雁夜が直死の魔眼使いでそれなりに強かったら 作:ワカメの味噌汁
よく言われる事ではあるが時の流れは速い
雁夜はそう感じていた。
雁夜が彷徨海に在籍し始めてから数年の時がたった。数年という時間は短かったが、色々な事を経験する事が出来た。
まずは魔術である。橙子の指示どおりに神経系強化魔術を研究する事にした雁夜は、脳の改造に重きを起き研究した。その結果、脳のキャパシティを大幅に拡大させる事に成功していた。その功績は彷徨海の肉体改造魔術に大きな進歩をもたらした。
研究以外でも成績優秀であったし、ある魔術師が暴走した時にはその魔術師の鎮圧に大きく貢献した。また、教授のアシスタントも務めた雁夜は、彷徨海の天才としてその名を馳せていた。
そんな彷徨海での経験を懐かしく思いつつも、明日が彷徨海での学生生活最後の日だと思うと、不思議と寂しさが込み上げてくる。
感傷に浸りながら、最後に彷徨海の街並みを見て回るかと、いつもより長めの距離をジュギングする。
やっぱり良いところたったな。
そう雁夜が考えてながら走っていると、ある男に呼び止められた。
「蒼崎雁夜君。」
その男、雁夜が彷徨海に来て最初に受けた講義の講師だった男、は続ける
「君の才能は素晴らしい。七代続く名家の当主であるこの私が認める程にな。」
「ありがとうございます。」
賞賛を受けた雁夜は礼を言うが、男の意図がいまいちわからず、困惑する。
そんな雁夜の心情を知ってか知らずか、男は提案する。
「蒼崎雁夜君、君は彷徨海で講師をする事に興味はないかね?」
その提案に雁夜は驚きを隠せない。
「これは私の個人的な提案ではない。彷徨海上層部の意向だ。まあ無論私も賛成しているがな。」
男は言う。
雁夜はまだ驚きで何も言う事ができない。
男は続ける。
「君は日本に帰っても行く当てがないのだろう?ならば講師になれば生活は保証されるし、魔術師としての地位も確立されるだろう。それに彷徨海で講師をするとなれば、魔術協会本部から研究資金が出る。」
男が提示したメリットを聞き、雁夜は考える。
行く当てがないという一点を除けば男の言っている事は事実であるし、受けてもこれと言って悪いことはない。
「どうだね?引き受けてくれないだろうか?」
男の提案に雁夜は決心し答える。
「わかりました。引き受けましょう。」
「本当か⁉良かった。じゃあ早速上層部に報告に行こう。」
男は嬉しそうに言う。
しかし雁夜には一つだけ聞かなければならないことがあった。
「講師を始める前に日本の知り合いやお世話になった人達に挨拶に行っても良いですか?」
実のところ橙子に会いに行くだけなのであるが、橙子は封印指定の魔術師である。魔術協会所属の、ましてや彷徨海の講師にそう言うわけにはいかず、嘘をつく。
男はその嘘を疑いともせずに言う
「おお、そうか。勿論だとも。だが絶対に帰ってくるんだぞ?あともし君の師に会うことがあったなら、是非とも私の分まで挨拶してくれたまえ。」
そう言われた雁夜は、どう橙子を説得するかを考えつつ、男とともに講師になる為の書類を取りに行くのであった。
第十話です。
雁夜は講師になりました。
もしかしたら講師生活は次の一話だけかもしれませんが笑
その後はいよいよ蔵硯との対峙と聖杯戦争です。
雁夜の彷徨海での学生生活についてもう少し書きたかったのですが、いまいち良い展開が思いつかなかっので纏めてしまいました。
次話では遂に聖杯戦争マスターの一人が登場します。まあ予想はついていると思いますが、そのマスターが雁夜とどのように絡むかを楽しみにしていてくれると嬉しいです。
今日も駄文にお付き合い頂き、ありがとうございました。