「はあ・・・・・・」
兼一が川神市に来て数日が経過した。闇の狩人は現れず、平和な毎日だった。
だが、兼一にはある悩みを抱えていた。
現在の時刻、朝の4時誰もが寝ているであろう時間に兼一は起きていた。
「いつもなら修行の時間なんだけど場所がな~・・・・・・」
梁山泊にいた頃は修行を開始している時間。しかし、修行ができる場所がなかった。
走ったり、筋トレなどはなんとか出来るかもしれないが技の鍛錬が出来ない。下手に行えば誰かに見られて噂になってしまう可能性は高い。
兼一は自分の修行内容が普通ではないことは自覚している。だからこそ人に見られてしまうのは面倒であった。
何故知られたら困るのか。それは川神学園に入ってすぐ分かったことだが、ここの生徒たちは噂話に敏感であった。そこから尾ひれはびれがついてしまうことも理解する。
そんな噂話が百代の耳に入ったら間違いなく興味を示す。それだけは避けたいと兼一は思ったのだ。
少し考え過ぎかとも思ったが兼一の知り合いで噂に真っ赤な嘘を付けたして人を追い詰める地球外生命体がいるため油断は出来ない
「どうしたものか・・・・・・」
悩む兼一はあることを思い出した。
昨日、梁山泊から送られてきた荷物である。一緒にあった手紙には困ったときに使いなさい、との一文だけ。
まだ荷物を空けていない。もしかしたら何かしら役に立つかもしれない。
そう思った兼一は荷物空ける
「こ、これは・・・・・・!?」
「あっ!け、兼一さん、おはようございます」
「・・・・・・おはよう、まゆっち」
「?どうしましたか、け、兼一さん。元気がないようですが?」
『白浜っち。朝からそんなんじゃ良い事起きねえぞ!」
朝から元気のない兼一に声をかける由紀江
「いや、師匠達は悩む僕を見て楽しんでるんじゃないかと思ってね・・・」
「は、はあ?け、兼一さん今日はお暇ですか?」
「ん?暇だけど・・・ってそれよりもまゆっち。まだ僕の名前を呼ぶ時ぎこちないね?」
「あうっ!」
兼一とまゆっちは名前で呼び合う仲となったはいいが、まゆっちは未だに兼一の名前を言う時どこかぎこちないのだ
「大和君や翔一君を呼ぶ時は普通なのになんでなんだろう?」
「わ、私にもよく・・・・・・」
「おおーい、まゆっち。そろそろ時間だぞー。って、兼一さんじゃないっすか、おはようございます」
2人が話していると入ってきた青年が兼一に挨拶する。
この青年は『直江大和』。由紀江が入っている風間ファミリーで参謀役を担っている。『軍師』と言うあだ名通りかなりのキレ者である。
由紀江に紹介してもらった時、地球外生命体みたいに失礼な奴じゃなくてほっとした兼一
「大和君、おはよう。時間ってなにかあるの?」
「あれ?まゆっちから聞いてませんか?」
「す、すみません。今、話そうとしていたのですが・・・・・・」
「そうなんだ。んじゃ、ついでに説明しときますか。俺達これから姉さんの試合を観に行くんですが兼一さんもどうですか?」
大和の言う『姉さん』とは百代のことである。姉弟なのかと聞いたら舎弟らしく大和はあまり気にしていなそうだ
「試合?」
「ええ。姉さんに挑戦者が現れたんですが、結構名の知れた人らしいから観戦しようかと」
「へえ。その挑戦者の名前は?」
「カルカラ兄弟といってそこそこ強いらしいですよ?」
「そうなんだ・・・・・・」
兼一はそれとなく気配を探ってみた。
特に大きな気が二つ同じところで感じるがこれは鉄心と百代の気である。その気の近くにある一般人よりかは大きい気と小さな気が二つあるところその2人がカルカラ兄弟であろう
「ごめん。ちょっと片づけないといけない荷物があるから今回は止めとくよ」
「そうですか?まあ、引っ越してきたばかりだからいろいろあるんでしょうけど」
「大丈夫なんですか?私もお手伝いいたしますが・・・」
「大丈夫、大丈夫。ちょっといらないものを処分するだけだから」
「わかりました。頑張ってください」
「け、兼一さん。帰ったらお手伝いいたしますので」
『まゆっち、また言えてねえぞ?』
「うん、いってらっしゃい」
兼一は出かける2人を見送った
「気配からして闇の狩人とは関係なさそうだし。部屋の片づけとこの師匠達からの贈り物をどう処分するか考えよう・・・」
はあ・・・とため息をついた兼一は部屋へと戻っていった。
「それまで!」
「・・・・・・」
川神院で試合終了の言葉が言い渡される。
立っているのは百代。そして壁にめり込んでいる男が今回の挑戦者カラカル兄弟の兄ゲイル
その試合時間はわずか1秒。まさに瞬殺であった
別にゲイルが弱いのではない。百代が強すぎなのである
「さすがお姉さまだわ!」
「お見事です」
「もう世界王者を名乗ると言い」
「はっはっはまあそれほどでもあるかな」
仲間からの祝福の言葉。だが、百代の心には響かない。あまりにの呆気なさに勝利の実感がわかないのだろう
シャワーを浴びてくると言い、1人歩く百代はただただ同じこと考えていた
(もっと、もっと強い奴はいないのか?私をわくわくさせてくれる奴はいないのか?)
百代が求めているものは強さではなかった。自分と戦える強者、戦いの実感ただそれだけであった
(もっと戦いたい。これでは人ではなく退屈に殺されてしまいそうだ)
「ん?」
百代はふと空を見上げた。そして不機嫌だった顔が少し笑みが入る
「なかなかの殺気だ。こいつは少しでも私を楽しませてくれるかな?」
川神市上空。そこには謎の戦闘機が飛んでいた。
「ここが武神の住む国か・・・お嬢様、ただいま参ります」
そこには怪しい影がたたずんでいた。
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