特殊な能力がない以上、その武器で殺されたってことはないか
「でも手がかりにはなるわ。あとエギルさん、武器の固有名は何ですか?」
「……ギルティソーン……罪の茨ってとこだな」
そう言うと武器をこちらに渡した。
「ん……確実なのは、この武器で自分を刺してみることだな……」
そう考えているとアスナは
「何考えているの!?それで人が死んでるのよ!?」
そうそれが引っ掛かる……本当にあのカインズは死んだのか?それがどうも信じられない。どう考えても圏内でPKをする方法があるとも思えないし
「この武器はエギルさんに預かって貰いますからね!」
そういい、アスナはこのギルティソーンをエギルに渡した。
そうして翌日自分たちヨルコに話しを聞くためと朝早く、レストランに向かった。
「ヨルコさん、グリムロックって人に聞き覚えあるかしら?」
まずアスナが口を開いた。そしてヨルコさんからの説明をして貰った。
ヨルコさんがいたギルドでの話だ。彼女が所属していたギルド・黄金林檎で半年前たまたま倒したレアモンスターから敏捷力を20上げる指輪をドロップしたことがそもそものきっかけらしい。ギルドで使う意見と売って儲けを分配する2つの意見が割れ、最後には5対3の多数決により売却することに決定。競売屋に委託するため、リーダーのグリセルダさんが1泊する予定で街に出かけたが、そのままグリセルダさんは帰って来なかった。後になりギルドのみんなにグリセルダの死亡が知らされた。そして睡眠PKが広がる前だったこともあり、ギルドメンバーは彼女が持っていたレア指輪を独り占めにしようとした売却反対メンバーの仕業だと思い込み、互いに疑心暗鬼となった結果《黄金林檎》は消滅することになったそうだ。ちなみにグリムロックはグリセルダさんの夫だった。そして昨日の犯人として考えられるのは、グリムロック……指輪を反対したものを狙っているのではないかと言われた。
「反対した三人って言うのが……私とグリムロック何です……」
「あとの一人は!?」
不味い、その人物が狙われるかもしれない!
「シュミットって言います……今は攻略組の聖竜連合に所属していると聞きました……」
シュミットって言えば確か聞いたことはある
「アスナ、それって確かディフェダーのリーダーやっている」
「うん、あってるよ。でっかいランス使いの人」
そう言えばアスナとこの前ぶつかった時にいた人だ
「シュミットを知っているのですか!?」
「うん、ボス攻略の時に何度か顔を合わせたことがあるよ」
「シュミットに会わせることはできないでしょうか!?彼はまだ事件のことを知らないかも……もしかしたら、カインズのように……」
「呼んでみましょう……確か白野君は聖竜連合のディアベルさんと知り合いだったわね?」
確かにディアベルは数少ない友人の一人でいい奴だが……巻き込んでしまうかもしれないが……頼んでみる価値はありそうだ。
「そうだね、ディアベルに聞いてみる」
そしてディアベルにメッセージを送り、ヨルコさんに宿から出ないように言い二人で聖竜連合の本部へ向かった。
「白野君は今回の事件はどう考えているの?」
「……」
自分は考えてみるが……どう考えてもわからない。昨日晩アスナと二人ではじまりの街に行って生命の礎を見に行き、本当に死んでいるのか確かめたが死んでいた。そうなると自分が考えていた、本当は生きている説は間違っていたことになる。
「ごめん、わからない……矛盾があり過ぎて、わからない」
素直にアスナにそう言う。
「……矛盾?」
「うん、本来矛盾はないはずなんだ……世界は矛盾を嫌うはずなんだ……」
そうこの世界は矛盾が無いはずだ……それなのに、圏内PKと言うのは少し気になる。
そうして答えが出ないことを二人で言いながら、聖竜連合の所に行きディアベルに話しを通してから、シュミットに会い事情を説明し、ヨルコさんがいる所に案内した。
どうやらシュミットは落ち着きがなく貧乏ゆすりをしながらヨルコさんの部屋のイスに座り何度も貧乏ゆすりをしていた。
「グリムロックが作った武器で、カインズが殺されたってのは本当なのか?」
シュミットの問いかけにヨルコさんは静かにうなずいた。それを聞いた瞬間冷静さを失いシュミットは立ち上がった。
「何で今更カインズが殺されるんだ!あいつが……あいつが指輪を奪ったのか!?グリセルダを殺したのはあいつだった!?グリムロックは反対した奴全員殺すのか!?」
「グリムロックさんに槍を作って貰った他のメンバーかもしれないし、もしかしたらグリセルダさん自身の復讐かもしれない」
!?それはまさか!?……サイバーゴーストじゃないか!?いや、サイバーゴーストは本来何もできずにそこに存在するだけなはず……
「だって……そうじゃなきゃ……圏内で殺すだなんて不可能じゃない」
そういい、ヨルコさん立ち上がった。さっきまでの落ち着いた様子ではなかった
「寝ないで考えたの」
そう一言いい。
「だってグリセルダさんを殺したのはギルド全員なのよ!!あの指輪がドロップしたとき投票なんかしないで、グリセルダさんの言う通りにしていれば良かったんだわ!!」
まるでヒステリックに叫びながら窓に座った
「ただ一人グリムロックさんだけはグリセルダさんに任せると言った、だからあの人には私たち全員に復讐する権利がある」
そしてシュミットは何かを言うとした瞬間、ヨルコさんが窓から落ちた。一瞬だが背中には短剣が刺さっていた。
そしてカインズのように消えて行った。そしてこの岸波白野はまた違和感を感じた。
とりあえず考えているのは本来SAOと同じようにアスナ結婚ルート。
またはこのまま友人ルートの二つを考えています。