このソードアート・オンラインが始まって半年が過ぎ、約28層まで解放された。
未だ自分はソロプレイヤーである。まぁ、自分にもその原因はいくつかあるけど。まず主な原因は攻略組の権力争いである。自分のようなソロで攻略組は珍しく、どのギルドに入っても即戦力になるのか、色んなギルドから誘われているが、それと同じ数だけ毎日のように色んなギルドから悪戯を受けている。まぁ、小さい悪戯だけど。それでとある層を攻略会議している時に攻略組のギルドには入らないと言ってしまったからだ。そこからギルドからの誘いは多少なくなった。まぁ、殆んど自分のせいだけど。
それに入らないのにはもう一つ理由がある。それは初期の時からあるとある“マント”と“マフラー”が原因だ。この世界には魔法が使えないらしいが、このアイテムを装備していると何故か魔法が使えた。何故だかわからないが、このスキルは危険だと思った。だから使わないし、万が一のために取って置きたい。できるだけこのことをばれないようにするため、ギルドも入らない。入ってしまったなら必ず自分は使ってしまいそうな気がするからだ。
そして一層の時に、出会ったプレイヤーの現状は
ディアベルは第一層攻略メンバーを中心としたギルド≪聖竜連合≫を作り、その後自分がビータと言うことを明かしたらしいが、何とかメンバーとはうまくやっているらしい。
アスナは現在1,2を争うギルド≪血盟騎士団≫に入ったらしく、飛ぶ鳥も落とす勢いで副団長となった。
キバオウはやはりビータとの確執からディアベルと決別し、自身でビータを除いたプレイヤーを中心とした《アインクラッド解放隊》を作り、攻略組の一角を補っている
クラインはSAO以前からの友人総勢6人で構成されるギルド《風林火山》のギルドを作り少数ながら有力な攻略組の一つとして有名である
キバオウですらギルドを作っているのに自分は……まぁ、考えないでいよう。そろそろ装備も新しくしたいし、一回下に11層に行きアイテムを集めるとしよう。
うん、やっぱ10層ぐらい下に来ると楽だわー、2,3時間でアイテムも集め終わったし帰るとしよう。
そうして帰ろうと街まで行くと自分が向かった道以外の道から逃げてくる一団があった。それを助けると、すぐにその一団からお礼があり夕食に招待された。断る理由もなかったのでその誘いを受けた。
「我ら月夜の黒猫団に乾杯!!」
「「乾杯!」」
皆でグラスを持ち乾杯すると、皆がこちらの方を向いた。
「でもって、命の恩人の岸波さん乾杯」
「「乾杯」」
皆と合わせて乾杯すると、皆がお礼を言ってきた。この月夜の黒猫団は団員5人からなる小規模ギルドでメンバーはリーダーで棍使いのケイタ、メイス使いのテツオ。槍使いのササマル、剣使いのダッカー、そして紅一点で槍使いのサチ。
「すごい怖かったから、助けに来てくれた時、本当にうれしかった」
サチは本当に不安だったのか、こちらを見ながら何度もありがとうと言ってきた。別にそこまでお礼を言われることはしてないと思うけど
「大変失礼だと思うですけど、レベルって幾つぐらいなんですか?」
「今の所、40だよ」
別にここで嘘を言う必要はないし、まだ中層にいるってことはこの月夜の黒猫団は攻略組へ目指している最中ではないのか?
「……へぇ、やっぱり攻略組はそんなにレベルを上げているのですか?」
「いや、多分みんな俺の-5から10ぐらいだと思うよ、ソロだと経験値は殆んど一人に行くから必然的にどうしてもあがってしまうんだ」
「はぁ、成程……」
多少ガッカリしながらそう言ってきた。
「あの、もしかしてソロプレイヤー最強の黒制服の剣士って岸波さんのことですか?」
「……」
まさか自分がそんなこと言われているとは思ってなかった。
「あの岸波さん?」
「ああ、うん多分」
この学生服のせいだ。何故か、この学生服は脱げなく、新しい服を手に入れても何故か着ることができなかった。いや、まぁ一応は他に着ることができるアイテムはあるのだが、それは体育着に男子のスクール水着に他の種類の制服だけ。マシなこの学生服を着ているのだ。
「あの、こう言っては何ですが良かったら短期間だけでもいいので、僕たちのギルドに入りませんか?」
「……ギルドには入れない」
「そうですか……」
「でも用心棒ならできるけど、どうする?あ、ちなみにお金とかはとらないから」
ソロプレイヤーは殆んどいないが、主なソロプレイヤーは少数ギルドの用心棒、アイテムを取りに行くときの傭兵などのことをしている。その時の料金として戦闘で得たアイテムや金を何十%もらっているらしい。
「そうですか、ならお願いします。前衛ができるのがテツオだけで、このサチを前衛のできる盾持ち片手剣士に転向させようと思っているんですけど、勝手がわからないみたいで、サチがコツを掴むまでお願いしてもいいですか」
「……人をみそかっすみたいに言わなくても」
会話を聞いていたのかムッとしながら反論をし始めた。
「だって今まで後ろにいたのに急に前に行けって言われても、おっかないよ」
「盾に隠れればいいんだよ」
「……それじゃあ改めて、よろしく。あと別に敬語じゃなくてもいいから」
二人の会話を聞きながらそう言うと、リーダーであるケイタ笑うと言った。
「じゃあ岸波よろしく、いやー、うちのギルドは現実でみんな同じパソコン研究会のメンバーなんだけど、心配しなくても白野とならすぐ仲良くなれると思うから安心して」
ケイタはそう言っているが、それはもうここに来る最中でわかっている。そしてしばらくの間このギルドで用心棒として、ケイタたちと共にした。
そして自分が用心棒に入ったことにより、夜月の黒猫団のメンバーはどんどんレベルを上げていった。まず自分が前線で防御をしながら、サチやケイタたちに指示してケイタたちに経験値を取らせる戦法で闘っていると、一週間やそこらでレベル上げをしていた狩場のワンステップ上の狩場に上がっていた。この調子だったら、すぐにとは言えないがしばらくすれば、前線の攻略組に名乗りを上げることもできるかもしれない。
リーダーであるケイタはダンジョンの安全エリアで自分に夢を語った。
「岸波のおかげで俺たち結構レベル上がったし、これで何とか安全にレベルを上げることもできる、まぁ、仲間の安全を第一に考えているよ。岸波がいるから何とか少しの無茶ができるけど、でもさ、安全だけを考えるならはじまりの街に閉じこもっているのが一番だと思うけど、こうして狩りをしてレベルを上げているからには岸波みたいに攻略組に仲間入りしたいと思っているんだ。……ねぇ、岸波みたいな攻略組と僕らとでは何が違うと思う?」
「……んー……情報やレベルかな?」
少し考えて月夜の黒猫団と他の攻略組ギルドとの違いを考えてみてもこれしか思い浮かばなかった。
「それもあると思うけど、一番の違いは意志力だと思うんだ。仲間も護って、全プレイヤーを解放するんだって強い意志が、彼等を突き動かしているんじゃないかなって思うんだ」
そう言うと自分は他の攻略組を思った。まずアスナ、クライン、そしてディアベルあたりはそうかもしれない、だけど他の攻略組ギルドがそうなのかと考えると違うと思う。ボス以外の情報の交換などは殆んどされてはいない。ディアベルの聖竜連合、クラインの風林火山の二つのギルドしか情報を公開していない。ちなみに自分は割と速い段階でディアベルやクラインから情報を貰っている。
近い未来に月夜の黒猫団が攻略組に入ればもっと全プレイヤーのレベルの底上げにつながり、攻略組ももっと数が増えると思う。
そうして月夜の黒猫団は凄まじいスピードでレベルが上がって行った。それと同時に金も貯まり、もう少しでギルドホームが買えるくらいになって行った。
しかし、それがサチのプレッシャーになっていったらしく、夜中自分が28層に戻り自分のレベル上げをして帰ってくるときに起こった。
ケイタからメッセージが届いた。内容は
“ケイタです
サチが出ていったきり帰ってこないんだ。
迷宮区に行ってみる
岸波も探してほしい”
と書かれていた。自分はサチを探すためにスキルの一つの追跡を使い、サチを探した。そうするとすぐにサチらしき足跡を見つけた。それを追って行くと水路の中に入って、マントを羽織って蹲っているサチを見つけた。
「サチ」
声をかけると、それに気づいたのかサチはこちらを向いてきた。
「白野?」
「良かった……無事で」
そう声をかけた。本心からそう言った。サチは全く動こうとしなかったので、少し離れて隣に座った。
「ねぇ、白野……一緒に逃げよ」
「逃げるって?」
「……この世界から、みんなから、モンスターから」
「それってもしかして心中ってこと?」
自分は恐る恐るサチに聞いてみるとサチは小さく笑った
「それもいいかもね……でも死ぬ勇気があるならここには隠れてないよ」
まるで自虐するかのように笑っていた。そして続けて言った
「私ね……恐いの、死ぬのが……この頃眠れないし……」
震えていた。サチはこのゲームがデスゲームに変わった時から恐かったのだろう、それは自分が来たことにより、皆のレベルが上がった。この層に入れば安全性は高まる。でも月夜の黒猫団は攻略組を目指している。それは死の危険性も上げていることだった。それにサチは耐えられなかったのだろう。
「サチは死なないよ」
そう自然に言葉が出てきた。それが気休めにもならないとわかっていても。
「……白野は一人で、前線に出ているよね。でも私は白野と同じレベルになってみんなと前線にでたとしても……恐いよ……白野は恐くないの?」
ため込んでいた感情が爆発しているのかサチは続けた。
「多分、死ぬのは恐いよ。生きていたいし……それに記憶が無いんだ」
自分の記憶が無いことをサチに告白した。それを聞いたサチは驚いた顔をし、こちらを見ていた
「ずっと死ぬ恐怖はあるけど、その前にただ前に進むことしかできない……それが、岸波白野が唯一できることだから前に進めるうちは、体がまだ動くうちは、自分から止まることだけはしたくない、ただそれだけなんだ」
「白野は強いよ……記憶が無いのにこのゲームを一人で前線で闘って……私は……」
震えが止まらないサチを見た。今に壊れそうだった。
「サチ、君たちは絶対に死なないよ」
「どうして?」
「サチは、俺が護るから。」
本当に慰めにならないことを言ったと思う。でもそれしか言えなかった。でもこの約束をした。サチは泣いているのか、笑っているのかわからなかった。
そのあとはケイタにサチを無事に見つけたと連絡し、泊っている宿に戻った。宿に戻り部屋の中にいるとドアを叩く音がして、ドアを開けると、枕を持ったサチが入ってきた。その顔はどこか安心していたように見えた。
「ごめんね、やっぱり眠れなくて……」
その日からサチは自分の部屋に来て、眠るようになった。一緒に寝ていると安心できるようで、サチは寝ていた。それを見ながら自分はきっと温かいものを信じていたい。温かいものを守っていたい。ただ、そう感じた。
サチと一緒に寝るようにしばらく経つと、お金も貯まりギルドハウスを買いにケイタがいなくなると、メンバーのテツオが提案した。ケイタが帰ってくるまでお金を貯めて、家具を買って置こうと。
それは間違いだった。はやく稼ぎたかったのか、自分がいるから安全だと思ったのか、いつもとは違う狩場で、上の迷宮に向かうことになった。確かに全員行けば安全で余裕だったが、とある隠し扉を見つけた。その部屋には宝箱があり、それを見たメンバーは開けようと部屋に入った。そして開けると部屋の中にアラームが響き渡った。アラームが響き渡ると壁からどんどんモンスターが出てきた。そこから脱出しようと転移しようとするが無効化されてしまった。一体一体だったら何とか対応は出来ただろう、だが皆、冷静を失っていたのかモンスターに囲まれて、まずダッタ―のHPゲージが赤になりガラスが割れたようになり消えた。そして、テツオ、ササマルも同じように消えた。いや死んでしまった。自分は何とか助けようとモンスターを倒すが、数が多く前に進めない。
「サチ!?」
自分は手を伸ばす。この時ばかりは自分の何となく敵の動きがわかることが、いやになった。サチの後ろからモンスターが攻撃しようとしていた。このままでは絶対にあの少女を助けられない。絶対に守ると約束した少女を……だけど、自分が何をやっても助からない状況でも、自分は諦めたくはない。手を伸ばす。サチのHPゲージが黄色くなっていた。もう、その一撃を喰らうと、消えてしまう。
そこの時が止まった。いや、止まっていたのかはわからないがそう感じた。
「ああ、その悪あがきこそ君なのだろう、マスター」
どこからか、声がした。
「……そうか、まだ君は思い出してないのか」
自分の記憶を知っているのか?
「今はそのようなことは大事ではないはずだろ、マスター」
ああ、自分は頷く
「君は私の望みを叶えてくれた……ならば、私も君の願いを叶えよう」
この状況を何とかしてくれるのか?
「ああ、だが私はそこには行けない。だが力は貸せる。なんせ君は、剣を預けるに相応しい主なのだから」
そして勝手にメニューが開き???と表示されていた二つのうちの一つが表示された。その名も“赤原礼装”
「それをどう使うかは君次第だ、君は君が護りたいものを護り、願わくは私のようになってくれるなよ、マスター」
そう言い、その声の主は背中を見せどこかに歩いて行った。いや、本当は見えてはいない。ただそう、感じただけだ。
すると時は動き出したかのように見えた。一つ違うのは、学生服が先ほど解放されたアイテム“赤原礼装”となっていたことだ。
「トレース……トレース・オン!!」
まだ間に合う、まだあの“■■■■■”みたいに。上空からあらゆる剣が降ってきた。それは自分とサチの周りのモンスターを刺した。
一瞬だけサチを見る。そう、もう答えは決まっている。自分には力はない。これだって“■■■■■”からの借り物だ。だけど……
「トレース・オン!」
自分がした約束を護る力として……使わせてもらう
その後は全く覚えていない。何とかモンスターを倒した後、自分の頭は耐えきれない痛みが襲ってきた。だが必死にHPを見ても減ってはいないし、異常状態も出ていない。だが耐えきれない痛みがあった。そして薄っすら見えたモノがあった。見たのは“■■■■■”と一緒に闘った記憶だった。
そのあとサチが助けてくれた。隠し部屋から抜け出し、何とか安全圏まで脱出した。
いくつか報告とあるとしたら、ケイタが死んだ、自殺した。自分のせいで、ああ、これは罰なのであろう。自分さえいなかったら、彼らはずっと安全圏にいたはずだった。だが自分がいたから、安全だと思ったから、あそこにいた。自分さえいなければ……誰も死なずに済んだはずだ。
最後にサチははじまりの街に向かった。せめてもの償いとして、多くのお金をサチに渡した。この金額さえあれば、しばらく狩りをしなくても生きていける。自分はサチから責められるのが恐かった。だが、サチは最後にこう言った。
「ありがとう」っと。
私はあの時のことを思い出す。白野が私を助けてくれた時のことを
何とか私は助かった。白野のおかげで。白野はいつもの学生服から赤いマントのような物を着ていて、まるで魔法のように剣を出したり、剣を降らして敵を倒していた。だけどこのSAOでそんなことができるかは疑問だった。でもモンスターがいなくなると急に白野が倒れてしまった。
「うぁわぁぁああ!!」
叫び声を上げた白野に対して私は何とか助けようとアイテムを出すけど、白野のHPや状態にも何らかの不具合が出ているわけではなかった。私は何もできなかった。
そういていると白野の姿が一瞬消えて、また白野が現れた。みんなのようにガラスで割れて消えてしまうのではなく、まるでこの世界、SAOがまるで白野を拒絶するように消そうとしているかのように見えた。不必要なデータを消すように、白野は苦しみながら、何度も何度も一瞬だけ消え続けた。
無理矢理サチを助けました。ですがもう多分出てこないと思います。
設定としましては岸波君はアーチャーの能力を使えるチートアイテムをてに入れましたが、使いすぎると気絶するくらいの頭痛に襲われます。他にも設定としましてはアーチャーで倒した敵からは経験値はもらえず、アイテムも落としません。