ジャミトフに転生してしまったので、予定を変えてみる【完】   作:ノイラーテム

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収束する運命

●世界を動かす感情

 地球絶対防衛線にて静止する船があった。

そこでは地表に向けて移動するコロニーを尻目に、優雅なひと時が行われている。

軽食を取りながらのボードゲーム、まさに貴族的な会合だった。

 

その一席に座るマイッツアー・ロナは目の前の男を恐るべきモノとして捉えていた。

動くなというメラニー・ヒュー・カーバインからの干渉。そしてジャミトフ・ハイマンからの漂流者捜索要請。両者を相手取りながら、巧みに舌先だけで乗り切ったのだ。

 

「……しかし、こんなにノンビリして居ても大丈夫なのでしょうか?」

「問題ないさ。紳士とは動かざる時に動かず、動くべき時には躊躇わずに動くべきものだ。単に今は時の経過を楽しむだけだよ」

 自分の手番を終えたグリーン・ワイアットはカードを伏せ、クラッカーの上にレバー・パテを塗った。先ほどはアンチョビかサーディンだったと思うが、良くこの状況でボードゲームに食事にと愉しめるものだ。いよいよもって肝の太さが違うらしい。

 

「マイッツアー君。歴史上で人を最も動かして来た感情を知っているかね?」

「いえ、寡聞にして聞いた覚えは……。憎しみでしょうか」

 会話の流れから違うと確信していたが、白紙回答だけは避けておいた。

 

「それはね、愛だよ。

人は誰も愛のために戦う。家族愛・隣人愛・愛国心……ああ、信仰心もまた愛だ」

 言われてみると判る気がする。

確かに愛に比べれば憎しみなど一時の感情。あるいは愛の逆転現象でしかない。愛を奪われたから、愛を手に入れられないから憎むのだ。

 

少なくともメラニーもデラーズもシーマ艦隊もそうだろう。

そしてマイッツアー自身もまた、その愛ゆえの行動を『つい最近』見たばかりだ。

 

「その日暮らしであるはずの『彼ら』があれほど積極的に動くとは思いませんでした。そこまで見通されておられるのでしょうか」

「ははは。それこそ人の心を操るジャミトフ君の仕業さ。私はそれを知っていたに過ぎない」

 先の漂流者捜索を兼ねた観艦式に際して、操縦を覚えて作業していた移民者たちまでが協力を申し出た。彼らにも見学者という配役で捜索に協力してもらっていたのだが……。

 

その移民者によるデブリ業者を使って、マイッツアーは秘かに暗躍していた。

全てはコロニーを止める為であり、その成果をもって彼らへの指揮権を得る為である。それを見透かされているわけだが、不思議と気分は悪くない。

 

「このゲームは宇宙開拓物だが、妙に今の時代にマッチしていると思わないかね?」

「ですが、これは数年間から……まさか!?」

 ガノタの開拓者。

昔からある開拓物ゲームの一つで、資源を生産してコロニーや航路を繋いでいくシンプルなゲームだ。

 

最近になって人気が出てきたが、発売自体はずっと前から出ている。

つまり宇宙開拓時代を築くために、打てる手は何でも打っている。移民者が宇宙開拓に賛同するような風潮造りから、その技術的・経済的な土壌まで無数に用意してきたのだろう。

 

「まさかコロニーの動きまで計算の内という事ですか? ですが火星方面はともかく……さすがにこちらの静止までは違うのでは……」

 マイッツアーもようやく太陽路に向かったコロニー、そしてシーマ艦隊の動きを把握した。

マハル出身者とも顔を合わせたことがあり、海兵隊の悲哀は以前から知っている。だからこそ火星方面に向かった方は理解が可能だった。そして何より、完全循環型コロニーは火星こそ必要な物だ。

 

それが狙い通りだとすれば確かに恐ろしい。だが、地球方面に向かった方は利用しようがない。

マイッツアーが手を回さなければ、そのまま地球に落ちかねない。まさかとは思うが、自分もまた思考誘導されているのだろうか?

 

「マイッツアー君。覚えておくと良い。カードゲームではね、必ずしも最上級の手札が交換相手にとって最も欲しい札とは限らないんだ」

 理想を言えばコリニー閥なりジャミトフ自身の利益に成ればよいのだろう。

事実、火星方面ではそうなっている。だが、地球方面まで最大利益を求めるのは欲張りすぎだ。

 

メラニーがイカサマもできる大富豪のギャンブラーだとするならば……。ジャミトフはカジノのオーナーである。

そもそも戦い方が違っていて当然だし、ジャミトフから見れば、カジノに新しいプレイヤーが登場しても良いのだろう。あるいは……メラニーのイカサマがバレるのを待っているのかもしれない。

 

「状況は飲み込めました。しかし……それならばこの状況、どうやって鎮めるのでしょうか」

「どこも血だらけで振り上げた腕を下ろせないでいるからね。まあ、それこそジャミトフ君の手腕を見せてもらうとしようか」

 地球はまだ良い。

コロニーの落下さえ食い止めてしまえば、後はデラーズを討伐するなり降伏させればよい。それこそ消耗しきったジオン残党を解体して国軍に吸収させればよいのだ。バスク等もはやどうでも良い。

 

しかし火星方面はまるで異なる。

シーマ艦隊はマハルを欲しがるだろうし、テロリストに利益をくれてやるのはタブーでしかない。万が一、アクシズにでも奪われたら火星に独立国家でも作られかねなかった。

 

そして現在進行形で双方に死人が出ているはずだ。

その恨みを抑えて巧みな交渉などできるのだろうか?

 

 

「しかし、納得がいきません!」

「しかしも案山子もない。軍人ならば命令に従え。……一番悔しいのは御兄さんの寿命を削られたアイナだぞ」

 コウ・ウラキが合流して内部の状況を伝えた時点では、暫く手出し無用と方針が決まった。

ちょうどアクシズ先遣艦隊が見つかったので、先にそちらを叩け。その間にソーラレイ側の動きを待つことになっていたのだ。

 

丁度その頃はまだ移動中のコロニーが加速しておらず、悠長に話し合っていられた段階だ。

だからこそシロー・アマダも妻の名前を利用して黙らせることを、恥として自分を抑えていた。本音を言えば、故郷を殲滅した海兵隊を許せるはずがない。

 

「ウラキ! そこまでにしとけ。アマダの奴が困ってんだろうに」

「「ヤザン大尉!!」

 コロンブス改にヤザン・ゲーブル達が乗り込んで来る。

バイザーを上げたヘルメットを斜に持ち、ゾロゾロと旗下のパイロットたちが続く。

 

「悪ぃな。もう少し早く来れば違ったんだろうが、ちょいとペズンで装備の受領に手間取ってな」

「ペズン?」

「ジオンの兵器工廠がある小惑星でエックス計画の本拠地だよ。プロメテウスが租借しているけどね」

 ジオン時代は没案になったモビルスーツからデータフィードバックを行っていた。

それは表向きの事であり、開発ナンバーを誤魔化して色々な研究開発を行っていたという。

 

大戦末期にはア・バオア・クーに拠点を移しており、その重要性は陰から陰に消えた。

ジャミトフはそこの技術は接収せず、小惑星も表向きの交渉対象には挙げなかった。全てはそこで、プロメテウスの技術を秘密裏に開発。同時にジオンの反骨心を抑えるために見逃していたのである。

 

「じゃあ、もしかして!」

「そうだ。ジム・カスタムは完全な形に仕上がってるぞ」

 大戦中に実証された技術を総決算したのがジム改。

開発中だった技術を含めて導入されたのがジム・カスタムにあたる。

 

しかしソレは内面の事に過ぎない。

意欲的な装備を備えることで、将来への不安に対処するのが本来の形である。これにコーウェン少将が行っているMK-Ⅱ計画による、内部構造まで考慮したものがゼク・アインであった。

(エックスという文字をアルファベットの十に読み替え、ドイツ語に直すとゼクス・アイン)

 

「一戦してアクシズを押し返し、連中が立て直している間にソーラレイに対処する。ウラキ、お前は俺のバックアップに付け」

「了解であります!」

 詭弁といえば詭弁である。

海兵隊を放置するのとどこが違うのか? だがヤザンならば両方に対処できてしまえそうではないか。コウはすっかりその気だしエースばかりの集団が加わったのだ、実際に可能であろう。

 

「助かりました。自分ではウラキ少尉を。いえ、自分を抑えられるか判りませんでしたので」

「まっ、そいつはお互い様だな。ところで俺たち二人が揃ったんだ、アレの出番だろ」

 シローは恨みであり、ヤザンは戦意という違いはあった。

だが異なる思想が混じり合う事で、お互いへの理解が道を譲り合う。目の前の海兵隊を討つならシローに任せるべきだし、ならアクシズを先にすれば良いかと切り替えられるのがヤザンである。

 

「これですね。……この状況まで開封するなということでしたが」

「この状況をまとめるようなアイデアって本当にあんのかね? 案外、的外れなことでも書いてあるんじゃねーのか?」

 シローが取り出したのは今時珍しい絹製の袋だ。

ソーラレイに何かあった時に、複数名の幹部が揃ったときのみに開封せよと指示されていた。

 

「では……まさか」

「なん……だと」

 そこには指示などなく、ただ一人の名前が書いてあったのである。

 

●作戦名はジャンヌ・ダルク

 加速を始めたコロニーより異形の化け物が出陣する。

港部分からにょっきりと顔を出したのは、朱色に塗装された三角形。その面積一杯に巨大なモノアイが躍る。

 

「あれはMA-05(ビグロ)? モビルアーマーが今更だと?」

「いや、違うぞ。まだ出てくる……」

 宇宙空間であるというのに、ズズズ……と音がしそうなほどの重量感。

おかしい、ビグロは高機動が売り物で、出すなら最初から出しておくべきなのに……と訝しんだ時。ようやくその全貌が明らかになる。

 

「なんだ? ビグロは何機連れているんだ? くそっ、ここで増援の投入とは……」

「違うぞ! 後ろは手下でもなんでもない。……あいつは恐ろしく、でかいんだ!!」

 よくよく見れば、出てきたのは港は港でも艦船が停泊するための宇宙港だった。

モビルアーマーを出すのであれば、もっと別の場所から出す方が奇襲になるだろう。つまりこいつは艦船並みに巨大なのである!

 

全貌を現したのは、ビグロを頭として使用した巨大モビルアーマー。

もはや艦船を建造した方が早いのではないかと思うような代物である。その出撃を守ろうとコロニーを守っていたゲルググが周囲に取りついていく。

 

『あの女をジャンヌ・ダルクに仕立てあげる! 公国の命運はこの一戦にあり、貴様らみなここで死ね!』

『『イエス、マイ・ロード!!』』

 最初から最後まで、シーマ・ガラハウという女をしゃぶりつくす気でいた。

一部の権力者に翻弄された哀れな存在。そう喧伝することで、海兵隊のみならずジオンそのものが利用されていたことにする。

 

ならば徹底的にシーマは哀れでなくてはいけない。

救いようがない程に叩かれ、自分たちの悪辣さが広まれば広まるほどに、権力者という悪。そして戦争という悲惨さは拡大するだろう。

 

都合の良い絶対悪があれば人はそれを信じたくなるものであり、シーマ達の影に隠れて真の作戦は進行する。新たな宇宙時代の為に、そしてサイド3で受注される、完全循環型コロニーの建設ラッシュが、滅びゆくジオン経済とその権威を復興させるだろう。

 

『だから後の時代に残せぬモノをみな連れて来た……。後は頼むぞシーマ』

 キメラはサブ・モニターに映し出された気色の悪い光景に目を移した。

そこには無数の少女たちが機械に繋がれている。それは戦闘ポッドに対して、小型のモビルアーマークラスの性能を持たせた歪な機体である。

 

アナハイムの技術で作り直され、元のオッゴなど欠片も残ってはいない。

彼女たちを最後のパーツとして運用するシステム面でも、機体の歪な性能から行っても一日も保つことはないだろう。

 

『ビグラングⅡ! 共に散り華を咲かせましょう!』

 キメラは無数のサブカメラをキーボード代わりに直接命令を書き込んでいく。

その姿はまるでシンセサイザーを演奏するかのようであった。

 

 

 これに対して迎撃を始める地球連邦軍。

加速するコロニーを止めようと必死なのに、巨大モビルアーマーが割って入ったのである。

 

「か、艦砲射撃が弾かれます! あれはバリアー?」

「いや、I・フィールドか!?」

『そうだ! この機体、止められるものならば止めてみせよ!』

 朱色の巨体が突如として金色に輝くと、メガ粒子砲が相殺されていく。

もちろんビーム攪乱幕も併用しているから金色に変わるのだが、この場合は大して差はあるまい。

 

「くそっ! ビームライフルが通じない……う、うわわああ!?」

『我らも忘れていては困るぞ!』

 周囲を固めるのは一騎当千の親衛軍。

残り五機が雑兵五千に相当、ビグラングⅡが万夫不当であれば一万五千は必要である。

 

主力であるビームライフルを無効化され、拡散砲に加えて精鋭の護衛を連れている。

もはやその辺りのレベルでは相手にならず、最低でも切り込み隊長級、できればエースが戦場に立つための最低条件だった。

 

「ジムライフルを持った機体が前衛にあたれ! ビームライフルしかない機体は取り巻きを近寄らせるな!」

「ですがここでコロニーの足を止めなければ……」

「くっ。せめてアマダ大尉たちのプロメテウス隊が居ればっ」

 予備隊のエックスワンは大型マシンガンやガトリング砲主体の第三種兵装だ。

火力的にも残弾的にも余裕があるはずだが、残念ながらアクシズ先遣艦隊を抑えに行っていた。

 

だが、第三種兵装は長期戦に備えた装備でもある。

艦隊を止めた後で、こちらに戻ってくるほどのスピードは見込めなかった。

 

「おーっと! 間に合ったようだなあ! こいつは俺たちに任せな!」

「ヤザン大尉!? すみません。お任せします!」

「コロニーの進路を変えるための角度を再計算しろ! オレたちで止める!」

 そこへ駆けつけたのがヤザン率いるジム・カスタム隊である。

高速機動用の第一種兵装を参考にしているが、ペズンからこちらに来る前に、長距離移動ユニットを伴っていた。

 

「相手は手練れだ、誘爆が怖い。プロペラントを切り離せ!」

「了解っ。どのみち短期決戦だからな!」

 通常、プロペラントタンクは切り離して戦闘するのが通例である。

燃料が詰まっているので当然の処置だが、ヤザン率いる精鋭部隊は全員が切り離さずにアクシズ側と戦うことができる腕前と狂気を持っていた。

 

それゆえに燃料を犠牲に戻ってこれたのだが、彼らをして親衛軍はキツイと見たのだろう。

そしてビグラングⅡが戦闘ポッドを切り離して戦線に投入したことで、ヤザンのカンは見事に的中する。

 

『戦闘行動予測。ターゲットロッ……回避機動へ』

「もらった! っ何? だがしかし!」

 戦闘ポッドはジム・ライフルの射程に入った瞬間に咄嗟に回避機動を掛けた。

同時に数機のポッドがビーム・スプレーガンを発射。ヤザンはバックパックの下部バインダーを動かして軌道を斜めに変える。

 

それを見越したかのように弾幕の嵐が迫る。

時間差で放たれたMMPが四方八方から迫るのだが……。

 

「なんとお!」

 バックパック上部に設置された二本のサブ・スラスターが火を噴いた。

噛みしめた奥歯が砕けかねないほど、さらなる急加速で脱出! そのままライフルを連射して統制射撃を防ぐことに成功する。

 

「ったく。俺がやりたいことを先にやられるとやだねえ。……しかし、ちょいと綺麗過ぎるな」

 敵は戦闘ポッドだというのに、自分がボールで苦労した時より高性能だ。

凄まじい機動を掛け連射しているのに、どうしてか弾丸が尽きない。

 

そして何より、ヤザン自身が理想とした高機動戦闘中での連携を(こな)しているのである。

 

「あのデカブツが補給艦と指揮所を兼ねてるわけだ。ついでに連中の正体も見えて来たな」

 戦闘ポッドは凄まじい勢いで戦っているが、不思議と全機が同時に行動していない。

何機かが動かないのは大型機の護衛なのかと思ったが、良く見るとその陰で何かしている。

 

となれば補給をしているくらいは理解できるし、あの巨体はそのための物なのだろう。そして相手の動きが理想的なのであれば、それを何より望むヤザンにとっては想定するのは容易かった。

 

「さてと、リベンジと行こうじゃないの。今度はこっちから行くぜ!!」

 ヤザンのジム・カスタムが唸りを上げる。

背部のメインスラスターが咆哮を上げ、途中からは下部のバインダーが『片方』だけ小刻みに動いでジグザグに動くための反動を起こし始めた。

 

『散開! ランダム回避』

『ランダム回避。立て直して射撃を行います』

 ビグラングⅡからの指示で戦闘ポッドが散開。

ジム・ライフルを避ける為、急加速を掛けながら右手のビームスプレーガンと左手のMMPマシンガンを広角に構えた。

 

そしてヤザンが居るべき場所に向けて、僚機と共に統制射撃を掛けた時。

唐突に、その一部が爆発したのだ。

 

「バーカ。教科書通りじゃ長生きできねーぞ! ちっ。セイガク(学徒兵)どもを戦場に引き込みやがって」

 ヤザンはライフルからバズーカに構え直し、片手射撃で反動を無視して拡散弾頭を放ったのである。

 

片手射撃で大物を扱っても当たるものではないが、それが拡散弾頭であれば話は別だ。

ミサイルを撃ち落とすための散弾がバラまかれ、その一部に被弾したのである。

 

「お次はこいつだ。絡繰りを見抜けるかな?」

『接近、回避。情報共有を開始』

 ヤザンはバズーカを捨ててジム・ライフルを握り直すと最接近のために加速した。

途中でサーベルを抜いて切り込むと、敵はそれを巧みに避けていく。お互いに位置を入れ替えながら暫くグルグルと牽制と攻撃を繰り返した。

 

どうやら光信号を使って情報を共有し、別の機体が白兵戦の準備を伝えたのである。

だが……。

 

「甘いんだよ!」

『回避成……爆発?』

 ヤザンの射撃で、唐突に爆発が起こった。

それも先ほどよりも大きな爆発で、どうみても散弾に巻き込まれた風情ではない。

 

『途中で捨てていった武装よ! あんな物に命中させるなんて……』

 コロニーを守る為、そして位置を変えなかったキメラには何とか理解ができた。

ヤザンはバズーカの信管を接触式で起動させた後、放り投げて地雷の代わりに利用したのだ。もちろんそれが運良く命中するはずはない、巻き込める位置に入った時にライフルを連射して爆破したのだ。

 

「そろそろ攪乱幕も品切れで、I・フィールド回せるエネルギーなんざのこってねーだろ?」

『そうね。だけれども時間切れよ。コロニーが最終防衛線に入るわ』

 ビグラングⅡで最初から戦わなかったのは、単純にエネルギーの問題だった。

もちろん普通に戦うなら問題ないが、I・フィールドを広域に展開しながら戦うことなどできない。ましてや戦闘ポッドのエネルギーを補充しながらだと尚更である。

 

しかし、キメラにも焦りはあった。

この期に及んでもシーマ艦隊は動かない。中に居たアナハイムの技術者はとうに逃げ出すか、始末している。

 

本気で当てようとしなければ世論は動かせないが、本当に当ててしまうとジオンも困るのだ。

この期に及んでまだ悩むのか? それともシーマ艦隊の買収に失敗したのか? 

 

そう思った時に、戦場を貫く勢いで箒星のようなナニカがやって来た!

 

「リミッター・ツー解放。続いてリミッター・スリー! いくぜいくぜ、イーヤッホー!!」

『モビルアーマーの増援? 今更!?』

 やって来たのはアッシマーだ。

今更たった一機で何ができるというのか?

 

だがしかし、ヤザンとシローには、この状況を何とかできる確信があった。

ジャミトフが持たせた袋には、とある名前を書き込んだ一枚の紙があったのである。

 

「来てくれたか!」

「ヴェルナー・ホルバイン。ただいま参上!!(エントリー)




 という訳で、最後に誰かが話を持っていきました。
悲壮な覚悟とか持ってる人もいましたが、洗い流す勢いのノリです。

地球方面のコロニーはワイアットさんと、マイッツアーくんの手で止まります。
まあデラーズもそれを見越して、放り投げただけというのが正しいのですが。

一方で火星方面もマッチポンプで解決する予定。
問題はそれを受け入れられる度量が、シーマ様にあるかなのです。
それを含めて、序盤の会話は三国志 + ジャイアントロボ風味。

●今週のメカ
『ビグラングⅡ』
 ジオン独立戦争末期に、戦闘ポッドとは名ばかりのオッゴを支援する為……。
巨大モビルアーマーとして投入される予定だった機体。
それを連邦が接収し、旧レビル閥から渡される過程で消去された。
もちろんアナハイムがモビルスーツ開発接収のために旧アナハイムはア・バオア・クー工廠のスタッフに働きかけた結果であり、この機体は、ソレを現在の技術で作り直したものである。

無数のメガ粒子砲に加えてI・フィールドを搭載し、ビーム攪乱幕を併用して張り続けることで艦隊射撃すら無効化する。
とはいえ戦闘ポッドの補給もやってるとエネルギーが直ぐに尽きるので、最初からは戦っていなかった。

『オッゴⅡ』
 戦闘ポッドとは名ばかりのオッゴを最新技術で製造し直したもの。
ビグラングとは違って、こちらはほとんど新規パーツになっている。
中にはアナハイム経由で強化人間の試作型が封入されており、恐るべき戦闘力を誇る。
なお装備はビーム・スプレーガンとMMP-80マシンガンのみで、ドラッツエの強化版でしかない。

『ジム・カスタム』ゼク・アイン試験装備。
 エックス・ワンで開発された第一種兵装をジム・カスタムに合わせて設置している。
これは背中に大型スラスターを背負い、上部にサブすらスター二基。
下部に稼働型バインダー二枚を備え、フレキシブルな軌道を実現させた装備である。

感覚的にはガンダムMK-Ⅱやハイザックのバックパックに、百式のバインダーを付けた物。
これにプロペラントタンクをあちこちにくっつけたりできる。
(バックパックが戦闘機で、中身のジムは運ばれているともいえるが)

・キメラと強化人間たち。
少女漫画ピグマリオにおける最終シーズンに入る手前、門番であるキメラ隊。
そして当然のことながら、イグルーにおけるビグラングとオッゴをオマージュしている。
なお学徒兵がいても役に立たないので、まだ試作品に過ぎない強化人間を根こそぎ使って、それ以上の開発ができないようにした。

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