雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら   作:ワカメの味噌汁

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第七十五話

聖杯が放出した泥が眼前に迫り、その場に残るのは危険だと判断した雁夜が、聖杯戦争中ほぼ終始意識をシンクロさせていた第二の人形に炎のルーンを刻み、意識のシンクロを解いた直後。雁夜は橙子の魔術工房で目を覚ました。

 

「終わったみたいだね。」

雁夜が目覚めたのを確認した橙子は話しかける。

 

久しぶりに自分の本体に意識を戻した雁夜は、身体の一部一部の感覚を確認しながら答える。

「はい。結末は決して良いものではありませんでしたが。」

 

「まさか...お前が負けたのか⁉︎」

雁夜の返答に橙子は驚きを隠せず、声調に乱れを生じさせながら尋ねる。

 

「いえ、そういう事ではありませんよ。」

「ただ...冬木が壊滅的な状況になってしまいまして。」

雁夜は橙子にそう告げると、続ける。

「本来は『無色の願望機』であるはずの聖杯が何らかの力に汚染されたので、時計塔のロード=エルメロイと破壊を試みたのですが....」

 

「火力が足りなかったのか。」

橙子がそう言うと、雁夜も頷き、続ける。

「はい。ロード=エルメロイのセイバーの対城宝具エクスカリバーを持ってしても破壊し切る事が出来きませんでした。」

 

「で、どうなったのかね?」

橙子は続きを求める。

 

「汚染された聖杯は冬木の地に現界し、辺り一体に泥を巻き散らかしました。」

「その結果、冬木では街規模の大火災が発生しています。」

橙子の問いかけに雁夜は冬木の状況を説明する。

 

「そうか...」

橙子はそう呟くと、口調を変え、言う。

「だが幸い、お前は人形だったから無傷....私のお陰だな。」

橙子はそう言うと笑う。

 

「はい。本当に。」

雁夜は熟知していた。橙子の手助け無しでは自分に何が起きていたかわからないということを。

 

 

時は聖杯戦争前まで遡る。

雁夜が冬木に向けて出発する直前、橙子は完成したにたいの人形を雁夜に見せていた。

 

「どうだ?上手くできてるだろう?」

橙子はふざけ半分な口調で尋ねる。

 

「はい。本当に俺にそっくりです。」

雁夜が同意すると橙子は続ける。

「まあ冗談はさておき、こいつはただ一点を除けばお前と全く同一の存在だ。」

 

「その一点とは?」

雁夜は尋ねる。

 

「『直死の魔眼』は再現する事が出来なかったからな、代わりに浄眼が入っている。」

橙子が答えると、雁夜は再び尋ねる。

「何故浄眼なのですか?」

 

「前に『直死の魔眼』は眼と死を理解した脳の組み合わせだと話した事があったよな。」

「浄眼こそがその眼なんだ。」

橙子が説明すると、雁夜は納得し言う。

 

「成る程...つまり俺が死を理解した意識を持ったまま人形と意識をシンクロさせれば、魔眼はその効果を発揮するということですね!」

 

雁夜の考察に、橙子は頷くと言う。

「ああ。これを使えばお前は死ぬことはないだろう。」

「だが...気をつけて戦えよ。」

 

 

 

あれから一ヶ月の時が経った。

俺は彷徨海に第四次聖杯戦争についての資料を提出。師匠とロード=エルメロイと共に聖杯に起きた異常について調査・研究を進めている。

 

聖杯戦争に参加したマスター達は、キャスターのマスターであった雨生龍之介以外全員生存していて、言峰綺礼と衛宮切嗣を含む冬木に残ったマスター達にはたまに会う。

 

まあともあれ、俺の聖杯戦争はこれで終わった。

 

 

完。




第七十五話です。

遂に終わりました。
良い終わり方が思いつかずに無理矢理ですみません。

今まで駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

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