仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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前にも書いたんですが、文字数だとか切り所の都合で二話に分けました。
ただ長引かせるのも何なので、今回は二話更新ということで。


第57話 VS邪神(前編)

 

 

「始まったね」

 

「………」

 

 

邪神の巨大な身体は今現在妖狐が周りの景色に幻術をかけて隠している。

コレで人間にはあの姿を知られる事は無いだろうが、万が一と言う可能性もある。

求められるのは一刻も早い決着か。

 

平地が見える丘で事情を知っている全ての妖怪達はその光景を見ていた。

多くの者が恐怖で震えている、あれだけいた河童兵達もすべてうずくまって震えていた。

邪神をみることもできずに、ただそこに震えるだけ。

 

考える、ここで邪神を攻撃しなければまだ許されるのではないかと。

なぜならほぼ全ての妖怪が邪神の勝利を確信しているからだ。

誰もがそれを疑わない、誰もがその未来を思い描いていた。

それは現実に変わる、変えられる歴史。

 

 

「なんと禍々しい姿か……」

 

 

ぬらりひょん達もまたそれを確認していた。

自分達は何をするべきなのか、どうすればいいのか。迷う心と恐怖、邪神に勝てるのか?

誰も分からずにその場に立ち尽くす。動こうと思っても足が言う事を聞かなかった。

 

 

「戦うだけさ」

 

「………」

 

 

鬼太郎は言う、他の七天夜達を見て彼はもう一度戦うだけと。

世界を邪神なんかに壊されてたまるか、地獄童子や陽もその言葉に頷いた。

振り返る鬼太郎に映る邪悪な神。早く行かなければ、彼らもまた飛び出していく。

 

 

「勝てるものか……! あの化け物に――」

 

 

そんな声が辺りから聞こえてくる。

沈黙する総大将、するとまた声が聞こえてきた。一同の視線がソコへ集中する。

 

 

「勝ちますよ!」

 

「!」

 

 

迷い無い声、それを放ったのは夏美だった。

戦えない彼女達はココで仲間が戦っているのを見る事しかできない。

 

 

「勝ってくれる。亘君に私の魔皇力をありったけあげたから」

 

「うん……そうだよ…お兄ちゃん達は強い…もん!」

 

 

里奈も真由も頬を膨らませてそういいきる。

一体どこからそんな自信が湧いてくるのやら、酒呑童子達は真由にそう聞いた。

結果、真由の答えは『お兄ちゃん』だからと言うもの。意味が分からないと嘲笑する酒呑童子、しかし隣にいる葵は優しい笑みを浮かべて。

 

 

「必ず勝ってくれる。私達はそう、信じるだけですから」

 

「信じる事……か。それもまた確証は無い」

 

「信じてくれる人がいるって、嬉しい事ですよ?」

 

 

彼女達は司達の勝利を何よりも信じた。

夏美達は遠くで戦うディケイドの姿を見て表情を強張らせる。

昔お化けが怖くて震えていた夜があったっけ。その時に貴方は自信に満ちた表情でいつも言っていた――

 

 

『ヒーローが助けに来てくれるから安心しろよ!』

 

 

だってヒーローはピンチになれば必ず助けに来てくれる。

そして――

 

 

『絶対に負けないんだから!』

 

「ですよね、司くん……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!」」

 

『カメンライド・ファイズ!』『アタックライド・イリュージョン!』『フォームライド・ファイズアクセル!』

 

 

ファイズとディケイドファイズは同時にフォームチェンジ。

さらにイリュージョンの効果によって計四人のアクセルフォームが完成する。

超高速のファイズ達は一気に邪神へ距離を詰めて――

 

 

「「「「「グゥゥゥゥウウゥゥウウウゥゥウゥゥゥゥウゥウウウウッッッ!!!」」」」

 

 

邪神に降り注ぐ紅の雨。

巨大な体の為に邪神には多くのポインターが命中していった。

その姿はまるで赤いハリネズミ、動きを止める邪神に四人のファイズは一勢にとび蹴りをしかけていく。

衝撃とエネルギーが邪神の身に刻まれ、そして動きを止めると言う事はそれだけ隙が生まれる事と同じ。ライダー達はそのまま一気に邪神の間合いに近づいた。

 

 

「ハァァァアアアアア―――……ッッ!!」『ストライクベント』

 

 

構える龍騎の周りをドラグレッダーが激しく旋回する。

ドラグレッダーは咆哮を上げて邪神を見た、ドラグレッダーよりサイズは一回り大きいがソレでも怯まずに叫びを上げる。

目が光る、気に入らないとドラグレッダーが叫んでいる様だった。

 

 

「ダァアアアアアアアアアアアアアッッッ!!」

 

 

邪神の全身に刻まれるΦの刻印、そして着弾する紅蓮の炎。

まだ終わらない、ブレイドはサンダーを発動させて邪神の全身に雷を浴びせる。

さらにビートとタックルを連続で使用、邪神に物理的なダメージを連続で与えていった。

しかし――

 

 

「「「「ガグァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」

 

「「「「ゴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」

 

 

邪神の咆哮と共に粉々に砕けるΦの紋章。

さらにその衝撃でブレイドや周りにいるライダーも吹き飛んでいく。

邪神はそのまま龍騎を睨む。ぶつかり合うのはドラグレッダーと邪神の眼光、目障りな光だと邪神は口を光らせる。

このままならば確実にドラグレッダーは死ぬのだが――、そこでまた邪神にとって目障りな光が。

 

 

「さあ、ここでゲストの登場だ」『サモンゲート!』

 

 

ディエンドはさらにカードを発動させてゲートを開く。

灰色のオーロラを超えてくるのは手にした絆、絶望を砕こうと集まった仲間達。

 

 

『真志君ッ! ドラグレッダーッッ!!』

 

 

声が聞こえたかと思うと龍騎のデッキが光り輝く!

意味を理解したのか龍騎はデッキから一枚のカードを抜き取った。

直後に龍騎を包む炎、音を立てて割れる炎、そこにいたのは――

 

 

【サバイブ】

 

 

ドラグレッダーはドラグランザーに、龍騎は龍騎サバイブに。

それは理の欠片に現れた城戸真司が送ったエールが生んだ力だった。

 

そして今またココに命の輝きを力に変えた龍騎が姿を現す。

彼はドラグランザーに飛び乗ると邪神の炎を紙一重で交わしていく。

掠る黒い炎、構うものかとドラグバイザーツバイの引き金を引いていく龍騎。

一方さらにディエンドライバーから放たれる音声、新たなるゲートが開かれる。

 

 

『イクサ!』『サガ!』

 

「サガ行くぞ、この世界を守るんだ。変身!」

 

「ああ、そうだな。亘や里奈の絆を守ろう。変身!」

 

 

ディエンドライバーからデータが発射、データが姿を変えて二人が現れる。

イクサとサガはキバの元へ駆け寄ると邪神に向かって武器を構えた。

 

 

「ボクに力を!」『全員集合ッス! ドガバキフォーム!!』

 

 

宿命の鎖を解き放ち、キバはドガバキフォームに姿を変える。

キバとイクサ、サガは頷きあうと走りだしていく。目障りな鎖は全て吹き飛ばすまで。

 

 

「邪悪な神よッ! 許す訳にはいかないッ!」

 

 

ジャコーダを伸ばして邪神を縛り上げるサガ。

あれだけの巨体だ、すぐに引きちぎられそうになるだけでなくサガの体も吹き飛ばされそうになる。

それを阻止する為にイクサとキバは飛び道具で邪神を攻撃、しかしほとんど効いている気がしないが、それでも動きを止める役割になればと彼らは引き金を引く。

 

 

「重力プラス!」

 

 

サゴーゾが邪神を重力の檻に閉じ込める。邪神の巨大な体が地面にめり込み、動きを完全に封じた。

放つ炎も重力の力によって軌道がぶれる、当然サゴーゾにかかる負担も大きいが彼は歯を食いしばって重力を付与しつづけた。

苦しそうにうめき声をあげるサゴーゾ、邪神の抵抗力もそれなりらしい。

 

 

「すまねぇ! もう少し踏ん張ってくれよッッ!!」

 

 

光の銃弾を放ち続ける龍騎、先ほどから何発も邪神に命中させていく。

他のメンバーもできるだけ銃弾を邪神に当てて動きを止める様に動いていった。

そして――

 

 

「うあ゛ッ!」

 

 

ついにサゴーゾの力が切れて彼は膝を着く。

さらにサガの拘束も引きちぎられて、邪神は再び活動を開始する。

八つの龍がそれぞれ別の方向を見て咆哮をあげた。巨大な体から放たれる衝撃にライダー達は怯み、そこへ襲い掛かる闇の炎。

地面が、空間が、世界が破壊されるがごとく黒き爆発を上げる。

 

 

「ウワアアアアッッ!!」

 

「―――クソッッ!!」

 

 

爆風で吹き飛ぶサゴーゾと龍騎、ドラグランザーと共に地面に叩きつけられた。

ブレイドはタイムを発動して何とか攻撃をかわしたが、近づいた何人かがダメージを追ってしまう。

だがすぐに反撃の爆発、見ればジェットスライガーから第二陣のミサイルが発射されている所。

邪神はすぐに体を大きく振るい爆煙をかき消す、すると間近に構えるファイズとデルタ。

 

 

「拓真ッ! 愛の共同作業だね!!」『READY』

 

「……もっと平和なのがいいな」『READY』

 

 

二人は同時にショットへメモリを装填。ファイズはエンターを、デルタは音声認識でエネルギーを供給していく。

赤と青白い光がそれぞれのショットに満たされていき、それぞれは顔を見合わせて頷いた。

邪神が叫びを上げてコチラに首を向かわせる、二人を噛み砕くつもりだ。

だがその前に――!

 

 

「「くらえッッ!!」」『『Exceed Charge』』

 

「「「「グオォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」」」」

 

 

ダブルグランインパクトがアッパーで炸裂する。

首が上に吹き飛び、衝撃で苦痛の声を上げる邪神。

それぞれの紋章は現れず追加攻撃は望めなかったがダメージとしては期待できそうなもの。

だが二人は手ごたえこそ感じつつも、現実は動きを止めない邪神である。すぐに別の首が動き出すのだ、歪な口を開き二つの首がそれぞれを喰らおうと襲い掛かった!

 

 

「「ッッ!! ――………!」」

 

「「?」」

 

 

ガキンッ! と牙がかみ合わさる音が辺りに響いた。しかし辺りをしきりに確認する邪神。どうやら手ごたえ、いや歯ごたえが全く無かった様だ。

それはその筈、ファイズもデルタももうそこにはいないのだから。彼らは音速の閃光が抱えていった、赤と青の閃光が。

 

 

「ありがとう鏡治くん」

 

「サンキュー双護!」

 

「ああ、グッジョブだぜ拓真ッッ!!」『Clock Over』

 

「ああ、問題ない」『Clock Over』

 

 

それぞれ抱えられて着地するファイズとデルタ。

同時にプットオンを発動するカブトとガタック。フォン、ムーバー、クナイガン、バルカンと四人は邪神に飛び道具をぶつけながら後退していく。

悲鳴のような叫びをあげる邪神、多少は効いてくれればいいのだが。

 

 

「「「「「「「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!」」」」」」」

 

 

だがやはりそう簡単にはいかせてくれないというもの。

再び邪神から放たれる炎の雨、先ほどよりも数が多くファイズ達の弾丸を簡単にかき消してきた。

回避は難しいかと皆は思う。自分の体よりも何倍も巨大な炎の群れだ、防御も並大抵の物ではない。

だが龍騎はその時に一枚のカードを発動した。

 

 

『シュートベント』

 

 

ドラグランザーが咆哮をあげると、邪神の体に幾重もの紋章が出現。

龍騎の紋章は互いに重なり合う程の量であり、邪神も自分の体に刻まれた多くの刻印に思わず動きを止めた。

それは命の炎が目指すべき場所達なのだ、あんな濁りきった炎達が歩みを邪魔していい道理などどこにあろうか。

 

 

「テメェの炎はオレ達がかき消すッ!!」

 

 

龍騎の宣言と共にドラグランザーと龍騎の周りに、紋章の数に呼応した火球が出現する。

瞬時に龍騎はツバイを邪神の方向に向けて引き金を引いた。ツバイから放たれる光線、そしてドラグランザーの口から放たれる炎、同時に発射される無数の火球達!

それは邪神が放つ炎の群れにぶつかり合い攻めあう。ぶつかり合った炎は均衡を保つと思われたが――

 

 

『ドラグランザァアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 

「ぶち抜けぇえええええええええええええええッッッ!!」

 

 

龍騎と真司の声がすぐにその均衡を打ち破った。

邪神の炎を龍騎の炎が貫き、そのまま炎達は紋章に吸い寄せられる様に着弾していく。

吼える邪神。着弾する炎に苦しむだけでなく、彼の体がステンドグラス状に変わっていくではないか。

 

 

「目が16個もあれば嫌でも目につくよなぁッッ!!」

 

 

気がつけば辺りは夜、巨大な紫の月が見えるそこでトゥルーアイが邪神を捕らえる。

どんなに巨大な体だろうが、どんなに強い力だろうが、どんなに神の名を背負う者だろうが――

誰も、何んであれ、それがたとえ神だろうと、逃げられない。逃がしはしない。

 

 

「全てを砕く槌よ!」

 

 

サンダースラップをキバは発動、紫電の拳が炎に包まれるステンドグラスにぶつかっていく。

一度では砕けないが、キバは何度もハンマーをふるって拳をぶつけていった。

美しい破片が飛び散る、そこへ剣を構えて走り出すのはゼロノス。彼女は大剣を振るってステンドグラスを豪快に破壊していく。

 

 

「大人しくぶっ壊れなさいッッ!!」

 

 

荒々しく、だが美しく。ゼロノスが発動した緑の力で鮮やかな放電が始まる。

加勢に入るファムとディケイド。アクセルベントで連続突きを繰り出すファム、ますます破片が美しく舞っていく。

ブレイドにカメンライドしたディケイドは二刀流でゴリゴリとグラスを削っていった。

 

 

『Complete』

 

 

連撃重ねるようにして降り注ぐ光の雨、翼を広げた天使がステンドグラスと映り幻想的な光景を演出する。

デルタエンゼルが発射する無数の光線と龍騎サバイブの火球で完全に邪神の姿が消える。

ライダー達でさえその姿を確認する事は難しいだろう。眩い光がフィールドを包み込んでいく。

 

 

『スキャニングチャージ!』

 

 

そんな光の中を駆け抜けていく光。

ラトラーターは必殺技であるガッシュクロスを発動させて邪神を高速で移動しながら刻んでいった!

 

金色の輪をかいくぐり攻撃を行うラトラーター。

そしてそれぞれはフィニッシュの一撃を放ち、ステンドグラスを完全に粉砕する。

通常ならここで砕けてゲームセットだろうが現れるのは、事もあろうにそのままの形を完全に形成している邪神。

 

 

「グガアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

邪神は再び活動を再開。

あれだけダメージを負わせたと思ったが、邪神はライダー達を相変わらず殺意に満ちた鋭い眼光で睨みつける。

やはりその装甲故か、ダメージこそ与えられど倒す事までは難しい。確実な手ごたえが無いと言うのは複雑である。

 

 

(やはり音撃しかないか――……ッ)

 

 

だがまだ音撃を打ち込むにはダメージが少なすぎる。

これでは音撃鼓がすぐに解除されてしまい鬼石も体内からすぐに排出される。

そして次は邪神側の反撃と言わんばかりに衝撃が走った、邪神はその巨体を高速で回転させて近くにいたライダー全員を吹き飛ばすと叫びを上げて追撃の炎を放つ。

 

 

「グアァッッ!!」

 

「な、なんて速さ! あの巨体で――ッッ!」

 

 

叩きつけられたライダー達に襲い掛かる炎、その一撃何人かはまともに食らってしまった。

凄まじい衝撃と熱が身をつつみ転がるライダー達、いくらコチラがダメージを与えても形勢はすぐに逆転される可能性を秘めている。

向こうはそれだけの大きさと火力を秘めている、一瞬の油断が死に直結する状況と言う事か。

 

さらに邪神は首同士を巻き付け合いドリルの様な形を形成して突進をしかけてくる。

激しい波のごとく押しかかる巨体、ライダー達を玩具のように弾き飛ばしていく。

 

 

「見て見てー博士ッ! ドリルですよドリル! 俺のドリルは――」『DRILL ARM』

 

「うるせぇ黙ってろ。だが助手君、これは燃えるシチュエーションだとは思わないか!?」『DRILL』【ドォ・リ・ル/オン】

 

 

手にドリル、足にドリル、フォーゼとバースは迫る邪神の前に飛び込んでいった。

二対のドリルが巨大な奔流にぶつかっていく。だがやはり大きさが違いすぎる、すぐに二人は打ち負けそうになるが……

その時、白い羽がひらりと舞い落ちて。

 

 

「頭が――」

 

 

なんだアレは、あの様な姿でこの私を見下すと言うのか?

あの姿で人々を恐怖に陥れようというのか?

あの姿で神を名乗るのか?

あの――

 

 

「頭が高ぁあああああああああああああああああああああああああああああああい!!」

 

 

電王ウイングフォーム、彼の登場で時空が白に染まった。

なんとあの巨大な邪神の姿がみるみる小さくなっていくではないか!

神でさえ自らの思い通りにいかなければならないと言うジークの思想、それはまさに高貴なる純白と共に有り。

そしてこのサイズならばと二人は力を思い切り込める! そこへ加わるカリス、彼女もまたカードの一つにドリルを所持している。

 

 

「決まれッッ!!」

 

「おんどりゃああああああああああああああああああああああ!!」

 

「ぶち抜く! トリプルドリルブレイカァアアアアアアアアア!!」

 

「「「「「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」」」」」

 

 

なんだかんだと適当に考えた技名を叫んで気合を入れるフォーゼ。

貫く、とまではいかなかったが邪神は大きく弾かれて宙を舞った。

今ならばいけると誰もが悟るが、流石に抵抗力が強いのかジークの縮小効果も同時に解除されてしまう。

再び巨大化し着地する邪神、その際の衝撃で辺りのライダーは地面に倒れてしまった。

当然邪神は彼らに狙いを定め炎を発射する。一瞬危険かと焦る一同だが、そこへ飛び込むのはブラカワニ。

 

 

「はい、お疲れ様」『トリプル! スキャニングチャージ!!』

 

 

ブラカワニが展開した巨大なシールドは炎からフォーゼ達を完全に守る事に成功。

その隙にフォーゼ達はお礼を言って撤退、ブラカワニもそれを確認するとバックステップで邪神との距離を離す。

追いかけようと動く邪神だがサゴーゾの重力プラス、シャウタの鞭に縛られて動きを止めざるを得ない状態に。

 

 

「ユウスケッッ!」

 

「ああ、兄貴ッ!」

 

 

少し離れた所にいたクウガ達、アギトはストームフォームに変わり暴風を発生させる。

その中心でフォームチェンジを行うクウガ、緑に染まりペガサスへ。

既に薫をペガサスボウガンに変えており、クウガはアギトが発生させた暴風の中でボウガンを振り絞る。

すると風が全てボウガンの先端に収束していき、巨大な矢と変わった。風の力を吸収する事で威力を上げたのだ。

 

 

「上乗せするぞ皆!」『カメンライド・アギト!』『フォームライド・アギトストーム!』

 

「これもプラスだ」『トルネイド』

 

「ボク達も協力しようか」

 

『ええそうねゼノン!!』

 

 

ディケイドアギトのストーム、カリスのトルネイド、ダブルのサイクロンの風も収束していく。

風がボウガンの形を作り、クウガの体より何倍もの大きさとなった。

もちろんソレに気がつかない邪神ではない、三つの龍がクウガに顔を向けて口を光らせ――

 

 

「させるかよッ!」

 

「いちいち面倒ですわね!」

 

 

タジャドルは火炎弾で邪神の注意を引いたあとに上空を高速で飛びまわる。

固有能力である音速飛行に邪神は気を取られているようだ。どうやら邪神といえど知能面はそこまで高いものではないらしい。

意地でも彼女を噛み砕こうと何度も歯をぶつけ合う。その隙にシャウタが水流で別の首の注意をそらした。

邪神が反撃をしようものならその前にラトラーターが飛んできてシャウタを守る様に動き回っていく。

 

 

『アナザーアギト!』

 

 

そこで再びオーロラが。

中から現れたのは黒いコートに身を包んだアナザーアギト、彼は邪神を見ると小さくため息をついた。

もし自分達が何もなく進んでいたのなら――

 

 

「いや……過ぎた後悔か――変身!」

 

 

構え身を変えるアナザー。

マフラーが風に舞い、彼はそのままゆっくりと構えをとる。

地面に現れる紋章と展開されるクラッシャー、そのまま彼は空中へと飛び上がった!

 

 

「ハァッ!!」

 

 

アサルトキックが邪神の体に直撃、悲鳴をあげる邪神へと向かうのはアギト。

マシントルネイダーをスライダーモードに変えて猛スピードで進んでいく。

クロスホーンが展開、アギトはさらにトルネイダーの速度をあげる。そして――

 

 

「ハァアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

アギトはその加速を受けながらキックを発動。

ライダーブレイク、その威力は鎧の様な鱗を貫く程だ。龍騎も再びシュートベントを発動、無数の火球が邪神を焦がしていった。

だがここで龍騎はサバイブから元のフォームへ、どうやらまだ力を使いこなせていないらしい。

惜しむべき力だが嘆いている時間など無い、龍騎はすぐに次の攻撃をと走り出す。

 

 

「今だッ! ユウスケ! 薫ちゃん!!」

 

「ああ! 薫!」

 

『オッケー!』

 

 

その時クウガのベルトが放電を放ち、金の装飾を付与させた。

ライジングペガサスへと変わったクウガはそのまま矢を放つ!

 

 

「『ブラストペガサスッッ!』」

 

 

クウガは巨大化した矢を計8本連続で発射。

それぞれの矢は八体の龍の頭部を貫き、絶大なダメージを与えた。

黒い血を撒き散らせながら叫ぶ邪神、アギトはフレイムフォームに変わると思い切り刀を突き立て放熱。魂の炎が邪悪を焦がす!

 

 

「いけるッ! このまま一気に!!」

 

 

ディケイドの言葉にうなずく一同。

確かに邪神の攻撃力は強大で迫力も凄まじい、だが想像していた範囲だ。

このままダメージを与えていけば勝てるのではないか、その期待がライダー達の仲で膨れ上がっていく。

 

 

『ギャレン!』『レンゲル!』

 

 

オーロラから出現するダイアナとクロハ。

彼女達はライダー達に攻撃されている邪神を複雑な目で見た。

神と呼称される存在が人と戦う、もちろん自称神なのかもしれないが――

 

 

「哀れなものね」『ターンアップ』

 

「そうだ、だからこそ勝たなくちゃいけないんだよ」『ターンアップ』

 

 

しかしその時だった、勝負が動いたのは。

 

 

「!!」

 

「!?」

 

 

邪神の目が紫に発光したかと思うと、その目をみたライダーの腕に烙印が刻まれる。

何だこれは!? 何人かは烙印に触れてみるが剥がれそうにも無い。

 

意味が分からないとライダー達。

しかしそれを遠くで見ていたサトリが反応する。あの烙印は間違いない――!

邪神は言葉を話さない、しかしやはりその瞳が語る。

 

 

『恐怖に慄け、絶望にひれ伏すがいい――』

 

 

そう、聞こえた。

 

 

「「「「「!!!」」」」」

 

 

文字通り心が引きずり出されるような感覚。

烙印を受けたライダー達は全員そう思っただろう。

まるで手で心をつかまれて体の外に引きずり出された様な気分だ、そして邪神が吼えると烙印を受けた物の周りに闇の牙が現れる。

 

 

「クッ!」『Clock Up』

 

 

空中に留まる牙、ディエンドはその牙から逃げようと走り回るが、牙はどこまでも彼の頭上をピッタリと付きまとう。

他のライダー達も同じだ、牙を攻撃しようともそれが消える事は無い。そして――

 

 

「があああああああああああああッッ!」

 

「ぐあああああああああああああっっ!」

 

 

心ごと引き裂かれる様な痛みの衝撃と恐怖が襲いかかる。

なるほど、どうやら邪神はまだ本気ではなかったと。

対象に恐怖と絶大なダメージを与える烙印の攻撃、なんと恐ろしいものか。

 

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

さらに邪神は尾を使ってライダー達に攻撃をしかける。

弾かれ、飛ばされ、宙を舞うライダー達。吹き飛ばされたブレイドやカリスの装甲が大きく削られてレンゲル達に受け止められた。

 

 

「大丈夫!?」

 

「あ……ああ――ッ」

 

 

よろよろと立ち上がるブレイドとカリス。

痛みとは別に重くのしかかるダメージ、これは心か? 邪神は心に直接ダメージを与えられるとでも?

 

 

「おいおい足がフラフラだぜ咲夜さん、俺が抱っこしてやろうか?」

 

「ふざけろ、お前もだろうに。何ならワタシが止めを刺してやろうか?」

 

「何でだよッ!! そこはお前優しさで俺をラッピングしなさいよ!」

 

「――ってちょ!!」

 

 

邪神の炎が眼前に迫り間抜けな声をあげるブレイド、しかし彼の前にレンゲルとギャレンが割って入り防御を行う。

避けようと思っても足が鈍く感じた。やる気ができないと言えばいいか、やはり心に少し負担がかかっている。

これはまずい、妖怪達は戦意を喪失したと多くの者が語っていた。それが純粋な恐怖ではなく邪神の力が関係していたとは。

 

 

「どうやら最初から本気でいくしかないね!」

 

「みたいだな……ッ!」

 

 

長期戦はますます不利、四人は頷くと同時に走り出す。

そしてカードを一枚取り出してラウズアブソーバーを起動させた!

 

 

『『『『アブソーブクイーン』』』』

 

「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」」」」

 

『『『『フュージョンジャック!』』』』

 

 

黄金のオーラが四人を包む!

翼が生えた事で飛翔するブレイドとギャレン、高速で走りだすカリス、鉄球が追加された事でソレを振り回しながら狙いを定めるレンゲル。

それぞれはキングのカードを発動して必殺技を邪神に命中させていく。

 

 

「グオオオオオオオオオオッッ!!」

 

「!」

 

 

しかしまたも現れる烙印、どうやらドッガフォームのトゥルーアイ同じく目を見る事がトリガーとなるらしい。

烙印は振りほどけない、回避不能の精神攻撃と物理攻撃。厄介な――ッ!

 

 

「こんな時にデンライナーがあれば……!」

 

「ねぇんもんはねぇよ鼻クソ女!!」

 

 

電王とゼロノスは邪神の炎を避けながらなんとか攻撃をしかけていった。

しかし先ほどからダメージこそ与えれど邪神が明確に弱っている様子が見られない。

本当に効いているのか? 本当に倒せるのか? ふと誰かの心にそんな感情が芽生える。

 

 

『『Clock Up』』

 

 

カブトとガタックの連携攻撃。

怯む邪神だが、ふとした瞬間に邪神の鱗に烙印が現れる。

気になるところであったが、カブトもガタックもそのまま攻撃を続けてしまった。当然烙印の鱗に触れる訳で――

 

 

「「!!」」

 

 

邪神が咆哮を放つとカブトとガタックの動きがピタリと止まってしまった。

何だ? もちろん二人が自分から足を止めたと言う事は無い。当然だ、敵を前にして沈黙する意味など無い。

では何が? カブトとガタックは互いに自分に刻まれた烙印を確認する。間違いないこの紋章こそが邪神の特殊能力なのだと!

 

 

「グゥ――……ッ!!」

 

「うわあああああああああああ!!」

 

 

動きが止まった二人に降りかかる闇のエネルギーを纏った牙、引き裂かれる痛みがカブトとガタックを襲った。

それは彼らだけでなく他のメンバーも同様だ、動きを止めてから防御不可能の攻撃を仕掛けてくる最凶のコンボだろう。

その攻撃を邪神は連発する様になり、一同は徐々に押され始めていった。そしてその様子をはるか遠くの丘で確認する二人組が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クク……! 邪神の能力は呪い、彼らに打ち勝てるかな?」

 

「ねぇねぇお兄ちゃん、このまま行けばオロチが勝てるよぉ!」

 

 

小柄な少年と少女、何やら和服と制服を混ぜた様な不思議な格好をしている。

少年の名は一始(はじまり)、少女の名は終姫華(しゅきか)。一始は落ち着いた雰囲気の少年だが両目に大きな傷を負っていた。

目を閉じている所を見るに恐らく視力は無いのだろう、けれどもまるで状況が分かっているかの様に眉を歪ませて彼は笑みを浮かべている。

 

 

「ところで終姫華、僕と年齢は違わないのにお兄ちゃんはおかしいんじゃないか?」

 

「ううん、終姫華にとってお兄ちゃんはお兄ちゃんだから――……っ」

 

「あ、そう」

 

対してそんな一始にベットリとくっつく終姫華。

腕を組んで一始に密着している彼女はしきりに戦況を始まりに伝えていった。

 

どうやら彼女が彼を支えているのだろう。一始もまるで状況が分かっているかの様に頷いてみせる。

甘える様な声を出している終姫華だが、彼女達の前には命を賭けた戦いが繰り広げられている。

明らかに彼らもまた普通ではない。

 

 

「鏑牙や瑠璃姫が苦戦した相手と聞いて期待したけど」

 

「うん……! このままならわたし達と戦う前に死ぬよ!」

 

 

彼らもまた魔化魍と呼ばれる存在。

魔化魍は男女二人一組が常に一緒に行動している、だが彼らの中にもルールがあるようで――

一始は次の『暦』を終姫華に問う。頼りにされているのが嬉しいのか彼女は頬を赤らめて指を折り数え始めた。

 

 

「え~っと、次は多分羅羽屡達だから……」

 

「成る程、多分まだ少し先か。なら僕達はヒトツミ達の所へ戻ろう」

 

「う、うん! お兄ちゃん!」

 

 

一始が指を鳴らすと彼らの目の前にオーロラが出現、そこへ二人は足を進めていく。

そして去り際にもう一度二人は邪神と戦うライダー達に顔を向けた。

濁りきった目に変わる終姫華、そして皮肉めいた笑みを浮かべる一始。

激しい憎悪が彼らの雰囲気を一変させた。

 

 

「みんな死ねばいいのにね。無残に、愚かに、無様に!」

 

「ああ、皆死ねばいい。愚かな種族共め――」

 

 

二人はそういい残しこの世界を去った。完全に異物が取り除かれた今、残る敵は邪神一体となる。

しかし当然邪神はまだその力を全て見せてはいない。場面を移せばまた多くのライダー達が邪神の放つ呪いに苦しんでいる所。

植えつける恐怖、無効化される能力や防御、動きを封じられる呪念。

 

 

『サソード!』『ドレイク!』『キックホッパー!』『パンチホッパー!』

 

「鏡治ッ! 今助けるよッッ!!」『HENSHIN!』

 

「チッ! なんて大きさだ」『HENSHIN』

 

「問題ない、蹴り伏せるだけだ」『HENSHIN』

 

「ぶっ飛ばすッ!」『HENSHIN』

 

 

データが姿を構成してマスクドライダーズが姿を見せる。

素早くクロックアップで邪神を攻撃していき、その動きを鈍らせた。

やはり彼等の怒涛の攻撃は凄まじい物だ、あれだけ暴れまわっていた邪神がピタリと動きを止めた。

ナイスだ! そう言ってディケイドはキバにフォームチェンジ。ファイナルアタックライドであるダークネスムーンブレイクで一気にダメージを追加させる。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

「ガアアアアアアアアアアアアア!!」「ゴォオオオオオオオオ!!」

 

 

月に惑う邪神、そこへデルタやギャレン等が放つ幾重もの銃弾が打ち込まれていく。

さらに咆哮を防ごうと注意をひきつけるラトラーター、シャウタも鞭を使い邪神の口を防ごうと試みて――

 

 

「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

「!!」

 

「またかよクソッ!!」

 

 

だが無駄だった。呪いの咆哮、その音を聞いた物はまるで身体が石になった様に重くなってしまう。

次々に倒れる仲間達、アギトや電王は拘束を無効化する能力で逃げ出すが他のメンバーはそうもいかない。

次々に降りかかる炎や、振り下ろされる尾から逃げる事はできなかったようだ。

 

 

「なるほど、呪いか。また不可思議な物を――」

 

 

少し離れた所でレーダーモジュールを展開させていたフォーゼ。

彼はずっと戦いの最中邪神を観察していた。どうやら邪神から放たれる光が対象の身体に異常をきたせる様になっている。

あたれば終わり、防御など意味はなさない。本当に面倒なものだ。

しかも咆哮に関しては聞けば終わりとくる。

 

 

「これは厄介だな、遠距離でいくか。助手、2、19、20」

 

「らじゃ!」

 

 

バースはカバンを取り出して中にあったスイッチをフォーゼに投げる。

スイッチを受け取ったフォーゼはそれらをドライバーにセット、次々にスイッチを押して発動させていく。

 

 

『Launcher』【ルァーンチャァ/オン】

 

『Gatling』【ガトリ・ン・グ/オン】

 

『Fire』【ファイアァ/オン】

 

 

電子音が告げる、2番ランチャーモジュール、19番ガトリングモジュール、それぞれ強力な飛び道具がフォーゼに装備されていく。

それだけではない、20番ファイアースイッチの力によってフォーゼの身体が赤く染まっていく。

それはステイツチェンジの力、フォーゼファイアーステイツが姿を現した。消防士の様な風貌に見えるフォーゼ、さらにその手には専用武器である銃、ヒーハックガンが握られている。

 

 

「ロックオン」

 

「全弾相手の身体にシューッッッ!!」

 

 

レーダーモジュールが照準を合わせる、そして引き金を引くフォーゼ。

全ての弾丸が同時に放たれて邪神にぶつかっていく。

さらに怒涛の攻めを行っていくライダー達、攻撃をヒットさせる事は容易くダメージを与える事も難しくは無い。

しかし邪神もまた同じ。これは均衡なのか、それとも――

 

 

「「髪の毛針ッッ!!」」

 

「グガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

そこへ降り注ぐ針の雨、一同が視線を移すと鬼太郎達が到着した所だった。

一反木綿に乗り込み、鬼太郎と地獄童子は同時に髪の毛を硬質化させて発射していく。

無数の弾丸に怯む邪神、そこへ童子の拳がえぐりこむ!!

 

 

「ゴオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

「!!」

 

 

だが位置が悪かった、邪神の一体は口を開き猛スピードで地獄童子にかぶりつく。

丸ごと口の中に消えていく地獄童子、一瞬ヒヤリとした雰囲気が流れるが――

瞬間口を開き声をあげる邪神。どうやら地獄童子は口の中で体内電気を発動、思い切り内部へダメージを与えた様だ。

 

 

「霊毛襟巻き――ッ!」

 

「霊毛ちゃんちゃんこ!」

 

 

鬼太郎と地獄童子が邪神の身体を持ち前の布で拘束させる。

たった二人ながらにして邪神を完全に縛り付けるその実力、さすがは幽霊族と言う所か。

そこへ降り注ぐ子泣き爺、ぬりかべ、砂かけ婆の砂。次々に降り注ぐ攻撃、攻めの手を休めてはいけないと。

 

 

「オラああああッッ!!」『ファイナルアタックライド』『デデデデンオウ!』

 

 

必殺技、ワイルドショットが邪神の眼球に直撃する。

やはりそこは装甲が弱いのか邪神も後退していった。

攻め続ければいける、鴉天狗も轟鬼に変身して全ての鬼が揃った。

 

しかし天鬼が鬼石を発射してもすぐに弾かれる所を見るとまだダメージが足りない様だ。

尚もレーダーでそれを見ているフォーゼ、するとある事に気がついた。

 

 

「なるほど、どうやらヤツは自己回復を行っているらしい」

 

「自己回復!?」

 

 

つまり響鬼紅おなじく、ダメージを受けても一定の時間で回復していくと言う事だ。

それでは決定打を与えるまで弱らせる事は不可能じゃないか! 一同が焦りを覚える、さらに観察を続けるフォーゼ。

どうやら各オロチが個々に回復を行っている様だ、つまり八本ある首を減らしていけば回復速度も遅れるらしい。

 

 

「八本ある首を順番に潰していく……か」

 

 

一同が狙いを変える事を決めた時、それは起こる。

 

 

「ッ!? おい、何か邪神の身体から高エネルギーが――」

 

 

レーダーに観測される邪神のエネルギー。

それは爆発的に膨れ上がり――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが……邪神の力――深き絶望」

 

「ッ?」

 

 

遠くで見ていたサトリが小さく呟く。あの攻撃で、自分達はやられたのだから。

邪神は言葉を話せない。だが誰もがその言葉を脳に叩き込まれた気がした、ハッキリと人の言葉でそれは告げられる。

誰もが、そこにいた全てのライダー、妖怪が邪神の言葉を受け入れる。

 

 

『死ね』

 

 

呪詛の言葉、邪神の身体から放たれた呪いの光が全てのライダーを停止させた。

まるで石になった様なライダー達、鬼太郎達もまた同じく時間が止まった様にその場に立ち尽くしていた。

それだけではない、邪神は八本の首を同時に発光させる。まさか――

 

 

「ぐあああああああああああああああああッッ!!」

 

「――――ぐぅぅうううううッッッ!!」

 

 

ディケイド達に襲い掛かる絶大な衝撃、まるで痛みと恐怖の檻に閉じ込められたかの様な気分だ。

何が起こったか分からずに苦しみの声をあげるディケイド達、何が起こった? 誰も何も分からない。

特に目立った傷も無く、攻撃を受けた気分ですらない。ただ純粋に痛みと恐怖を叩き込まれただけ。

何だ? どうなっている!? すぐにレーダーやデンデンセンサーで確認。

 

 

「呪いの咆哮だ……ッ!」

 

「ッ!?」

 

 

鬼太郎が表情を歪ませながら立ち上がる。

どうやら邪神と始めて戦った時もこの攻撃で実質自分達は敗北した。

明確な効果は不明だが、どうやら邪神が全身から放つ光に触れると動きが完全に停止、その後に放たれる咆哮が身体に痛みと恐怖を植えつける一種の精神攻撃。

邪神はその図体とは裏腹に特殊攻撃、つまり精神汚染を得意としていた、絶望の力を呪いに変えて心を砕くのだ。

 

 

「光に触れるなって!? 結構離れてたつもりなんだがな――……ッッ!」

 

「回避不能の絶対攻撃!?」

 

 

それだけでは無かった。

痛みと恐怖で動きが鈍るライダー達、そこへお構い無しと邪神は突進を仕掛けていく。

当然弾かれなぎ倒されていくライダー達。邪神は身体を回転させ、炎を放ち、首を振り回して彼らに追撃を。

 

 

「うグッ!!」

 

「クソッ!」

 

 

何とか反撃に出ようとする者もいたが、それをあざ笑うかの様に邪神は力を込める。

まさか!? 動揺を見せるライダー達、この構えは先ほどと同じ。

 

 

「おいおい、ふざけるなよ……ッ!」

 

 

レーダーで確認していたフォーゼ。

また邪神の身体からエネルギーが満ちて――

 

 

「「「「「「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」」」」」」」」

 

 

二発目。停止する全てのライダー達、またも邪神は呪いの咆哮を発動させた。

動きを一勢に止める彼らを見て邪神は再び咆哮を上げる。直後悲鳴、痛みと恐怖が脳に直接叩き込まれる。

当然動きも鈍り、そこから邪神は直接攻撃のコンボを完成させていく。

 

炎を受けて転がる者、尾に弾かれ倒れる者、噛まれ投げ飛ばされる者。

噛み砕かないのは恐らくより恐怖を植え付け、それを他者に見せ付ける為だ。

どうやらこの最低な攻撃は何度でも使用できるらしい、対処できない攻撃の連発? 想像しただけで寒気がする。

 

 

「皆っ! 心を強く持て!! 邪神の恐怖に呑まれるな!!」

 

 

そう轟鬼は叫ぶ、実力こそは完全に問題ない七天夜もこれを受け続けて敗北した過去があるのだから。

鬼太郎としては何とかその前に音撃を叩き込みたいところだが、どうやらそう簡単にはいかなかったか。

痛みからくる恐怖だけでなく、直接恐怖と言う感情を刺激される点もあってか呪いの咆哮はかなりの威力をもたらした。

 

 

「あ、あはは……こ、こえー」

 

「……ッ」

 

 

女性陣から主に足を震わせ始める。

何とか立とうとしているがゼロノス、カリス、天鬼以外は確実に異常が出始めていた。

これを連発されれば負ける事は確実、何とか邪神を止めようと攻撃をしかけるが邪神も一点集中に気づかない訳が無い。

首を一点だけ狙われないように移動、攻撃をおこない自動回復を行使していく。

 

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

「がああああああああああああッッ!!」

 

「うわああああああああああああっ!!」

 

 

邪神が次に行った攻撃は全身の鱗を飛ばすというシンプルながらに強力な物。

鱗の一つ一つは鋭利なナイフ、それらがライダーの装甲を強引に削っていく。

そして尾の一振り、最初は均衡かと思われた力も徐々に邪神が優勢になっていくのが感じられた。

それを確認しているぬらりひょん達もまた絶望に飲まれようと。

 

 

「やっぱり……邪神に勝つなんて無理だったんだ――」

 

 

そんな声が妖怪の集団から聞こえて来る。

誰も否定の声をあげる事は無い、負の感情が邪神の咆哮によって加速していく。

そうしているとまた咆哮、今度は邪神から黒い霧が発生して空に充満していく。

太陽を隠す程明確になっていく霧、それは雲となりライダー達から日の光を遮断させた。

 

 

「なんだコレ――ッ!」

 

「黒い……雲?」

 

 

そして咆哮、同時に雲から黒い雨が降り注いでくる。

一見すればただの黒い雨、当然ほぼ全てのメンバーが雨をその身で受けた。

すると――

 

 

「きゃあああああああああッ!!」

 

「ッッッ!!」

 

 

爆発、雨が身体に触れた数秒後に水滴が爆発した。

次々に爆発に飲み込まれ姿を隠していく一同。邪神はその間にも突進や回転でダメージを与えていく。

雨を回避する事は難しい、クロックアップを発動したカブト組みも次々に地面へ倒れていく。

ラストと言わんばかりに邪神は呪いの咆哮を。ダメージと恐怖が上乗せされてライダー達は戦意を大きく削がれていくのだ。

絶望の雲はぬらりひょん達の所まではギリギリ届いていないものの、やはり彼らの心にも恐怖と絶望を植えつけるには十分すぎる要因。

 

 

「やはり、ここまでだったか……!」

 

 

目を閉じるぬらりひょん、他の七天夜は複雑そうに互いを見る。

向こうでは鬼太郎達がまだ変わらない様子で戦っていた。もちろん加勢した方がいいのだろうが一度植えつけられた恐怖が彼らの足を停止させる。

ディケイド達は諦めてはいない、絶望してはいない。恐怖と、邪神から勝利を掴む為に抗っている。

 

しかしその希望が潰えるのは時間の問題だろうと誰もが考えてしまうのだ。

見れば邪神はまたも呪いの咆哮を上げている所ではないか。どんなに抗っても、どんなに足掻いても、どんなに戦っても邪神が放つ絶望はそれを凌駕する。

だったら諦めるしかないのではないだろうか――? 

 

全ての妖怪が同じ意見を持とうとしている。いっそ死んだ方がいいのではないかと。

絶望に身を任せたほうがいいのではないかと。誰も言葉にはしないがそう思い始めていた。

 

 

「ぐアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

吹き飛ぶライダー達、そこへ邪神は首を合わせて巨大な炎弾を発射した。

すぐに反応する男性陣、仲間を守る様に立つのだが――

 

炎をその身で受け止める10人ライダー。

だがそのダメージが大きすぎたか10人は全員吹き飛び変身が解除されてしまう。

生身で地面に叩きつけられる司、ユウスケ、翼、真志、拓真、椿、双護、良太郎、亘。

すぐに助けようと他の仲間が動くが――

 

 

「「「「「「「「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」」」」」」

 

 

ライダー達の動きが停止する。

終わった、戦いを見ていた妖怪達は誰もがそう思う。次に放たれる咆哮を受けて司達が敗北する。

希望が絶望に塗りつぶされた、ここで終わりなのか。

世界は滅ぼされてしまうのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!  シャバドゥビ タッチ ヘンシーン! シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!

 

突如フィールドに響き渡る謎の電子音……?

とも呼べるのか怪しい歌(?)。それはなんと邪神の咆哮をかき消す役割を果たした。

つまり邪神が吼えたが、この変な歌にかき消されたと。

 

ノーダメージで我に返る司達。

何だコレ? 攻撃を停止して辺りを確認する邪神。

それは司達も同じでダブルでさえこれが何なのか分からずに沈黙する。この音声は何? 誰もが沈黙して辺りを見回す。すると――

 

 

「諦めるな! 希望はまだ死んでない!!」

 

「ッ!?」

 

 

丘の上にオーロラが出現、そこから音の正体が姿を見せた。

オーロラから現れたのはケープやモノクルが目立つ青年である。

そして隣にはメイドさん、いきなり現れた彼らに誰もが視線を奪われた。

特に誰かの知り合いと言う事でもない様だが、唯一反応を示したのはダブル。

 

 

『モノクルさんに、メイドさん?』

 

 

妖怪だの鬼だとの和を推している中での洋風の二人、その浮きっぷりにフルーラは少し笑ってしまう。

対してゼノン、そういえばと思い当たる節が。

 

 

「ああ、まさか――」

 

「っ?」

 

 

混乱する一同をよそに青年は動き出す。

その目で邪神を睨むと手を空にかざした。ただそれだけの行動だが、異変は起きる。

 

「!!」

 

 

黒い雲が割れ、差し込む光が青年を照らす。

絶望の雲を引き裂いた青年を見て司達は不思議と笑みを浮かべた。

 

 

「すげぇ……!」

 

 

雲はそこから一気に消し飛び、ぬらりひょん達にも衝撃を与えた。

相変わらず鳴り響いている電子音、青年はかざしていた手を戻して顔の前で停止させる。

そこで気がつく、青年の指には少し大きめの宝石がついた指輪が。宝石は一筋の光を浴びて美しく輝いていた。

青年はその宝石にかけてある目の様なカバーを下ろす、カバーが追加されると顔の様に変わる宝石。

 

 

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

「絶望の化身か――」

 

 

青年は邪神を見て怯える妖怪達に視線を移した。

そして大声で彼らに語りかける。そこには何の恐怖も迷いも無い、宝石の様に澄んだ瞳。

迷いの無い言葉。

 

 

「必ず希望は勝つ! 心に希望を宿せば絶望なんかに負ける事は無いんだ!!」

 

 

自信に満ちた様子の青年、誰かは分からないが司達は彼の言葉に同意を示した。

しかしそこで妖怪の誰かが言う。もしその希望が持てなければ?

青年はその言葉を聴いてもう一度邪神を強く睨みつける、希望が持てないなら――

 

 

「僕が最後の希望になる!」『シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!  シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!』

 

 

青年はそう言って腰に装備されていたベルト・"ウィザードライバー"中央にある手形に手を重ねた。そしてその言葉を宣言する!

 

 

「変身ッ!」『フレイム・プリーズ!』

 

「!!」

 

 

変身。その言葉を放つのは"その存在"以外には無いだろう。

司達は青年の腰にあるドライバーを見て確信する。彼が誰なのかは知らないが、彼もまた自分達と同じ様な存在なのだと。

青年、クロークは手を横にかざす。するとそこへ赤い魔方陣が出現、魔方陣は一人でに移動をはじめクロークの身体を通過していく。

そして魔方陣がクロークの身体を通り抜けた時、そこに立っているのは――

 

 

「あれは……ッ!」

 

 

赤い宝石のようなマスク、黒いコート、そして輝く指輪。

 

 

『ヒー ヒー ヒー! ヒー!! ヒー!!!』

 

 

仮面、ベルト。もう間違いは無い。その姿はまさしくただ一つの――

 

 

「悪夢は終わりだ。さあ――」『ルパッチ マジック タッチゴー! ルパッチ マジック タッチゴー――』

 

 

仮面の戦士はドライバーにある手形、ハンドオーサーを操作して電子音を流す。

さらにいつの間にか指には別の指輪がつけられており、彼は――

"ウィザード"はもう一度手をハンドオーサーにかざした。

 

 

「希望の逆襲を始めよう!」『ビッグ・プリーズ』

 

「!!」

 

 

ウィザードの目の前に魔方陣が出現、彼はそこへ手を伸ばし突き入れた。

すると魔方陣を通過した手が巨大化、そのまま重く強大な掌底を邪神に叩き込む!

後退する邪神、すぐに呪いの咆哮を放とうとするが――

 

 

『シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!  シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!』

 

「「「「「「「「―――――――」」」」」」」」

 

 

ウィザードは咆哮の気配を読みハンドオーサーを発動。

またも歌の様な電子音にかき消される咆哮、それはつまり呪いが無効化されたと言う事。

ウィザードは丘から飛び降りつつハンドオーサーに新たな指輪を認識させる。

それは美しい黄色の宝石、カバーが降りた仮面のような指輪。

 

 

『ランド・プリーズ』『ド・ド・ド・ド・ド・ドン! ドン! ド・ド・ドン!』

 

 

黄色い魔方陣が出現、そこを通り抜けて着地するウィザード。

先ほどとは色が赤から黄色に変わっており、仮面の宝石が丸型から四角型に変わっていた。

ウィザードには属性でスタイルが決まっている、今は土属性のランドスタイルへと変身。

主な特徴はその(パワー)。ウィザードの着地から発生した衝撃が邪神の動きを止める。大地の力はまさにランドを称するにふさわしい。

 

 

「皆さん! 今です!!」

 

 

丘の上にいるメイドが声をあげる。それは誰に向けた言葉なのか、しかし動いた者は多い。

爆炎に包まれる邪神、見ればタジャドルが音速で飛行しながら炎をぶつけている所だった。

誰よりも早く立ち上がった彼女は胸にあるオーラングサークルにスキャナーをかざす。

するとオーラングサークルと同様のメダルオーラがスキャナーに張り付き、そのままタジャドルはスキャナーをドライバーへとスライド!

 

 

「テメェに最大出力ぶち込んでやるぜッ!」『ギン! ギン! ギン! ギガスキャン!!!』

 

 

タジャドルは思い切り上空へと舞い上がる!

直後彼女の背景に浮かび上がる三つの赤いリング、同時に彼女は邪神に向かって急降下していった。

発火していくタジャドルの身体、その炎が次第に巨大な鳥の形を形成していく。邪神が抵抗に放つ炎をかき消して火の鳥は翼を広げる!

 

 

「焼き尽くせェエエエエエエエエエエエエッッッ!!!」

 

 

タジャドルの最強必殺技である、マグナブレイズが炸裂。

火の鳥は紅蓮の炎を纏いながら突進して邪神を深紅に包み込んだ。

炎に包まれて叫び声をあげる邪神、紅が視界を埋め尽くさんとばかりに燃える炎。

まだ終わらない、次はラトラーターだ!

 

 

「刻みます」『ギン! ギン! ギン! ギガスキャン!!!』

 

 

黄金のリングが三枚出現、同時に走り出すラトラーター。彼の身体が光に包まれたかと思うと音速は光速に昇華する。

光と熱で叫び声をあげる邪神、そこへ金色の光を纏い通常より何倍もの大きさになったトラクローが振り下ろされた。

キングクロス、百獣の王が放つ光に包まれて邪神は大きなダメージを受けた様。邪神の鱗が砕かれ生身が引き出されてしまう邪神、それをみてガタキリバは笑みを浮かべた。

 

 

「揺るげ傲慢! リベリオン・ジャベリナーズ!!」『ギン! ギン!ギン! ギガスキャン!!!』

 

 

50人になるガタキリバ、一勢に放電しながら身体を回転させて槍の様に変わる。

否、それはまさに槍そのもの。飛び回る無数の槍は次々に邪神へと命中していった。

体に深く抉り込み雷撃を直接流し込む。その数発は邪神の目に刺さりこみ、絶大なダメージを与える事に成功。

傷口を抉る様な戦法は傲慢を叩き潰すいい方法だとガタキリバは知っている。苦痛で叫びをあげて暴れる邪神、それを見て彼は高揚した様に笑っていた。

 

 

「ハッ、邪神風情が! 最強に歯向かおうなどと馬鹿な事を!」

 

 

ガタキリバ達は尚も邪神に張り付くように攻撃を続行、邪神も防御の為に呪いの咆哮を上げるが――

 

 

『シャバドゥビ タッチ ヘンシーン!』

 

 

またも電子音。

かき消され無効化される邪神の咆哮、ウィザードは次に緑色の宝石が備えられている指輪を発動させた。

唸りを上げろ! それは局地的暴風雨――!

 

 

『ハリケーン・プリーズ』『フー・フー! フーフーフーフー!』

 

 

緑色の魔方陣が頭上に出現。

ウィザードは飛び上がり魔方陣を通過、逆三角形の宝石が仮面となるハリケーンスタイルへとチェンジを完了させた。

その名の通り風を操るハリケーンスタイル、ウィザードは風をまとい上空へ飛翔する。

 

 

『コネクト・プリーズ』

 

 

魔方陣が出現。

そこからウィザードは自らの武器である"ウィザーソードガン"を掴み出した。

文字通り剣と銃に変わるソードガン、ウィザードはソードモードに変えたソードガンを逆手に持って切りかかる!

 

 

「ガアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

素早く飛び回るウィザードに邪神は姿を捉えられない! そうこうしていると聞えてくる電子音!

 

 

『『『スキャニングチャージ!!!』』』

 

 

衝撃と共に銀色のリングが邪神を拘束、さらに電撃をまとった二対の鞭が邪神を捉えた。

さらにワニのオーラを纏いながらとび蹴りを決めるブラカワニ。動きが止まった邪神に他のライダーが攻撃を次々に当てていく。

声をあげる邪神だがウィザードの電子音が呪いの叫びを吹き飛ばす!

 

 

『バインド・プリーズ』

 

 

強力な風がさらに邪神の動きを拘束、完全に邪神の動きが停止した。

当然それを確認するぬらりひょん達、一度は駄目だと確信した戦いだが現在は再びどうなるかが分からない。

そんな中で彼らに声をかける女性、それはウィザードと共に現れたメイドの女性だった。"シェリー"は自己紹介を軽く済ませて妖怪達に頭をさげる。

それは謝罪の意、初対面の自分が偉そうな事を口にするからと。だがそれでも言わなければならない言葉なのだと。伝えなければならないのだと。

 

 

「皆さん、事情は聞かせていただきました」

 

 

単刀直入に言います、そう言ってシェリーは強い眼差しで妖怪達を見る。

 

 

「この戦い、負ける可能性が非常に高いです」

 

「!」

 

 

やっぱりか、そんな声が聞こえた。

おそらく次にメイドが言う言葉はたった一つ、時間を稼ぐから逃げてくれと言うものに違いない。

誰もがそれを考え、俯いた。

 

 

 

 


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