雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
「凄まじいな、これは...」
雁夜は時臣の作り出した惨状を使い魔越しに観測しながら呟く。
「あのアインツベルンの森が火の海だ...」
そう、時臣が衛宮切継のサポーターの女と交戦中に放った炎は、その威力こそ大した事がなかったものの、如何せん戦場が悪過ぎた。
「アインツベルンのホムンクルスとサポーターの女はそれぞれ重大な火傷を負い、燃え上がるアインツベルンの森の中に残されたか...」
雁夜は少し同情しながら呟く。
「まあ助けが無い限り死亡すると見て良いかな。」
「敵陣営同士で潰しあってくれるのは願ったり叶ったりなんだけど...あんなに盛大に燃やし尽くしてどうやって隠蔽工作するつもりなんだろう。」
そう、魔術師にとって魔術の隠蔽工作は何よりも先に重んじなければならない鉄則。そのルールは勿論、魔術師同士の殺し合いである聖杯戦争中にも守られなければならない。
「アインツベルンの森の炎上、衛宮切嗣が冬木ハイアットホテルを爆破、キャスター陣営の連続児童誘拐殺人など、今回の聖杯戦争は派手にやり過ぎだ...」
雁夜は愚痴るが、直ぐに本題に戻る。
「まあそれはさて置き、このままだとセイバー陣営の敗退は濃厚だな。」
しかし雁夜は予期していなかった、その敗退寸前のセイバー陣営が思わぬ援護を受けることを...
雁夜がそんな事を考えながら使い魔越しにアインツベルンの本丸での戦いを監視している時、衛宮切嗣は追い込まれていた。
そう、先程から戦っている言峰綺礼は元聖堂教会の代行者であり、今回の聖杯戦争に置いて最も警戒しなければならないマスター。
出来る事ならば戦争終盤まで対峙するのを避けたかった相手とまだ一騎のサーヴァントすら脱落していないこの時点で戦わなければならなくなってしまった。
矢張り強い。
切嗣は考える。
そう、先程から地の利を活かしつつ固有時制御(タイム・アルター)と現代兵器を用い闘っているのだが、一行に勝利は見えない。セイバーを呼ぼうにも、セイバーはアサシンの軍勢に上手く抑えこまれてしまっている。
マズイな…
切嗣は心の中でそう呟く。
その時だった。言峰綺礼が言葉が更なる悪展開を告げたのは。
「師よ、そちらは片付いたのですか。」
そう問われた時臣は答える。
「ああ、少々手こずってしまったがね。」
そう、舞弥とアイリスフィールを倒した時臣が綺礼をサポートしに来たのだ。これにより、元より悪かった状況は最悪の物とは化した。
マズイな…
そんな状況に置かれた切嗣は心の中で再び呟く。
誰か...助けてくれ....!
あまりにも絶望的な状況にもうそう祈る事しか出来ない。
切嗣の願いが通じた事は、第三者、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの声により確認された。
「二体一とは卑怯な事をする。遠坂家は名誉ある魔術師の家系だと聞き及んでいたのだがね。」
第四十話です。
切嗣の絶対絶命のピンチに現れたのは、ケイネス先生でした。
何故、ケイネスは自身の工房をビルごと爆破した切嗣を助けるのでしょうか?
次回を楽しみにしてくれると嬉しいです。
今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。