問題児と創る昼寝だんご王国   作:神ジーク

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第二章 箱庭?それよりだんごはどこだ

ライナとフェリスがシオンから逃れられたことで狂喜していたその時、近くの茂みに隠れていた者がいた。

名前は黒ウサギ。

十五、六歳くらいに見えるウサ耳を頭から生やした少女だ。

彼女の目は何やら騒いでいるライナ達を見定めるように細められている。

 

(問題児そうなのばっかりなのはいいとして明らか一人やる気自体が消滅しているように見える方がいますけど―――)

 

彼らの内の数人が不平を言い始めたようだ。

 

(――まあ、悩んでいても仕方ないデス。これ以上不満が噴出する前にお腹をくくりますか)

 

そう考え黒ウサギが飛び出そうとしたところ、信じられないセリフを耳にした。

 

「仕方ねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」

(ッ!)

 

すでに気付かれていたのだ。

 

「なんだ、あなたも気づいていたの?」

「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?他の奴らも気づいてんだろ?」

「風上に立たれたら嫌でもわかる」

「うむ。我々の貞操を狙っていたに違いない。だが、残念だったな。こっちには伝説の変態魔王ライナがいる。返り討ちに―――」

「しないから。ていうか誰が魔王だよ」

 

十六夜、飛鳥、耀、三人の冷ややかな視線に黒ウサギは怯んだ。

約二名、場の空気そっちのけで言い争いを繰り広げているが、一応意識を黒ウサギに向けているのがわかる。

 

「や、やだなあ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ?ええ、ええ、古来から孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に話を聞いていただけたら嬉しいでございますヨ?」

「断る」

「却下」

「お断りします」

「ははは、死ねライナーッ!」

「ふざけんなフェリス!剣は反則―――ぎゃあああああ!」

「あっは、取りつくシマもないですね♪」

 

やけくそであった。

ちなみに何故ライナが斬りかかられているのかはいつもの通りだ。

フェリスにとってはじゃれ合いに過ぎない。

 

(勝ち気は買いですね・・・・・・って本当に大丈夫なのでしょうか。ものすごい速さで斬られてますけど)

 

NOと言った三人との接し方を考えることも重要だが、現在進行形で死にかけている男を救うことも重要ではないか。

そう考えた黒ウサギは一歩踏み出そうとしてできなかった。

 

「えい」

「フギャ!」

 

耀にウサ耳を問答無用で捕まれたのだ。

そしてそのまま力いっぱい引き抜きにかかった。

 

「ちょ、ちょっとお待ちを!触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きにかかるとは、どういう了見ですか!?」

「好奇心のなせる業」

「自由にもほどがあります!」

「へえ?このウサ耳って本物なのか?」

 

つられて十六夜も引っ張る。

 

「・・・・・・。じゃあ私も」

「ちょ、ちょっと待――――!」

 

すると飛鳥も参加した。

両耳を引っ張られる黒ウサギの絶叫が木霊するとかしないとか。

 

「え?ちょ、俺無視?死にかけてんのに俺無視?ってフェリス!ぎゃああああ」

 

 

        ◇

 

 

「―――ここからさきは我らがコミュニティーでお話しさせていただきたいのですが・・・・・・よろしいです?」

 

約一時間の学級崩壊のあと、ライナ達は黒ウサギからこの世界について一通りの情報を聞き終えていた。

箱庭という名のこの世界は様々な主催者が開催するギフトゲームという競技でまわっており、修羅神仏が跋扈している。

加えて、この世界ではどこかのコミュニティーに属するのは当たり前で生きる為の最低条件だ。

黒ウサギの説明は大体このようなもので彼女がなぜライナ達を呼んだのかは誤魔化されていた。

彼女にも相応の理由があってのことだろう。

ライナや十六夜もそのことには気づいていたが場の空気を呼んで触れなかった。

だからといってだろうか。

十六夜は黒ウサギに一つの質問を投げかける。

 

「――この世界は・・・・・・面白いか?」

「―――――」

 

これこそが十六夜にとって最も重要であり、耀や飛鳥にとっても同じだった。

何せ『すべてを捨てて来い』と言われたのだ。

この世界にその価値を求めることは当然であり権利だった。

 

「YES。『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加できる神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白い事、黒ウサギは保証いたします♪」

 

 

        ◇

 

 

黒ウサギの笑顔たっぷりのセリフで場の雰囲気は温まってきたところなのだが、知ったことかとぶち壊す者がいた。

 

「それで、この世界にだんごはあるのか?」

 

フェリスである。

ついでに、

 

「あ、そうそう。コミュニティーに入るから寝床貸してくんない?」

 

ライナである。

異世界に行こうが何だろうがこの二人は変わらなかった。

空気読めよという視線が注がれているが、流石というかなんというか二人はガン無視である。

 

「え、えっと、だんごはあります。それと寝床でしたらコミュニティーの本拠で用意できますのでご安心ください」

「ひゃっほう!聞いたかフェリス!俺は見事に快眠ライフを手に入れたぞ!」

「ん。早速新たなだんごを探しに行こう」

「え?俺の快眠ライフは?」

「首のお散歩とどっちがいい?」

 

どこにとはいわないが添えられる切っ先。

 

「あー俺今だんご食いたい気分だったんだよね。行こうぜフェリス!美味いだんごを見つける旅に!」

「うむ。じゃあ行くか」

(絶対いつか殺す・・・・・・)

「何か言ったか?」

「いいや、何も」

 

勝手に話をまとめて勝手に歩き出したライナとフェリス。

ノンストップの異次元展開に付いていけず、黒ウサギや十六夜達は固まっていた。

ここまで身勝手で空気を読まない人間も珍しいだろう。

ややあって黒ウサギが叫んだ。

 

「ちょ、ちょっとお待ちください御二方ーッ!」

 


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