雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら   作:ワカメの味噌汁

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第六十一話

セイバーが突然ランサーの前から消えた数分前、ケイネスを背後から射殺しようとしていた切嗣は、ある男の呼びかられた。

 

「こんにちは。魔術師殺しさん。」

そんな穏やかな声調で話かけてきた男に向けて、切嗣は手榴弾を投げつけるが、その男は超人的な脚力で後ろに飛ぶことで、回避する。

 

手榴弾の爆煙が消え、その男が未だに攻撃をしてこないので、切嗣はその男の姿見を確認した。

 

間桐雁夜に瓜二つだが...瞳の色が日本人とは思えない程蒼い...いや、あの異様なまでの蒼さは西洋人でもいないだろう。

切嗣はそう考えると、男に尋ねる。

「お前は誰だ?」

 

「そんなことはどうでも良いではないか。」

切嗣の問い掛けに雁夜がそう答えると、切嗣はキャリコM950Aの掃射で返答してきたので、雁夜は氷のルーンと「防御」を意味するイチイの木のルーンを組み合わせて氷の防壁を発生させることによって銃弾の嵐から身を守る。

 

あの氷壁...どうやって作り出したかは詳しくはわからないが、厄介だな。

雁夜が作り出した氷壁にキャリコM950Aの放つ銃弾が防がれて行くのを見た切嗣は考える。

 

何らかの魔術であるのは確かだが...恐らく奴が魔力を使うのはあの氷壁を作成する一瞬のみ。起源弾はその効果を発揮しない...

 

そう、切嗣の切り札である起源弾は魔術に着弾した時のみに切嗣の起源を対象の魔術回路に発現させる。だがしかし、雁夜がルーン魔術で作り出す氷壁は作成された瞬間から魔力供給なしで物体として存在するため、その氷壁を撃っても起源弾の効果が発揮されることはないのだ。

 

だが、幸いあの氷壁は材質としての強度は対したことはない....

厚さはあるが撃ち続ければ破壊は容易だ...

 

しかし、材質の強度のなさは雁夜の承知の内。むしろ、それも戦略の内だ。

雁夜は筋力強化魔術で既に強化されている脚力を更に強化すると、氷壁の死の線を切り、キャリコM950Aの射線から離脱する。

 

雁夜が氷壁を一瞬で破壊することができると思っていなかったのであろう切嗣の反応が遅れのを確認した雁夜は、その強化した脚力で切嗣との間合いを瞬く間に詰める。

 

速い....ッ⁉

切嗣は雁夜の急接近及びナイフでの斬りつけを固有時制御(タイムアルター)・二重加速(ダブルアクセル)を使い回避しようとするが、些か遅過ぎた。

 

雁夜は切嗣の手首に絡みついている死の線を切り裂く事によって、手ごとキャリコM950Aを地面に落とさせたのだ。

 

クソッ!

切嗣は追撃こそ固有時制御で回避出来たが、キャリコを消失し、手を一つ奪われた事に悪態をつき、残った手で手榴弾を投げつけ、間合いと時間を稼ぐ。

 

しかし奴があの一瞬で手首を完全に切り取る事が出来たのは何故だ...?

幾ら魔術で斬れ味を強化したナイフでも、手首には骨が通っている以上、そんな簡単に切り落とせる物ではないだろう。

 

切嗣は悩む。

そう言えば奴があの氷壁を破壊した時もナイフで軽く切っただけだった...

 

しかし、そこまで考えれば結論に達するのは簡単だ。

そうか‼奴のナイフは触れた物を全て破壊するんだ‼

 

その結論は正確に言えば間違っているのだが、切嗣の戦略を変えるのには十分なインパクトがあった。

となれば近接戦は絶対に避けなければならない。

しかしキャリコ消失。その上、コンテンダーの発砲も回避される可能性が高い...

 

つまりこの闘い...僕だけで闘った場合こちらに勝機はない。

切嗣はそう結論づけると、幸い残された方の手にあった令呪に意識を集中させて、唱える。

「令呪を持って我が傀儡に命ずる。今直ぐにランサーとの戦闘を中断し、僕の援護をしろ。」

 

 




第六十一話です。

セイバーが消えた理由は、雁夜に手を切り落とされた切嗣が令呪で呼び出したからでした。

さて、セイバーの加入で闘いはどうなるのでしょうか。
楽しみにしていてくれると嬉しいです。

今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

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