楽しんで頂けたら幸いです!
そして始まったクラス対抗障害物競争。
そこで周りのクラスを圧倒し、トップに立っているのは当然の如く百代であった。
「次で最後の障害物だな・・・(今まで通って来た障害物は私だけでも余裕でクリア出来る物ばかりだった。てっきりクイズの所でメッチャ難しい問題でも出してくる物かと思ったが・・・)」
百代が最後の障害物ステージへとたどり着く。
ここまでは独走の百代。その顔はとても退屈そうな表情だった
「(確か最後はぬいぐるみを着た川神院の門下生達が行く手を塞ぐ奴だったな。という事は私には門下生を複数相手にしているのか?)」
そこまで考えて溜息を吐いた百代。
例え門下生が複数相手だろうと自分の相手ではない。ものの数分で片付けられる
それを分からない鉄心ではない筈なのだが・・・
「来たか・・・ん?」
百代の相手となる障害物が現れるが百代の予想とは違い、1体のぬいぐるみが佇んでいた
「まさかお前1人だけか?」
百代がそう聞くとぬいぐるみは頷いた。
鉄心の考えがますます分からなくなった百代はだんだんと苛立ち始める。
「・・・まあいい、さっさと終わらせて大和を弄りでもするか」
そう言って百代は普通の人では見る事の出来ないスピードで潜り込み、鳩尾に向けて拳を振るう。
それでぬいぐるみは砂浜へと沈む。
その筈だった。
「なに!?」
その拳はぬいぐるみの片手によって防がれていた。
まさかの出来事に百代は驚愕する。
百代は川神院の門下生ならば強めでも大丈夫だろうと思い、強めに撃ち込んだ。
それなのにまさか片手で受け止められるとは考えもしていなかったのだ。
「・・・貴様、川神院の門下生じゃないな?一体何者だ?」
「私か?良いだろう、教えて差し上げよう!」
ぬいぐるみがそう言うと、そのぬいぐるみを脱ぎ捨ててその姿を現した。
「ある時は町を見守る一般人、ある時はか弱い少女の行く先を遮る可愛いぬいぐるみ。その正体は!我流戦隊!我流ブルー!」
シャキーンとポーズをとる我流ブルー。まさかの人物に会場が沸いた
「おおおっ!我流ブルーだ!」
「最近、話題の正義の味方か!」
「我流ブルーさん、こっち向いて~!」
我流ブルーの人気はかなりのもので川神学園の生徒達は大興奮だ。
しかし、それ以上に興奮している者がいた
「くくくっ・・・ははははっ!まさかあなたが出てくるとは思っていませんでしたよ!」
「君の祖父、鉄心殿の願いで馳せ参上した。君の最後の体育祭を最高のものにしてあげたいと」
我流ブルーこと兼一は体育祭が始まる前に鉄心からそうお願いされていたのだ。
兼一も鉄心のお願いを快く承諾し、我流ブルーとして百代の障害物として参上した。
「確かにこれは3年間で最高の体育祭になりそうだ!久々に全力で試合が出来るのだから!」
「残念だが、そういう訳にもいかない」
「なに?」
「私はあくまで障害物。ある条件をクリアすればそこでおしまいだ」
「・・・その条件とは?」
「なに。そんな難しい事じゃない。私の身体にダメージを与える。それが条件だ」
我流ブルーの言葉に百代は不満そうに目を細めるが、それは一瞬ですぐに笑顔に戻る。
百代は武術に関しては頭が良く働く。
我流ブルーの条件は、他のクラスがゴールするまで百代からダメージを喰らわず防ぎきることが出来るのだという自信の表れであった
「貴様がどこまで耐えきれるか、楽しみだ!」
百代は我流ブルーに向かって跳んだ。
「はあああぁぁぁぁ!!」
百代はそのまま拳の嵐を我流ブルーに浴びせる。
しかし、我流ブルーはそれを全て叩き落とした。
「流石だな!いつもの挑戦者なら今の連撃で沈んでいたよ!」
「悪くない連撃だったがまだ粗い。もっとコンパクトに振るわなければ当たらないぞ?」
「吐かせ!」
今度は上中下と蹴りを放つ。我流ブルーはそれを上段と中段を両手でいなし、下段は足の裏で受け止める
「うおおおおおっ!!」
受け止められても百代は攻撃の手を休めない。
しかし、その攻撃は空を切るばかりで1発も我流ブルーには届いていなかった。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・」
「どうした?まだ私には1発も当たっていないぞ?」
一方的に攻撃を仕掛ける百代だったがその分体力が消耗するのは当たり前なこと。
しかしそれは受ける側も同じ。それが百代の考えであったが我流ブルーは全く息を乱していない。
「百代さんに問題だ。なぜ、同じ運動量の筈なのに此処まで差が出来ているのか?」
「・・・貴方は必要最低限の避け方で体力の消耗を抑えていました。空手の『前羽の構え』からの回し受け、太極拳の『化勁(かけい)』を完璧に使いこなす事で体力の温存が可能に出来る、という事ですね?」
「その通りだ。でも、それでも50点。理由はわかるかな?」
我流ブルーがそう言うと百代は黙り込む。
「じゃあ、違う問題だ。あらゆる武術の段を持っている蟻と象が戦ったらどちらが勝つと思う?」
「・・・・・・」
我流ブルーの問題に馬鹿にしているのかと苛立ち、睨みつける百代
我流ブルーはそれを見て話し出した
「もちろん象だ。どんな優れた技を持っていようとそれを覆す強大な力には勝てない。ではその強大な力を手にするにはどうすればいい?そう基礎鍛錬だ」
「・・・・・・」
「百代さんは長年、基礎鍛錬を怠っているみたいだね?だから、百代さんと僕にはこれ程の差が出る」
「・・・では今の私は技・力両方とも貴方に劣っていると?」
「まあ、ぶっちゃけるとそうなる。しかし、君にはもう一つ重大な差があるのだが・・・。今日のところは此処までとしよう。百代さんも聞いてばかりではつまらないだろうしね」
我流ブルーが視線を横に移す。
百代も同じように視線を向けるとそこには競技に参加していた他のクラスが百代と同じステージまで追いついたところであった。
「とても気になるところで終わりましたが確かにそうですね。私は座談よりも身体を動かした方が良いですよ!」
百代は再び我流ブルーに襲いかかる。
「川神流、無双正拳突き!」
強烈な正拳が我流ブルーの鳩尾に向けられるがまたしても避けられてしまう。しかし、それは百代も百も承知だった
「川神流、致死蛍!」
「離れ際に遠距離攻撃。悪くないけど通用しないよ」
避けた方向に気弾を放つ。それも我流ブルーによって叩き落される。
「単発がダメなら連発だ!」
百代は気弾を連発して弾幕を張り我流ブルーの逃げ場を消す。
「無駄だ」
我流ブルーはその気弾を受け流す。それだけではなく、受け流した気弾を別の気弾にぶつける事で相殺している。
「私の気弾を受け流したり叩き落されることはありましたが、貴方みたいに気弾を受け流した気弾で相殺する人は初めてです!」
「そうか。だが、気弾で弾幕を張って逃げ場をなくすのは良いがもう少し回りを見てくれないかな?私が受けなかったら他の生徒達に被害を受けていた」
「それも計算の内ですよ。それにそうでもしないと貴方を捕らえる事は出来ませんから!」
「なんとも危ない考え方だな・・・。それと、さっきから気になっていたがどうして敬語になっているのかな?始める前は違ったのに」
「私は尊敬に値する人には常に敬語で話すんですよ。特に貴方みたいな人には」
話がらも気弾を放ち続ける百代とそれを受け流し続ける我流ブルー。そんな光景に始めは大騒ぎしていた生徒たちは静かに観戦していた
「おいおい!我流ブルーってあんなに強かったのかよ!モモ先輩と互角じゃねえか!?」
「で、でもここじゃ本気は出せないだろうし手加減しているからじゃ・・・」
「確かに姉さんは全力を出してない。だが、本気で我流ブルーを倒しに行っているのは間違いない筈だ」
岳人とモロが不安そうに話しているところを横から割り込んだ大和がそう答える
その大和の答えに一子も賛同した。
「大和の言う通りよ。あんな嬉しそうなお姉様の顔、私初めて見たかもしれないわ!」
「確かにマルさんと戦っていた時よりも楽しそうだ。だが、それ以上に・・・」
「うん。マルギッテと戦っていた時よりも気が高まってるね」
「あの我流ブルーもなかなか面白い奴だ。あの素顔は一体どうなっているんだろうな!」
大和たちが話していると気弾の嵐が止み、百代はすぐに行動を取った
「なら、これはどうだ!川神流、か~わ~か~___」
「おっと、それはいけないな」
「っ!?」
我流ブルーは両手に気を集め始めたのを見てすぐに百代の背後へと回り込む。
そこであるアナウンスが流れた
『ゴール!今、最後のクラスがゴールしました!』
「なにっ!?」
我流ブルーとの戦いに夢中になってしまい、他のクラスが追い抜かれていた事に気付かなかった百代。さすがにショックが大きかったのか驚きの表情を見せる
「残念だったね。僕も少し大人気なかったかな。まあ、良い経験にはなったでしょ?」
「何を終わったような口振りをしているんですか?まだ私と貴方の決着はついてませんよ!」
百代はすかさず背後にいる我流ブルーに裏拳を打ちかます。
しかし、その裏拳には手ごたえが無い。
その後すぐに裏拳を出した手首を掴まれてしまう。
「百代さんならそう来ると思ったよ。さっきの周りの迷惑を考えない気弾攻撃のお仕置きも兼ねて頭を冷やしてもらうよ」
「なn___」
「せいっ!!」
「うわあああああああああああぁぁぁぁ!!??」
我流ブルーは百代を海の方へと投げ飛ばした。
百代は我流ブルーの力に逆らえず、簡単に投げ飛ばされてしまいそのまま海へと落下してしまった。
「ぶはっ!」
少しして海面から百代の顔が出てくる。怪我は無いようで視線は陸の方へとやると我流ブルーはまだ砂浜にいる。
「逃がさないぞ!我流ぶふっ!?」
我流ブルーの方へと向かおうと海面から飛び出そうとした百代の顔面に何かが当る。
百代は当った何かを手にして確認してみるとそれは黒い布の塊であった。
「なんだこれは・・・水着?」
塊を広げて見てみるとそれは黒ビキニであった。
しかもどこかで見覚えのあるものでふと、視線を自分の身体へと向ける。
「・・・・・・・・・」
すると百代の顔がみるみると赤に染まっていく。
「う、うわああああああああああああっ!!??」
百代は叫び声を上げながら海に潜り込んでしまう。
そう。それは我流ブルーに投げられる直前まで着ていた筈の水着だったのだ。
「これぞ、馬師父直伝のすれ違い際の脱がし術・・・。すまない、百代さん。君から逃げるにはこうするしか他に方法はなかったんだ」
「・・・・・・」
そっと顔を出して我流ブルーに目を向ける百代。
こうなっては流石の百代も戦闘意欲が沸いてこない
「では川神学園の生徒達よ、さらばだ!」
そう言って我流ブルーは森の中へと姿を消したのであった。
「・・・・・・・・・・・・」
「あの・・・まゆっちさん?」
百代と戦ってきた我流ブルーこと兼一は今、百代以上の大敵と対峙していた。
それは同じクラスの由紀江である。
大敵と言っても機嫌が悪くなった由紀江に兼一が戸惑っているだけであるのだが・・・
何故このような状況になっているのかというと由紀江が兼一を迎えに行ったのが事の始まりであった。
少し帰りが遅いなと思った由紀江は兼一を迎えに行ったのだがそこには仮面を洗っている兼一の姿であった。
もしかして、どこか怪我して血が出てしまったのかと心配して声をかけたのだが、それは兼一の顔を見て理解した。
兼一の鼻に鼻栓が付けられていたのだ。
それだけでは怪我したのではという考えにも至るのだが、兼一の表情は鼻の下を伸ばしており、由紀江が今まで見てきた兼一の中でかなりだらしない表情をしていた。
それを見た由紀江は何故か嫌な気持ちを感じてしまう。
そんな由紀江に気づいた兼一はよく分からなかったが焦りを感じて、弁明を始める。
しかし、由紀江は聞く耳を持たずそのまま現在に至るわけである。
「そのですね、まゆっちさん。男である僕も目の前で女性の裸を見てしまえば鼻血も出てしまうわけでして・・・」
『おいおい、自分で脱がしといてそんなこと言うのか~?まあ?あのモモ先輩の綺麗な裸を見ちゃ仕方ねえのかもしれないけど~』
「そのですね・・・あの・・・仰るとおりかもしれませんが・・・えっと・・・」
『知ってたか、白浜っち。大抵の小説家は更新を長い間していなくて読者の人達に言い訳する時に「その」「えっと」が出る時はくだらない言い訳なんだぜ』
「ぐはっ・・・」
松風の言葉に胸が痛む兼一。どうにかして機嫌を直してもらう為に考えようとするがそれは叶わなかった。
「白浜さ~ん!次の競技、白浜さんの番ですよ!」
「えっ!?」
遠くから兼一を呼ぶ伊予の声に驚く。
何故ならば既に兼一が出る競技は全て終わっている筈だからである。
「実は、次の競技は『益荒男決定戦』というもので川神戦役で追加されたんです。それで誰が出るか話し合った結果、白浜さんになったんです」
「えっと、ちなみにどうして僕?」
「耐えられそうなのは白浜さんくらい、と満場一致してしまいまして」
「た、耐えれそう?なんか物騒な言葉なんだけどどんな競技なの?」
「はい。まずは出場者は身動きできないように十字架に磔にされます」
「既に体育祭とは思えない状態!?」
伊予の説明に驚愕する兼一。伊予は苦笑しつつも話を続けた。
「そして、磔にされた出場者に女子生徒がゆ、誘惑して興奮させます」
「・・・はい?」
「ゆ、誘惑に負けず興奮しないで最後まで耐え切る事の出来る漢の中の漢を決める競技、だそうです」
「おかしい。こんな競技があって良いのだろうか!?」
「ちょうど良いんじゃないですか?」
あまりの内容に頭を抱えてしまう兼一。そこに由紀江が話しかける。
「私、兼一さんの漢らしい所を見たいです」
「ぐっ・・・」
「し、白浜さん。まゆっち、どうしちゃったんですか?」
「いや、まあ、色々ありまして・・・」
明らかに様子がおかしい由紀江に伊予が兼一に尋ねる。流石に理由は言えない兼一は適当にはぐらした。
「えっと、益荒男決定戦だっけ?僕出るよ」
「本当ですか!ありがとうございます!」
「頑張って下さいね、兼一さん」
「う、うん・・・」
由紀江に名誉挽回する為、兼一は益荒男決定戦に出る事を決意するのであった。
『さあ!準備は整いました!益荒男決定戦、開始です!!』
全クラスを巻き込んだ川神戦役最後の競技『益荒男決定戦』が始まった。
それと同時にどんどんと悲鳴が上がる。
それは、誘惑に負けて興奮した男子生徒達が電撃を流されているからである。
兼一はそれを見て冷や汗が止まらない。
自分がそうなってしまう可能性があるのだから無理も無い。
しかし、その冷や汗の原因はそれだけではなかった
「まさかテメェがこの競技に出るとは思わなかったぜ。白浜兼一」
「お、忍足さん・・・。あの、クナイを押し付けるのは勘弁してください」
現在進行形であずみに凶器を押し付けられているからであった。
「ああっ?こんな絶好のチャンスに何もしない訳ねえだろうが?」
「いや、でも、今大和くん達がいるF組と川神戦役しているんでしょ?だからF組のところに行かなくてもいいんですか?」
「他の奴らが行ってるから問題ねえよ。べ、別にアタイの魅力がねえから必要ないとかそんな理由じゃねえんだからな!」
「それはもちろん。忍足さんはとても魅力的な女性ですから」
「・・・・・・・・・」
「わっぷ!どうして砂をかけてくるんですか!?」
あずみは黙り込みながら兼一に砂をかけ始める。もちろん顔目掛けて。
今の兼一の言葉に下心は一切無い本心からの言葉であった。
もし下心があったのならばその瞬間、電撃の餌食であるからである。
それを理解したあずみは顔がとても熱くなるのを感じた。
「う、うるせえ!お前は感電死よりも砂に埋もれて窒息死のほうがお似合いだと思っただけだ!」
「まさかの人殺し発言!?というか、立てられている状態で埋められると言う事はかなりの手間がかかるのでは?」
「うるせえ!!」
「女王蜂。あなたは一体何をしているのです?」
「!・・・猟犬か・・・」
顔を真っ赤にしながら兼一に目掛けて砂をかけるあずみにマルギッテが話しかける。
「テメェこそどうしてこっちにいる?F組の直江大和の所に行ってる筈だろ?」
「ついさっきS組の代表で参加した井上が脱落しました。故にもう直江大和に構っていてもしょうがないと判断したのです」
「んだと?ちっ、あのハゲが!自信満々だったくせにもう脱落しやがったのか?」
「なので、史上最強の弟子を見ておこうと思った訳です」
そう言ってマルギッテは兼一を見る。その視線はウサギを狩ろうとする猟犬の目のようであった
その視線に兼一はただ苦笑で返す事しか出来なかった。
「うわぁ、白浜さん。大変そうだね」
「ええ・・・そうですね」
遠くで見ていた伊予と由紀江は今の兼一の状態を見て同情していた。
最初は複数の女子生徒達が集まっていたのだが、それをあずみが追っ払い。あずみが兼一を物理的に責めていたらマルギッテが来て凄い目つきで睨み付けている。
普通の男子生徒ならば最初の女子生徒達で脱落していたかもしれない。
それをマルギッテが来た時点でも興奮せず頑張っている。
あずみやマルギッテも生徒達よりも年上ではあるがかなりの美人。来た時点でリタイヤしてもおかしくはないのだ
「でも、それを耐えているのはやっぱり白浜さんってすごいね」
「ええ・・・そうですね」
「・・・まゆっち。その松風って腹話術だよね?」
「ええ・・・そうですね」
「・・・・・・・・・」
伊予の問いかけに同じ言葉で返している由紀江。
由紀江の目にはもはや兼一とその周りにいる女性しか写っていなかった。
そんな由紀江の姿に恐怖を感じた伊予。
そして無事で兼一が帰ってくることを祈るのであった。
「まあいい。こいつはアタイが始末しておくから猟犬は違う男でも狩ってろ」
「いや。史上最強の弟子は私に任してもらます」
「・・・んだと?」
マルギッテの言葉にあずみがゆっくりとマルギッテを見る。
「先程まで見てましたが特に反応もされず、逆に失態を見せていたでしょう?貴方では無理なのでは?」
「無理じゃねえ!勝手な事ばっかり行ってんじゃねえぞ!つうか、何でテメェがそんなにこいつを気にかける?」
「それは、私と史上最強の弟子には因縁があるからです」
「因縁?」
「私は史上最強の弟子にあられもない姿にされてしまったのです」
「ぶふっ!?」
マルギッテの言葉に兼一は思わず噴出してしまう。その様子を見てあずみは何かがあったことは理解した
「ま、マルギッテさん?出来ればもう少しオブラートに言ってはくれないでしょうか?」
「何を言っているのです?私をあんな風に縛り付け、そんな姿を見て鼻血を出しておきながら」
「・・・テメェ!命を失う覚悟は出来ているんだろうなぁ!!」
「ご、誤解です、あずみさん!?そうしなければいけない状態だったんです」
「黙れ!こうなったらテメェも猟犬と同じ目に合わせてやるよ!」
そういうとあずみはどこから取り出したのか刀で兼一が磔にされている十字架の根元叩き切り、兼一を仰向けにした。
「ちょ、ちょっと待ってください!?男のあられもない姿なんてここの読者は誰も望んでませんよ!?」
「意味分からないこと言ってんじゃねえ!覚悟しやがれ!」
「お、お主ら!兼一君に何をしておるのじゃ!!」
あずみが兼一に手をかける寸前に心が呼び止めた。
「心さん!」
「不死川?テメェまでどうしてここにいんだよ?直江はどうした?」
「や、山猿は雪に任せてきた。そんなことよりお主は兼一君に何をしようとしておるのじゃ!」
心があずみの前に来てそう問いただす。
「はあ?テメェには関係ねえだろ!」
「関係はあるのじゃ!兼一君はわらわの友達。その友達が酷い目に合うのならばほっとく訳にはいかん!」
「心さん・・・」
心の言葉に感激する兼一。あずみもいつもと違って気迫がある心に少し驚いていた。
「あ~・・・こいつがしぶといから別の方向で責めようと思ったんだよ」
「い、一体何をするつもりなのじゃ?」
「それはだな____」
「なっ!?」
「それに____」
「そ、そんなことまで!?」
あずみに何を吹き込まれているのか分からないが心はあずみの話を聞いて顔を真っ赤にしてしまう。
「どうだ?お前もそんな姿のこいつを見たくないか?」
「そ、それは・・・」
「もし手伝ってくれんならお前だけに写真を撮る許可をくれてやるぜ」
「わかった。協力するのじゃ」
「あずみさん!?貴方の懐柔スキルは大したものですが一体何を吹き込んだんですか!?写真って!?」
もう嫌な予感しかしない兼一は必死に説得を試みるが三人は兼一の前に立ち真ん中にいたあずみが兼一の服に手をかける。
「安心しろ。少しの間涼しくなるだけだ」
「嘘だ!絶対に嘘だ!?」
「いい加減に覚悟を決めなさい。それでも私を倒した男ですか?」
「それとこれとでは話が違いますよ!?」
「だ、大丈夫じゃ、兼一君。撮った写真は誰にも見せないのじゃ」
「撮るのを止めていただけませんか!?というか何時の間に最新式のカメラを持ってるの!?」
兼一よりも興奮状態になっている三人に兼一は必死にツッコミを入れるがまるで効果なしであった。
「たく、こんな暑いのにジャージなんか着やがって暑苦しいんだよ!」
あずみは兼一のジャージのホックを全開まで落として兼一の上半身を露にさせた
「・・・これは」
「・・・ほう」
「あわわわわっ!?」
そして、兼一の上半身を見た三人はそれぞれ違う反応を見せる
「テメェ、あの時よりもさらに傷が増えてんじゃねえか・・・」
「素晴らしい・・・。こんな体が存在するとは・・・」
「け、兼一君の裸・・・」
あずみは修行によって生傷が絶えない兼一の身体を見て顔をしかめる。
マルギッテは全身をピンク筋に鍛え上げられた身体を見て魅了される。
心は気になる異性の上半身裸を見ないように両手で顔を覆ってはいるが指の隙間からまじまじと見ていた。
「あの・・・皆さん?」
「たく・・・こんなところまで傷が付いていやがる・・・」
「人間はここまで鍛え上げることが可能なのか・・・?」
「き、筋肉がとても硬いのじゃ・・・」
最初は見ているだけであった三人は兼一の身体を触り始める。
そんな三人に触られて、くすぐったく感じるが問題はそこではなかった。
「(やばい・・・。三人とも無防備すぎる・・・)」
三人が兼一の身体を触っているという事は触る為に近くまでいなければならない。
さらに兼一の身体に夢中になっている三人はとても無防備で身体が今にも密着しそうで少し視線をずらせば女性の色んな場所が見えてしまうのだ。
その為、兼一は視線を上にのみ向けてどうにか興奮しないように耐えている。
「うわ~、あれは白浜さんでもキツイんじゃないかな?まゆっち出番だよ!」
「痛っ!?わ、私の出番?」
あずみ達の行動で由紀江の表情がさらに危なくなった所を伊予が背中を叩く事で元に戻す事が出来た
「そうだよ!今、白浜さんを助けられるのはまゆっちだけ!」
「で、ですが・・・」
「まゆっちは良いの?誘惑に苦しんでいる兼一さんを見てて何も思わないの?」
「それは・・・」
伊予の言う通り、兼一が誘惑に苦しんでいる所を見て心が痛かった
それならばやる事は一つしかない
「わかりました。伊予ちゃん、私行ってきます!」
「うん!頑張ってね!!」
伊予の応援の言葉と同時に走り出す由紀江。
「兼一さん、待っていてください!今、お助けいたします!」
『オラとまゆっちがいれば百人力だぜ!』
「殺気!」
「敵襲ですか!」
「はえ?」
由紀江が三人の近くまで来たときあずみとマルギッテはずぐに反応して距離を取る。
しかし、心だけ気づけず振り向くとそこには殺気を纏った由紀江の姿があった。
「ひいっ!?」
心も急いでその場から離脱。兼一の周りかは誰もいなくなった。
「や、やりました。これで____」
ここで由紀江は油断をしていた。
兼一の周りから人が居なくなった事で安心しきってしまったのだ。
それで足元にあった心が落とした最新式カメラがあることに気づけなかった。
「きゃっ!?」
カメラに足をとられてしまった由紀江は態勢を崩してしまい、前のめりに倒れ始めた。
「ん?」
「ああああぁぁぁ!?」
兼一から見て正面方向に誰かの悲鳴が聞こえる。
仰向けなので下を見る感じで顔を向けるとそこには兼一に向かって倒れてくる由紀江の姿があった。
そこから兼一はまるでスローモーションになったかのように感じた。
兼一の方にゆっくりと倒れてくる由紀江。
由紀江の顔がどんどんと兼一の顔へと近づいていき、最悪の事態は免れる為に顔を横にずらす。
これで最悪の事態は免れたと思った兼一だったが、最初に想像したものとは違う結果となる。
由紀江の顔は兼一の顔を通り越したのだ。
そして、首、鎖骨と体の部位を順番に確認し最後に見たのは由紀江の豊満な胸であった。
「(あっ・・・とっても・・・柔らかい・・・)」
「いたたた・・・気が緩んでしまって転んでしまいました。あれ?」
由紀江は自分の状態を確認した。
今の由紀江の状態は兼一の上に覆い被さっており、胸が兼一の顔を埋めていた。
「・・・きゃああああぁぁぁ!!??」
由紀江は悲鳴を上げながらその場を離れたその瞬間だった
「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!!??」
流石の兼一も胸を顔面に押し当てられてしまえば興奮してしまう。
その結果、脱落となり兼一の身体に電流が流されてしまうのであった。
こうして、益荒男決定戦の勝者は2年F組の大和に決定した。
と言っても障害は何も無く、唯一S組から来ていた榊原小雪は途中で飽きて帰って締まった為、実際は終わるまで一人ぼっちだった。
この時の大和はなんとも虚しい勝利だ、と語っている
「・・・本当の敵はまさかの身内だったなんて。・・・白浜さん、ごめんなさい」
由紀江を出動させた伊予は電流を流されて叫ぶ兼一とそれを見て大慌てしている由紀江を見て謝罪を述べるのであった。
如何でしょうか?
戦闘描写は難しいですね・・・
そして兼一にしては誘惑に堪えたのではないでしょうか?
原作だったらもっと早い段階で終わっていたかもですが・・・
感想と評価を頂けたら幸いです!
宜しくお願い致します!