雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
ウェイバーを臣下にした直後、ライダーは聖杯戦争最後の疾走を始めるべく、愛馬ブケファロスに語りかける。
「さあ、いざ行こうぞブケファロス‼」
ライダーのその合図にブケファロスも鳴き声をあげる事で同意すると、駆け出した。
彼方にこそ栄えあり。
届かぬからこそ挑むのだ。
覇道を謳い、覇道を示す。
この背中を見守る臣下の為に。
ライダーの勇姿を確認したギルガメッシュは、ライダーへの敬意を確信すると、微笑み、「王の財宝」を展開し、宝具を射出する。
しかしライダーは臆さない。
愛馬ブケファロスが宝具の嵐に倒れても、自身の身体を宝剣が貫いても。
遂にライダーがギルガメッシュに攻撃可能な距離まで迫る。そして、最後の力を振り絞り、キュプリオトを振り下ろす−
いや、ライダーの最後の攻撃は、ギルガメッシュが「天の鎖(エルキドゥ)」でライダーを拘束した事によって未遂に終わった。
「フンッ」
ギルガメッシュは満足気に鼻を鳴らす。
「全く貴様...次から次へと珍妙な物を...」
あと一歩のところで最後の攻撃が防がれたライダーは、悔しそうに言う。
そんなライダーにギルガメッシュは乘離剣エアを突き刺し、尋ねる。
「夢より覚めたか?征服王。」
「ああ...うむ、そうさな...此度の遠征も心踊ったのう...」
ギルガメッシュの問いにライダーがそう答えると、ギルガメッシュはライダーに言う。
「また幾度でも挑むと良いぞ、征服王。」
ギルガメッシュはそう言いながら、乘離剣エアを引き抜く。
「時の果てまで、この世は我の庭だ。故に我が保証しよう。ここは決して其方を飽きさせる事はないとな。」
ギルガメッシュのその言葉を聞いたライダーは呟きながら、最期の時を迎えた。
「ああ...そりゃ、いいのう...」
そうか...この胸の高鳴りこそ、オケアヌスの...
そしてライダーが消えたその場には、ウェイバーとギルガメッシュだけが残された。
ギルガメッシュはウェイバーに歩み寄りながら尋ねる。
「小僧、お前がライダーのマスターか?」
ギルガメッシュに怯え、声を震わせながらもウェイバーは答える。
「違う...僕はあの人の臣下だ。」
「そうか。」
「だが小僧、お前が真に忠臣であるのなら、亡き王の仇を討つべきでは?」
ギルガメッシュは尋ねる。
「お前に挑めば...僕は死ぬ。」
ウェイバーが当たり前の事を言うと、ギルガメッシュも同意した。
「当然だな。」
「それは出来ない...!」
「僕は生きろと命じられた!」
ウェイバーがそう言ったのを聞いたギルガメッシュは踵を返し言う。
「忠道大義である。 そのあり方を損ねるな。」
言い終えたギルガメッシュは、金色の粒子となってその場から消えた。
ウェイバーが一人残された冬木大橋には、彼の嗚咽だけが響き渡った。
第七十話です。
ORTさんのリクエストがあったので、明日の話のおまけ程度のつもりで書き始めたライダーの敗退シーンが思ったより全然長かったので、個別に投稿してみました。
明日はいよいよ最終決戦です。最終決戦はライダー敗退の少し前から始まるので、留意してくれると嬉しいです。
今日も駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。