雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
雁夜は−いや、人形と言った方が正しいか−は言峰教会に向かって歩いていた。
そう、自身はキャスターと並び一度も姿を表していないバーサーカーのマスター。バーサーカーという強力な事がほぼ確定している上に情報が謎に包まれているサーヴァントを従えている自分は他陣営から見れば最も消したいマスターの一人であろう。
だが上手く行けばアサシン陣営を倒し、現時点で優勝候補筆頭のアサシン・アーチャー同盟に大打撃を与える事が出来る。
悩みに悩んだが結局、勝負は多少のリスクを取れなければ勝てない、という考えからこの決断に至ったのである。
その光景をその男は見ていた。
その手にワルサーWA2000を構えながら。
「奴が、バーサーカーのマスター。間桐雁夜か。」
その男−衛宮切嗣−は呟く。銃の照準を雁夜の頭に定めながら。
「しかし妙だな…今まで間桐邸に引き込もっていてバーサーカーに戦闘すらさせていない慎重な男が、ここに来て何故…」
切嗣は疑問を感じずにいられない。
「出奔していたため魔術師としては三流以下だろうが、使い魔すら使えないという事はないだろう…」
「そこまでのリスクを負ってまで試したい策があるのか…?」
その策が自身のメリットに繋がるかもしれない。
切嗣は見送る事に決めた。
「キャスターのマスターは、昨今の冬木市を騒がせている、連続誘拐事件の犯人である事が判明した。」
璃正は雁夜と使い魔を前に話し始めた。
「よって私は、非常時における監督権限をここに発動し、暫定的ルール変更を設定する。」
璃正は続ける。
「全てのマスターは、直ちに互いの戦闘行動を中断し、各々キャスター殲滅に尽力せよ。」
璃正は提案する。
「そして、見事キャスターとそのマスターを討ち取った者には、特例措置として追加の令呪を寄贈する。」
そう言って璃正は自身の腕にびっしりと刻まれた余剰令呪を見せる。
「これは、過去の聖杯戦争で脱落したマスター達が、使い残した令呪である。」
「諸君らにとってこれらの刻印は貴重極まりない価値を持つはずだ。」
璃正は言うまでもない事実を再確認し、続ける。
「キャスターの消滅が確認された時点で、改めて聖杯戦争を再開するものとする。」
璃正は言った。
「さて、質問がある者は今この場で申し出るが良い。」
璃正は雁夜の待っていた台詞を言う。
「最も、人語を発音出来るのはバーサーカーのマスター以外居ないがね。」
璃正は皮肉る。
質問出来ない使い魔達が去ろうとした時、雁夜はその口を開いた。
「二つ程、質問がある。」
それを聞いた使い魔達は去るのを辞めた。
そして璃正は言う。
「申してみるが良い。バーサーカーのマスターよ。」
「まず、現時点でキャスターとそのマスターに関してわかっている全て教えてほしい。」
雁夜は聞く。
耐魔力のスキルがあるもののランクEと低いバーサーカーをキャスターに挑ませて返り討ちに合うわけにはいかないからだ。
「現時点では魔術を行使しして児童を誘拐している、という事しかわかっていない。」
璃正は正直に答える。
「そうか…もう一つの質問はキャスターとそのマスターに関係しないがそれでもよろしいか?」
雁夜は念を押す。
「構わない。申してみよ」
雁夜が次に発する言葉を知らない璃正は許可する。
「ありがたい。」
「では、この教会で保護されている脱落したアサシンのマスター、言峰綺礼の手の甲を確認させてほしい。」
第二十五話です。
切嗣が雁夜のことを意図的に見逃し、雁夜はアーチャー・アサシン同盟への打撃となる質問をしました。
今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。