雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら   作:ワカメの味噌汁

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第四十八話

時臣がアーチャーのマスター権限を綺礼に譲渡したのとほぼ同刻−

衛宮切嗣は先の戦闘で負った怪我を治すべく自身に治癒魔術を掛けていた。

戦闘中に綺礼に踏み潰され骨を粉々にされた足を中心に、冲垂によって傷付つけられた内臓などにも治癒魔術を掛けていく。

治癒魔術の多用による身体への負担は無視できないが、今の切嗣にそんな事を気にしている場合ではない。

 

アイリ....舞役....

心の中で呟く。

そう、切嗣は遠坂時臣との戦闘に敗れ、燃え盛るアインツベルンの森に放置されたままの妻、アイリスフィールとサポーター、舞弥の事が心配でならなかったのだ。

 

「遠坂時臣と戦闘して敗北したということは、恐らく火の魔術を受けたということだろう。」

切嗣は冷静に分析し、呟く。

「そしてアインツベルン城に撤退して来ないとなれば...」

最悪のシナリオが切嗣の脳裏を過る

「時臣の火魔術で大火傷を負ったか死亡したかで移動不可能な状態にあるか...」

「もしくは戦闘終了後、何らかの方法で拉致されたかだ。」

切嗣はそう呟き、嘆く。

 

「クソ、遠坂時臣め....」

そう悪態をついている内にも、全身の治療がほぼ終わり、十分に動ける身体程にまで回復した。いや、本来ならば治癒魔術からくる身体の負担でまだ動くべきではないのだが。

だがそんな些細なことは、切嗣を引き止めえない。切嗣は直ぐさま燃え盛るアインツベルンの森へ向かって駆け出した。

 

同刻、雁夜−と言っても人形と意識をシンクロさせているだけであるが−は間桐邸の書斎にいた。つい最近までは蔵硯しか入ろうともしなかったし、そもそも入る事を禁止されていたその場所に雁夜が入ったのは、間桐の魔術に興味があったからだ。

 

間桐邸を出奔した時にはあれ程憎かった間桐の魔術も、良く考えてみれば間桐の魔術その物が悪いのではなく、それを悪用していた臓硯が悪い。

それにさえ気が付いてしまえば、魔術を研究する者として、興味が出ないわけがない。だから書斎に来たのだ。

 

書斎にある数々の書類に片っ端から目を通して行く雁夜は、間桐臓硯の間桐への貢献を思い知らされた。

「つい最近は狂っていたけど、若い頃は偉大な魔術師だったんだな...まあ、500年も生きられるんだ、唯の魔術師ではないか。」

雁夜は素直に呟き、続ける。

「蟲ってのは凄く便利な使い魔なんだな。」

「使い魔本来の監視と情報伝達は勿論、戦闘や治癒、拷問、そして肉体改造にも使えるとは。」

「大量使役ってのは手間がかかりそうだが、まあ間桐の血を引いているし、大丈夫だろう。

雁夜はそう呟くと、蟲魔術に関する資料を机の上にまとめ、詳しく調べ始めるのであった。

 

ケイネスには気掛かりな事があった。勿論それはバーサーカー陣営についてだ。

「マスターの間桐雁夜は一度使い魔越しに視認したが、肝心のバーサーカーは一度も見た事がない。」

そう、バーサーカーは強力なのがほぼ確定しているサーヴァント。そのバーサーカーに関する情報が何もなまま、聖杯戦争が続いていくのは不気味だ。

 

さて、どうやってバーサーカーに関する情報を得ようか...

ケイネスは考えるのであった。




第四十八話です。

時臣に燃やされたアイリスフィールと舞弥を探しに、切嗣はアインツベルンの森に向かいました。

雁夜は蟲魔術に興味を示し、学ぶことに決め、ケイネスはバーサーカー陣営に関する情報を集めようとします。

今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

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