仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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第78話 番外編 季節外れのチョコレート(後編)

 

彼は戦った、彼は抗った、愛する少女の為に。

しかし運命とは残酷だ、本命を受け取った双護はつくづくそう思う。恋した少女の全てを受け入れる事が愛なのならば……

 

 

「俺はまだ、至れないのかもしれない」

 

「……? ねえお兄ちゃん…どうして鏡治君は動かなく…なったの?」

 

「真由、それはお前のチョコが泡を吹くくらい旨すぎて失神したからだよ」

 

 

本当! と嬉しそうにたずねる妹、双護はもちろんだと強く頷いた。

愛する者を守る為の優しい嘘なのだと自分に言い聞かせて、双護は白目を剥いて泡を吹き出す鏡治を見るのだった。

 

 

数分後、担架で運ばれていく鏡治を見ていたのは良太郎とイマジンたち。

モモタロス達は先程のおぞましい映像を見ていたようでガクガクと震えている。

鏡治はチョコを食べた後しばらくして泡を吹いて倒れた。そして真由と同じレベルの実力を持つのは――

 

 

「お、おいおい大丈夫かよ良太郎……ハナクソ女もあんなんじゃねぇのか?」

 

「だめだよモモタロス、ハナさんが聞いたら怒るよ」

 

「でもユウスケの試練の後の料理バトルを見たら……ねぇ?」

 

「前にデンライナーで食べたときは意外とおいしいって言ってたじゃない」

 

「ありゃナオミがいたからだろうが」

 

 

料理対決時ユウスケはしばらく動かなくなったが、逆を言えばしばらく動かなくなっただけだ。

命に別状が無ければ、まあ大丈夫だろう多分。だから良太郎もまた少し覚悟こそすれど特に気にしてはいなかったのだが――

 

 

「良太郎……」

 

「あ、ハナさん」

 

 

噂をすればなのかハナがやってくる。

しかし彼女の表情は暗く、何やら少し不機嫌そうな気配を感じた。

どうしたのだろうか? 注意を向けてみるとハナは両手でスカートをギュッと握っている。

つまり彼女は今何も持っていない事になるのだ。

 

 

「ごめん。チョコ、失敗しちゃって……」

 

「そう…なんだ。でもぼく――」

 

「ごめん、本当にごめん。今回は無しにさせて……ごめんね、後で買ってくるから――!」

 

「あ……!」

 

 

ハナはそれだけ言って踵を返す、そしてそのまま走り去ってしまった。

モモタロスやリュウタロスは良かったじゃないかと言って見せたが、良太郎としては何か引っかかる物がある。

しかし諦めてくれと言われた以上何もできない、良太郎は困ったなと沈黙してしまう。

 

 

「のがみぃ~!」

 

「!」

 

 

しかし向こうから走ってきたデネブの一言で良太郎は表情を変える事になるのだった。

一方そんな彼らから少し離れたところ。

 

 

「はっかせー! お待ちかねのチョコでぃすよーん!」

 

「別に待ってはないけどな」

 

 

白衣をなびかせて助手は博士にチョコを差し出す。

博士は本当に形だけのお礼を言うと早速匂いを嗅ぎ始めた。

 

 

「ひっどいなぁ! 何も入ってませんよ」

 

「どうだろうな、オイルとか入ってんじゃないのか?」

 

 

頬を膨らませる助手、相変わらずこの二人は年齢と態度の釣り合いがとれてない。

博士なんてせいぜい助手の腰から少し上くらいの身長なのにも掛からず威圧的な態度で押している。

見上げているのに見下しているとはこれまた新しい。

 

 

「………なあ助手君」

 

「ふぁい?」

 

「なんでこのチョコ……導火線みたいな物がついてるんだ?」

 

 

博士は助手のチョコを早速食すことに。

しかしそこで気づいた違和感、チョコから何やら紐の様な物がぶら下がっているじゃないか。

博士は助手を見てみるが実に素晴らしい程のドヤ顔である。

 

 

「ただ作るだけじゃつまんないもん、ちょっとした仕掛けがあるんです!」

 

「ほう、仕掛け?」

 

「はぁい! 実はそこに火をつけて食べるとお口の中で弾ける感覚を味わえたりしちゃったりなんかしちゃったり!」

 

 

じゃあ早速と言って助手は導火線に火をつける。

食べて食べてと繰り返す助手だが、博士は無言で火が進む導火線を見ていた。

そして無言でチョコを地面に置く、さらに助手を引き連れてチョコから離れる博士。そのまま火は進んでいき――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアンッッッ!!

 

 

「………」

 

「………」

 

「な、なんだ敵かッ!? 爆発が起こったぞッッ!?」

 

 

ポン☆! などと可愛い音ではなく轟音と共にチョコは消し飛ぶ。

いや正確に言えばもし博士達が近くにいたら博士達もまとめて消し飛んでいた事だろう。

何となくこんな予感はしていた、そもそもまず火のついたチョコなんて口に入れられるわけが無い。

 

 

「て、てへっ! 間違えて火薬入れちゃった!」

 

「なあ助手―――」

 

「は、はい……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺す気か馬鹿があああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「ごめんなさああああああああああああああああああああああい!!」

 

 

それにしてもと博士はこの世界で今朝みたニュースを思い出す。

何やらチョコを食べた男性が腹痛になったり、いつの間にかチョコが親子丼に変わっていたりと変な事件が続いていたものだ。

 

 

「世界はやはり不思議なもんだな、まるで意味が分からん」

 

「そうっす―――」

 

「きゃああああああああああああ!!??」

 

「「!!」」

 

 

そんな時、何故か学校の外でハナの悲鳴が聞こえる。

何があったのか、一同は気になってつい学校の外へ走り出してしまう。位置的に近かった男性陣が校外へ向かうが――

 

 

「なっ!?」

 

「え、ええ!?」

 

 

一同はそこで始めて何が起こっているのかを理解する。

無数の何かが宙を舞っているのだ、この世界の空を大量の何かが飛び交っている。

一体それは何なのか!? 答えは簡単だ、何故ならそれは先程彼らが貰っていたものなのだから。

 

 

「うおおおぉお!? チョコが空を飛んで――ッッ!?」

 

 

ユウスケの手から滑る様にして離れたチョコ、それはなんと地面には落ちず空を昇っていった。

もちろんそれはユウスケだけではない、真志や我夢のチョコも同じようにして持ち主の手から離れていってしまう。

こうしてタイガ達や博士達を含めた全員のチョコが空へと移動する。

 

 

「何が起こっている? 助手、バガミール起動させろ」

 

「は、はいさ!」

 

 

すぐに支援型メカバガミールの展開する助手。

解析を行うとどうやらチョコは正体不明の物体に吸い寄せられている様だった。

空中を待っているのはその物体が空にある為、当然だ。

 

 

「拡大させろ」

 

「はい!」

 

 

バガミールの映像を司達も確認できる様ホログラムとして映し出し拡大させる助手。

するとそこには驚くべき光景が見えた、なんとチョコを巨大な掃除機が吸い込んでいるではないか!

しかもこの掃除機はプロペラが付いており飛行船の役割も果たしている。

機体には巨大な文字で神と書かれており、コックピットの様な場所には二人の男女の姿が見えた。

 

 

「音声拾えるか助手?」

 

「ういー! やってみまーす!」

 

 

しばらくして映像に音声が追加される。

すると何やらゼノンとフルーラ同じくハイテンションな笑い声が聞こえてきたではないか。

どうやらこの二人がチョコを吸っている犯人らしい。

 

 

「ダーッハハハハハハハハ!!」

 

「アーッハハハハハハ!!」

 

 

男の方は金髪、年齢は翼くらいだろうか? とにかく派手な毛皮の服に身をつつみ笑っている。

女のほうは銀髪、隣の男同じく派手な服を着てゲラゲラと笑っていた。

 

 

「満足か妹よ!」

 

「さいっこうだよおにい! これでこの世界のチョコレートは全てあたしが頂いたも当然じゃない! アハハハハハ!!」

 

 

掃除機ヘリコプターに乗っている謎の二人。

彼らはそのまましばらくチョコの吸引を続けていき、メーターが満タンになったところで行為を止めた。

そして二人は何が起こっているかわからない愚かな者達へ答え合わせの声をあげる。

 

 

「聞け! この世界のチョコは全てオレ様達が頂いた!」

 

「そう、この時空盗賊団・威魔神が!!」

 

 

威魔神(イマジン)、ほしいものは何でも手に入れる。

たとえそれが人の物だろうとも関係はない、金と銀の兄妹もまた同じだった。

妹である銀羅(ぎんら)と兄である金羅(きんら)は今日物凄いチョコが食べたい気分だった、だから決めたのだ。

この世界の全てのバレンタインチョコを奪う事に!

 

 

「人のバレンタインをめちゃくちゃにする事も最高のスパイスになりそうだな妹よ!」

 

「もっちろんだよおにい! さあ早く帰って頂きましょう!」

 

 

今二人が乗っているのはチョコ吸い取りマシン『愛羅武勇(あいらぶゆう)』である。

掃除機とヘリコプターを合体させた様なマシンだが、二人は一度そこから飛び降りると下にオーロラを出現させる。

 

 

「ほっ!」

 

「よッ!」

 

 

オーロラから現れたのは鬼の顔を模した巨大ビークルマシン『火の車』だ。

オープンカータイプで、鬼の顔に車輪が付いただけの様なシンプルなつくりとなっている。

そこに飛び乗る二人とオーロラの中に消える愛羅武勇、火の車は二人が乗ったことでオープンされた部分が閉まっていった。

同時に二人は高笑いを繰り返して火の車を発進させる、どうやらそのままチョコを持ち逃げして帰るつもりらしい。

 

 

「ダーッハハハハ! じゃあな人間共!」

 

「愛する人に作ったチョコはぁ、みーんな銀羅ちゃまが食べてあげまーす! ギャハハハ!!」

 

 

そういい残し走り去る二人、文字通りこの世界の全てのバレンタインチョコを奪って行ってしまったのだ。

あまりにも手際が良くて全ての者が呆気にとられていただろう、しかし徐々に理解が追いつく。

要するに全てのチョコが奪われた? まだ誰もまともに食べていないのに!?

 

 

「………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うふふ! こんなにチョコがたくさん!」

 

「ダハハ! チョロかったな妹よ!」

 

 

火の車に乗りながら二人は今日の成果を確認する。

巨大な風呂敷に包まれた無数のチョコ達、それが全部他人様の物だと思うと興奮するものだ。

おまけにこれはどこぞの恋する女が愛する男性へと送る筈だったもの、その想いごと頂けるなんて最高じゃないかと。

 

 

「これだから盗賊は止められないのよねおにい!」

 

「だな妹! ダーッハハハハ―――……ハ?」

 

 

ふと何か声の様な物が聞こえた気がして金羅は笑いを止める。

どこから声が? 右を見るが何も無い、左を見るが何も無い、上を見るが何もない。

では後ろはどうか、金羅はゆっくりと後ろを振り向いた。そしてすぐに後悔したのである。

 

 

「お嬢様のチョコを返せぇえええぇぇええぇッッッ!!」

 

「「!?」」

 

 

何やらライオンの様なヤツが猛スピードでコチラへ向かってきたではないか!

誰アレ? 何アレ!? 迫る謎の人物に金羅と銀羅は驚愕の表情を浮べる。

仮面で表情が分からないが多分彼は物凄く怒っているのだろうと!

 

 

「お、おにい! アレは一体!?」

 

「分からん! ただ意味不明に早いぞ!!」

 

 

コチラもスピードを上げなければヤバイと金羅は叫ぶ。

了解してアクセルを踏む銀羅だが彼らは知らない、仮面ライダーオーズ・ラトラーターコンボのスピードを!

 

 

「選べぇえぇえッ! 細切れか、八つ裂きか、ミンチかをぉぉおおッッ!!」

 

「ひいいいいいいぃぃぃぃ!! 何なのアイツ!」

 

「結局全部バラバラじゃねぇか! 走れ妹! 追いつかれるぞ!!」

 

 

鬼の様な雰囲気で追いかけてくるラトラーター、それだけならばまだしも――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は数分前に遡る。

学校を抜けたディス、彼はある場所へとやってきていた。

それはこの世界で大人気のアイドルグループ『スーパーレモン』のバレンタインイベントである。

雑誌で知った情報だが何やら会場にやってくればアイドルがチョコをくれると言うのだ、これに参加しない手は無いだろう。

 

 

「やれやれ、やっとまともなチョコにありつける」

 

 

しかもアイドルから貰えるなんて最高じゃないか。

ディスは内心わくわくしながらその時がくるのを待っていた。

アイドル好きの彼にとってこのイベントはもう夢の様な存在なのだから。

 

 

『皆さん、今日はスーパーレモンのバレンタインイベントにお集まり頂きありがとうございます』

 

 

きたか! ガタッとディスは椅子から立ち上がり列に並ぶ準備を――

 

 

『申し訳ありませんが皆様に用意していたチョコが奪われてしまった為、本日のイベントは中止とさせていただきます』

 

「―――――」

 

『なお、スーパーレモンに関してですが謎の人物から大量の親子丼を食べさせられたと言う事なので会場に来ておりません』

 

「―――――」

 

『仕方ないね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「「おらああああああああああああああああああああああ!!」」」」」」」」

 

「「ひぃいいいいいいいいいい!! 何かいっぱい来たぁあああああああ!!」」

 

 

怒りに塗れたディスもまたその感情の矛先を金羅達へ向ける事に。

ラトラーターの後ろから計50人のガタキリバが電撃をまとって突撃してくる。

さらにラトラーターはライオディアスを発動、光と熱が金羅達を包み込む。

 

 

「熱い熱い熱い熱い! あづづづづッ!」

 

「し~び~れ~る~ぅッッ!!」

 

 

熱と電撃の影響で蛇行運転に変わる火の車、しかしまだ終わりではない。

彼らが走るであろうルートを先回りした者がいたのだ。彼は前からやってくる火の車を見てため息をついていた。

火の車が近づいてくるのにも関わらず彼はその場から動こうとはしない、このままでは轢かれてしまうが大丈夫なのか?

 

 

「お前らなぁ、人とがなぁ、好きな人の為に作ったチョコをなぁ――」

 

「「!?」」

 

「奪ってんじゃねぇええええええええええええええええええッッッ!!」

 

「「ひいいいいいいいいいいいいいい!!」」

 

 

サゴーゾは重力を操作して一気に火の車を自分の目の前まで引き寄せる。

そして思い切りサイヘッドの角で火の車を正面から受け止めた!

あれだけ巨大なビークルマシンであろうとも何のその、サゴーゾは火の車を受け止めきるとそのまま上空へと打ち上げる。

 

 

「お、おにいぃい!」

 

「わ、わわわ分かってるぜ妹よ!」

 

 

上空へ投げ出された火の車。

既にバラバラに砕けており金羅達はそこから脱出、同時にオーロラを出現させて愛羅武勇へと乗り換えに成功する。

さらに吸引を発動、チョコが入った風呂敷をガッチリとゲットして飛翔した。当然逃がすかと構える三人、しかし向こうも向こうで手を打たない訳が無い。

 

 

「現れろ!」

 

 

その言葉と同時にオーロラが出現、中から現れたのは無数の戦闘員達だった。

 

 

「イーッ!!」

 

「イーッ!!」

 

 

相変わらず数だけは多いものだ、ざっと見ても100体は軽く超えているだろう。

面倒だが放っておくわけにもいかないか、ラトラーター達は早く突破する為に動き出す。

だがまだ終わりではなかった。どこからか飛んでくる攻撃、どこからか仕掛けてくる攻撃。

 

 

「チッ!」

 

 

なんとかバックステップで避ける三人。

見てみれば先程まで自分達がいた場所に大量のクリームがあるではないか、さらに高速で移動する何者かの姿も見える。

クリームの発射主と高速移動の主はそれぞれ戦闘員の影に隠れるようにしてその姿を見せた。

 

 

『フハハハハ! バレンタインは中止だ、馬鹿者共が!! お前らは親子丼でも食ってろ!』

 

『その通り! リア充は皆腹痛になってしまえばいいのよ!』

 

 

現れた異形、そして声の特徴を考えるとその正体はまさしくドーパントだろう。

一人は丼の形をした頭に巨大な割り箸を持っている"オヤコドンドーパント"。

そしてもう一人はクリームに身を包みイチゴの様な頭部を持つ"スイーツドーパント"だった。

会話の内容を聞くと一連の事件を起こしていたのも彼らだと言う事が分かる。

どうやら彼らはバレンタインをめちゃくちゃにしたかったらしく、目的がほぼ一緒になる金羅達に協力するとの事だった。

 

 

『どいつもこいつもチョコチョコチョコチョコ本当にうるさい事!』

 

『だから壊す! あんな甘いふざけた物なんていらないんだよ!』

 

 

そう言って二体のドーパントは再び攻撃を開始しようと構えた。

同時に走りだす戦闘員達、ラトラーター達も迎え撃つために地面を蹴った。

スイーツとオヤコドン込みならば少し時間が掛かるか? オーズ達は苛立ちながらも戦闘員たちに攻撃をしかけていく。

 

 

『こんな無駄なイベントは必要ない!』

 

『そう、悲しみを生み出すだけのイベントなんて!!』

 

 

そう宣言するオヤコドンとスイーツ。

しかしその瞬間彼らの前に魔方陣が出現、中から銃弾が発射されて二人に着弾する。

 

 

『ぐわッッ!!』

 

『あぐぁ!!』

 

 

転がる二体と魔方陣から現れるクローク。

悲しみを生み出すだけのイベントか……確かに言っている事は何となく分からなくは無い。

イベントの中では残酷な面を持つものだろう。真っ白になっていた椿を思い出してクロークは複雑な表情を浮べる。

しかし――

 

 

「今日に希望を見出している人もいるんだ、だから邪魔をするヤツには――」

 

 

クロークは手をベルトへとかざす。

するとドライバーオンの声と共にベルトがウィザードライバーへと変化、クロークは黄色の指輪をはめるとハンドソーサーを操作する。

 

 

『シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!  シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!』

 

 

鳴り響く電子音、そしてクロークは指輪をドライバーへ認証させる。

 

 

「お仕置きが必要だな。変身!」『ランド・プリーズ』『ド・ド・ド・ド・ド・ドン! ドン! ド・ド・ドン!』

 

 

クロークが手を下にかざすと魔方陣が出現、魔方陣は上へ移動し彼を通過してウィザードへの変身を完了させた。

既にソードガンは銃の形態にしていた為、ウィザードはスイーツに銃弾を発射しながら前進していく。

しかし周りには無数の戦闘員。当然彼の邪魔をしようと襲い掛かるのだが、その瞬間ウィザードは魔法を発動する。

 

 

『ドリル・プリーズ』

 

 

ウィザードが高速回転して地中へと消えていった。

おかげで空を切る戦闘員達の攻撃。ウィザードはどこへ? 周りを見回す戦闘員達、そして段々と音が近づいていき――

 

 

『ぐああああああああ!!』

 

 

スイーツの真下からウィザードが高速回転で突撃してきた。

吹き飛ぶスイーツと着地を決めるウィザード、すぐ周りの戦闘員たちに銃弾を打ち込んでいく。

それを見て高速移動を行おうと構えるオヤコドン。

 

 

【ネェット/オン】

 

『!』

 

 

突如オヤコドンに振ってくる電磁ネット、それは彼をガッチリと捕らえて動きを拘束。

さらにそこへロケットモジュールを装備し突進してくるフォーゼ、絶大な衝撃をオヤコドンに与える!

 

 

『うわああああああ!!』

 

「面倒な事はさっさと終わらせたい、と言う訳でさっさと消えろ」

 

 

フォーゼはため息をついて走り出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やれやれ、面倒な事をしてくれたね」

 

 

学校ではゼノン達と女性陣が残っていた。

せっかく作ったチョコなのに酷い事をしてくれる、皆怒ったり悲しんだりと様々な感情を見せている様だ。

ちなみにゼノンに関しては既に食べ終わっていたので完全に他人事である。

 

 

「どうしよう夏美ちゃん……!」

 

「う、うーん……まだ渡せてないんですよねぇ」

 

 

友里と夏美はチラリと司、拓真を見る。

空飛ぶチョコを見て唖然としていた為に二人の頭にはチョコをもらっていないと言う事を気にする暇は無い様だが……

しかし夏美達からしてみればチョコを取られたのはかなりショックな事である。

なんとか取り返したいものだが、自分が行くのもソレはそれで抵抗感が。

一応タイガ達が向かってくれた様だが、男性陣も下手に動けない状況ではあった。

 

 

「せっかく作ったのに……」

 

 

ションボリと友里は肩を落とす。

夏美としても彼女が今回のバレンタインに賭ける想いの大きさを知っていた、だから何とかしてやりたいのだが――

それにもちろん自分だって渡せていないのだ、それが引っかかる。

 

 

「友里ちゃん」

 

「!?」

 

 

そうこうしていると異変に気づかれたのか拓真が声をかけてきた。

友里も友里でどんな顔をしていいか分からず、とりあえず笑みを浮べるだけに。

 

 

「ご、ごめんね拓真……今年はあげられないかも」

 

「うん。いいよ、別に」

 

「え?」

 

「僕は気にしてないからさ」

 

「………」

 

 

やっぱりそうだ、いつからかあげる事が当たり前になっていて彼は重さを忘れている。

バレンタインは好きな男の子にチョコをあげるイベントだ、彼はそれを分かっていてくれるのだろうか?

それを思うと少し哀しくなってしまう、友里の目に浮かぶ涙。

 

 

「ど、どうしたの友里ちゃん!?」

 

「拓真ぁ……あたしは――あたしは拓真に渡したかったよぉ!」

 

「!」

 

 

友里はごめんと言って走り去ってしまう。

それを見て同時に走り出す夏美、向かうのは同じく渡せなかった司のところだ。

 

 

「司君! お願いがあります!!」

 

「な、なんだ?」

 

「皆のチョコを取り戻してください!!」

 

 

表情を変える司、確かにそうしたいのは山々だが――

 

 

「いやなんかこうホラ、あんまりチョコにがっつくと維持でも欲しいですみたいな焦ってる感じが何かこう――」

 

「何ちっちゃい事気にしてるんですか!」

 

「いっでっ!!」

 

 

司の背中を思い切り叩く夏美。

確かにバレンタインの時に男が気にしすぎる性格に変わるのは仕方ない事かもしれないが、これは自分達の問題だけと言う訳ではない。

世界中のチョコが奪われているのだ、この日に賭けていた人もきっといるだろう。その人の為にもチョコが奪われていい訳が無い!

 

 

「それに皆の愛情が詰まったチョコも取られちゃったんです! 当然、私のも!!」

 

「!!」

 

「司君は欲しいですか!? わ、私の……私の愛が詰まったチョコ!」

 

 

夏美は赤面しながらも強く言い放つ、その言葉を聞いて司の表情が確かに変わった。

彼は強く頷くと夏美の肩を軽く叩く、そしてディケイドライバーを取り出し他の男性陣を見た。

 

 

「皆! 俺たちも行こう!!」

 

「そ、そうだな!」

 

 

他の男性陣は司の言葉に同意を示すとバイクがある方向へと走っていく。

司も呆気にとられている拓真の背中を叩いて笑いかけた。何だかんだ言って心の中では皆同じ事を思っている、それはきっと拓真も同じだろう。

 

 

「いこうぜ、友里のチョコを取り戻そう」

 

「う、うん……!」

 

 

そのまま司は一直線へ彼女の所へと走る。

誰? それは簡単、彼女に動いてもらわないと困るからだ。そうやって司は咲夜の元へと走る。

 

 

「な、なんだ司」

 

「頼むぜ、お前だって分かってるだろ? あのままじゃ本当に消えちまう」

 

 

それだけだ、それだけ言って司は咲夜の元から離れる。

しかしその言葉に咲夜は大きくため息をついた、分かってると言った様子の彼女。

何やら気合を入れる様な動作をとると彼女もまた足を進める。

 

 

「……おい」

 

「――――」

 

 

彼女が向かったのは真っ白になっている男のところ。確かに本当に消えてしまいそうだ。

咲夜は彼の返答を無視する様にして独りでに話し始める、若干早口になっている所を考えると早く終わらせたいのだろう。

 

 

「実は、お前にもチョコは用意してある」

 

「―――――」

 

「でもやっぱり恥ずかしかった」

 

「……………」

 

「だからあんな電話をしてしまった。本当にすまない」

 

「…………ぃ」

 

「もし許してくれるなら――」

 

「………おい」

 

「!」

 

 

白い男は立ち上がる、その色を若干戻しつつ。

そしてもう一度咲夜のほうを見て強く言い放った。

再確認、先程の言葉は本当なのかと。本当に自分はチョコをもらえるのかと!

 

 

「あ……ああ、用意してある!」

 

「マジか……マジなんだな」

 

「あ、ああ。マジだ」

 

 

男は、守輪椿はゆっくりと息を吸い――

 

 

「うらっしゃあああああああああああああああああああああああ!!」

 

「!!」

 

 

司達が向かった方向へと走り出す椿、しかしココで全く違う方向へ行く者もいた。

良太郎だ、彼は校庭の隅で暗い表情を浮べているハナに声をかける。

話しかけられた事で反応するハナ、彼女はすぐに顔を反らしてうつむいた。気まずいのだろう。

 

 

「ど、どうしたの良太郎」

 

「うん……えっと――…あはは、何て言えばいいのかな?」

 

 

困ったように笑う良太郎、しかしすぐに真面目な表情になってハナを見つめる。

彼はまずモモタロスとウラタロスを呼んで、ハナに頭を下げた。

 

 

「!」

 

「デネブから事情を聞いたんだ」

 

「わ、悪かったよハナクソ女……」

 

「ごめんよハナさん」

 

 

ハナに謝罪するモモタロスとウラタロス、そして良太郎の言った言葉で意味を理解するハナ。

彼女は何故学校の外にいたのか? それは学校では捨てられない物を捨てに行ったからだ。

イマジン達を含めて用意したバレンタインチョコを。

 

 

「わ、わたしは……その――」

 

 

ハナは唇をかんで俯く。彼女はしっかりと皆の分のチョコを作っていたのだ、しかし自分はあまり料理が得意じゃない。

一応里奈達に手伝ってもらってマシにはなったが自信は無かった。味見はしたが葵やシェリーが作ったチョコには到底及ばない。

それに加えてモモタロス達が言っていた言葉。確かにユウスケを失神させてしまった事には悪いと思っている。

もしかしたらまた今回も良太郎を失神させてしまうのではないかと思うと怖かった。

 

 

「ごめん良太郎、わたしは――」

 

「ハナさん、お願いがあるんだけど……いいかな?」

 

「え?」

 

 

良太郎は言う、今まで運の悪い体質が災いしたのかどうかは知らないがバレンタインの類は姉以外からもらった事が無かった。

電王として戦っている間にもバレンタインはあったがそんな事を考えている余裕も無かったと。

尤もウラタロスに憑依された時はかなりの数のチョコをもらったが、それでも良太郎は姉以外からは別にいらないと思っていた。

 

 

「でも、ぼく始めて思ったよ。姉さん以外の人から貰いたいって……」

 

「え……そ、それって――」

 

「ハナさん、今からでもまだ間に合うかな?」

 

「……ッ」

 

 

良太郎は少し恥ずかしそうに頭をかいて笑う、今からチョコを取り戻せばまだ間に合うのかと言う事だ。

ハナは意味を理解するのに少しの時間をかけたが、全てを理解すると同じく恥ずかしそうに頬を染める。

 

 

「う、うん。いいわよ別に」

 

「そう……わかったよ」

 

 

良太郎は頷くとハナに背を向ける。

反応するモモタロス達、誰で行く? その言葉に意外にも良太郎は首を振った。

彼は自動操縦で目の前にやってきたマシンデンバードを確認するとライダーパスを取り出す。そして目の前を見据え言い放った。

 

 

「ぼくが行く」『LINER FORM』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、おにい! またヘンなのいっぱい来た!!」

 

「またかよクソッ! どうなってんだこの世界は!!」

 

 

大量の戦闘員で足止めしていたのにゴリゴリ減るわ減るわでもう大変!

おまけに変なバイクにのった奴等がさらに10人くらい追加されたではないか。

そこまでしてチョコが食いたいか、二人としてもイライラが最高潮である。

 

 

「妹! 行くか」

 

「わかったおにい! あいつ等をぶっ潰そう!」

 

 

二人は愛羅武勇の自動操縦をオンにするとハッチを開けて外に出る。

そして金羅は錫杖を取り出し、銀羅は巨大な金棒を取り出しそれぞれ空へと突き上げた!

 

 

「「変身!!」」

 

 

空が割れ、金と銀のエネルギーが双方を包み込む。

そしてそれが弾けた時、そこには二体の異形が姿を見せた。二人は飛行船から飛び降りディケイドとファイズの前に着地する。

それはどう見てもディケイド達と変わらぬ風貌、つまり――

 

 

「お前、まさか――ッ! 仮面ライダーか!?」

 

「しらねぇな。オレの名はゴルドラ、それだけだ」

 

 

ゴルドラは錫杖を構えてディケイドの方へと走り出す。

周りはショッカー戦闘員の相手をするのに精一杯で加勢は望めない様だ。同じくファイズの所にも銀のライダーが。

 

 

「アタシ、シルバラ。よろしくね!」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

「いい返事、でも潰しちゃうから!!」

 

 

シルバラは金棒を構えてファイズを狙う!

確かにアレに当たれば一撃でも危険だ、だが大降りと言う事もあって冷静になれば避けられるし隙も狙えるといったところ。

ファイズは拳を握り締めてがら空きになったシルバラの胸を狙うのだが――

 

 

「きゃ! ちょ、ちょっとエッチ!!」

 

「え!? あ! ご、ごめんっ!!」

 

 

相手が女性と言う事もあってかファイズの力が弱まる。

おまけに殴れる範囲も定まってくるなんてやりにくい、やりにくすぎる!!

そのクセ向こうは本気なのだからたちが悪い、シルバラは裏拳でファイズを殴り飛ばすと再び金棒を構えた。

 

 

「変態さんはやっぱり潰しちゃう!」

 

「ご、誤解だよ!!」

 

 

面倒な相手だ、ファイズは首を振って走り出すのだった。

 

 

 

 

 

一方のフォーゼとウィザード。

一対一の状態では優勢だった双方だがオヤコドンの高速移動とスイーツの拘束が合わさるとそうも言っていられない状況になる。

 

 

「ぐあッ!」

 

「ちぃぃいッ!」

 

 

クリームで足止めされてからの高速移動攻撃、クリームを避けようとしても高速移動のオヤコドンが邪魔をしてくる。

おまけにオヤコドンは中々接近戦もこなしてくるときた。巨大な割り箸で攻撃を受け止めて時には割り箸を割って二刀流で攻めてくる。

 

 

「うざい、高速移動が特に厄介だ!」

 

「そうだね、何とかしなきゃいけない」

 

「一瞬でもオヤコドンのヤツを止められればいけるが……」

 

「わかった、任せてくれよ」

 

 

ウィザードは指輪を付け替えてハンドソーサーを発動させる。

同時に認識させる指輪、行う魔法は――

 

 

『エキサイト・プリーズ!』

 

「むンッ!!」

 

 

ボンッ! と言う音と共にウィザードの体がムキムキに変わる。

そらもう凄いガチムチですわ、ってな具合に呆然と立ち止まる三名。

ウィザードはさらに決めポーズで筋肉を強調させる。

 

 

「!」

 

 

いち早く我に返ったのはフォーゼ。

そう言う止め方かよ! などと思いつつも素早くスイッチを発動させる。

いや、本当にもうちょっとまともな止め方あったんじゃないだろうか?

 

 

【カ・メ・ラ/オン】

 

 

カメラモジュールを装備してフォーゼはオヤコドンにロックを仕掛ける。

すぐにオヤコドン達も再び攻撃の準備に入るがもう遅い。

カメラモジュールで一度撮影した相手はどんなに早く動いてもその姿を確実に捉え把握できるのだ。

さらにフォーゼはレーダーモジュールを発動、カメラのデータを全てレーダーに転送させた。

 

 

「後ろか!」

 

『何ッ!?』

 

 

どんなに早く動いてももう逃がさない、フォーゼはオヤコドンを蹴り飛ばすと再びネットで捕獲する。

そして再びレーダーで捕捉、このまま一気に全てを調べ上げるとフォーゼは言う。

 

 

『お、おのれぇえええ……ッ!』

 

「魔法使い、少し時間を稼いでくれ」

 

「了解!」

 

 

ウィザードは再びスイーツと対峙する。

悔しいのかめちゃくちゃにクリームを発射してくるが同じ手は二度とくらわない、それを防ぐための魔法があるからだ!

 

 

『ディフェンド・プリーズ』

 

『ばかな!』

 

 

巨大な岩の壁が全てのクリームを防ぎきる。

さらに岩の壁はウィザードの姿を隠し、攻撃のタイミングを相手に知らせない役割も持つのだ。

戸惑うスイーツと魔法を発動させたウィザード、スイーツは音声でしかその存在を確認する事ができないのだから。

 

 

『ビッグ・プリーズ』

 

『なっ!! がああああああああああ!!』

 

 

巨大な掌底が壁をぶち破ってスイーツに命中する。

元々ランドの攻撃力も合わさって相当なダメージを与えられただろう。

スイーツは地面を転がり動きを止める、立ち上がろうとしてもふらついて無理のようだった。

 

 

「流石だな、コッチも解析終了だ」

 

 

データを確認するフォーゼ、なるほどと頷いて彼は情報をウィザードに告げる。

まずは相手の情報、スイーツドーパントとオヤコドンドーパント。互いに厄介な能力を持っているが同時に共通する弱点が存在した。

 

 

「火だ、奴等は炎に弱い!」

 

「!」

 

 

互いに強く頷きあうウィザードとフォーゼ。

二人は同時に新たな指輪とスイッチを取り出して発動させる。

 

 

「「さあ――」」

 

 

二人の声が重なり合う、雰囲気が変わり焦りを感じるスイーツ達。

だがもう遅かった、魔法と科学が全てを凌駕する!

 

 

「希望の逆襲を始めようか! 闇を照らす、炎の力!」『フレイム・プリーズ』『ヒー ヒー ヒー! ヒー!! ヒー!!!』

 

「証明開始だ!」『Fire』【ファイアァ/オン】

 

 

ウィザードはフレイムスタイルに、フォーゼはファイアーステイツに変身。

ウィザードは自らの攻撃に炎を纏わせるエンチャント、フォーゼはヒーハックガンから炎の弾丸をそれぞれ相手にぶつけていった。

 

 

『あ! あああああああ! や、止めろッ! 炎は止めろ!!』

 

『熱い! 熱いのはやめて――ッッ!!』

 

 

オヤコドンはフワフワのトロトロだからこそうまい、同時に炎が加わればその完璧なバランスが崩れてしまうじゃないか!

そしてスイーツも同じ、熱が砂糖を溶かしその芸術を邪魔してしまう。完成された食材をめちゃくちゃにする炎、二人が危惧しない訳が無かった。

オヤコドンは高速移動で二人を邪魔しようと試みるが――

 

 

「甘い!」『ディフェンド・プリーズ』

 

 

ウィザードの魔方陣が地面に出現してそこから炎が放たれる。

炎はフォーゼには影響を与えず、魔方陣の中にいる二体にのみ効果を齎した。

たとえどんなに素早く動こうが範囲攻撃からは逃げられないのだから。

 

 

『あ、熱いッ! フワフワのタマゴが硬くなる!!』

 

『か、体が溶ける! その炎を止めてぇえええ!!』

 

 

うろたえ動きを鈍らせる二体のドーパント、どうやらもう戦う程の力は無いらしい。

フォーゼはジェット噴射で空に舞い上がりドリルモジュールを発動、ウィザードは最後の指輪を付け替え発動する。

 

 

「安心しろ、終わりにしてやる」『ファイア』『ドリル』『LIMIT BREAK』

 

「ああ、夢の時間は終わりだ」『チョーイイネ! キックストライク!』『ドリル・プリーズ』『サイコォォォォォォォォォオ!!!』

 

 

助手がいたのならば彼女はきっとこう叫ぶだろう。

ダブルファイアードリルキィイイイイイイイイイイイイイイック!!

 

 

『ぐわああああああああああああああああああああああああッッッ!!』

 

『ああああああああああああああああああああああああああッッッ!!』

 

 

爆発、粉々に砕けたメモリが排出されて使用者は地面に倒れたのだった。

あたりを見ればオーズ達がほぼ全ての戦闘員を倒している、後は何とかしてチョコを取り戻せればいいのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァアアアッッ!!」

 

「ハッ!」『アタックライド』『スラッシュ!』

 

 

ゴルドラとディケイドは互いの武器をぶつけ合い責め合う。

シルバラがパワーならばゴルドラは技と言った所か、錫杖から光弾が発射されていきディケイドの装甲を削っていった。

 

 

「チッ!!」

 

「ダハハハ! そんなものかよ!!」

 

 

さらに錫杖は伸縮自在らしく、どんなに距離が離れていてもディケイドを狙うことができる様だ。

スラッシュだけでは分が悪い、ディケイドは次々に発射される光弾を防ぐことができずに地面を転がる。

 

 

「だったらこれだ!」『カメンライド』『ヒビキ!』

 

 

紫炎に包まれるディケイド、それがはじけた時ディケイドは響鬼へと変身する。

音撃棒を出現させて同時にカードも発動させる。アタックライド鬼火、紫の炎は光弾をかき消してゴルドラを包んだ。

 

 

「あぢぢぢぢぢぢぢ! 焼けるっての!!」

 

「同じ鬼の力、効いたか?」

 

 

炎をかき消そうともがくゴルドラにディケイドは音撃棒を打ち込んでいく。

ゴルドラも蹴りで応戦して何とか体制を立て直す事ができた。

錫杖と音撃棒の交戦がしばらく続き、ゴルドラは隙を見て全身を発光させる技を見せた。

 

 

「うっ!」

 

 

要はめくらまし、ディケイドの動きが鈍り大きな隙がうまれる。

そこへ打ち込まれていく光弾、さらに距離が一定に離れるとゴルドラは錫杖を思い切り地面へ打ち付ける!

 

 

「うおッ!!」

 

「ダハハハ! 動けないだろう!!」

 

 

衝撃波で鈍るディケイド。

そこへ伸張された錫杖が命中する。火花を散らすディケイドだが彼はただでは転ばない!

 

 

「!」

 

「へへっ! 悪いな、捕まえたぜ」『アタックライド』『ディスクアニマル!』

 

 

ディケイドは錫杖をしっかりと掴んでいた。

すぐに引き戻そうとするゴルドラだがその前に無数のディスクアニマル達が襲来、次々にゴルドラに突進をしかけていく。

 

 

「いででででででッッ!!」

 

 

ついに耐え切れず錫杖から手を離すゴルドラ、その隙を見てディケイドは錫杖を彼から奪い取る。

さらにカードを発動、ディケイドの体が響鬼からクウガへと変身する。

次に発動するのはもちろんフォームライドであるクウガドラゴン、錫杖は文字通り長い物なのだから。

 

 

「えええええええええええ!!??」

 

 

クウガの力で彼の錫杖がドラゴンロッドへと姿を変えた。

武器が無くなり驚きの声をあげるゴルドラ、これで勝負は一気にディケイドが優勢となったろう。

ゴルドラは特殊能力ありで戦うライダーなのだから。

 

 

「ちょ! お前オレの錫杖になんて事を!!」

 

「ハッ、このまま鬼退治と行くか! 変身!!」『カメンライド・デンオウ!』

 

 

ディケイドの周りに装甲が現れて装着、クウガから電王ソードフォームに変身を完了させた。

アタックライドでデンガッシャーを召喚させ、ディケイドは走り出すのだった。

 

 

「でりゃあああああッッ!!」

 

「ッ!」

 

 

一方のファイズ、シルバラの攻撃をかわしつつ攻撃を仕掛けていくがどうにも力を込められない。

向こうもそれが分かってきているのか怒涛の攻撃をしかけてくる。防御はできない、くらった時点で致命傷になるかもしれないからだ。

 

 

「ちょこまかと鬱陶しいわね! 動きよ――止まれッ!!」

 

「!」

 

 

思い切り金棒を振り上げるシルバラ、ファイズは回避の準備を始めるが甘かった。

何故ならこれは普通の攻撃ではない、シルバラは地面に金棒を叩きつけて衝撃波を発生させたのだ。

地面が揺れて動きが鈍るファイズ、そんな好きだらけの彼めがけシルバラは金棒を振るう。

やられる!? ファイズはそう思う。しかし――

 

 

「いだだだだだッッ!! 何? 何よもう!!」

 

「ッ!」

 

 

上空からオートバジンが現れてガトリングを発射し援護を行う。

その隙にシルバラから離れるファイズ、彼もまたファイズフォンを取り外して銃弾を打ち込んでいった。

だがすぐにシルバラは金棒を盾に突進してくる、銃弾は金棒を通さない。

ならばとファイズはフォンを再びセットし、オートバジンはファイズサウンダーを展開させた。

 

 

『READY』『Exceed Charge』

 

「な、なによコレッ! うるさああああい!!」

 

 

クリムゾンレイが発動、オートバジンから放たれる衝撃波がシルバラの動きを停止させる。

その隙にファイズはメモリをフォンから抜き出しポインターにセットした。

 

 

『READY』

 

 

ファイズポインターを足に装着してファイズはアクセルメモリーをフォンに装填する。

コンプリートの音声と共に胸部装甲が展開、体の色が黒に、複眼が赤に染まる!

 

 

『Start Up』

 

 

ファイズアクセル、10秒間のショータイムが今幕を開けた。

ファイズは飛び上がると次々にポインターをシルバラに命中させていく。

シルバラはまだ自分がロックオンをされている事にも気がついていないだろう。

ファイズは彼女をロックオンした後に一旦地面に着地する。

 

 

「その……なんていうかごめんなさい!」

 

 

頭を下げた後に飛び上がるファイズ、女性に当てるのだから手加減しつつもそこはしっかりと。

 

 

「やあああああああああああッッッ!!!」

 

「きゃああああああああああ!!」

 

 

次々に命中していくクリムゾンスマッシュ、最後の一撃を受けてシルバラは大きく吹き飛んでいった。

そして地面を転がる彼女に刻まれるΦの刻印、もう一度彼女の体にダメージが流れ込んでくる。

 

 

「妹! 大丈夫か!!」

 

 

ゴルドラ達もまたそれを確認、しかしどうやら妹の心配をしている暇は無い様だ。

武器を持たない彼には流石に厳しい状況、デンガッシャーとライドブッカーの二刀流になすすべなくダメージを上乗せされていく。

 

 

「おらぁああああッッ!!」

 

「おっと!!」

 

 

ディケイドの突きを見抜き、受け止めるゴルドラ。

剣先はわずかにゴルドラに届かぬと言う位置で停止する。

 

 

「へへっ、セーフ!」

 

 

どうだと言うジェスチャーを行いディケイドを挑発するが――

どうやらそれも甘かった様だ、ディケイドは仮面の奥でニヤリと笑いカードを発動させる。

 

 

「アウトだよ!」『ファイナルアタックライド』『デデデデンオウ!』

 

「って、うおおおおおおおおおおおおお!?」

 

 

デンガッシャーの刃部分が射出されてゴルドラの身を捉える。

おまけにドリルの様な回転を加えて彼をどんどんと押し出していった。

加えて剣を振るい刃を移動させるディケイド、そのまま二度程度ゴルドラを切り裂き一気に吹き飛ばした!

 

 

「あでええええええええええええええええッ!!」

 

 

シルバラとゴルドラは互いにぶつかり合い変身が解除されてしまう。

ディケイド達はこのままチョコを取り戻そうと動き出した、周りを見るが戦闘員は全て皆が倒してくれている。

勝った、そう思ったのだが――

 

 

「きょ、今日はこのくらいにしておいてやる! なあ妹!」

 

「そ、そそそうね! じゃあ早くチョコ貰って帰りましょ!」

 

「なっ! おい待てよ!!」

 

 

突如猛スピードで空へ舞い上がる兄妹、それは愛羅武勇の吸引を発動させたからだった。

やられた、まさかその力も自動で発動できたとは! ディケイド達は手を伸ばすが誰も兄妹には届かない。

そのまま二人は愛羅武勇に乗り込みチョコを奪ったまま移動を開始する。このままでは逃げられる可能性が高い!

空を飛べるブレイドやクロックアップが使えるカブトが止めようかと前に出るが――

 

 

「させるかってーの! やったれ妹!」

 

「はいポチッとね☆」

 

 

銀羅がスイッチを押すと愛羅武勇の装甲が展開、巨大な扇風機が出現したではないか。

そしてすぐにそこから強風が発射、絶大な抵抗をディケイド達に与える!

 

 

「クソッ! これじゃあまともに動けない!!」

 

「野郎! このまま逃げる気か――ッ!?」

 

 

ブレイドの言うとおり、彼らは強風でディケイド達を足止めしつつどんどん小さくなっていく。

そして彼らの前に現れたオーロラ、やばい! アレを通過された時点でゲームオーバーだ!!

 

 

「くそッ! おれはな――ッッ」

 

 

クウガは思う。

あのいつもサバサバしている薫がチョコをくれたんだ。そんな彼女のチョコが奪われる?

 

 

「ッ! 僕は――!」

 

 

アギトは思う。

いつもバレンタインには葵からチョコをもらうのが決まりになっていた。

同時にそれを楽しみにしていたんだ!

 

 

「ふざけんなッ! オレは――」

 

 

龍騎は思う。

がさつな性格の美歩がチョコケーキなんて凝った物を作ってくれたんだ!

 

 

「ぬおおおおおおおおおおお!! 世界中のリア充達よ、今こそ我に力を!!」

 

 

ブレイドは思う。

やっと……やっとチョコがもらえんねんで!!

 

 

「僕は――ッッ!!」

 

 

響鬼は思う。

ずっとほしかった彼女からのチョコ。今その夢が現実になったというのに!

 

 

「覚えておけ、俺は――」

 

 

カブトは思う。

かわいい可愛い、それはもうとても可愛い妹が……もう一回くらい言っておこうか?

それはもうとても可愛い可愛い妹が作ってくれたチョコなんだと!

 

 

「うおおおおおおお!! ボクはなぁ!!」

 

 

キバは思う。

里奈ちゃんのチョコ! 里奈ちゃんのチョコ!! 里奈ちゃんのチョコォオオオオオオオオオッッッ!!!

 

 

「僕はもう自分に嘘はつかない!!」

 

 

ファイズは思う。

大切な幼馴染の彼女が作ってくれたチョコを諦められるわけが無い。

彼女が自分の為に作ってくれたその思いを!!

 

 

「まだ間に合うよね、ハナさん!」

 

 

電王は思う。

彼女の為にも、皆の為にも……そして自分の為にも――!!

 

 

「俺はなぁ……いや、俺達はなああああああ!!」

 

 

ディケイドは思う。

そして彼が思っている事は皆が思っている事でもあるのだ。

彼らの心はただ一つ、そう皆の心は今一つになっている!

 

 

「俺達はなぁあああああああ!!」『ファイナルカメンアタックフォームライド――』

 

 

クウガ、アギト、龍騎、ファイズ、ブレイド、響鬼、カブト、電王、キバはそれぞれ己を示すポーズをとった。

同時に現れる彼らのライダークレスト、ディケイドはそれを確認すると代表で一同の総論を述べる。

 

 

「チョコが欲しいんだよぉおおおおおおッッッ!!」『ディディディディケイド!』

 

 

10の紋章が出現、一同は手をかざし愛羅武勇を狙う!

 

 

「ライダーッッ! シンドロオオオオオオオオオオオオムッッ!!」

 

 

10人の声が重なり合い紋章が発射、円を描く紋章たちは愛羅武勇を囲みながら激しく旋回する!

何だ!? どういう事だと目を見開く金羅と銀羅、二人はスピードをあげるが紋章達はピッタリと後をついている。

もう少しでオーロラと言うところなのだが――

 

 

「へ?」

 

「嘘……」

 

 

ポン☆! とファンシーな音がして愛羅武勇が茶色く染まる。

いや色が茶色になったのではない、中身も全て何やら何まで茶色と言うか甘い匂いと言うか。

なんだか機械の素材じゃなくなったみたいだ、一言で言うならばつまりコレは――

 

 

「「ドえええええええええええええええええッッッ!!」」

 

 

チョコである。愛羅武勇がチョコに変わった!!

 

 

「おにいコレ――ッ!! やばいって!」

 

「だあああああああ! どうなってんだコリャ!?」

 

 

プロペラもボタンも椅子もシートも、エンジンもアクセルも機体全てがチョコになってしまったではないか!

当然チョコに空を飛ぶ機能は無いわけで、そうなると辿る結末はただ一つ。

ザ☆墜落である。

 

 

「「いやあああああああああああああああああッッ!!」」

 

 

いやそれだけでは無かった。

空に掛かる金色のレール、そこを滑ってくるのはデンライナーのオーラを背負った男である。

レッカ、イスルギ、レッコウ、イカズチ、全てのデンライナーを纏いライナーフォームはデンカメンソードを振るった!!

 

 

「電車切りッッ!!」

 

「「にゃあああああああああああああああああああああ!!」」

 

 

何故か爆発する愛羅武勇、粉々になったチョコと吹き飛んでいく金羅と銀羅。

二人は抱き合いながら涙を浮かべ、ありったけ叫ぶ。

 

 

「「覚えてろおおおおおおおおおおおおおおお!!」」

 

 

小さくなる二人。

そのまま空の彼方に消え、キラリと光り去った。

落ちてくる超巨大な風呂敷はアギトとウィザードが嵐をクッション代わりにして受け止める。

さらに不思議な事が起こった、電王が切り裂いたチョコの塊がなんと一つ一つ包装されてゆっくりと振ってきたのだ。

まるでそれは雪の様、チョコが空から降ってきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「昔バレンタインチョコをあげた人にクソ不味いゴミ渡すなよって言われて……」

 

「俺の家は料亭なんだけど親が厳しくて……いつも親子丼の勉強ばっかさせられて青春なんて遅れなかった」

 

 

スイーツドーパントになっていたのはこの街のパティシエの女性、そしてオヤコドンドーパントは同じく町の料亭の息子。

どうやら双方バレンタインにいい思い出が無かったらしく、ガイアメモリを金羅達から渡されたとの事だった。

スイーツはお菓子を操れるらしく、中に下剤をまぜたとか。そしてオヤコドンは高速移動でチョコを親子丼に摩り替えて行ったのだ。

チョコの店を襲ったのは金羅達だ、どうやら相当チョコが食べたかったらしい。

 

 

「やれやれ、ガイアメモリは玩具じゃないんだ。そんな軽い気持ちで手にするものじゃないよ」

 

 

ゼノンはそういいながら振ってきたチョコをキャッチする。

同じく女性達の所に振ってくるチョコ、彼女達はそれを見ながら苦悶の表情を浮べていた。

どうやら過去のことを思っているのだろう、男性は涙を浮べて歯を食いしばる。

 

 

「くそぅ、一回でいいからチョコをもらいたかったな……ッ」

 

「………」

 

 

その言葉を聞いて女性は目の前に振ってくるチョコの一つを手に取る。

そしてそれをゆっくりとだが男性へと差し出した、呆気に取られる男性に女性は申し訳なさそうに口を開く。

 

 

「も、もしよかったら……どうぞ」

 

「あ――ありがとうございます」

 

 

男性は怯みながらもチョコを口に入れた。

すると――

 

 

「う、うまい!!」

 

「え……?」

 

「ほら! アンタも食べてみなよ!!」

 

 

男性もまた同じようにチョコを掴み女性に差し出す。

女性は戸惑いつつも頷きチョコを口に入れた。すると表情が一気に明るくなる女性、確かにおいしいと笑って見せた。

 

 

「そ、そうだ! もしよかったら今度私のお店……来てください! このチョコを使って何か作りますから!」

 

「え? あ、ああ! だったら今度俺の店にも来てくれよ! 最高の親子丼をご馳走するぜ!」

 

 

などと盛り上がる二人。

よく見れば互いに顔が赤いじゃないか、これはもしかするともしかするかもしれない。

しかしその様子を見て首をかしげるゼノン。ちょっと待ってくれ、何でコイツらいい雰囲気になってるんだと。

 

 

「ガイアメモリの副作用が効いていない? 何で……」

 

「恐らく、このチョコを食べたからだと思います」

 

「?」

 

 

シャルルもまた振ってくるチョコを掴んで口に入れている。

おいしいと呟く彼、きっとこのチョコには呪いを破壊する力があると言った。

いやきっとその筈だ、これが――

 

 

「バレンタインの奇跡なのでしょう」

 

「うーん、よく分からないけど――」

 

 

ま、いっか!

ゼノン達はそう笑うと二人に背を向けて歩き出すのだった。

もうこの世界でやる事もない、彼らはオーロラを出現させると中へ消えていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぉおおおおおおおおおおおおおお!! チョコおおおおおおおお!!」

 

 

 

校庭、一同は奪われたチョコを全て取り返して戻ってきた。

椿はよっぽど嬉しいのか広い校庭をはしゃぎ回っている。それぞれが安堵している中、良太郎はハナにチョコが戻ってきたことを告げた。

 

 

「コレ、ハナさんがつくったヤツだよ」

 

「う、うん……ありがとう」

 

 

バスケットに入った数々のチョコ、包みの色を見ればどれを誰にあげるのかが分かった。

ハナは緊張した面持ちながらもしっかりチョコを受け取ると、改めてイマジン達に一つ一つチョコを渡していく。

 

 

「わりぃなハナクソ女、ありがとよ」

 

「ありがとハナさん、大切に頂くよ」

 

「しっかりもろたで、ありがとうな!」

 

「うわーい! やったーっ!」

 

「おお姫! ありがたき幸せ!!」

 

 

イマジン達はお礼を言うと散り散りになっていく。

ハナは隣にいたデネブにもチョコを渡した、彼にも手伝ってもらった訳だから用意するのは当然だろう。

デネブは震える声で礼を言うと目を覆う。泣いてるのだろうか?

 

 

「ありがとうハナちゃん、じゃあ俺は戻ってるよ」

 

 

そう言ってデネブもまた踵を返して歩いていく。

あっと言う間に良太郎と二人だけになる状況、きっとウラタロス辺りが言って空気を呼んでくれたのだろう。

ハナはその気遣いに感謝しながら良太郎に向き合った。

 

 

「あの…りょ、良太郎!」

 

「うん?」

 

「コレ……あげるッ!!」

 

 

ハナは両手で突き出すように良太郎へチョコを渡した。

笑顔でお礼を言ってチョコを受け取る良太郎、食べてみてもいいと言う事だったので彼は早速チョコをかじる事に。

 

 

「ど、どうかな? 失敗してると思うけど――」

 

 

ハナが心配そうに見つめる中、良太郎は笑顔で彼女に微笑みかけた。

 

 

「ううん、とってもおいしいよ。ありがとうハナさん」

 

「―――! う、うん!!」

 

 

ハナは嬉しそうに頷くと、最高の笑顔を良太郎に見せるのだった。

そして最後に小さく呟く。

 

 

「良太郎……ありがとう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「友里ちゃん!」

 

「あ……拓真――ッ」

 

 

友里の元へと戻った拓真、その手には彼女のチョコが。

拓真はチョコを彼女に返すとゆっくりと話し始める。

申し訳なさそうな、そして不安を持った拓真の表情に友里も注意を向ける。

 

 

「僕……当たり前だなんて思ってないよ」

 

「え?」

 

「友里ちゃんから今年ももらえるのかなって、毎年ビクビクしてた」

 

「!」

 

 

拓真はそれだけ言うと一方後ろに下がって友里を見る。

投げかける言葉はただ一つ、それを貰ってもいい? その言葉に強く頷く友里、何度も何度も頷いてチョコを拓真に差し出した。

 

 

「あたしも……その、ずっと当たり前だなんて思ってない!」

 

「っ?」

 

「コレは……ずっと――ッ! ずっと変わらないあたしの気持ちだから!!」

 

 

友里は拓真にそれだけ言うと一気に走り去ってしまう。

口をあけたまま固まる拓真、ずっと変わらない気持ち? 不思議に思いながらも拓真はチョコの包みを開けることに。

何故か今年のものは今までのより大きいような気がするから気になったのだ。

 

 

「!!」

 

 

中に入っていたのはチョコなのだが――

赤面して笑う拓真、流石にコレは初めての経験だった。

まさかハート型のチョコで真ん中にLOVEなどと書かれているなんて思っても見ない事、しかしそうなると先程の言葉の意味が気になる所である。

願わくばそうであってほしい、拓真はもう一度静かに微笑むとチョコを食べ始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

屋上、そこにいたのは司と夏美。

 

 

「んー、皆うまくいったみたいだな」

 

「そうですね、よかったです」

 

 

そう言いながら夏美はチラチラと隣にいる司を見る。

彼は今友里と同じくハート型のチョコを見ている所だった。

友里が自分だけでは恥ずかしいと言ったので自分もそうしようと思った訳だがいざこうなると恥ずかしいものがこみ上げてくる。

そしてついに司はチョコを口に入れる。

 

 

「どう……ですか? 司君」

 

「うん、うまい」

 

「本当ですか!」

 

 

夏美はニヤニヤと笑うとガッツポーズを決める。

いくら友里に合わせる様に乗ったからといってその気持ちが全く無いのならあの(ハート)にはしない。

それを司は理解しているのだろうか? 彼はこのチョコの感想を総じて言う。

味が特別うまいわけではない。香りが特別ではない、全ての事について上がきっといるのかもしれない。

しかしそれでも彼女が自分のために作ってくれた言う気持ちが何よりも嬉しかった。

司はニヤリと笑うと受け取ったチョコを見る、友里よりかはかなり歪なハートなのがまた考え深い。

 

 

「お返し、期待してますよ」

 

「ハッ! ちゃっかりしてるぜ」

 

 

二人は少しだけ頬を赤くして、しかしそれでも楽しそうに笑いながら沈む夕日を見つめるのだった。

 

 




はい、とまあそんな感じでした。
最初はこの話の後に続けて、本来この位置に更新していた拠点紹介の番外編を載せようかなと思ったんですけど、今は止めようかなと。

と言うのも移転前ではチラチラ言ってたんですが、この次の編と言うか章が終わった後に、別連載枠でそこそこ長めの特別番外編をやろうかなと思ってるんですよね。
要するにライダーで言う劇場版みたいな感じですか。パラレル要素が少しあるけど、本編と繋がっており、でもどこのタイミングで繋がるのかはあやふやな感じです。

番外編と言ってもいつものギャグみたいなヤツではなく、普通に真面目? な感じですけども。
まあ鬼太郎同じくボーカロイドのキャラクターが出てくるんで、知らない人は申し訳ないですけどお付き合い頂ければなと。

それで最初の話に戻りますが、拠点紹介の番外編はどうするのか? ってのは。
特別編が連載されている時は、コチラの方が放置と言う形になってしまうので、特別編連載時に適当なタイミングでコッチに掲載します。
あと同じく前のサイトでやらせてもらっていた時に、椿達が小説を書くっていう番外編が二つあるんですけど、それもタイミングを見てコチラの方に掲載できればなと思ってます。

まあまた後書きか活動報告の方でアナウンスは入れるので、特に難しくは考えないでもらえればと。
ではでは

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