雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
「ちょっと君、良いかね?」
講義終了後、荷物をまとめていた雁夜は講師に呼び止められた。
「何でしょうか?」
雁夜は無礼のない様に答える。
「君が昨日付けで学生になった、蒼崎雁夜君かね?」
講師が雁夜に質問をぶつける。
雁夜は何故それを聞かれたのかはわかっていたが、あえてとぼける。
「そうですが…僕が何か問題を起こしてしまいましたか?」
それを聞いた講師は慌てて否定する
「いやいや、そういう事では無いんだよ。ただ君のファミリーネームについてちょっとね。」
やはり雁夜は思った通りだった。
「君は『蒼崎』というファミリーネームで封印指定の魔術師と魔法使いを輩出した優秀過ぎる家系が存在するのは知っているね?君はその『蒼崎』出身、もしくは関係のある魔術師なのかね?」
講師は尋ねる。
さて、どう答えようか。雁夜は少し考えて、答えた。
「結論から言うと、『蒼崎』出身の魔術師ではありません。この苗字は魔術師としての基礎教育とある程度の高等魔術教育を終えたとき、師から頂いたものです。」
それを聞いた講師は少し落胆したようだ。
「そうか。引き留めて悪かったな。因みにその師とは誰なのかね?」
興味本意で聞いた。
雁夜は仕方なく答える
「蒼崎橙子です。」
その名前を聞いた講師は驚きに目を大きく開き聞く。
「それはあの蒼崎橙子かね?」
まあ橙子も厄介払いのために蒼崎を名乗れと言っていたし、言ってしまっても良いかと思った雁夜は答える。
「ええ、そうです。貴方の言う、『蒼崎』出身の封印指定の魔術師である蒼崎橙子です。」
それを聞いた講師は内なる喜びと期待を隠せず、にやけてながら言った。
「封印指定にまで上り詰めたという人形魔術に興味があってね、蒼崎橙子直伝の魔術を少しでも良いから見せてくれないかね?」
流石の雁夜もこれ以上さらけ出すのは不味いと思い嘘をつく。
「師は俺に人形魔術を教えてはくれませんでした。」
「そうか…」
講師の声のトーンが落ちる。
雁夜はこれで終わった。と思ったが講師はまだ希望を捨てていなかったようだ。
「君の師、蒼崎橙子の居場所はわかるかね?」
橙子の言いつけを守り雁夜は再び嘘をつく。
「すみませんが、わかりません。師は俺が彷徨海に向けて出発した直後に潜伏先を変えたそうなので。」
それを聞いて講師はやっと諦めた様だ。
「そうか。引き留めて悪かったな。何かあったら頼ってくれたまえ。力になる事を約束しよう。」
そういうと講師は去って行った。
講師が去っていく姿を見て雁夜は安堵で身体中の力が抜けてしまいそうになる。
雁夜にとって、彷徨海の授業初日は学生生活の懐かしいさ、そして自分の師がいかに魔術界で有名な存在かということを思いしらされた一日であった。
第八話です。
実は良い展開が思いつかなかったのですがいきなり第九話の内容に入ってしまうと彷徨海編が短くなり過ぎてしまうと思ったのでクッションとして第七話と第九話の間に挟んでみました。
予告としては第十話か第十一話でマスターの誰かと絡ませます。誰かはわかってしまうかもしれませんが、楽しみにしていてくれると嬉しいです。
今日も駄文に付き合ってくださりありがとうございました。あと、最近観覧数が増えて嬉しいです。読んでくださった方々、お気に入り登録してくださった方々、そして感想をくださった方々、ありがとうございます。