逆行オイフェ 作:クワトロ体位
「ここは……」
デューらが退出した後、オイフェもまたレイミアに誘われ応接間を後にしていた。
別に設けられた扉から屋外へ出ると、敷地内にある館の離れへ案内される。
レイミアは妖艶な笑みを浮かべながら、オイフェを中へと招き入れた。
「ここは頑丈に作られた小屋でね。アタシの
そう言いながら、レイミアは内扉の鍵を閉める。
内外から施錠出来る木製の扉は重厚な造りを見せており、見た目以上に堅牢性がある事を物語っていた。
「個人的、ですか」
「そうさね。だから内緒話をするにはうってつけさね」
見れば、窓枠は最小限しか備え付けられておらず、外の様子は伺えない。厚い壁は内部の音を尽く遮断し、外部へ漏らす事は無いだろう。
言われた通り、防諜にはもってこいの部屋。
そして、その中で何が起ころうが、外部の人間は何も察知することは出来ないだろうとも。
「まあ座りなよ」
備え付けられた豪奢な寝台へ腰をかけつつ、レイミアはぽんぽんと自身の隣へ座るよう促す。同時に、寝台の横に備えられているテーブルから、水差しとグラスを取る。
更に、小さめの香炉を炊き、薄煙を燻ぶらせた。
その香りを嗅ぐと、何やら身体の芯が熱く昂ぶるような、説明のつかない情欲が湧き上がっていた。
オイフェは警戒心を隠せず、少しばかり逡巡する。
「それとも契約はなかったことにするかい?」
口角を歪ませながらそう言ったレイミア。
オイフェからすると、確かに身の危険を冒してまでこの傭兵団と契約する価値は、本来ならばない。
しかし。
「いいえ。納得いただくまでお話をしましょう」
この時期。そしてこの場所。
イード砂漠でどの勢力にも属さない、纏まった兵力。高い戦力。
そして、決してこちらを裏切らない駒。
それは、このレイミア隊以外に存在しなかった。
「飲みなよ」
おずおずと座るオイフェに、レイミアは寝台の横に置かれたテーブルから、先程と同じように液体が入ったグラスを差し出す。
だが、その中身は水ではなく、琥珀色の液体。
「……」
「安心しな。毒なんて今更盛るつもりはないさね」
そう言いながら、同じ瓶から自身のグラスへ注ぎ、ぐいと飲み干す。
少しばかり顔を赤らめながら、ほうと生暖かい息を吐いた。
妖しげなえくぼを寄せるレイミアを見て、オイフェは毒を食らわば皿までと、意を決して杯を傾ける。
「っ」
「ククク、お子様にはまだ早かったかねえ」
予想通り、グラスの中身は酒。
しかし、予想以上に酒精が強い。
前世でも酒は嗜む程度しか呑んでいなかったオイフェ。加えて、この身体はまだまだアルコールを受け止められる肉体ではない。
くらりとした酩酊感に耐えつつ、オイフェはレイミアへと視線を戻した。
「……契約を渋る理由は何でしょうか」
「そうさねぇ」
レイミアは変わらず妖しげな空気を纏わせ、オイフェと向き合う。
剣士服をはだけさせ、張りのある胸元を露出させる。
「契約金に不満があるのですか?」
「それもあるねぇ」
寝具が擦れる音を立てながら、レイミアはぐいとオイフェへ身体を寄せる。
女豹のむわりとした雌臭が鼻孔をくすぐり、オイフェは羞恥を堪えるかのような表情を浮かべた。
「なら、他に何が」
気付けば呼吸が間近に迫る程密着した両者。
さながら、蜘蛛の糸にかかった蝶のように、オイフェはレイミアの湿った視線に囚われていた。
香水と体臭、酒の香りが漂う荒い息。
それらを嗅ぎ、オイフェの体温はほのかに熱くなる。
「簡単さね」
そう言って、レイミアはオイフェへ身体を向ける。
真っ直ぐに、少年の瞳へ視線を向けていた。
「坊やの意図が読めないからだよ」
「……」
女傭兵の率直にして実直な意見。
契約金の多寡ではなく、依頼主の真意。
それを正確に読み取る事が、レイミア隊を今日まで生きながらえさせた秘訣であった。
「あっ」
ぐいと肩を掴まれ、寝台へ押し倒されるオイフェ。
レイミアの固く締まった二の腕が露わになり、その腕力はオイフェでは抵抗不可能。
艷やかで長い黒髪が、オイフェの頬に当たる。
オイフェの無垢な瞳を覗き込みながら、レイミアは言葉を続けた。
「こちとら命を張った傭兵稼業。貴族のお坊ちゃまのお遊びに付き合えるほど気楽な商売じゃないんだよ」
しかし、思ったよりずっと真摯な眼差しで、ややドスの効いた声を上げるレイミア。
その言葉は、常時戦場へ身を置く、
「ガキが戦争ごっこしたいなら余所を当たりな」
そう言って、オイフェを解放するレイミア。
不機嫌そうにグラスを煽り、ひらひらと手を振りながら、内扉の鍵を放り投げる。
床に投げ捨てられた鍵を見つめながら、オイフェはああ、とひとり納得げに息を吐いた。
(信用ならん、というわけか)
身体を起こしながら、オイフェはさもありなんと思考する。
考えてみれば、前世含め、共に轡を並べた傭兵達は皆何かしらの“誠”を持っていた。
栄達の野望や世を救う大義だけではなく、血のつながりや情のつながり。
理由は様々だが、彼らが戦った理由は、己が定める誠に従ったまでだ。それは、目の前のレイミアも変わらないだろう。
故に、レイミアからして見れば、オイフェの申し出は貴族の道楽に見えても不思議はない。
契約金の多寡などズレた考えであり、誠心から外れた礼に欠ける振る舞いだったのだ。
どのような者であれ、計略に従事する者には真心──誠心を持って接するのは、偉大なる祖父から受けた大切な薫陶。それを忘れてはならない。
「では、どうすれば信用してもらえるのですか?」
同時に、オイフェはレイミアへある種の“義侠心”も感じていた。
最悪、交渉決裂時に自身が人質となり、多額の身代金を要求されると予想していたが、蓋を開けてみれば子供へ説教する女傭兵でしかなく。
もっとも、これに関してはシアルフィ──バイロンの息が大いにかかったフィノーラ領主と契約していた以上、そこまでの無法をする可能性は低く、よしんば事に及んでも対処できるようデュー達を連れていたのもあるが。
悪辣な戦ぶりで知られるレイミア隊であったが、裏を返せば依頼主を決して裏切らないその評価は正しく。
己の都合だけで、フィノーラ、ひいてはシアルフィとの敵対を避ける義心はあると。
オイフェはそう判断していた。
密室で酒と妖しげな香を交えた会合は、こちらの恐怖心を煽る演出だったのだろうとも。
「どうすれば、ねぇ」
レイミアは震えて逃げ出すとばかり思っていたオイフェが、予想外の食いつきを見せた事で、心の内に小さな波が立つのを感じていた。
嗜虐めいた笑みを浮かべ、オイフェの言葉を待つ。
年頃の少年にしては肝が据わっている。どうやらこの少年は、ただの貴族の御曹司ではないようだ。
そして。
オイフェは、この時の発言を、生涯後悔する事となる。
「なんでもします。私に出来ることなら」
「ん? 今なんでもって──」
流れが変わった。
同時に、オイフェは思う。
(あ、いかん)
己の学習能力の無さに辟易するオイフェ。
会った瞬間に、レイミアからはエバンスの
しかし時既に遅し。
レイミアはそれまでの妖艶な笑みとは別格の、嗜虐心あふれる
「……なら、そこに立ちなよ」
「は、はい……」
オイフェを自身の前に立つよう促すレイミア。
そして、無慈悲の言葉を続ける。
「脱ぎな」
「え?」
「服を脱げって言ったのさ。なんでもするって言葉は嘘かい?」
そう言ったレイミア。
己の倒錯した嗜虐心を満たせる、滅多に無い機会。
逃すはずもなく。
「全部、ですか?」
「当たり前だろう」
羞恥に頬を染める少年を、ニヤニヤと厭らしい笑みで見つめる女傭兵。
事案、事案なのだ。
しかし。
実はこの時までのレイミアは、どこか冷静な思考を保っていた。
貴族の御曹司が、素性も知れぬ傭兵、それも女からの、屈辱的な要求を飲むはずがない。
ここまで脅せば、諦めて逃げ帰るはずだ。
「わかりました」
「は?」
だが。
レイミアのサディスティックな要求をすんなりと受諾したオイフェ。
するすると自身の衣服へと手をかける。
「ちょ、マジかい」
初めて困惑を露わにするレイミア。
しかし、戸惑うレイミアに構わず、オイフェは脱衣を続ける。
上着を全て脱ぎ、しなりとした少年の柔肌を露わにする。桜色の蕾が、淫気が籠もった部屋に露出される。
「あ……」
そして、オイフェは下履きを脱ぎ始める。衣擦れの音と共に、少年の健康的な脚部が現れた。
「ああ……」
レイミアは陶然とした様子でそれを見つめていた。
少年の無垢な性。穢れなき純潔。
それが、一枚一枚、花弁が落ちるように露わになる。
それは、得も言われぬような官能的で、背徳的な光景であった。
「──っ」
最後に、オイフェは深く呼吸をし、柔らかい綿布で繕われた下着に手をかけた。
しゅるりと音が鳴ると、少年の身を包む物は一切なくなり、この世に誕生した時と同じ姿となる。
「……ッ」
いささか血走った目を見開くレイミア。
穢れを知らぬ少年の陰部。
どの春画よりも淫らな、生々しいまでの未熟な性。
それが、女傭兵の情欲を容赦なく刺激していた。
「これで、よろしいですか?」
前を隠そうともせず、己の全てをさらけ出したオイフェ。赤らんだ顔ではあるが、恥じらいは感じられなかった。
その意志、その決意。
少年から溢れる様々な想いが、レイミアの心を穿つ。
己の肉体、必勝の為の手段。
どのように嬲られようと。
そして、どのように姿形変われど。
オイフェは、意に介さない。
(シグルド様やディアドラ様……皆の為なら……!)
全ては、愛する人達の幸福の為。
その為には、己の肉体──貞操など、どうなろうが構わない。
彼らの幸せな結末さえ見届けられれば、この命さえも惜しくないのだ。
恥じらいなど、とうに捨てていた。
ましてや、目の前の女傭兵に恋慕の情など一切無い。
男娼まがいの行動に至ってしまったのは計算外だが、それでも手段として行使するのに躊躇いは無いのだ。
「そこまでするかい……」
あまりにも堂々とした脱ぎっぷりのオイフェに、レイミアは思わずそう述べていた。
そして如実に感じられる、少年の尋常ならぬ死狂うた覚悟。
狂信的なまでのそれは、レイミアの肉欲をそそると同時に、何故少年がそこまでして自分達を雇おうとしてるのか、純粋な興味が湧いていた。
もはや貴族の戦争ごっことは、到底断じる事は出来なかった。
「……こっちに来なよ」
レイミアは思う。オイフェのこの覚悟を無下にするのは、かえって礼を失する行いだと。
据え膳食わぬという思いも多少ある。だが、目の前の美童が、己の肉体をなげうってまで果たそうとする目的が、どのようなものなのか──興味が尽きなかった。
「あっ」
寝台に腰掛けるレイミアの前に立つオイフェ。直後、ぐいと手を引かれ、再び寝台へ押し倒された。
だが、此度のレイミアの表情は、先程の少年を説教する大人の顔ではなく。
欲情と好奇に満ちた、扇情を煽る“女”の顔だった。
「交渉の続きは──」
衣擦れと共に、レイミアもまた己の肌を晒す。
妙齢の女性だけが持つ、熟れた魅力。
しかし、筋張った肉体に縦横に走る疵は、その魅力とは程遠い武骨な物。
だが、思春期の殆どを戦場に身を置いていたオイフェには、それが不思議と“美しい”と感じられた。
「臥所の中でやろうかね」
かくして。
少年軍師が前世から守り続けた花は、砂漠の地にて散らされる事となる。
「何をする!?」
オイフェとレイミアが離れへと移り、しばしの時が経った。
少年軍師に随行する金髪三人衆は別室に案内され、まんじりとした時間を過ごしていた。
が、しばらくすると一人の女傭兵が監視の者達へ何事かを伝える。直後、傭兵達は突然三人の身柄を拘束せしめた。
「抵抗するんじゃないよ!」
「あんたらの大将の身柄はウチのお頭が預かってるんだ。大人しく縄につきな」
「くっ……!」
当然、ホリンは抵抗を試みるも、オイフェが人質となっている事実を突き付けられ、それ以上の抵抗が出来ないでいた。
「ま、なるわな……」
「やっぱ怖いスね傭兵は」
ベオウルフとデューは無駄な抵抗はせず、大人しく捕縛されていた。
どこかこうなるであろうと予測していたベオウルフと、このような状況でも呑気な空気を纏わせるデュー。
そのような二人を見て、ホリンは苛立ちを隠せず。
「お前ら! こんな状況でよくもそんな──」
「まあ落ち着けやホリン」
しかし、ベオウルフが真剣な眼差しでホリンを見る。
いつもの享楽的な態度とは違い、何かしらの考えがあるのが見て取れた。
「姐御はそこまで馬鹿じゃねえよ」
「む……」
短くそう告げるベオウルフ。
傭兵レイミアの事を多少なりとも知っているベオウルフは、ここでオイフェに危害を加えるような浅慮はしないだろうと判断していた。
「大方俺らをビビらせて追い返そうとする腹積もりだろ。何かするつもりならとっくにやってるさ」
「んだね。ま、ここはオイフェの交渉を信じようよホリン」
「……」
二人からそう言われては、黙るしかないホリン。
客観的に見て、オイフェ一行が直接的な危害を被る可能性は低い。
戦力の高いレイミア隊ではあるが、所詮は一介の傭兵団。グランベルの貴族に楯突く気は毛頭無い。
オイフェの身に何かあれば、大国からの報復は免れないからだ。
しかし、だからとて巫山戯た契約をすんなり受けては、傭兵団としての面子に傷がつく。
貴族を震え上がらせる──“地獄のレイミア”としての箔をつける為、必要以上に物々しい雰囲気を作り出しているだけ。
このベオウルフの判断は概ね正しく、デューもまたオイフェの胆力を信じてそのような結論に至っていた。
もっとも、二人はオイフェが別の意味でナニかされているとは露程も思いつかなかったのだが。
「それに、いざとなれば……ね?」
ふと、小声でホリンへ囁くデュー。
縛られた両手をくいと動かし、親指で丸を作る。
この程度の拘束など、容易に抜けられると暗に伝えていた。
「……わかった」
「ったく、姐御を敵に回すなら報酬を上げてくれなきゃワリに合わねえぜ」
「二人とも気をつけてね。オイフェに何かあったらマズいし」
既にナニかされているのだが、それでも緊急の鉄火場に備え、三人は監視の者に聞こえぬよう小声で囁き合う。
武器は拘束の際に取り上げられていたが、ホリンの実力ならば無刀でも目の前の監視は片を付けられる。
監視の者達から武器を奪い、デューの手引きでオイフェを救出。
その後はフィノーラの領主の元へと逃げ込めば良い。
しかし。
「──この子がいいわ」
「へ?」
ふと、監視の一人が、デューの前に立った。
品定めするかのように、その表情を厭らしく歪める。
「ちょっと先輩方。あたし達の分も残しておいてくださいよ」
「はいはい。ま、あんた達は黙って見張りを続けな」
「ちょっとは愉しめそうね……ウフフフ」
「あなた達はくじで決めた順番をちゃんと守りなよ~」
「くじって、絶対いつものイカサマじゃないスか。いいんスかこれ」
「先輩……あなたはクソだ」
見れば、監視の女傭兵達にも序列のようなものがあり。
先輩と呼ばれた三名の女傭兵に、その後輩であろう三名の女傭兵らが口々に不満を述べていた。
「なっ、おいらに何するつもりだ!?」
「うるさいガキだね。いいからこっちへ来な」
拘束されたデューを無理やり立たせる。
先輩傭兵の三人。その内、一人は筋骨逞しいソードファイター。もう一名は、回復聖杖を携えたシスター。残るは、ぴりりと紫電を纏わせるサンダーマージだ。
引き続き監視を続ける女傭兵は、ソードファイター二人に、ボウファイターが一人。
「そう来たか……ちとマズイな」
「ベオウルフ、どういうことだ?」
苦虫を噛み潰したような渋面を浮かべるベオウルフ。ホリンもまた緊迫した様子を浮かべる。
「姐御よろしく、レイミア隊はサディスティックな連中の集まりでな……大方、デューを痛めつけてこちらを恐れさせるつもりだろうよ」
「なにっ! なら──」
「まあ待て待て。ライブ持ちもいるってことは、痛めつけた後はちゃんと治療するつもりだ。悪趣味なのは変わらんが」
「くっ……」
「デューには気の毒だが……しばらくすればもっと監視の目が緩む。どちらにせよ、それまで待つんだ」
そう諭され、ホリンは浮かばせた腰を下ろす。
忸怩たる思いを堪え、盗賊少年へ心配げな視線を向けた。
「デュー……!」
連行されるデューの後ろ姿を見つめるホリン。その背中は少しばかり震えている。
「ホリン……ベオっちゃん……!」
当のデューは、これから行われるであろう“拷問”を想像してか、幾許かの恐怖を滲ませている。
油断を誘う為にあえて呑気な空気を醸し出していたデュー。
しかし、嗜虐趣味を持つ者達にとって、それは逆効果であったと、後悔も滲ませていた。
「デュー……すまない……」
「お前その呼び方いい加減やめろよな……」
ホリンとベオウルフの不安げな視線を背に、デューは隣室へと連れて行かれた。
「わあっ!?」
そして。
乱暴に連行されたデュー。
瞬く間に両手足を寝台へ縛り付けられ、衣服を全て剥ぎ取られる。
「お、おいらは暴力には屈しないぞ!」
四肢を縛り付けられては、いかなデューとはいえ縄抜けは難しい。身を捩らせながら、勇敢な盗賊少年は精一杯の抵抗を示していた。
「んじゃ、私からね」
「ちょっと、順番は?」
「年功序列よ。くじは無効だわ」
「ずるい~」
しかし。
怯えるデューは、目の前の女傭兵達が脱衣し始めたのを見て、訝しげな表情をひとつ浮かべる。
そして、ちょっと期待に満ちた表情も浮かべた。
「た、楽しいかも……い、いや、でもおいらには天馬騎士のおねーさん達が!」
会ったこともない女性達に操を立てるデュー。だが、この場ではひどく無意味であった。
「こちとら男日照りが続いてたんだ。早かったら承知しないからね」
「あ、いや、あの、おいら、こういうのは初めてというか、その、優しくしてというか、おいらは……!」
かような懇願はガン無視され、一番槍を務めしソードファイターの女が、寝台に縛りつけられるデューに勢い良く跨った。
「こうるさい!」
「おいらアッ──!」
デューの花が乱暴にむしり取られたのは、奇しくもオイフェの花が摘まれたのと同時刻であった。
「アッ! アウゥ! アアッ──!」
隣室から僅かに漏れるデューの
それを聞いたホリンとベオウルフは、その表情を憂いに沈ませていた。
「デュー……!」
「ひでえ事しやがる……きっと
地獄のレイミア隊の名に恥じぬ、悍ましいまでの地獄が繰り広げられているであろう事を想像したホリン達。
しかし、減ったとはいえ、残された監視の者達は、なぜか集中力が増しているように見え、迂闊な行動は取れずにいた。
「ああ、早く交代来ないかな」
「楽しみっス」
「怒らないでくださいね。楽しみすぎて監視を緩めるとかバカみたいじゃないですか」
油断なく警戒する女傭兵達。その様子に隙きは一切無かった。
「悪魔め……!」
悪辣な女傭兵団に、ホリンは愚弄する事でしか、その暴虐に抗うことは出来なかった。
Q.前話のスケベシーンと情景が若干違くない?
A.そうでしたっけ?フフフ^^