雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら   作:ワカメの味噌汁

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第五十八話

ケイネスがランサーの考察が始まったのとほぼ同時に、雁夜も今後の戦略に関しての考察を始めた。

「あの人形が破壊されたから、次に戦闘を行う時は本気での戦いが出来るな...」

雁夜は呟く。

そう、ケイネスに破壊された人形は魔術回路も本体よりも劣っているし、何より直死の魔眼を持っていない。超一流の人形師である橙子ですら暗示、魅了、そして浄眼の作成が限度である故、人形師としての技術で劣る雁夜には直死の魔眼の作成は不可能だ。

 

だがしかし、今後はその魔眼が使える。そして筋力強化魔術やルーン魔術などの自身の持てる技術を限界まで用いて戦うことができるのは、素直に嬉しい。

「さて、どう戦って行こうかな。」

雁夜は考えるのであった。

 

 

ケイネスとランサーが切嗣の「起源弾」についてとそれに対する対抗策を考察し始めてから半時間程の時が経とうとしていた。

 

ランサーとの意見の交換でまだ確実ではないものの「起源弾」攻略への道のりが見え始めていた頃、魔術工房の一番外に貼られている結界−侵入者の存在を感知し、術者に伝えるための結界−が反応した。

 

「侵入者か...」

結界の反応に、ケイネスは冷静にそう言い、侵入者が誰なのかを確認する。

 

「侵入者はアインツベルンのホムンクルスで、今回の聖杯の器でもあるアイリスフィール・フォン・アインツベルンと、セイバーか。」

 

ケイネスの言葉を聞いたランサーは尋ねる。

「主よ、セイバーを迎え撃ちますか?」

「ああ、そうしてくれ。私はアインツベルンのホムンクルスと対峙してくる。」

 

「了解した、我が主よ。」

ケイネスの命を受けたランサーは魔術工房の中心部に位置する廃屋から駆け出し、セイバーとの戦いに向かった。

 

「さて...私も行くかな。」

ランサーが出陣したのを確認したケイネスは、そう言い、アイリスフィールの方に向かって出発した。

 

 

ランサーとケイネスが魔術工房の中心部である廃屋を出発してから数分と経たない内に、二人はセイバーとアイリスフィールと対峙していた。

 

いきなり戦いを仕掛けるのも不躾か思ったらしいアイリスフィールが、言う。

「今晩は。私とセイバーはランサー、そしてそのマスター、ケイネス・エルメロイ・アーチボルト殿に戦いを挑みに来ました。」

 

アイリスフィールのイントロダクションを聞いたランサーは、言う。

「今晩は皆、キャスターとあの化け物との戦いから消耗していて、戦うことをしようとはしない。セイバー、お前だってあんな大技を放ったんだ。消耗しているだろう。」

 

しかし、ランサーの言葉にセイバーは反論で返す。

「ランサー、貴方の指摘は確かに正しい。だが、誰もが戦いを控えるこの夜だからこそ我々二人の決闘を誰にも邪魔されずに静かに行えると言うもの。」

 

「ふっ、それもそうだな。」

ランサーは歓喜に震えながら答える。

「素晴らしい主と、同じ騎士として刃を競い合えるライバル。ああ、俺はなんて幸せなのだろう!」

 

そう、生前果たすことの出来なかった騎士としての忠義 を、騎士としての幸せを今、噛み締めている。ただ一つの願いが叶ったランサーは至高の喜びを感じながら宣言する。

 

「我々の騎士道に誉れあれ!我が主、ケイネス殿にこの槍を捧ぐ!」

「フィオナ騎士が一番槍、ディルムッド・オディナ。押して参る!」

 

ランサーの宣戦にセイバーが応え、騎士戦いが始まりを告げた。

「応とも。ブリテン王、アルトリア・ペンドラゴンが受けてたつ。−いざッ!」




第五十八話です。

ランサーとセイバーの戦いが始まりました。

あと、今回の雁夜の考察はこの二次創作が終わった後に読むとちょっと面白いかもしれません。

今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

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