雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら   作:ワカメの味噌汁

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第十三話

時計塔と彷徨海の合同講義が行われてから何年かの時が経ったある日、何時もの様に講義を終えた雁夜が自身の研究室に籠って魔術の考察をしていると、手の甲に鋭い、焼ける様な痛みを感じた。

 

薄々感づいていたが見てみると、やはり思った通りであった。

 

令呪—

 

それは雁夜が聖杯戦争のマスターとして選ばれた動かぬ証しであり、同時に雁夜が「間桐」の血を継ぐ物である証しでもある。

 

やはり血には抗えない。

だが聖杯戦争に参加するとなると、なるべく早く冬木入りしなければならないし、何よりも雁夜には冬木でやらなければならないことがあった。

そう考えた雁夜の行動は早かった。

直ぐに荷物を纏めた—と言っても必要な物だけであるが—後上層部に故郷でやらなければならないことがある、と説明し二年間の休暇を得た雁夜は、日本に向けて出発するのであった。

 

日本に着いた雁夜はまず最初に師である橙子に会いに行った。まだ一時帰国の時期ではないのにも関わらず会いに来た雁夜を見て橙子は質問した。

 

「まだ一時帰国の時期じゃないぞ雁夜。どうした?寂しくなっちゃったのか?んん?」

 

冗談半分の質問であったが、雁夜は冷静に答えた。

「こっちに外せない用事ができちゃいまして。」

そう言って、令呪が宿った手の甲を見せる。

 

それを見た橙子は一気に真剣になる。

「そうか…忘れかけていたがお前は『間桐』の血を引いてたんだったな。」

やはり橙子も知っている様であった。

 

「周期から見て、今回の聖杯戦争は二年後です。彷徨海からは既に休暇を貰っています。」

雁夜は知っている限りの情報を橙子に話していく。

 

「ふむ。そうか。現時点で判明しているマスターは?」

橙子は聞く。

「聖杯戦争が始まるまでは確証を持って言うことは出来ませんが、恐らく『遠坂』からは遠坂時臣、アインツベルンは外部の魔術師を宿ったとの噂を耳にしましたからその魔術師が参戦するのだと思います。」

 

「あのアインツベルンが純血を破るとはな…その魔術師が誰だかはわかっているのか?」

橙子が驚きながらも聞く。

 

橙子の質問に雁夜は答える。

「衛宮切嗣、魔術師殺しの二つ名で知られる魔術師です。」

 

「また厄介な奴だな。」

橙子は言う。

「まあ大丈夫だ。お前は実力のある魔術師だ。それに私も力の限りサポートしよう。」

 

雁夜は感謝する。

「ありがとうございます。」

 

「なあに、可愛い弟子のためだ。ところで雁夜、お前、聖杯戦争の為だけに帰って来た訳ではないんだろう?」

 

やはり橙子には見透かされていた。

橙子に隠すことではないので雁夜は正直に答える。

「はい。あの妖怪を、間桐臓硯を殺しに来ました。」

 

間桐臓硯—

橙子が雁夜を蒼崎家の養子(と、言っても橙子以外の蒼崎一族とは面識がなく、雁夜が養子になった事にすら気がついていない様だが)になるまで雁夜の戸籍上の父親だった男であり、500年以上も生き続けている妖怪である。

そしてその妖怪こそ雁夜の両親を目の前でその蟲の餌にした張本人であり、雁夜の復讐の対象である。

 

遂に殺せる。そう雁夜が考えていると橙子が言った。

「よろしい。では早速準備に取り掛かるとしよう。」

 

 

 

 

 

 




第十三話です。

幾つか補足させて頂きます

•雁夜は聖杯戦争二年前に臓硯と対峙するため、桜はまだ遠坂桜です。(臓硯との戦い方が桜がいると出来ない物なのでこうしました。)
•彷徨海に出発する前に橙子が雁夜に蒼崎を名乗れと命じましたがその時点で橙子は雁夜を蒼崎家の養子にしています。
•この作品で雁夜は幼少時代を臓硯を殺す事だけを考えていたため葵さんと時臣に興味がありません。

以上です。


次話は聖杯戦争の下準備編です。
聖杯戦争と蔵硯対峙用の下準備や冬木入り、そして蔵硯との戦闘まで書くつもりだったのですが、下準備編が長くなりそうなので下準備編と冬木入りの以降蔵硯との対峙をわけさせて頂きます。

期待していた方、すみませんでした

今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。

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