雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
遂にお出ましか、言峰綺礼。
雁夜は現れた男を見て思う。
聖堂教会の元代行者にして、アサシンのマスター。衛宮切嗣と並び今聖杯戦争において雁夜が最も危険視するマスターだ。
「やはり外出中などではないではないじゃないですか。早速手の甲を改めてさせて頂くが、それでもよろしいな?」
雁夜は言う。
「クッ…」
璃正はアーチャーのマスターである遠坂時臣と組み立てた聖杯戦争の構想が崩れて行くのを防げない悔しやから、言葉を発する事すら出来ない。
対する綺礼は落ち着いている。恐らく代行者としての経験から無駄に引き下がっても意味が無い事を察したのであろう。
「ああ。こうなっては仕方が無い。」
そう言って綺礼は、ゆっくりと両手を挙げる。
その手を確認すると、矢張り令呪はあった。
「やっぱりあるじゃないか。璃正殿、貴方は聖杯戦争監督役の権限を乱用し、アサシンのマスターと結託。アサシンのマスターとその同盟者に不正なアドバンテージを与えていたという事で間違いありませんね?」
雁夜は告げる。
「うむ…反論したいところだが、綺礼の令呪という動かぬ証拠がある限り出来まい。」
璃正は悔しさを隠し切れず、拳を強く握っている。
「とりあえずアサシンのマスターの保護は解くのは確定として、貴方自身はどのように責任をお取りになられるつもりかお教え頂きたい。」
雁夜は非難をやめない。ここで出来るだけアーチャー・アサシン同盟にダメージを与えておきたいからだ。
「うむ…それについては後ほど連絡する。」
璃正は口ごもる。
雁夜の非難を止めようとしてかしてまいか、綺礼が二人の会話に割り込んだ。
「それで、私のアサシンがまだ現界している事がわかったところでどうするのかね?」
綺礼は聞く。恐らく本能的な雁夜が最も聞かれたくないことを察したのだろう。
「何なら今ここで私と戦うかね?見たところさっき取り出した二丁の拳銃の他に、複数のナイフを持って来ているようだが?」
やはりこいつは一筋縄ではいかない。
雁夜は思う。
見せてすらいない武装を見抜くとは、流石元代行者と言ったところであろう。
「いや、それはキャスターとそのマスターの討伐の後だ。」
雁夜は綺礼の一手を別のカードを切る事によって躱した。
「ほお…そうであったな。今は聖杯戦争存続の為にキャスターとそのマスターを狩るのが先であったな。」
綺礼は言葉では納得した様だが、内心、キャスターとそのマスターなどには関心がないのであろう。
「まあ良い。俺の質問はこれで終わりだ。」
雁夜は自身の用が終わった事を宣言した。
「よってこれにて帰らせて頂く。」
そう言って雁夜は教会の出口に向かう。
これをずっと待っていた男がいた。
間桐雁夜は素晴らしい働きをした。
雁夜の想像以上のその働きにその男、衛宮切嗣は感心していた。
しかしそれだけの働きが出来るという事は、強敵に成り得る敵であるという事。
最早あいつはただの落伍者ではない、ここで始末する。
衛宮切嗣はワルサーWA2000の照準を教会の出口に向けるのであった。
第二十七話です。
教会での心理戦を終えた雁夜に新たなる脅威、衛宮切嗣が現れます。
次回、狙撃の危機に瀕した雁夜の運命はいかに⁈
今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。