問題児と創る昼寝だんご王国   作:神ジーク

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第三章 え?こいつがリーダー?馬鹿王と全然違うんだけど?

所変わって箱庭二一〇五三八〇外門・内壁。

新たな人物が一人増え、今までいた人物が二人減っている。

増えたのはジン=ラッセル。

黒ウサギのコミュニティーのリーダーで10歳くらいの少年。

気弱そうな雰囲気があるがリーダーを任されている辺り、しっかりしているのだろう。

減ったのは黒ウサギ、そして我らが問題児十六夜である。

やっとのこさで馬鹿二人を止めた黒ウサギが全員を連れて箱庭へと向かっている途中、十六夜が消えたのだ。

耀と飛鳥曰く、「ちょっと世界の果てを見てくるぜ!」だそうだ。

それを聞いた黒ウサギはジンに後を任せ、問題児を捕まえに行ったのだった。

で、その間喫茶店でも探して二人を待つということになったのだが・・・・・・

 

「おい、ジンとやら」

「あ、はい。何でしょうか?」

 

フェリスの口から発せられる言葉はいつも決まっている。

 

「だんごが美味い店はどこだ?」

 

一にだんご。

二にだんご。

三四がなくて、五にライナいじめである。

 

「この辺りにだんご専門店はなくてですね、でもだんごが食べられる店はあって、そこでいいですか?」

「うむ。そういう店が意外に美味かったりするのだ」

 

フェリスに不満はないようだった。

ジンも一安心である。

しかしこの子供リーダーは知らなかった。

フェリスはだんごが好きなのではなく、

超好きなのだ。

よって財布の沈没は免れない。

ライナは深くジンに同情した。

それと同時に自分が不運を背負わなくて済むという安堵も得ていたが。

5人は《六本傷》の紋章があるカフェテラスに入った。

注文は以下の通りである。

 

ジン・飛鳥・耀:ティーセット

三毛猫:ネコマンマ

ライナ:注文無し(昼寝)

フェリス:だんご×2000

 

「2000!?」

 

ぎょっとして目を見開く一行(ライナ除く)。

 

「ふぇ、フェリスさん!僕そんなにお金ありませんよ!?」

「ん。大丈夫だ。私に考えがある」

「本当ですか!?」

「うむ」

 

無表情なのにどこか自信に溢れるフェリスとあわあわしているジンをライナは冷めた目で見ていた。

 

(ああ・・・・・・可哀想にジン。今から自分が何をされるか知らずに)

 

ライナは経験で知っていた。

フェリスは他人から奢ってもらう場合(以外も)情け容赦一切ないのだと。

そして、相手の金が足りない場合、

 

「その辺を歩いていた金貸しらしき男にすでに話はつけてある。十一だそうだ」

「へ?それって・・・・・・借金じゃないですか!?」

「うむ。もちろんお前当てだ」

 

相手に借金をさせてまでだんごを喰うのだ。

ライナも『にこにこローン』やら『おだんごローン』やら大量の借金をフェリスに負わされている。

だんご2000個?

そんなの序の口である。

ライナはポンとジンの肩に手を置いた。

 

「諦めろ。フェリスはこういう奴だ」

「いや、諦めろって言われてもって・・・ええええええ!?」

 

状況がうまく把握できていないようだった。

無理もない。

直接関係のない飛鳥や耀でさえ顔を引きつらせているのだ。

そのフェリスは、

 

「店員。もう1000個追加で頼む」

 

着々とジンの借金を増やしていた。

 

「もうやめてええええええ!」

 

ジンの憐れな悲鳴が辺りに轟いた。

 

 

        ◇

 

 

「うう・・・・・・黒ウサギに何て言えば・・・・・・・・・」

 

更なる借金増加は防げたもののだんご2000個分の借金は確実であった。

流石に飛鳥と耀も気の毒に思いジンを励ましている。

 

「ほら、ジン君元気出して。仕方がないわよ。彼女、自然災害のようなものだもの」

 

耀もこくこくと頷いている。

どうやら二人はフェリスの性質を理解できたようだった。

自分のせいだというのにフェリスは黙々とだんごをパクついている。

 

「ん。なかなかの味だ。しかしウィニットだんご店には劣るな」

 

ご満悦のようだった。

心なしかいつもの無表情な顔もほころんで見える。

 

「おんやあ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ《名無しの権兵衛》のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

「おいライナ。お前も食べてみろ」

「んー?ああ確かにまあまあだな」

「だろう?お茶の味もいい。腕のいいだんご職人がいると見える」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

「おんやあ?誰かと思えば東区画の最底辺コミュ《名無しの権兵衛》のリーダー、ジン君じゃないですか。今日はオモリ役の黒ウサギは一緒じゃないんですか?」

「春日部さんは動物と話せるのよね?」

「うん。今までいろんな動物達と友達になってきた」

「そう・・・・・・春日部さんは素敵な能力があるのね。うらやましいわ」

「久遠さんは」

「飛鳥でいいわ。よろしくね春日部さん」

「う、うん。飛鳥はどんな力を持っているの?」

「私?私の力は・・・・・・まあ、酷いものよ。だって・・・・・・」

 

「いい加減にしねえか!」

 

ついに怒鳴った。

その場の全員が怒鳴った男を見る。

ピッチピチのタキシードを着た巨漢だった。

 

「二度も無視しやがって!こちとら―――ぐぼあッ!」

「うるさい。神聖なだんごタイムの邪魔をするな」

 

長剣で吹っ飛ばされた男は回転しながら近くの壁に衝突した。

もちろんやったのはフェリスである。

やった次の瞬間にはだんごを口にしていたが。

 

「容赦ないわね」

「うむ。だんごを貶める奴はだんご神様がお許しになられないからな」

(((だんご神様?)))

 

ちなみにだんご神様とは、この世の全てを司る全知全能の神らしい、フェリス曰く。

今までフェリスと一緒にだんごを食べていたライナは気絶した男を一瞥するとジンに視線を移した。

 

「で、こいつ誰?」

「ガルド=ガスパー。《フォレス・ガロ》のリーダーです」

 

気のない様子のライナ。

しかし、次の瞬間彼が口にした言葉はジンにとって都合のよい言葉ではなかった。

 

 

「ふうん。じゃあ、最底辺のコミュニティーってのは?」

 

 


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