Fate / SAO CCC   作:YASUT

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武器強化

 《ウインドワスプ》とは、黒地に緑色の縞をもつ蜂型のモンスターのことである。

 モンスターと言うだけあって、その大きさは通常の蜂を遥かに凌ぐ。

 全長約五十センチ。人の頭よりも若干大きい程度だ。そんな巨大な蜂が迫ってきたら、誰だって平静ではいられまい。

 はっきり言ってかなり気持ち悪い。そして何より怖い。

 だが、もう慣れた。

 

 ウインドワスプが毒針を向け、猛スピードでこちらに迫る。

 攻撃の軌道は直線。速度は確かにあるが、この程度ならば自分でも対処は可能だ。

 そこまで確認した後、右手の《アニールブレイド》を構えた。

 ただし、ソードスキルは発動させない。あくまでもこれは布石に過ぎない。

 針の先が迫る。毒の色なのか、針は淡い黄色の光を帯びていた。

 それを、ヒットする直前で躱し―――――攻撃の軌道上に《アニールブレイド》を持っていく。

 狙いは羽の根元。

 力を入れる必要はない。ヒット判定を成功させれば十分。

 

「っ―――――!」

 

 ざしゅう!!という効果音と共に、剣は羽を深く抉った。

 鋼が肉を抉る確かな手応え。

 そのまま躊躇なく、剣を振り抜く………!

 

「は……あ―――――ッ!」

 

 ウインドワスプは片方の羽を失い、わすかな間だけ硬直する。

 即座に振り返り、再び剣を構え、今度はソードスキルを発動させた。

 片手剣二連撃―――――《バーチカルアーク》

 刀身が輝き、ソードスキルが発動された。

 Vを描く剣戟が、サウンドエフェクトを伴って直撃。

 ウインドワスプのHPゲージが六割ほど削られる。

 

「―――――!!」

 

 直後、甲高い鳴き声が聞こえた。HPゲージが半分を切ったことで、ウインドワスプが怒り状態に入ったのだろう。

 この瞬間、攻撃力と速度がわずかばかり上昇する。

 硬直状態から回復したウインドワスプは急旋回し、再び突進攻撃を繰り出した。

 

 しかし、想定の範囲内。

 もう一度攻撃を躱し、今度は距離をとる。

 

 

 ―――――ここまでは剣士『ハクノ』としての戦い。

 ―――――ここから先は魔術師(ウィザード)『岸波白野』として戦いだ。

 

 

 メニューウィンドウを開く。

 同時に、視界に様々な項目の長方形が現れた。

 それらを全て無視し、メニューの端にあらかじめセットしておいたコマンドを選択する。

 ショートカットコマンド―――――《クイックチェンジ》

 

 スキルの熟練度が一定数上がると、その度に任意の強化ボーナスを得ることができる。

 それは《クリティカル上昇》だったり、《ソードスキル冷却タイム短縮》だったりと、多種多様だ。

 《クイックチェンジ》はその中の一つ。

 現在装備している武器をストレージに仕舞い、あらかじめ登録しておいた別の武器、または同種の武器を即座に装備することができる。

 手の中から《アニールブレイド》が消える。

 代わりに現れたのは―――――《守り刀》。

 剣として見るなら、攻撃力がゼロの《守り刀》は最弱といってもいい。 

 

 ―――――そう。

 これはただの剣ではなく、魔術礼装。

 魔法使いが持つ“杖”の役割を果たす物。

 

「は―――――」

 

 短く息を吐き、集中。

 剣士から魔術師へ、スイッチを切り替える。

 

 そして―――――眠っていた魔術回路が活性化する。

 微弱な魔力が腕を流れ、発光した線が数本浮かび上がった。

 それに呼応するように、《守り刀》もまた発光する。

 

「―――――」

 

 光る剣を向け、照準を合わせた。

 ウインドワスプは再び旋回し、毒針をこちらに向け、さらに加速する。

 

 ―――――遅い。

 

 既に照準は合っている。

 弾丸はセットされた。

 あとは、必殺の意思を持って放つのみ……!

 

「っ………!?」

 

 だがその前に、視界の外から黒い弾丸が放たれた。

 大きさは拳銃弾ほど。しかし、その威力はこちらの想像を遥かに上回っていた。

 針を向けて突進して来たウインドワスプが真横から撃ち抜かれ、あろうことか二つに乖離してしまったのだ。

 途端、HPゲージが恐ろしい勢いで減少し、あっという間にゼロとなる。

 体を構成していたパーツが無残に散っていき、ガラス片へと姿を変えたあと、あっけなく消えていった。

 

 《ガンド》

 相手を人差し指で指すことで体調を崩す魔術。

 強力なものは“フィンの一撃”と呼ばれ、こちらは直接的なダメージを与える。

 人を指差す行為が失礼であるとされているのは、このガンドに由来するとも言われる。

 

「……よし。これで三十っと」

「………………」

 

 満足げに頷いているのは遠坂凛。先程のガンドを放った魔術師(ウィザード)

 そして同時に、ラストアタックを横からかっさらった張本人でもある。

 

「ほら、ぼさっとしない。あと二十体、十分で終わらせるわよ」

 

 なんと無茶苦茶な…………とは、思わない。

 二十分で十体。一体あたりにかける時間は約三十秒。

 絶え間なくソードスキルを浴びせれば可能かもしれないが、二十体連続となると流石に厳しい。

 だがそれを可能にするのが、先程のガンドをはじめとした遠距離攻撃の“魔術”である。

 

 ………ちなみにこれは茅場晶彦によって追加された新スキルではなく、彼女自身の、魔術師(ウィザード)としてのスキルである。

 以前、遠坂がエクストラスキル《魔術》の追加を要求したのは自分が使うためではなく、人に見られても言い訳が効くようにするための配慮だったらしい。

 

「……! ご主人様、また来ます!」

 

 少し離れた場所で待機しているキャスターが叫んだ。

 ……どうやらウインドワスプの群れの音を聞いたらしい。

 モンスターを一掃したいのならキャスターの呪術に頼るのが一番なのだが、わけあって彼女には索敵に専念してもらっている。

 

「……来たわね。

 どうする? 岸波くんも魔術の練習、しとく?」

「いや、いい。油断してやられてしまったら元も子もないから。

 引き続き前衛を担当するから、遠坂はフォロー頼む。

 キャスターは待機。だけど、念のため呪符を用意しといてくれ」

 

「え~、また待機ですかぁ?

 ご主人様の勇姿を見れるのは全然構いませんけど、それにしたって退屈です。もっとこう、何といいますか………『背中は任せた!』的熱い展開はないんですか?」

 

 残念ながら、キャスターに背中を任せなければならないほど危険な展開にはならない。

 その原因は遠坂凛。

 強力なガンドが“フィンの一撃”ならば、彼女のガンドはいうなれば“フィンのガトリング”。遠坂がその気になれば、直接的なダメージを与える魔力の弾丸をガトリングの如く撃ち続けることができるのだ。

 その破壊力は言わずもがな。例え百のウインドワスプの軍勢に囲まれたとしても、彼女がいれば一分足らずで殲滅できるだろう。

 それをしないのは、単に自分―――――岸波白野の剣の練習のため。

 聖杯戦争では剣を握ったことがなかったため、今の自分の剣技はソードスキルありきのものになっている。

 だがそれだけではサーヴァント、特にセイバーには全く歯が立たない。

 万が一接近されたとしても、一方的にやられる展開だけは避けたいのだ。

 

 アニールブレイドを握り、辺りを警戒する。

 今回のウインドワスプ狩りは、遠坂の剣《ウインドフルーレ》の強化の素材採取も兼ねている。

 必要な素材がドロップすることを祈り、自分達三人は狩りを再会した。

 

 

 ◆

 

 

 鍛冶屋のハンマーが振り下ろされ、鉄の音が広場に響く。

 カン! カン! というリズミカルな金属音と共に、オレンジ色の火花が飛び散る。

 鉄床の上にあるのは《ウインドフルーレ》。遠坂が愛用しているレイピアである。

 ハンマーを振っているのはNPCではなくプレイヤーだ。鍛冶屋の看板には『Nezha's smith Shop』とあったから、この男の名はきっと“ネズハ”というのだろう。

 ネズハが規定回数……十回ハンマーを振り下ろしたあと、《ウインドフルーレ》が一瞬だけ眩く輝いた。

 強化終了。

 剣の持ち主である遠坂、付き添いの自分とキャスター、そしてネズハ自身もそう思った瞬間―――――《ウインドフルーレ》は澄んだ金属音と共に、切っ先から柄に至るまでが粉々に砕け散った。

 

「な―――――!」

「え?」

「おや?」

 

 剣の破片………綺麗な銀色の欠片が舞い、空気に溶けるように散っていく。

 それを少しばかり眺めて、ようやく理解した。

 遠坂の愛剣《ウインドフルーレ》はたった今、目の前で消滅したのだ。

 ――――強化素材を大量に使用したにも関わらず。

 

「す……すみません! すみません! 手数料は全額お返しします! 本当にすみません!」

 

 ハンマーを放り投げ、ネズハは悲鳴のように謝りながら何度も頭を下げた。

 剣の持ち主……正確には剣の持ち主“だった”遠坂はというと……

 

「―――――」

 

 まるで敵を見るような目つきをしていた。

 鍛冶屋ネズハに無言のプレッシャーが襲いかかる。

 それに圧倒されたのか、ますます怯えるように謝罪するネズハ。

 先ほどのやり取りを知らない人が見れば、ちょっとしたイジメのように映るかもしれない。

 

「…………ねえ。今の、どういうこと。どうして武器は壊れたの?」

 

「えっと…………多分、強化失敗のペナルティ……だと、思います。元々、ペナルティは《素材ロスト》《プロパティチェンジ》《プロパティ減少》だけだったらしいですけど…………」

 

 このSAOというゲームにおける強化失敗のペナルティは、全部で三つあるらしい。

 一つは《素材ロスト》。

 強化に使用した素材のみが消滅し、武器には一切の変化が起きない現象。主観だが、これは三つのペナルティの中で一番軽い。

 次に、《プロパティチェンジ》。

 剣を強化する際、プレイヤーは『鋭さ』、『速さ』、『正確さ』、『重さ』、『丈夫さ』の中から一つを選び、素材を使って強化する。《プロパティチェンジ》とは、『鋭さ』を選んだはずなのに『速さ』が強化されてしまう、といった、全く別のステータスが強化されてしまう現象だ。

 いや、これは一概に強化とは言えないだろう。スピード重視のレイピアに余分な『重さ』が加わった結果、全体的な速度が落ちてしまい弱体化する、なんてことも有り得るからだ。

 最後は《プロパティ減少》。

 そもそも、武器にはそれぞれ《強化試行上限回数》というものが設定されている。これは、何回まで強化を試せるか、という回数のことだ。この回数を超えた瞬間、例外なく武器は消滅する。

 プロパティ減少とは、素材が消え、剣のステータスのどれか一つが弱体化し、さらに強化試行上限回数を一回分消費してしまう現象である。

 だが、所詮はそれだけだ。武器が消滅する、なんてペナルティは聞いたことがない。

 

「…………正式サービスで四つ目のペナルティ、《武器消滅》が追加された。そう言いたいのね、貴方は」

「はい……そうだと、思います。ウチも前に……同じことが、起こりましたので。きっと、確率はすごく低いんでしょうけど…………」

「―――――ふーん」

 

 ……遠坂?

 

「あの……本当にすいません。同じ武器をお返ししたいところなんですけど、《ウインドフルーレ》は今在庫がなくて……ランクは下がりますけど《アイアンレイピア》をお持ちになりますか……?」

 

 おずおずと、申し訳なさそうにネズハは言った。

 本来、強化失敗のリスクは頼んだ側―――――強化を依頼した遠坂が負うべきものだ。

 だから彼はそこまで腰を低くする必要はなく、代わりの品を提供しようとした分だけ、ネズハは良い鍛冶屋だと言えるだろう。

 そしてそれは、遠坂本人もよくわかっているはずなのだが―――――

 

「―――――」

 

 彼女はやはり、ネズハを睨んでいた。

 落胆しているのではない。

 まるで、その奥にある何か………いや、“誰か”を睨んでいるような―――――

 

「…………はあ。まあ、いいか。ここでアンタを懲らしめても意味は薄いし。とりあえずその剣、頂いてもいいかしら?」

「あ……はい。どうぞ」

 

 ネズハは両手で、丁寧に《アイアンレイピア》を渡した。

 遠坂は受け取ったあと、鞘から少しだけ刀身を抜き、確認する。

 

「……小細工はなし、と。どうやら本物みたいね。あと、手数料も返しなさい」

「はい」

 

 ネズハは手元でメニュー画面を操作する。

 

「……ん、こっちも問題ないわね。じゃ、精々頑張りなさい。いつまで続くか分からないけどね」

「え? あの、それってどういう――――」

「それは貴方が一番よく知っているでしょう。

 行くわよハクノ。その剣の強化、間違ってもこいつにだけは頼んじゃダメよ」

 

 そう捨て台詞を残し、遠坂は自分の腕を引っ張って無理矢理鍛冶屋を後にした。

 腕を引っ張られながら、最後に鍛冶屋を見る。

 その男―――――ネズハは目を見開き、驚いたように自分達を眺めていた。

 

 

 ◆

 

 

「チィィ、やられた!!」

 

 遠坂は怒りに任せ、鍛冶屋から譲ってもらった《アイアンレイピア》を抜き身のまま地面に叩きつけた。

 弾んだレイピアの刀身がギャイン!としなり、そのまま地面を滑る。

 どうやらかなりの力で叩きつけたらしい。今ので耐久値がそこそこ減少したかもしれない。

 

「まあまあ凛さん、少し落ち着いてください。

 そも、凛さんは剣士ではなく魔術師(ウィザード)じゃありませんか。

 魔術行使をごまかす理由が出来た今、剣なんて必要ないと思いますよ?」 

「そういう問題じゃない!

 重要なのは、あのネズハとかいう鍛冶屋に一本取られたってところよ!!

 くっ……完全に油断してたわ」

 

 ブツブツと愚痴を垂れる遠坂。

 どうやら先程の鍛冶屋についてのようだが……

 

「もしかして、何かインチキでも働いてたのか?」

「……分からない。

 あれがインチキなのか、それとも何かのスキルの応用なのか。

 けど、あの男が“何かをやった”ってことだけは確実よ」

「確実?」

「そう、確実。

 岸波くん。どうして私があいつ……ネズハって男に強化を依頼したか、分かる?」

「んー……」

 

 強化を依頼した理由、か。

 初めての鍛冶プレイヤーだから……では、ないだろう。

 興味があるだけなら、離れたところで見物していればいい話だからだ。

 強化には少なからずモンスターの素材を使用する。

 当然それは、売れば金になる。

 所持金(そざい)が無駄になる可能性がある以上、拝金主義者(とおさか)が見知らぬ相手に軽い理由で武器強化を依頼するはずがない。

 

「ねえ岸波くん。今、とっても失礼なこと考えなかった?」

 

 凶器のような視線が胸に刺さる。

 相変わらず、遠坂は勘が鋭い。

 

「…………ごほん。いや、何も」

「そ。ならいいけど。

 じゃあ、キャスターは分かる?」

「えーと……そうですねぇ……」

 

 むー、とキャスターが唸る。

 数秒後、諦めたように彼女は口を開いた。

 

「拝金主義な凛さんがホイホイ博打をするとは思えませんし、やっぱり前情報があったのでは?」

「あ」

「…………随分とまあ、はっきり言ってくれるわね。岸波くんと違って」

 

 キャスターがあまりにも直球だったので、つい間抜けな声が出てしまった。

 ……というか遠坂、『岸波くんと違って』とは何だ。

 それだとまるで、自分が遠坂凛のことを金の亡者だと思っているみたいじゃないか!

 

 ……なんてことを冗談でも口走るとガンドが飛んでくるので、黙っていることにする。

 

「でも、正解よ。

 “ネズハのスミスショップ”。一層のころから“腕がいいプレイヤー鍛冶屋”として、少し有名だったのよ。

 けど、あれだけの素材をつぎ込んだはずなのに《ウインドフルーレ》の強化に失敗した。

 成功率九十パーセント以上だったはずなのに、腕のいい鍛冶屋のはずなのに、失敗したのよ。これはもう、絶対何かあるに決まってる」

「………………」

 

 成功率九十パーセント。

 つまり、失敗する確率は十パーセントか。

 ……その、なんというか。

 十パーセントもあれば充分だ、なんて思ってしまう自分は、感覚が狂ってるんだろうなぁ。

 

「はぁ…………でも、過ぎたことをうだうだ言っても仕方ないわね。

 いつかあの男には徹底的に仕返しするつもりだけど、今はいいわ。

 それに、いい機会でもあるし」

「機会、とは?」

「ちょっとね。ま、ついてくればわかるわ」

「?」

 

 キャスターと一緒に首を傾げる。

 とはいえ、遠坂が何を考えているかわかるはずもない。

 ついて来ると確信しつつ歩を進める遠坂の背中を、急ぎ足で追いかけるしかなかった。

 

 

 ◆

 

 

 場所は全体マップの東の端。一際高くそびえる岩山の頂上。周囲は岩壁にぐるりと囲まれており、中央に泉と一本の樹、そして小屋がある。

 遠坂が言うには、ここでエクストラスキル《体術》を習得できるらしい。

 

「………ここか?」

 

「そう、ここ。《鼠》のアルゴからの情報だから、信用していいと思うわ」

 

 アルゴとは《鼠》の異名を持つ女性のことだ。元ベータテスターだったらしく、その知識を活かして情報屋というものを営んでいる。

 何を隠そう、第一層フロアボスの攻略本も彼女からのもので、その節はとても世話になった。

 一部例外はあったが基本的な動作は全て攻略本通りだったので、彼女の情報なら信じてもいいはずだ。

 

「じゃあ、遠坂はこれから《体術》を習得するのか」

「そういうこと。それで、その間貴方達二人にやってもらいたい事があるの」

 

 やってもらいたい事……?

 一体何だろうか。

 まあ、遠坂には随分前から世話になってるし、多少の頼みなら………

 

「一回教会に行ってきて欲しいのよ。綺礼からサーヴァントについて情報が得られないか、探って来て。」

「…………ああ、分かった」

 

 それくらいなら問題はない。

 転移門が開通した今、《ウルバス》と《はじまりの街》は繋がっているからだ。

 

「で、他には?」

「え? 他?」

 

 遠坂は不思議そうに首を傾げた。

 ……おかしい。どうしてそこでそんな顔をするのだ。

 やるからには徹底的に。それが遠坂凛の信条のはずだ。

 

「ほら、例えば、《ウインドフルーレ》に代わる新しい武器を用意して欲しいとか…………ネズハのスミスショップの秘密を暴け、とか」

 

 現時点では後者は完全に言いがかりである。

 それでも痛い目を見たからには、遠坂なら何かしら調査をするだろう。

 そして万が一トリックによる詐欺だった場合、ネズハさんがヤバイ。

 

「ああ、別にいいわよ。それくらいは自分でやるわ。

 …………特に、後者はわたしがやらなきゃ意味ないもの。

 でも強いて言うなら、《体術》スキルの熟練度上げにちょっと付き合って欲しいかな」

「そのくらいなら別に構わないけど……」

「そ、ありがと。じゃあ行ってくるわ。教会の件、ヨロシク」

 

 そう言って遠坂は、小屋へと足を踏み入れた。

 

 

 ―――――これがまさか数日単位で時間が掛かるクエストだとは、この時の自分達は思ってもいなかった。

 ―――――プレイヤー『Rin』が次にフィールドを歩くのは、三日ほど先の話である。

 


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