PARALLEL WHITE ALBUM2(仮題)   作:双葉寛之

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3日ぶりでしょうか……。
確かに忙しいということもありますが、最近文字数を上手く収めることが……。


EPISODE:18

「あれ……」

 

「おはよう! 拓未くん、やっぱり起きるの早かったね!」

 

「お、おう。おはよう雪菜。

 ……お前こそ、何でこんなに早く起きてるんだ?」

 

「見てわからないかなー。朝ごはんの支度してるんだよ」

 

 合宿2日目の日曜日。皆が起きてくる前に朝食をつくろうと一番に起床したと思った拓未だが、キッチンには既に雪菜が立っていた。

 

 昨晩、拓未が鍋につけておいた煮干しを出汁に味噌汁を作る雪菜。ウチは昆布出汁なんだけどなぁとボヤキながら味噌を溶いている。

 

 

「拓未くん、こういうね、料理とかってのは女の子に任せるべきだよ?

 料理出来る男の子ってのも確かにポイント高いけどさ、女の子に活躍する機会を与えてあげるっていう器量も大事なんだからねっ」

 

 手際よく溶き終わると、手を休めること無くグリルを開けて鮭の切り身の焼き加減を確認する。

 テキパキと効率よく動く雪菜。心なしかいつもよりテンションが高い気がする。

 

 

「ねぇ昨日買った納豆だけどさ、6個しかないよ? 一人分足らないんだけど」

 

「あぁ、かずさが納豆嫌いっていうから、6個でいいんだ。代わりのミニ豆腐を頼む」

 

「っ。……そっか。そういうことまで知ってるんだ」

 

「んー、何?」

 

「なんでもない! それよりもうご飯炊きあがっちゃうよ。皆起きるの遅いなぁ。

 拓未くん、そろそろ起こしてきて!」

 

「あ、あぁ……そうするよ」

 

 朝飯、任せっきりで悪いな。そう言い残してリビングを後にする。

 何だか雪菜がおかしい。

 明るい声を出しているが、肩が強張っていた気がする。

 そして何より笑顔を見ていない。

 

 いいや、それだけじゃない。

 

 

 雪菜はキッチンに向かいっきり、一度も自分を振り返らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあー、さすが雪菜。女の子してるよねぇ」

 

「もう、依緒ったら。出汁は昨夜拓未くんがとってたし、炊飯器はタイマーだし。

 わたしがしたのは、豆腐を切ってわかめと一緒にお味噌汁に入れたのと、鮭の切り身だって焼いただけだよ」

 

「いやぁ、雪菜ちゃんが準備をしてくれたってのが感激なんだよ。

 野郎が準備したご飯なんて少しも嬉しくないし! ――旨かったけど……」

 

「ふぁぁ……。いい匂い~。

 あ、朝ごはんだー。小木曽さん、私ご飯は大盛りがいいなぁ」

 

「小木曽、ありがとう。……瀬能も少しは小木曽を見習えよな」

 

「あらぁ? いいじゃない、役割分担ってやつだよ。

 私は食べる係っ。

 そして……春希を満足させてあげる係かなぁ? ――はいっじゃあ鮭貰うね」

 

「だぁっ! お前はいちいち身体で払うな!」

 

「あんた達。朝くらい静かにしてよ……」

 

 

 騒がしい朝。広い冬馬邸だが、さすがにダイニングに全員収まるのは厳しく。半分がダイニングに、残りがリビングのローテーブルに陣取る。

 

 かずさは皆と賑やかに過ごす朝というのは小学校中学校の行事以外では初めての体験で、あまりの騒々しさに面食らってはいるが、それでも心なしか嬉しそうではある。

 

 鮭には既に塩味が付いているのに醤油を垂らすのは塩分の摂取過多になりかねないと武也に説教を始める春希。

 いの一番に茶碗を空けおかわりをねだる千晶。

 席を立とうとする雪菜に自分がするから座っててと代わりに立ち上がる依緒。

 

 

 賑やかである。賑やかではあるが違和感を覚える。

 雪菜と何度か目が合ったが、彼女の目は赤く腫れていたように思える。

 

 やっぱり雪菜に何かあったのだろうか。そんな考えを抱く拓未は周囲の騒ぎに混じることが出来ないでいた。

 

 

「ねぇ、小木曽。眼が赤いけどどうしたの?」

 

「え。そうだね、私だけ腫れてるみたいだね。

 おかしいなぁ、夜更かししたのは皆同じなのにね」

 

 同じく目の腫れに気付いたかずさが雪菜に問うも、それは夜更かしのせいだと告げる。

 パジャマパーティなんて久しぶりだったから、とっても楽しかったね!とかずさに笑顔を向ける雪菜。

 

 

 やはり自分の気のせいなのか?

 女の子同士で過ごした夜のことを笑いながら話すのに、涙で目を腫らす理由があるわけがない。

 きっと深く考えすぎなのだろう。

 どうにも雪菜の事になると余裕がなくなっていけない。

 拓未はついつい心配してしまう自分の気持ちを味噌汁と一緒に飲み込んでしまおうと汁椀に手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 全く練習してこなかった”Feeling Heart”を必死に覚えようと、昨夜も夜遅くまで――それでもここ数日の中では比較的早めに寝ることが出来たが、地下スタジオで取り組んでいた春希。

 他の2曲とは違ってこの曲はAメロが極端に難しかった。春希にとってはAメロがずっとソロみたいなものだ。

 軽快に単音弾きするのは初めての経験で、ウラを取るところが再び掴みづらい。

 

 深夜特有のハイテンションも相俟って、拓未がまた身体を張ってリズムを教え込もうとしたのを自暴自棄気味に付き合ったおかげか、朝には朧気だが弾けるようになっていた。

 

 

「やっぱり調子悪いみたいだね、北原何かした?」

 

 淡々とかずさが指摘する。やはり一夜漬けで覚えただけでは出来が悪いのか。

 確かに自分のせいだろう、昨日よりも雪菜は歌いにくそうな雰囲気ではあった。音楽に対しては非常に敏感なかずさのそのセンスは流石だと春希は改めて感心する。

 

「やっぱり、一晩で覚えようたってそう上手くは行かないか」

 

「誰がお前の事を言った。北原が一番下手くそなのは最初からわかっていることでしょ。

 むしろ今日のお前に関しては調子がいいくらいなんだけど。

 ――いや、わかってないならいいんだ」

 

 自分が悪いのでないのなら、何が悪いって言うんだろう。いまいち要領の得ないかずさのその言葉が春希には何を指しているのかよくわからなかった。

 

 

「なぁ……北原。お前やっぱカタいよな。どうにかなんないか、ソレ」

 

「俺がお堅いって言われるのは今に始まったことじゃないだろ、浅倉」

 

「いや誰もお前の性格とか話してねぇよ。お前のギターの弾き方の話してるんだっつの。

 ストロークが固すぎて全然音に艶が出てねぇ。

 飯塚もだいぶマシだがまだ固い。

 観客を沸かす前に自分のギターを悦ばせないと話になんねぇぞ」

 

「よろこばす?」

 

 自分のフォームのぎこちなさを指摘する拓未に理解が追いつかない春希。

 よろこばすってなんだ。ギターをよろこばす?

 自分のぎこちなさと拓未の綺麗な手の動き。そこにあるのは上手か下手か。慣れてるかそうじゃないか。それだけの違いではないのだろうか?

 お前の言ってることがわからないよ、といった顔で拓未に応える春希。

 

「んー、わかんないか。

 北原。お前さ、改めて聞くまでもないって感じだが……女、抱いたことないだろ?」

 

 

「んあ!?」

 

 ブフッと変な音を出して噴き出すかずさ、依緒。

 一体コイツはいきなり何を言い出すんだ。武也だってフォローに困っているじゃないか。

 

 指摘されたように春希にそういった経験はない。

 18歳を迎えている自分。いわゆるやらずの二十歳(ヤラハタ)までもう2年を切っている。

 今まで意識したことがないので特段それに負い目を感じていないが、改めて指摘されると何故だか自分が大きな損をしたような、もしかして俺の人生、ダメなんじゃなかろうか。そんな気分にさせられる。

 

 後ろから千晶の笑いを押し殺し切れていない声が聞こえる。

 普通なら馬鹿にされたと思うだろうがその声がきっかけで、ともすれば泣きながらこの場を去ってしまうに至りそうだった思考の悪循環に陥った春希を救う。

 そうだ、何故自分がここで赤裸々に自分の女性体験を打ち明けさせられそうになっているのだ、と。

 そもそも浅倉にそんな話をする程俺は親しくない、と。

 

 

「あ、いや……悪い。

 別に北原が音楽センスがないのは童貞をこじらせた結果だと言ってるわけじゃなくてだな……」

 

 今度こそ笑いを堪え切れないかずさと依緒。千晶は既に限界を迎え、スタジオに併設してあるソファーに転げまわっている。

 最悪だ……。天上のスポット照明が自分の顔を照らして熱くしているのを強く感じる。

 

 あぁ……この光は……これは憎しみの光だ。

 

 

「まてまて! 瞳のハイライトを消すな!

 俺がいいたいのは、ギターを女性に例えるヤツがいるけど、それは別に間違っちゃいない。

 言ってみればギターってのは艶やかな音を出すにはエロく弾かなくちゃなんねぇってことだ。

 ガツガツと弾いたら硬い音しか出ない。

 魅了する音を出したいなら、優しく撫でてやるんだよ」

 

 

 そう言いながら拓未は雪菜の前に立つ。

 左手で雪菜の後ろ髪を撫で、右手はこめかみから顎先までをなぞる。

 キスを促すような、女性を燃え上がらせるような愛撫だった。

 

 雪菜の頬が朱に染まる。今朝から腫ればっていた瞳も潤みを出す。

 どこかぼぅっとぼやけたような表情を向ける雪菜。

 少し前まで趣味の悪い髪型のイメージが強かった拓未だが……髪をアップにした時に可愛いと評されるように、切れ長の目で割りと整った顔つきで、それこそ化粧をすれば女形でも出来るのではないかといった印象がある。

 彼女の視界にはそんな拓未しか映っていない。

 

 なんだ、このムードは。学園のアイドルがこんな顔を見せるのか?

 指先の動かし方1つでこうも変えさせてしまうのか。

 拓未が喉に這わせていた手を動かし顎をくいっと持ち上げる。

 瞬間、雪菜の瞳が焦点を戻した。

 

 

 

 

「触らないで!!」

 

 

 

 乾いた音がスタジオに響き渡る。

 

 

――え……。

 

 目の前では拓未の手を振り払い。右手で平手打ちをした雪菜。

 

 雪菜の荒い息遣いが聞こえる。

 

 

 何が起こったのかわからなかった。これがただの知り合いという男女なら、今の出来事もあり得るだろう。

 しかし、春希の知る拓未と雪菜はスキンシップが多い。

 どの程度かというと、彼女のファンが決死の討ち入りを覚悟すると断言出来るくらいだ。

 さすがにキスを促すような触れ方は見たことがなかったが……頭を撫でる、頬を撫でるくらいは当然といった事を今まで何度も見てきたのだ。

 

 

 その雪菜が拓未をぶった。

 

 いつも拓未くん拓未くんと付き纏う雪菜が拓未に手を上げた。

 

 

「っ……。雪菜?

 ――いや、すまなかった。ごめん」

 

「た、拓未くん……?

 ああっ、ごめんなさい! 大丈夫!?

 わたし、そんな……。痛くない? ホントにごめんなさい!」

 

 さすがに悪ふざけが過ぎたと謝る拓未に、先程の行為は無意識だったのだろうか。我を取り戻したかのように雪菜がわぁっと涙混じりの声で拓未に手を上げてしまった事を謝る。

 

 

「いや。大丈夫だから。俺が悪かったんだから。お前がそんなに謝らなくていいから。

 お、おい水沢。すまないがちょっと雪菜を顔洗いにでも連れて行ってくれないか」

 

「う、うん。ほら雪菜……こっち、行こ?」

 

 何度もごめんなさい、ごめんなさいと取り乱す雪菜を落ち着かせるため依緒に頼む拓未。

 

 

「ま、無理やりは良くないよな。何事も同意が大事だってな!

 浅倉も案外経験値低いんじゃないか?

 ここは俺、飯塚武也が女性の扱いってのを教えてあげてもいいんだぜ?」

 

 

「あぁ……。そうだな、学園の誇るスケコマシには敵わないみたいだな。

 よし、今度ナンパ繰りだそうぜ。是非指南してもらわねーとな!」

 

 残った者の場の空気を変えようと務めて明るく振る舞う武也。

 その機転に拓未は感謝しつつ同じように軽口を叩く。

 

 

「ナンパとか意識してやったことないな。

 可愛い子を見かけたら自然と声を掛けてしまうんだ」

 

「さすがだな、どんなセリフで興味を引きつけるんだ?

 おい、北原。お前も真剣に聞けよ。一緒に行くんだからな」

 

「なっ、俺も!?

 武也、そういう女性を軽視したような言動は不誠実だって前々から言ってるだろ。

 ――ちなみに、どうやって話しかけるんだ?」

 

「あ……じゃあ小木曽さんが帰ってくるまでそっちの練習しよっか。

 私が相手役やってあげるよ? 自慢じゃないけど演技は自信があるよ?」

 

「えー千晶、お前本番になったら泣きながら逃げるじゃん」

 

「だからそれは言わないでって!」

 

 

 みんな先程の出来事を忘れたかったのだろう。普段はこんな話になることはない春希だが無理やり合わせようとする。

 千晶のフォローも有り難かった。恒例の自爆ネタが一気に沈んでいた空気を軽くする。

 

 だがかずさは1人、ピアノの前に座ったまま、雪菜が出て行ったドアを見続けていた。

 いつものクールさを感じさせない。不安気な目をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お邪魔しました、冬馬さん。またね」

 

 そう言ってドアを閉じ、門をくぐる雪菜。

 武也は家が一番遠い千晶を依緒と一緒に送るため先に出ていた。

 雪菜は拓未と一緒にバイクで帰る予定だったが、かずさが拓未に用があると言い、自分が送っていく事となる。

 かずさと拓未が二人きりになるなど、春希にとっては見逃すことの出来ない事態ではあるが、今日の雪菜を放っては置けなかった。

 

 

 あの一件の後は特に何事も問題なく練習を進めることが出来た。

 昼過ぎになって、男子達は気晴らしにコンビニにアイスを買いに行った際。炭酸飲料の一気飲み勝負で武也が盛大にぶちまけたりしたが……。

 午前の出来事が後を引くようなことは、春希が知る限り一度もなかった。

 だが、昨日までの盛り上がりも無かった。

 雪菜がいつものように何度も歌いたいと演奏をせがむことも無かった。

 ただ淡々と、皆笑顔は作りながらも。どこか事務的に練習をこなす以外は何もなかった。

 

 皮肉にもそれが功を奏したのか、春希は”Feeling Heart”をまずまずの出来で習熟することが出来たし、”夢想歌”や”Routes”は細かい調整を残すのみと、バンド演奏の底上げという意味での完成度を高めることとなったが……。

 

 

 春希は今、自分の目の前を、先を歩く雪菜を見る。

 決して自分と肩を並ばせて歩こうとしない。こちらが追いつこうとペースをあげたら雪菜もさり気なくだが同じようにペースを上げ一定の距離を保つ。

 

 このままじゃ走りだしてしまう。不毛な事になりかねないと思った春希はペースを下げ、こうして3歩後ろを歩くことを選んでいた。

 

 

「やっぱ日が暮れても蒸し暑いな」

 

「そう? そうだね」

 

「っ……。この土日、密度が濃いかったよな」

 

「そう? そうだね」

 

「よくよく考えたら7人だもんな」

 

「そう? そうだね」

 

「さすがに冬馬の家が広くたってなぁ」

 

「そう? そうだね」

 

「……が、合宿のお陰で俺もだいぶマシになったみたいだけどさ。

 小木曽には何度も歌わせるハメになって大変だったよなハハ……」

 

「ううん、別に」

 

 家を出てから明らかに雪菜の機嫌が悪い。

 岩津町駅を目指す間、必死に会話を繋げようとしたが、続かない。

 自分のコミュニケーション能力の無さを痛感しかけるものの、雪菜が会話を続けたくないという意思がありありと見えている。

 

 午前中の拓未に手を上げた一件は、実は自分が悪いのではないだろうか。

 そうでなければ2人きりになってからの、この不機嫌さの説明が付かない。

 何か、気に触るようなことがあったのなら謝らないと――

 

「……あのさ」

 

「なに?」

 

「……何か、気に触るようなことをした?」

 

「別に、何もないよ」

 

 即座に何もないと否定する雪菜。逡巡することなく断言する雪菜。

 本人がそう言い切るならきっとそうなのであろう。しかし――

 

「何もないこと、ないだろ」

 

「っ……」

 

「余計な心配じゃなければいいんだけど。何もないこと、ないんじゃないか?

 要らないお節介かもしれないけどさ」

 

 いつもの『いいんちょくん』としての性格だろうか、お節介を焼いてしまうのは確かだが、それだけではない。

 

 雪菜とは確かに知り合って半月程ではあるが、文字通り同じ釜の飯を食うという、彼女と自分は普通の学校の友人関係とは違う、一歩進んだ”仲間”という関係だと春希は思っている。

 

 そんな仲間だと思っている相手――雪菜が午前のように手を上げたり、自分に対して不機嫌さを出して他人行儀にする理由が何もないだなんて到底思えない。

 雪菜は何か悩みがあるのか? それともやはり自分に対して何かあるのではないか?

 春希は今、ここで自分が尻込みしてはいけないと思っていた。

 

「知ってどうするの?」

 

「……え」

 

「どうして? 余計な心配だと思っているのにどうして知ろうとするの?

 北原くん、あなたがそれを聞いてどうするの?」

 

「やっぱり、何かあったんだろ? 俺さ、相談に乗ってあげたくて――」

 

 やはり、雪菜には何か不機嫌になる理由があったのだ。今の反応がそれを如実に語っている。

 ならば春希としてはそれを何としても解決してあげなければならない。

 

「しつこいよ、北原くん」

 

「……」

 

「なんでそこで察してあげるってのが出来ないかな。

 そういうしつこい所、鬱陶しいって言われない?」

 

「そんなこと出来るわけないだろ!

 何か困っていることがあったら助けるのは当然だろう!

 俺達は仲間だろ――」

 

「っ……い、じゃない」

 

「……え」

 

「何も、ないじゃない!

 わたしだって……そう思っていた。

 でも、わたしとあなた達の間には……何もないじゃない!!

 うそつき! うそつきうそつき!

 拓未くんも、冬馬さんも、北原くんも、皆うそつき!」

 

「小木曽……?」

 

「っ……。

 ごめんなさい。やっぱり今日は疲れてるのかな。

 明日になれば、元気になるから。元通りになるから。

 ……今のことは忘れて」

 

 呆然と立つ春希に、謝ると走り去る雪菜。

 

 雪菜に何があったのだろう。何が雪菜に慟哭させたのだろうか。

 走って駅を目指す雪菜は確かに泣いていた。

 

 浅倉も、冬馬も、自分も嘘つき……?

 

 自分は、騙していることなど何も、ない。あいつらだって何か騙すような人間ではない。

 春希は雪菜の言葉の意味を必死に考えるも答えが出てこない。

 

 明日になれば元に戻ると雪菜はいっていた、このままそっとして置いたほうがいいのだろうか……。

 

 

「あれぇ? 北原先輩?

 さっきの人って――」

 

 聞きたくない声を聞いてしまった。どうしてこういう時ばかり出会うのだろうか。

 そういえば前回も今回も同じような場所――

 

 出来れば違う人間であってほしい。

 そう思って振り返った先には残念ながら予想通りの人物、柳原朋が立っていた。

 

 

 

 




拓未、雪菜に振られる?いや打たれる。という話、でした。

正直、次話は追記する形にするか、新しいEPISODEにするべきか。
追記しておそらく1万5千文字以下でしょうか。それはちょっと……。

※この話をEPISODE:18にすれば解決すると気が付きました。


ところで神通改二かっこ良すぎですよね。今lv50なんで必死に上げなくては。
那珂ちゃんはついうっかり、いつもの癖で解体して……2代目が60です……。

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