雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら   作:ワカメの味噌汁

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第三十四話

セイバーは鋭い剣劇で自身を囲み包囲している海魔を斬り続けていた。しかし、斬っても斬っても海魔は再生し、増え続ける一方である。

 

「クッ、キリがない…」

そんな不利な状況に置かれたセイバーは嘆く。

「左手さえ使えれば…」

そう、ランサーのゲイ・ボウで負わされた治癒不可能の傷さえなければ、セイバーはエクスカリバーの真名解放によって海魔共々キャスターを消し飛ばす事が出来る。

しかし、現実は非情だ。

 

遠見の水晶玉越しにセイバーの苦戦の様子を見ていたアイリスフィールは耐えきれなくなり、切嗣に尋ねる、わ

「キャスターの魔力も無限じゃないはず。枯渇するまで持ちこたえれば、セイバーに勝機があるわよね?切嗣?」

 

しかし切嗣はセイバーの苦戦など気にも留めず、聞く。

「それより、まだ他のマスターが森に入って来た反応はないのか?舞弥。」

そう、切嗣は自分達の事でいっぱいでセイバーの事を考えている余裕は無いのだ。

「アイリを連れて城から逃げてくれ。セイバー達とは逆方向に。」

 

その指示を聞いたアイリスフィールは、すかさず尋ねる。

「ここにいては、駄目なの?」

 

アイリスフィールの質問に、切嗣は冷静に答える。

「セイバーが離れた場所で戦っている以上安全ではない。

僕と同じ事を考えている奴だって、いるだろうからね。」

それを聞いたアイリスフィールは少し悲しそうに従う。

「わかったわ。」

そう言った直後、アイリスフィールが顔を歪めた。

「⁉」

 

それを見た切嗣は尋ねる。

「どうした?アイリ」

「どうやら、新手がやって来たみたい。」

アイリスフィールは答えた。

 

「何故だ。奴の魔力は底無しだと言うのか?」

無限再生を続ける海魔達に痺れを切らしたセイバーは言う。

「まさか、奴の魔力の源は…」

「その本が貴様の宝具か。」

セイバーは気がつく。

 

「ええ。我が盟友が残した魔書により、私は悪魔の軍勢を使える力をえたのです。いかがですかジャンヌ、懐かしいですね。何もかもが昔のままだ。その気高き闘争心は、貴方がジャンヌ・ダルクである事の証。」

 

「それなのに何故だ⁉何故目覚めてくれないのです⁉未だ神のご加護を信じておいでか?」

「この窮地にも奇跡が貴方を救うと?嘆かわしい…」

キャスターが言い終わるのを待たずにセイバーは海魔に斬り掛かる。

 

しかしこの時点ではセイバー、キャスターの両者は知り得なかった。セイバーを救う「奇跡」は直ぐそこに迫っていることに。

 

同刻−

ランサーは深いアインツベルンの森を疾走していた。

勿論その理由は憎き敵、キャスターを見つけるためだ。

 

しかし現世ではとても良い主に恵まれたものだ。

ケイネス殿は賢く、確かな魔術の実力を備えていて、それでいて俺の意見を尊重してくださる。

ランサーは走りながら考えた。

まさに仕えるに値するお方。

ケイネス殿の為になら、キャスターなんぞ幾らでも殲滅して見せよう。

 

そんな事を考えていると、キャスターらしき男が使い魔の大軍でセイバーを包囲している姿が見えた。

セイバーは俺の倒すべき敵。キャスターなんぞには譲らん。そう考えたランサーは、そのスピードを更に速めるのであった。

 

ランサー以外にももう一人、その戦闘を監視していた男がいた。

使い魔である烏越しに戦いを観戦していた雁夜は呟く。

「キャスターのあの宝具、いいな。」

「どうにかして奪えないかな?」

そう、バーサーカーにキャスターの宝具を奪わせれば、対軍宝具を持たないというバーサーカー唯一の欠点を補えるのだ。

「どうしようかな?」

雁夜はそう呟くのであった。




第三十四話です。

最後の雁夜の登場はちょっと無理やり感が拭えないですね笑最近出番が無いもんですから。
次回、ケイネス先生の代わりにアインツベルン城に現れた人物とは?

今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

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