雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
アサシンが撃破された日の午後、雁夜は使い魔である烏に冬木を上空から探索させながら、考えていた。
「アーチャーの宝具は大量の剣や槍を射出する能力か…」
雁夜は呟く。
その内容は勿論使い魔が記録したアサシンとアーチャーの戦闘に関する物である。
果たしてあの剣や槍自体が宝具なのか。それとも剣や槍を大量のに射出する能力だけが宝具なのか。
雁夜は考える。
だが何方にせよ掴んだ物を何でも自身の宝具にする事ができるバーサーカーにとっては都合の良い能力である。
一つや二つぐらい奪えると良いんだけどな…
雁夜はそう思う。
現在バーサーカーの武装は切り札のアロンダイトを除けば雁夜が渡した拳銃一丁とダガー二本のみ。拳銃は警官に暗示を掛ければ幾らでも盗み出す事が出来る為、武器が無くなるという事はない。だがやはりランスロット本来の武器である剣を持たせたいところである。
まあそれはアーチャーと実際に戦った時に考える問題であるか。
そう思い雁夜は次の考察に移る
勿論その考察とはサーヴァントを失ったアサシンのマスターに関してである。
教会からの報告によるとアサシンのマスターは保護されたらしい。少し疑惑の残る一連の戦闘であったがアサシンのマスターが保護されたということは、アサシン陣営は脱落したということなのだろう。
だが、それは同時にアサシンのマスターが聖杯戦争に復帰する可能性があるということを意味している。
教会の代行者を務めたことすらある強力なマスターがまたマスターに成りうるというのは、警戒するべきことである。
丁度雁夜がアサシンのマスターについての考察を終えた頃、使い魔の烏が倉庫街にてセイバーと思わしきサーヴァントとランサーと思わしきサーヴァントが戦闘をしている所を発見したので、即座に視覚を共有する。
セイバーの繰り出す激しい剣戟を捌くランサー。もしくは逆の展開が続けられ、勝負はセイバーが少し優勢なものの、ほぼ均衡を保っていた。
そんな戦いを見つつも、雁夜は冷静に分析する
セイバーの宝具はあの不可視の剣。
ランサーの宝具は二つの槍の内どちらか、もしくは両方。
ステータスはセイバーがランサーを圧倒的に上回っているが、それでもバーサーカーには及ばない。
そして、別の角度から見ようと使い魔を移動させると、更に興味深い物を見つけた。
アサシン。
脱落したはずのサーヴァントが偵察を行っているではないか。
やはり裏があったか。
雁夜は思う。
アーチャーの異様な早さでのアサシン発見とこれでアーチャー陣営とアサシン陣営は繋がっている事が確定した。
さて、どうしようか。
アーチャーが強力なサーヴァントであることは先日の一件で明らかになっているし、それにアサシンが加わるとなると、間違いなく狂戦士一体では厳しいだろう。
そう考えていると、セイバーとランサーの戦いに動きがあった。
「宝具の開帳を許す。」
聞いたこのあるその声での命令とともにランサーが宝具を開帳したランサーが、赤い長槍を開帳し、黄色の短槍を地面に置いた。
「そういう訳だセイバー。ここからは取りに行かせて貰う。」
ランサーはそう言うと戦闘を再開した。
それを見た雁夜は呟く
「赤い長槍が宝具か…開帳した以上、能力を知ることも出来ると思うんだけど…」
ランサーはその開帳した宝具でセイバーの剣を覆っている風の魔力を削っていく。
そして、その時は来た。
ランサーの宝具がセイバーの魔力で編んだ鎧を貫通したのだ。
「あの槍は魔力の流れを遮断するのか…」
雁夜は呟く
「マズイな…アレはバーサーカーの宝具との相性が悪い。」
そう雁夜が呟いている間にも、戦闘は続いていった。
第十九話です。
倉庫街の戦いが始まりました。
いよいよ聖杯戦争の本番ですね。
次回は雁夜が秘策を使います。楽しみにしていてくれると嬉しいです。