仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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ネットで見たけど鎧武の兜って実際の武将イメージしてたんだね。
極まで分からなかったわ。

まあどうなんだろうね極。
フルーツとかは気にならなかったけど別に各ライダーの紋章でも良かったんじゃないかなw?
あと兜と面の色は変えても良かったんじゃないかとは思う。

でもまあ動けば気にならなくなるんだろうけども。


第50話 342112

「なんだコレ?」

 

 

少し奥に進んだ時、目に移る景色がガラリと変わった。これじゃあ城の中と言うよりジャングルじゃないか。

辺り一面に広がる紅い草木、そして鋭い針を備えているサボテン達。

妖怪城にも室内だと言うのに庭と呼べる部分は多かったが、コレはまたさらにその上を行っているものだ。

温室と言うべきか、植物園と言うべきか。おまけに色が血の様に赤いというのが何とも気になる物だ。

 

 

『亘さん、この植物なんか普通じゃないッスよ』

 

「普通じゃない? まあ見た目とかヤバイけど……」

 

『もっと何か嫌な予感がするッス、なんかオイラの種族と同じ力を持ってそうッス』

 

 

ッて事は血を吸うのだろうか? 見たところただの赤い植物に見えるのだが……?

とにかく触らないに越したことは無い、早く先に進まなければ。

こんな時炎の力があれば便利なのだろうが、生憎そんな物は持ち合わせていない。

せいぜいガルルのハウリングで吹き飛ばすくらいか、しかし下手な事もできない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「侵入者が射程圏内に入りました」

 

 

一方、この城の奥には当然鍵を持ったボスとなる妖怪がいる訳で。

 

その妖怪(ボス)がいるのは彼女の寝室。寝室と言ってもそれなりに広く、中央には天蓋付きの超巨大なベッドが置かれている。

そこにスラリと長い足を組んで座っているのは、この部屋の主である樹裏架(キリカ)と言う妖怪だった。

見た目は普通の少女だ、顔色と目の色は普通とは言い難いが。

 

 

そしてその部屋には彼女の他に配下であるラ・セーヌ達がいる。

少女の首の下に胃だけというペナンガラン、巨大な牙を持ったランスブィル。

見るからにドラキュラと言うラ・セーヌ、そしてランスブィルの弟であるアササボンサン、トーテムポールについている様な顔と、大きな体が特徴の妖怪である。

 

そういう訳で合計5体の妖怪が寝室に集まっている。

いや違う6体か。寝室の天井に掛かる部分に七天夜である夜叉の使い魔、支那夜叉が座っている。

しかし文字通り座っているだけ。味方をするわけでもなく、ただの監視役と言った所だろうか?

 

 

「では、照準を合わせろ……」

 

 

ベッドには樹裏架が座っている。

彼女の命令にペナンガランは頷き、その胃を光らせた。

傍から見れば彼女達が何をしているのか分からないだろう。だが意味を分かっている者はニヤリと笑っているのだ。

 

 

「全弾装填済みです、これより第一陣発射準備に入ります」

 

 

何かを操作しているのか?

ペナンガランは更に何かを操作していく様な言葉を。

 

 

「発射準備完了、カウントダウン開始……」

 

 

カウントダウンを始めるペナンガラン、それを何も言わずに聞いている妖怪達。

そしてカウントダウンがゼロに近づくと、樹裏架はその手に持った鍵を見てみる。

これが欲しいのか、だがその前に――

 

 

「死んでもらう、発射!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぉおおおおおおおおおお!?」

 

 

キバは迫りくる無数の弾丸(はり)を見て思わず声を上げる。

突然サボテン達が震えだしたと思えば、自分に向けて無数の針を飛ばしてきたではないか。

キバットが叫ぶ、あの針を食らえばきっと血を吸われるかもしれない。元はキバットも吸血生物からか、同じ種類の何かを感じたのだろう。

 

一応はキバの装甲を纏っているとは言え、針のスピードと大きさを考えると油断はできない。

とりあえず姿勢を低くして数発をかわし、その後迫ってきたものは何とか蹴り飛ばす事に成功した。

 

 

「おいおい、まだまだサボテンあるんだけど!」

 

 

その通り。

キバが見る限り通路の奥にはまだまだサボテンの姿が見え、それらを突破しなければ先に進めない。

尤もココを通りぬけなければアキラにはたどり着けない状況でもある。キバは少し作戦を立てる為に一旦元の道に戻ろうと踵を返した。

 

 

「は!?」

 

 

だが、元着た道が赤い樹木で封鎖されているではないか。

引き剥がそうとしてもうまくいかない。そうこうしている内にサボテンの針が再生しはじめた。

待て待て待て! 焦るキバに更なる攻撃が降りかかる。あたり一面張り巡らされていた蔦が、動きだしてキバの四肢に絡みついたのだ。

 

 

「ちょ、動けないんだけどッ!」

 

『わわわわ亘さん!』

 

 

ココが植物園と言う感想から、要塞と言う感想にシフトする。

蔦の力も強く、引き剥がす間に針が自分の体に突き刺さっていくんだろう。

キバは首を振って下を向く、成る程さすがは鍵を守護するだけあって守りが完璧だ。

 

ああ、そう。そう来るのね。

そう思った時、どこからとも無く無数の鎖が現れてキバをかんじがらめに縛り付けていく。

鎖が激しく擦れる音と、重い低音の音色が響き渡りキバは鎖に隠れていった。

 

まさにそれは破壊の音色。

瞬間鎖に亀裂が走り大地が震えだす。サボテンや草木さえもその光景に恐れている様だ。

言葉は無い、だが彼はきっと叫んでいる。まさにそれは――

 

 

 

 

 

 

 

 

Silent Shout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクじゃなければ、それなりに効いてたんだろうな」

 

 

そしてキバを縛っていた鎖が、封印が全て吹き飛んだ。

紫の闇に包まれて――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「き、樹裏架さま!」

 

「着弾したか? これで干物の出来上がりだね」

 

「で……ですが――」

 

「?」

 

 

ペナンガランは一呼吸を置いて口を開く。

まるで信じられないと言ったばかりに声を震わせて。

 

 

「侵入者の動きが全く鈍っていません!」

 

「!」

 

 

これには部屋にいた妖怪全員がざわつき始める。

ペナンガランが言うには二発目の針は全てキバに着弾したにも関わらず、キバはコチラに真っ直ぐ向かっているとの事だった。

しかも第二陣、第三陣と針は発射されてキバに当たっている。だが彼はまったく減速すらせずにコチラに向かっていると言うのだ。

拘束の為に蔓や蔦も問題なく当たっているがそれらも全く無意味との事だった。

 

 

「何故だ!? ペナンガラン!」

 

「はい、樹裏架様!」

 

 

長年彼女の元を離れていたとはいえ、やはり昔の感覚はあるのか、ペナンガランは樹裏架の一声で様子を見てくると理解した。

彼女は無数に設置されたサボテンを超えていき、今現在キバがいるだろう場所へと飛翔する。

そして、彼女が見たものは――

 

 

「なッ!!」

 

 

向こうに見えたのは確かにキバ、そうだ何も間違ってはいない。

彼はまっすぐにコチラに向かってくる、針をその全身で受け止めながら。

 

 

「馬鹿なッ!」

 

 

しかし針は全てその装甲に弾かれていた。

戸惑うペナンガラン、確かにただの針に見えるが実はそれなりに強力な妖怪の皮膚をも貫く程強力な針なのだ。

それに蔦の力も強いと言うのに奴は――!

 

キバは一歩一歩確実にコチラに向かってくる。

着弾する針を全て弾き返し、全身に絡みつく蔦を無視して歩いてくる。

蔓や蔦はなんとかしてキバを止めようとするが、キバの進行を止める事はできなかった。

どれだけの数が絡み付こうとも、キバは全てそれを無視して引きちぎっていった。その手に、巨大なハンマーを持って。

 

ゴリゴリと地面を擦れながらハンマーが火花を散らす。

その音と光景に思わず喉を鳴らすペナンガラン。

 

 

『甘かったッスね! コッチには最強の防御力を持った仲間がいるんスよ!』

 

「……!」

 

 

キバットがペナンガランに気が付いたのか、そう言ってみせる。

ハンマーを引きずりながら歩いてくるのはキバ・ドッガフォーム、重厚な闇の色に包まれたキバだった。

確かに針は強力だが、それを超える防御には敵わないようだ。キバは無数に設置されたサボテンを踏み潰しながらコチラに向かってくる。

 

 

「おい」

 

「!」

 

 

空間に幾重もの亀裂が走り、弾き飛ぶ!

ペナンガランの目に映るのは巨大な紫色の月。

そしてキバはドッガハンマーを地面に突き立てて声を上げる。

 

 

「見ろ」

 

「……ッ」

 

 

反射的にペナンガランはそちらに視線を移してしまう。

そして目と目が合ってしまった、ドッガハンマーが展開して現れた目と。

 

 

「誰も、逃げられない――……ッ」

 

「――――」

 

 

そこでペナンガランの意識はブラックアウト。

キバは全身がステンドグラス化した彼女を弾き飛ばすと、迷わずにまた足を進めていく。

対して外装となっていたグラスが吹き飛び転がっていくペナンガラン、彼女は悔しげな表情でキバを見つめるが、何も言い返すことができずに気絶した。

 

キバは彼女を一瞥すると、どんどん先に進んでいく。

敵も流石に対策を打ってきているのか、蔦同士を絡み合わせて強靭なものへと変化させる事に。

 

 

『亘さん、アレは少しやばいッス』

 

「分かった、じゃあ――」

 

 

キバは青色のフエッスルを発動させる。

四方からどこからともなく鎖が現れてキバを縛りあげる。

そしてその鎖が弾き飛び、キバの色が紫から青へと変化した。

 

 

『ガルルセイバー!』

 

「ウェイクアップ!」

 

 

再び空間が青い月の浮かぶ夜へと変わる。

ガルルフォームのウェイクアップは音速で移動できる様になる事、キバは先ほどドッガフォームでトゥルー・アイを発動した時にこの城を見渡してみた。

どこにサボテンがあるのか、どこに寝室があるのかを探り、なるべく針を受けないと言うルートを導き出していたのだ。

キバはそのルートを頼りに、一気に樹木の要塞を駆け抜ける。壁を蹴り地面を転がり、凄まじいスピードで通路を駆け抜ける!

 

 

「こういう時――っ! 複合で能力が使えたら……言う事ないんだけど、ねッ!」

 

 

そう言ってキバは笑ってみせる。

最強の防御で音速で移動できて、水にも対応できるって凄いじゃないか。

 

 

『魔皇力が高ければ可能ッスよ』

 

「え、マジ!?」

 

『でも魔皇力の鍛え方とかは難しいんで、ちょっとオイラじゃよく分かんないッス』

 

 

ま、仕方ないか。キバは諦めて目の前にある道に集中する。

向かってくる針も今は遅いものだ、ガルルセイバーで針を弾き飛ばして先に進む。

しかしどれだけ速く走ってもかわせない状況はやってくる、その時は再びドッガフォームに変わってキバは対処していった。

だがフォームチェンジならまだしも、ウェイクアップには大きな魔皇力および体力、精神力を消費する。連続的使用はキバとしても負担が大きいのだ。

なるべく使わないように心がけ、使うとしても一瞬で解除するのを意識しなければ。

 

 

(針は防げても、別の意味でボクが不利だな――ッ!)

 

 

だがもう寝室は近い。

このまま一気に――

 

 

『亘さんッ!』

 

「ああ、やっぱ素直には行かせてくれないわな!」

 

 

前からやってくるのは妖怪・ランスブィル。

どうやら寝室を守護するゲートキーパーって所か。鋭い牙を見せ付ける様に威嚇を行っている。

 

 

「悪いけど、通してもらうぜッ!」

 

「行かせないッ!」

 

 

ランスブィルは口から黄色い帯の様な舌を伸ばしてキバの動きを封じた。

しかしドッガフォームに変わったキバにとってそれもまた些細な拘束力。

キバは帯を引き剥がすと、逆にランスブィルを引き寄せてみせる。敵はそこそこ巨体だが、それを片手で引き寄せるドッガのパワーが圧倒的だと物語る。

 

 

「もらった!!」

 

「!」

 

 

だがランスブィルもそこをチャンスと踏んだ様だ。

彼は引き寄せられるのを突進に変え、大口を開ける事でキバに噛み付こうというのだ。

その巨大な牙はみるからに強力、アレを受ければ――

 

 

「魔皇の力をナメるなよ!」

 

「!?」

 

 

ノーモーションのキバ。

ランスブィルはここぞとばかりに彼へ牙を突き立てるが、なんとドッガの鎧は逆に彼の牙を粉々にして粉砕する。

ガルルとバッシャーはそれぞれ片腕ずつカテナが解放され、侵食される部分も主に片腕を中心としてとなる。

しかしドッガは二つのフォームとは違い、両腕と胴体が等しく侵食されている為、能力もそれだけ高い。

そして最も注目するべきはその防御力とパワーだ。ルシファーメタルと呼ばれる素材で作られた鎧は、ただの牙では傷一つ付けられなかった様だ。

 

 

『………?』

 

 

だが少し不思議そうに唸るキバット。

それが気になったが、キバは持ち前の怪力でランスブィルに重い拳を打ち当てていく。

だがランスブィルもまた怪力の様で、割と二人の実力は均衡していた。

このまま長期戦になれば余計な体力を消費してしまう。

 

 

「キバット、もう一度ウェイクアップを使う。サポートお願い!」

 

『オッケーッス!』

 

 

キバットはふとランスブィルに視線を移す。

彼は息を荒げて立ち上がろうとしていた。

 

 

『………』

 

 

やはり、間違いない。どうして彼は――

そんな事を考える間もなく、キバはウェイクアップを再び発動させる。だが同時にランスブィルも指を鳴らして樹木たちに合図を出した。

それに答える様にして蔓や蔦同士が連結。巨大なロープの様にキバの四肢を封じる。

 

 

「―――ッ!!」

 

 

流石にコレにはドッガフォームの力でも対処が難しいのか、キバは苦痛の声をもらして立ちすくむ。

考えるキバ。力を込めれば何とかなりそうな気もしなくはないが、やはりそれだと消費する体力等が無駄に思えて仕方ない。

敵はランスブィル一体だけではない、その先にいる妖怪達を相手にしなければならないのだ。

 

 

(くそっ、兄さんに偉そうに言ってるけど、ボクだって考えるのは苦手なんだぞッ!)

 

 

こんな事なら数学の授業をもっとちゃんと受けておくべきだった。

精神力の消費ポイントがイマイチ分からない。キバはそう思いながらも、長期戦を避けるべく再びウェイクアップを発動する。

 

 

「なんだ、これッ!?」

 

「キバット!」『了解ッス!!』

 

 

目が紫に染まったキバットがベルトから離れてランスブィルに突進をしかける。

いきなりの突撃にランスブィルは対処できず、大きく吹き飛ばされてしまった。

どうやらフォームチェンジはキバだけに影響するものでなく、キバットにも少なからず力が与えられている様だった。

現に、キバットの突進があそこまでの威力をもたらしたのは現在のキバがドッガフォームだからだろう。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

 

キバは大声で気合を入れると、思い切り力を入れて蔦を引っ張る。

すると何とか片腕だけは引きちぎれた様で、キバはドッガハンマーをまともに振り回す事ができる状態になる。

 

 

「キバットぉおおおッ!!」

 

 

そして、なんとキバはドッガハンマーをキバットに向かって投げた。

ドッガハンマーは大きく風を切って旋回しながらキバットへと向かう。

通常ならばたじろぐ筈のキバットも、大きく頷いてドッガハンマーへと向かっていった。

一体何を? 起き上がりながら攻撃に警戒するランスブィル、彼はすぐに舌を伸ばしてキバットを妨害しようと企むが――

 

 

『もう遅いッス! ドッガバイトォォオオ!!』

 

 

キバットは向かってきたドッガハンマーをその口で受け止めると、瞬時牙を介して魔皇力をハンマーへと流し込んだ。

彼ははそのままランスブィルの舌をかわして、今度は逆にキバに向かってハンマーを投げる!

 

先ほどとは違う点が一つ、それはキバットが注入した魔皇力の影響で必殺技が発動されていると言う事。

ドッガハンマーの拳を模した紫電の闇・ファントムハンドが、キバを縛っていた草木を闇と紫電の力によって消滅させていく。

そのままハンマーは再びキバの手に納まり、彼は床を思い切り叩いた!

 

するとキバの紋章が地面に浮かび上がり、範囲内にあった草木をステンドガラスの様に変化させる。

そうなるともう拘束力などあったものではない、キバは簡単に拘束を抜け出すとハンマーを床に突き立てる。

 

 

「おい、これを見ろッ!!」

 

「ッ!」

 

 

ランスブィルの前に置かれたハンマーが展開、トゥルーアイがさらけ出される。

 

 

「くっ!」

 

「へぇ……!」

 

 

しかしランスブィルは直感でトゥルーアイが危険だと判断したのか、顔を隠す様にして後ろへ跳んだ。

そして舌を振り回して牽制する様に立ち振る舞う。ウェイクアップが終了するまでしのぐつもりなのか?

確かに時間が長ければ長いほどコチラの体力は減り、向こうにとって有利な状況ができる。

 

 

「頼むぜキバット!」

 

『がってん! サポートおまかせッス!』

 

 

だがそんな事を許すわけが無い。

キバットは舌を華麗に交わしながらランスブィルめがけて再び突進を行った。

 

キバットのスピードはそれなりに速く、まして今のランスブィルはトゥルーアイを見ないように顔を隠しながら滅茶苦茶に舌を振り回している状況だ。

そんな事ではキバットを避けられる訳も無い。ランスブィルはキバットに弾かれて宙を舞う、そして地面に叩きつけられた彼の前にはいつの間にかキバが移動していた。

 

 

「しま――ッ」

 

「悪いね!」

 

 

見ないと言うのなら、見せるまでだ。

キバはランスブィルの眼前に叩きつけるようにしてドッガハンマーを寸止めしてみせる。

尤も叩かないといってランスブィルが助かる事はない。見ないようにしていたつもりが、しっかりと目がトゥルーアイを捕らえていた。

 

 

「うぐぐ――ッ!!」

 

 

ビシビシと音を立ててランスブィルの体がステンドグラスに変わっていく。

 

 

「……ッ?」

 

 

ここでキバもその違和感に気づく。

まだそれほどダメージを与えていないランスブィル、彼が抵抗すれば少しはステンドグラス化を耐えうるものかと思っていたのに。

今の彼はうめき声を上げるだけ。体はどんどんガラスに変わっていき――

 

 

「……お前」

 

「―――ッ?」

 

 

ランスブィルの石化が腰まで進んだ時、キバはふいに口にする。

 

 

「どうして、本気じゃない」

 

「………」

 

 

それはキバットも考えていた事だった。

明らかにランスブィルとペナンガランは本気で自分たちを倒しに来ていない。

キバットが瞬時声を出す。彼がその事に気が付いたのは舌でキバを絡みとった時だった。

 

彼は吸血妖怪、キバットがみるに帯の様な舌で絡みとった相手の血や生気等を吸うのだろう。

鎧があるから血はともかく、生気は確実に彼のようなタイプならば可能だったはず。

しかし彼はキバの血等を吸えた状況にも関わらず何もしなかった、それに加えてこの抵抗力の無さ。

それが意味するのは――

 

 

『あなたはずいぶん長い間、血を吸ってないんスね?』

 

「つまり全盛期に比べれば遥かに弱体化している筈だ、どうして血を吸わなかった?」

 

 

ランスブィルはその言葉を深く受け止める、もう完全に自分は負けたと。

それはそうだ、本気でない彼が本気のキバに勝てる訳が無い。

せめて血を吸っていたり、血を吸った状態だったらまた結果は変わったかもしれないのに。

 

どうして?

キバは自分が勝利した事に若干の違和感を持っているようだった。

それはアキラを助けるにはコチラがいいに越したことは無い。しかしやはりそれが気になるのも事実だ。

 

 

「血を……か――」

 

「ああ」

 

 

既にもう首から上にかけてステンドグラス化が進んでいるランスブィル。

自慢の牙も使う事無く終わる彼だが、別に後悔していると言った様子ではない。

彼は、全てを賭けて戦ったのだから。

 

 

「血はもう、吸わない……」

 

「え?」

 

 

そこで終わり。ランスブィルは完全に石化(ステンドグラス)状態となりキバの勝利が確定された。

相変わらず針や蔓は襲い掛かってくるが、ランスブィルがいない状況ではなんの障害にもならない。

キバは何かまだ心に引っかかる物を感じながらも、いよいよ最後の部屋である寝室へと向かった。

 

ランスブィルを突破してからは特に妨害と言う妨害も無く、敵は完全に寝室で決着を着ける気らしい。

しかし問題は多い。サボテンの針や蔓は無効化して本来の要塞としての意義は完全に殺せたが、それにともった連続ウェイクアップがキバに大きな負担を与えた。

つまりそれは結局キバにとって不利に働く事であり、別の意味でこの樹木たちは仕事をこなしたと言う事になる。

 

そうこうしている内に扉の前までたどり着くキバ。

敵も無駄と知ったのかランスブィルを倒してからはあまり針と蔦の頻度も少なくなってきた。

しかしこの様子を監視されていたのならば戦いにくい。部屋の向こうにも蔦や針があるのなら、やはりドッガフォーム固定の戦闘となる。

流石にもうウェイクアップを発動する気力は無い、できたとしても一回が限界か。

それに相手がトゥルーアイの存在を確認した可能性は高い、その為にペナンガランとランスブィルは特攻したと言ってもいいのだ。

 

 

「さて、行こうか――ッ!」

 

『了解ッス!』

 

 

とにかく考えていても仕方ない。

キバは扉を蹴破ると、ハンマーを構えて中に入り込んだ。

 

 

「……っ」

 

 

なんだ、いきなり攻撃されるのかと思ったらそうでもないらしい。

キバは力を抜く様に息を吐くとゆっくりと歩き出した。

視界に映るのは三体の妖怪、巨大なトーテムポールを人型にしたと言った姿のアササボンサン。ザ・ドラキュラと言う容姿のラ・セーヌ。

 

そして、中央の巨大なベッドに座っているのはリーダーである樹裏架と言う妖怪だった。

一見は少女と言う風に見えるが、おそらく鍵を任される時点で強力な妖怪なのだろう。

 

 

(三体か……きついな)

 

 

見たところアササボンサンがパワータイプ、他の二人が技で押してくる感じか。

キバは冷静に状況を判断してみせる。アームドウエポンズは一定時間なら元の姿に戻す事ができる。

見たところサボテンや樹木がまだ存在している事から、ガルルとバッシャーに手伝ってもらえばまだ勝機は――

 

 

「ちッ、ランスブィルの野郎。壁にもならねぇのかよ」

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

 

吼えるアササボンサンと毒を吐くラ・セーヌ。

残念だがどうやらこの三体はペナンガランとランスブィルとは頭一つ実力が抜け出している様だ。

そして感じるのは――

 

 

『亘さん、あいつ等のコンディションは万全っぽいッス』

 

「ああ、それはなんとなくボクにも分かったよ」

 

 

ペナンガラン達と決定的な違いが三体からは見える。

それはおそらく、彼らの本質である吸血妖怪として意味を成しているかどうかだろう。

先ほどランスブィルは言っていた、血はもう吸わないと。だがこの三体は明らかに最近血を吸っている筈だ。

そこから見える彼らの壁、キバはそれを確かめる為に挑発を行う事にした。

 

 

「あんた等、吸血妖怪なのに血を吸ってないみたいだけど……そんなんでボクに勝てるとでも思ってんのかよ? なめ過ぎだろ」

 

 

その言葉にラ・セーヌは馬鹿にした笑いを浮かべる、どうやら釣られてくれた様だ。

 

 

「おいおい、俺たちをあんなヤツ等と一緒にしてもらっちゃ困るぜ」

 

「兄者は偉大なる吸血妖怪の誇りを捨てた馬鹿者だ!」

 

 

成る程、どうやら先に相手をした二体は血を吸うことを止めていたと言う事か。

キバットの話と夏美達の話を考えると、あの二体は日の光の下でも歩いていたと言う。

しかしこの部屋は窓はおろか僅かな明かりしかない。成る程、彼らは訓練していないと言う事。

 

 

「偉大なる吸血一族の誇りを捨て……」

 

 

その時、ずっと沈黙していた樹裏架が口を開く。

同時に彼女のベッドから生えていた樹木達がざわつき始める。

どうやらこの赤い草木は彼女の力で発生させた物らしい、じゃあ彼女を倒せば早い話か。

キバは狙いを定めてハンマーを構えなおす。

 

 

「人との共存を選んだ、哀れな部下……」

 

「それの何が悪いんだよ」

 

「人間との共存? ハッ、あいつらは馬鹿だから気が付いてないんだよ」

 

 

ラ・セーヌは笑う、この世界は共存と言う幻想に満ちているだけだと。

 

 

「支配なんだよ、現実はな。あいつ等は人間に支配されていくんだ。それのどこが共存かね? 俺は嫌だね、あんな下等な生物に支配されるのなんて」

 

「その通りだ、人間の為に吸血一族の誇りを捨てる事など無意味」

 

 

樹裏架が言っている誇りと言うのは日の光に耐える事と、血を吸わない事なのだろう。

当然だ、人間と共存していく上でこの二つは避けては通れない。

 

 

「輸血パックをチマチマ吸うなんて想像しただけでゾッとする。好きな時に好きなだけ血を吸うのが俺たちのあるべき姿だろうがよ」

 

「うぉおおおおおおお!! 当然だ、当然だとも!!」

 

 

見えてきた、どうやらこの三体は隔離されていたと言う事か。

しかもこの様子だと純粋な妖怪側ながら――

 

 

「ちなみに、あんた等邪神についてどう思ってんの?」

 

「………」

 

「共存について、どう思ってるんだよ」

 

 

ニヤリと、樹裏架の口元がつり上がる。

 

 

「確かに……邪神は私たちにとっても邪魔でしかないさ」

 

 

だがしかし、邪神が現れた事で総大将はしっかりと生贄を用意しているじゃないかそしてかつ共存を訴える。

なんともおろかな話だ、そして同時に何も知らない人間が滑稽で仕方ない。

なんだかんだと言って、簡単に崩れる規律と調和。そして共存。

 

 

「ランスブィルやペナンガランは、プライドを捨てて人間との共存を選んだ」

 

 

しかしどうだ?

どちらも人間離れしすぎた容姿から、結局社会に溶け込む事はできず妖怪城からは出ないと言う始末。

それで何が共存か、結局は辛い思いをしただけでしかない。

 

 

「気が付いたよ、いや邪神"様"に目を覚まさせてもらった」

 

「………」

 

 

不和が不和を呼び覚ます。狂気の連鎖、それは邪神がもたらした災害とも言えるだろう。

樹裏架達は理解こそしないでいたが、自ら達も立場は分かっていたと言うのにも関わらず――

樹裏架は言う。邪神は邪魔だ、だからこそ従うし逆らう事は無いだろうと。だが人間にこれ以上世界を歩かれるのも邪魔でしか無いと。

 

 

「邪神に仕えるのも悪くない」

 

 

同時に、邪神がいなくなったのなら。

 

 

「次は、我々が世界を支配する」

 

「あっそ……ッ!」

 

 

やっぱりかよ! 何て厄介な連中なんだ。

コイツら反旗を翻すつもりなのか!

 

 

「世界は夜に染まる、支配するのは私達なんだ――ッ!!」

 

 

ザザザと葉の揺れる音が響き渡る。

部屋にどんどん蔓が張り巡らされていき、サボテン達は一勢にキバへと照準を合わせる。

 

 

「感謝しろ人間、新たなる支配の幕開けに立ち会えた事を」

 

 

そして

 

 

「一番最初の犠牲者になれた事をな!」

 

 

三体の妖怪は一気に力を解放させる。

嫌な予感がする、ドッガフォームならば何とかなると考えていたが……

それでも勝たなければならない、ある種自虐的な笑みを浮かべてキバも足を踏み出した。

 

 

「ボクは鍵をもらうだけさ。もちろん、お前らに勝ってな」

 

「だったらやって見ろ、餓鬼がッッ!!」

 

 

まず飛び出してきたのはラ・セーヌだ、何をしてくる? 不安もあったが、彼は真っ直ぐにコチラにやってきた。

ならばコチラも潰しやすいと言うもの、キバはドッガハンマーを真っ直ぐ突き出してラ・セーヌに命中させる。

 

 

「!?」

 

 

単調なものだと馬鹿にしたが、ハンマーがラ・セーヌに命中した瞬間、彼の体が蝙蝠の群れとなり四散した。

なんだコレ!? 混乱するキバに襲い掛かる蝙蝠の群れ、彼らは鋭い牙でキバの装甲をガリガリと削っていく。

だがドッガフォームの防御力にはビクともしない、それを悟ったのか樹裏架はアササボンサンに何か指示を出した。

 

何を命令したのか知りたかったが、蝙蝠と羽音と鳴き声が全てをかき消してしまった。

しかも目くらましとしての役割も大きく、キバが全てを散らした時には目の前にアササボンサンが立っている所だった。

 

 

「くらえッ! 粘着樹液ッ!!」

 

「ッ!?」

 

 

何かくるのか? キバは咄嗟にハンマーを放して両手をクロスさせる。

そこに何かが着弾した。防御はできた、だが……

 

 

「なんだコレッ!?」

 

 

粘着樹液、そうアササボンサンが言った通り粘性の高いジェル状の液体が両腕に付着する。

しかもアササボンサンはそれを連射してきたではないか! 少量なら引き剥がせたかもしれないが、コレはマズイ。

おまけにこの液体、すぐに固まり始めたではないか。キバの体は樹液に覆われるようにしてどんどん固まっていく。

ドッガフォームは防御力、攻撃力は非常に高く強力なフォームといえるだろう。だが動きはトップクラスに遅い。

それは相手の攻撃を避ける事無く受け止める事を想定しているからであって、受けてはいけない攻撃に対しては弱いのだ。

 

 

(このままだと樹液で覆われてゲームオーバーじゃんかッ!)

 

 

キバットは既に固まっている。

つまりフォームチェンジができない! そしてこのままでは負ける。

何て厄介な! とれる行動は一つしかない。

 

 

「うぉおおおおおおおおおッ!」

 

「ッ!」

 

 

キバの装甲が砕け散る。

亘は変身を解除したのだ、同時に樹液も砕け散る訳だがこの状況で変身を解除する事がどれだけ危険な事か。

すぐにキバットは亘を噛む、しかしそれでも遅かった。

 

 

「がぁあああッッ!!」

 

『わ、亘さんッ!』

 

 

樹裏架が指を鳴らすと、部屋に備えてあったサボテンから針が発射される。

なんとか数発は転がって回避した亘だったが、キバットをベルトにセットする前に蔦が彼の足を捉えて動きを封じた。

結果、針は数本亘の足に突き刺さり瞬間的に血を吸い上げた。

 

 

「ふふ、ご馳走様」

 

「くそがッ! 覚えておけよ――ッ!!」

 

 

笑う樹裏架、どうやら遠隔的に彼女は血を吸えるらしい。

次がくる前になんとか亘はキバに変身する事に成功する。

足に刺さっていた針は魔皇力によって消滅するが、足にダメージを負った事は変わりない。強い違和感が足を支配する。

 

 

「フ――ッ!」

 

「チッ!」

 

 

跳躍し、踵落しを仕掛けてくる樹裏架。

キバはすぐに体を捻って彼女の攻撃を避ける。そこへ襲い掛かってくる彼女の回し蹴り、キバも対抗するために蹴りを重ねた。

ぶつかりあう脚と四散する衝撃波。鉄を蹴っているみたいだ、キバは舌打ち混じりにバク転で彼女と距離をとっていく。

すぐに樹裏架は指を鳴らしサボテンから針を発射、回避するキバを串刺しにしようと試みた。

もちろん彼もまた蹴りで針をはじくが――

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「ちっ!」

 

 

敵は一人じゃない。横から再び殴りかかってくるアササボンサン。

キバは攻撃を回避しようとするが足に感じる違和感と樹裏架が操る蔓が彼の動きを鈍らせる。

それだけでなく、蝙蝠の群れとサボテンの針がキバの装甲に火花を散らせた。

やはりこの二つはドッガフォームでなければ対処できない様だ。

 

 

「グッッ!!」

 

 

なんとかアササボンサンの拳を受け止める事に成功。

彼らに勝つにはフォームチェンジを使いこなすしか――

 

 

「粘着樹液!」

 

「はッ!?」

 

 

アササボンサンは再び樹液を発射、それがベルトにあるフエッスロットに命中していく。

固まる樹液、それは同時にフォームチェンジに必要なフエッスルが樹液に覆われて使い物にならなくなってしまったと言う事。

 

 

「マジかよ! テメェ……ッ!!」

 

「グハハハハ! 愚か者めーッ!」

 

 

アササボンサンのラッシュが始まる。

再びフォームチェンジを行うにはまた変身を解除するしかない。

迫る針、蔦、蝙蝠、それらを回避しながらまた変身を行えと? ましてアササボンサンの拳を回避するのも精一杯なのに。

 

 

「ラ・セーヌ!!」

 

「分かってるよ! お嬢!!」

 

 

蝙蝠が収束していき、再びラ・セーヌがマントを翻して上空に現れる。

しかも蝙蝠は三つに分かれて収束した。それが何を意味するのか? 簡単だ、ラ・セーヌは三体になったのだ。

 

 

(分身ッ?)

 

 

それだけならよかった。ラ・セーヌ達は三人同時にマシンガンを取り出してキバに向けたのだ。

 

 

「「「死の洗礼をくれてやろうッ!」」」

 

 

上空にいる三人のラ・セーヌは一勢にマシンガンを射撃した。

同時に樹裏架は蔓を使ってキバの脚を絡めとる。回避行動を制限、当然銃弾の雨がキバに襲い掛かるのだが――

 

 

「――――!!」

 

 

何だコレは!? 普通の銃弾ではない? ラ・セーヌの銃弾は明らかに普通のものではなかった。

受けた瞬間、脳が揺さぶられる様な感覚。そして何より、先ほど針を受けた時とほぼ同じ体感。

 

 

「ちッ! そういう事かよッッ!!」

 

 

このキバは地面に落ちた銃弾を見て確信する。

これは銃弾ではなく、樹裏架の針だ。サボテンの射出力とは比べ物にならない程強力ではないか。

 

 

「ハハッ! うまいか樹裏架ぁ」

 

「ああ、最高だ!」

 

 

ふざけやがって、人の血をなんだと思ってるんだ。

キバはなんとか体勢を立て直そうとするが、目の前にはアササボンサンの拳が見える。

 

 

「余所見をするとは愚か者めぇえええええ!!」

 

 

絶大な衝撃が体に走る。

巨大な拳でキバは大きく吹き飛ばされていく、しかしそこに樹裏架の指を鳴らす音が聞こえる。

すると蔦同士が連結してキバの吹き飛ぶルート上に現れた、キバはそこに当たりパチンコの様にして再びアササボンサンの元へと弾き返されてしまう。

 

 

「「「もう一回くらいやがれッ!!」」」

 

「ウォオオオオオオオオオオッ!!」

 

 

マシンガンの針とアササボンサンの拳が再びキバを捉える。

キバフォームではとてもじゃないが耐えられない、しかし変身を解除する事も厳しい。

まずい、負ける可能性が出てきた。キバは壁に叩きつけられながらもまだ冷静に判断する思考は残っていた。

 

 

『大丈夫ッスかッ!』

 

「なんとかね……! でも、キツイわ正直」

 

『実はですね――』

 

 

キバはキバットからその事実を聞かされる。

成る程、それならばまだ勝ち筋が絶たれた訳ではない、だがあまりにもアササボンサンとラ・セーヌが邪魔すぎる。

それは同時に樹裏架だけなら何とか倒せるだけであって他の二体は限りなくキツイと言う事。

 

 

「どうしたボク? 息が上がってるよ」

 

「うるさい女だ――ッ!」

 

 

白い髪を振り回して蹴りを繰り出す樹裏架。

そのスピードにキバの防御が遅れ、体に衝撃が走っていく。

しかもちょっと待て、この蹴り普通の蹴りじゃ――

 

 

「咲け」

 

「ッッ!!」

 

 

樹裏架がその言葉を口にすると、キバの体から赤いバラが文字通り花を開いた。

花が出現したのは樹裏架が蹴りを命中させた所、そしてバラが咲くと意識が遠くなる。

どうやらバラはキバの血を媒体にして咲いた様だ。そして彼女の蹴りはダメージを与えるのではなく、吸血バラの種を埋め込む物。

 

 

「もうすぐ素敵なオブジェにしてあげる」

 

「うるさい上に悪趣味ってか、キツイねお姉さん」

 

「何を余裕をかましてるー! くらえ粘着樹液ッ!!」

 

 

再び豪腕によって壁に叩きつけられたキバ、さらにそこへ命中していく樹液の群れ。

キバは壁に磔にされて拘束されてしまった、こうなったらもう逃げる方法は変身解除くらいしかない。

再びキバに絶体絶命のピンチが訪れる。

 

 

「これで分かっただろう? 私達の本当の力をね」

 

 

樹裏架は笑みを浮かべてキバを見上げた。

赤い瞳が彼をしっかりと捉える。

 

 

「残念だ、ペナンガランとランスブィルも全盛期ならば一体で君を圧倒できたかもしれないのに」

 

「あっそ、でも……! 彼らは共存を選んだ。人の血を吸う生き方を止めたんだろ」

 

 

その言葉に樹裏架は不愉快だと表情を歪ませる。

どうやら彼女たちは昔こそ部隊を組んでいたが時代と共にペナンガラン達が離れてしまったといったところなのだろう。

彼らは人との共存を望み、その為の行き方を学んでいった。それが何よりも樹裏架達にとっては面白くないと。

 

 

「二人には、そこまでして共存したいと言う強い気持ちがあった筈だ――ッ」

 

 

その為にランスブィルとペナンガランは努力した。

日の光の下、血を吸わぬ生活をずっと続けていたのだ。

 

 

「それが馬鹿だっつてんだよ、そこまでしてどうして人間と生きたいかね? 俺はごめんだわ」

 

「うぉおおおおおお! 当然だ!!」

 

「そう、私達が我慢する必要がどこにあるというのか?」

 

 

一体どんな気持ちでランスブィルとペナンガランは自分と戦ったのだろうか?

キバはそれを想像して胸を強くえぐられる感覚を覚える。

信じた共存を自らが壊さなければならないと言う現実に、彼らは苦悩したのだろう。

 

 

「くだらない感情に踊らされて、現にランスブィル達はお前にまともなダメージすら与えられず敗北した」

 

「見る影もねぇな! ハハハ!」

 

 

舌打ち、キバは確かに舌打ちを行う。

 

 

「気にいらねぇな……!」

 

「は?」

 

「倒したボクが言うのもアレだけど、ペナンガランもランスブィルも人と一緒に歩みたくて努力したんだろ? その血の滲む様な努力を馬鹿にするのは気にいらないね!」

 

 

キバが吼える、しかしその瞬間樹液がキバットに命中。

そして全身に着弾するマシンガンの針、さらに樹裏架は蔦を思い切りキバの体にたたきつけた。

 

 

「グッッ!!」

 

「黙れ人間がッ! 現にお前はもう何もできずに敗北する」

 

 

樹裏架はそう言って再び蔦をキバへと叩き込む。

 

 

「そうだとも、どうやったらこの状況を変えられるかね? 無理なんだよッ!」

 

 

ラ・セーヌもそう言ってキバへと銃弾を叩き込んでいく。

どんどん吸収されるキバの血液、さすがに意識がもうろうとしてきた。

悔しいが樹裏架の言う通りでもある、キバットが使えなくなった状況。やはり変身を解除するしかない。

だが変身を解除しても動きが鈍っている今では攻撃をまともに受けてしまう。耐えられる訳も無いのだ。

 

 

「可哀相な侵入者よ」

 

 

その時、樹裏架の脚が形を変えて巨大な植物となる。

驚きの声をもらすキバ、その種類は『根』。侵食される様に人間の体が植物へと変わっていく。

あっと言う間に彼女の下半身は全て赤い草木に変わってしまった。

 

 

いや、変わったというのはおかしいか。性格には真の姿を現したと言うべきか。

樹裏架は植物要塞の中心であり正体、核なのだ。樹裏架、真の名を妖怪・吸血樹(きゅうけつき)は真の力を解放する。

樹裏架は一度全ての姿を失い、部屋にあった草木たちを自分の元へと収束させる。そしてベッドがあったところに一本の赤い花を出現させた。

花の中心に再び樹裏架の姿が現れる。上半身は人間態、下半身は巨大な花となった彼女はそのまま壁に磔になっているキバの眼前へと移動する。

 

 

「よく頑張った」

 

 

樹裏架はキバの首を掴んで首筋を大きく出させる。

尤もベタながらも尤も効果的な吸血方法を樹裏架は行使しようと言うのだ。

 

 

「全てを吸い尽くしてあげる」

 

「……マジでやめといた方がいいよ樹裏架さん、ボクの血はおいしくないと思う」

 

「構わない、気にするな」

 

「わお、嬉しいね……!」

 

 

とは言いつつも回避方法が無い。

これは詰んだか? キバは焦りと不安を隠す様に笑うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、キバが絶体絶命の状況にある訳だが。

他の鍵持ちに近いメンバーも似たり寄ったりの状況である事を把握してほしい。

まずは龍騎――

 

 

「うグッ!!」

 

「しぶといヤツだ、いい加減楽になったらどうか?」

 

「冗談キツイぜ、ふざけんなよッ!!」

 

 

声をあげて走る龍騎、だが状況は土ぐものワンサイドゲームと言っても良かった。

強靭な糸に龍騎は対応できず、疲労も多い為反撃の手口が無い状況。そしてその下の階層にいるファイズも同じだ。

 

 

「うぅう……ッッ!!」

 

 

無数の泥田坊にリンチと言ってもいいくらい一方的な攻撃を受ける。

オートバジン共々殴られていくファイズ、反撃も数に飲み込まれていくだけだった。

さらに移動してブレイドとカリス、無限に湧いてくる黒河童兵に最初こそは優勢だったが次第に状況は変化していき――

 

 

「ぐわぁああああああッ!!」

 

「椿ッッ!!」

 

 

弾かれて変身が解除されるブレイド、カリスは椿を守る為に走るが――

 

 

「邪魔だッ! 退けぇええええッ!!」

 

 

やはり数、数が多すぎるのだ。

どの状況にも言えるが戦力の差がここで響いてくる。

カリスはなかなか椿の所に迎えず、かえって焦りからか自分も攻撃を受ける様になってしまう。

それが続けば大きなダメージとなって蓄積されるものだ。場面を移動しよう、アギト達もまた雹に敗北寸前となっているし――

 

 

「うーん……減らないねぇ」

 

『大ピンチねゼノン!』

 

 

鬼河童と戦闘しているダブル、彼もまた劣勢か?

余裕の雰囲気は出しているが、倒しても倒しても減らない黒河童兵にうんざりのようだった。

とにかく数が多い、コアである鬼河童を倒せばいいのだろうが、そこまで行くのも大変だしかつ鬼河童は強いときた。

それより、ダブルは自分よりも今現在危険な龍騎たちを思い焦りを覚える。

 

はっきり言って今の状況でピンチになっているのだ、まだアキラの所にたどり着く以前なのに。

それにどんどん増えていく河童兵もそうだが、元の河童兵もいる。

戦いの途中でデンデンセンサーを使いあたりを見てみたが、河童兵が無数にいる部屋を発見した。

数はざっと百はいたかもしれない。小出しに来ていたが、もし彼らが一気にせめてくれば……

 

つまるところ、劣勢、むしろ敗北寸前である。

やはりいろいろ数やら戦力が違いすぎたようだ。

なんとかココまでこれただけでも奇跡だったかもしれない、だがその奇跡も終わりを告げたと言う事か。

 

 

「んだけど……! フルーラ、ボクは思うのさ!」

 

『ええ!? 何を思うのゼノン!!』

 

 

手を広げるダブル。戦いのさいにできた少しの隙を彼らは攻撃ではなく、パフォーマンスに費やした。

しかもわざわざスタッグフォン達が時間をかせぐと言う始末、そんなにダブルはこの言葉を言いたいのだろうか?

などと、言われれば別にそうでもないのだろうが。

 

 

「彼らは未だに諦めていない! しぶとく、そして惨めな姿になろうとも、ひたすらにアキラだけを見ている」

 

『だからこそ厄介なんだよ、お前たちは――ッッ!!』

 

 

闇を全身におおいながら鬼河童は直接ダブルに切りかかっていく。

さすがにメモリガジェットだけで止められる相手ではない、現在ヒートメタルだったダブルは何とか片腕を盾にして刀を受け止める。

 

 

「ッッ! フフフ、これはなかなかだね」

 

 

片手で受け止めはしたが、正直油断すれば切断されてしまう。

ダブルはすぐ蹴りで鬼河童をひるませると、バックステップで距離をとった。

しかし後ろ、横、前、どこを見ても黒河童兵の大群である。まさに数の暴力だ、これではいずれ逆転される事は必須。

 

 

「………」

 

 

しかし、諦めないのは彼らもまた同じだ。

 

 

「鬼河童、君は奇跡を信じるかい?」

 

『信じるとも、だが今の貴様らに起きはしないッ!』

 

 

メタルシャフトと村正がぶつかり合う。

勝敗は一瞬、メタルシャフトは簡単に切断され襲い掛かる闇の妖刀。

だがダブルはそれを器用にかわしてみせる。

 

 

「そうだね、都合のいい奇跡なんてそうポンポン起きるわけ無い」

 

『当然だ、天文学的数値から導き出される偶然こそが奇跡、それに頼るのは愚か者のやる事だ!』

 

 

そうだとも。

もう自分たちの運は使い果たしたのかもしれない。

ダブルは襲い掛かってくる刀を交わしながら、それでも笑う。

 

ここまでアキラに近づけただけでも奇跡みたいな事だと言えるだろう。

尤も、このまま戦い続ければアキラを助ける事ができる可能性はゼロではない。

しかし今の状況を考えて仲間を誰も失わずに助けるのは間違いなく不可能なのだ。多くの仲間を失った上でアキラを助ける。

だがその後に邪神に勝てるのか? 無理だろう、結局世界も残った仲間も死んで終わり。それがこの世界の結末……なのかもしれない。

 

 

『その最悪な終わりを防ぐためにも、お前たちの存在は邪魔なんだ!』

 

「そう、そうだね――」

 

『確かに、鬼河童……貴方の言う通りだわ』

 

 

その時、ゼノンとフルーラの声が重なり合う。

 

 

「『だけど――!」』

 

 

それはこの世界だったらの話。

 

 

「もし、その奇跡を引き寄せられるとしたら……?」

 

『ッ?』

 

 

この世界の奇跡は終わったかもしれない。"この世界"の、は、だ。

 

 

「彼らが今まで紡いできた物語は、彼らが今まで築いてきた絆はきっと無駄なんかじゃない」

 

『彼らが歩んできた物語は、その無理だと言う奇跡をもたらしてくれる!』

 

『どういう意味だ!』

 

 

歩んできた道は、きっと彼らに力を託してくれるだろう。

全てを救いたいと言う馬鹿な願いを具現させてくれるだけの奇跡を授けてくれるだろう。

彼が今まで歩んできた世界はきっと無駄なものじゃない、全てを救う為の力をきっと彼らに与えた筈だ。

 

 

「そうだろ? ディエンド!」

 

『!』

 

 

ダブルは断りの欠片を取り出す。

なんの変哲も無いただのカード、いやよく見ればそれは"しおり"に見えなくもないか。

とにかくダブルはディエンドに連絡を取る。目的はただ一つ、彼にしかできない役割を果たしてもらう為だ。

つまりのところ、以前ディエンドがそれを考えたようにダブルはディエンドが仲間になると言う事を確信していた。

 

というより、そう仕組んだ点もある。

ゼノンとフルーラは世界に海東や司いる事を理解できる能力を持っている。

同じ世界に海東がいた時点で、仲間に引き込む手立てを考えていたのだ。尤も、それよりもずっと彼らは楽に仲間になった訳だが。

 

 

『あまりこう言うのは趣味じゃないんだけどね』

 

 

ゼノンの言葉に答える様にしてディエンドの声がカードを通して聞こえてくる。

ゼノン達が司たちに配った"理の欠片"には、いろいろと能力があった。

その最も重要な能力はディエンドがいなければ発動できないと言うものだ。

そして今、その全ての準備は完了したようで――

 

 

「フルコンプリート、全ての世界から了解の合図が来たよ」『コール・オーケー』

 

 

通信の先にいるディエンド、彼は一番近くの城門前に来ていた。

別にこの場所に何かがあると言うわけではない、だがそれでも全ての準備は完了していたのだ。

アタックライド・コール。それが彼に与えられた奇跡を起こす力だ。

 

 

『アタックライド――』

 

 

理の欠片が示すのは絆の力。

ゼノンは司たちが今まで築いてきた絆を使ってこの世界での戦いに勝利するつもりだったのだ。

正直、自分たちでは勝率が低すぎるかもしれない。だが絆の力はそれを凌駕すると彼らは知っている筈だ。

 

 

「さあ、せいぜい頑張ってくれまたえ」

 

 

そしてディエンドはそのカードを発動させる。

 

 

「君たちの、大切なお友達の為にね」『サモン・ゲート!』

 

 

ディエンドライバーの銃口が光り輝く。同時に――

 

 

『な、何だこれはッ!』

 

「フフフ、悪いね鬼河童――」

 

 

ダブルのベルトが光り輝く。

いや正確にはベルトが輝いているのではなく、ベルトに挟まれていた理の欠片が光りだしたのだ。

そのあまりの輝きに思わず鬼河童は怯んでしまう。これはまさかハッタリではない? 本気で逆転の何かを発動されたとでもいうのか!?

それほどまでにダブルの立ち振る舞いは余裕に満ちていた。それはそうだ、彼は今この瞬間を待っていたのだから。

 

 

「ボク達の――」『ワタシ達の――』

 

『「勝ちだ』」

 

 

少し早めの、勝利宣言。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ッ!!??」」」

 

 

理の欠片は全ての所持者に同じような光を与えた。

危険な状況にあるアギト達もまた例外ではない、デルタやガタックの光も合わさって冷凍庫全体を包むように光が走る。

何か来るのか? 雹は焦りを浮かべて後ろに跳ぶ。何か奥の手を持っていたのだろうか?

 

 

「………ッ!」

 

「?」

 

 

しかし三人の様子は変わらない、特に反撃のチャンスを見出した訳では無いようだ。

それどころか何故カードが光ったのか分からない様子ではないか。成る程、向こうとしても特に意図していない現象と言うわけか。

ならば何かが発動する前に潰すしかない。雹は冷気を一気に開放してアギト達に氷の兵士達を向かわせる。

疲労が蓄積し、さらに葵を守る為に立ち振る舞う三人に勝機はない。ましてこの冷気では時間がたてば葵は死ぬ。

コチラには氷の兵士と黒河童兵、時間稼ぎには十分だ。

 

 

「くそッ! ライダーカッティ――」『Rider Cutting』

 

 

電子音はその攻撃の発動を告げたが、その前に雹は冷気でガタックカリバーを氷付けにした。

もはやデルタも冷気によって動きが鈍っている、アギトもまた同じ。

勝った。奇跡でも起きない限りアギト達に勝機はない、雹はいよいよ止めをさすべく動き出す。

 

 

「あの光には焦りましたが、どうやら何も起きなかった様ですね?」

 

「く――ッッ!!」

 

 

そうだ、何か救いを期待したが特に何かが変わった訳でもない。

回復したとか、力がみなぎるというのは無し。逆転の方法も見つからない……

 

 

「さあ! 命まで凍ってしまえッ!」

 

 

絶大な冷気が襲ってくる。

なんとかフレイムフォームとなって一同をかばうアギトだが、限界はすぐにやってくるだろう。

今回ばかりは無理なのか? アギトがそう思った時――

 

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」

 

 

ガタックがアギト達をかばう様に立ち、そのまま雹に向かって歩いていく。

何を!? ガタックが壁になってくれたおかげで皆が受ける冷気が少し減ったとはいえ、ガタック自身の体がみるみる凍っていくじゃないか。

このままでは危険だ、アギトはすぐにガタックを呼び戻すが……

 

 

「いいんだ……ああ、そうさ。いいんだよセンセーっ! 俺が時間を稼ぐからその隙にセンセーは力を溜めてくれッ!」

 

「なっ! 駄目だよ鏡治くんッ! 戻るんだ!!」

 

 

しかしガタックは足を止めなかった。

声を荒げるアギト、いくらなんでも無謀すぎる。

クロックアップも使えない程疲労しているのに、そんな状態で冷気に耐えられる訳が無い!

 

 

「駄目だ、死んでしまう! 鏡治くんッ! 聞いているのか!!」

 

「………ああ、そうだなセンセーッ!」

 

 

ガタックだって馬鹿じゃない、それくらい分かっているのだ。

分かっていて、その選択を取った。

 

 

「こうしないと、もう勝てないだろッ!!」

 

「ッ!」

 

 

その言葉に笑う雹。

そう、もう誰も犠牲を出さずに勝つなんて不可能と彼女は笑い声を上げる。

 

 

「誰かが犠牲になって、アキラちゃんを救うには……俺が一番いいんだ!」

 

 

その言葉にアギト達全員が反応する。

葵は顔を真っ青にしながらも強く言い放った、何を言っているのと。

デルタもまたその意味を彼に問う、そして沈黙のアギト。

 

 

「俺は皆と一番交流が少ないから……ッ! 誰かが死ぬなら俺が一番良いんだ! ああそうさ、特別クラスの誰かが死ぬより俺が犠牲になった方が――」

 

 

そこで、ガタックは誰かに掴まれる。

驚きと共に振り返るガタックだったが、もうその時には葵達の方へ投げ飛ばされている所だった。

 

 

「いででッ! な、何すんだよセンセー!」

 

 

ガタックを投げ飛ばしたのはアギトだ。

彼は力を振り絞ってガタックの方へと走り、すぐに彼と位置を変えたのだ。

 

 

「鏡治君……次、もしそんな事を言ったら七時間以上はお説教するよ」

 

「え、えぇ!?」

 

 

アギトは全ての力を振り絞る。

激しい炎の力が、金色の光と共に開放された。

走り出すアギト、まさか……まさかそんな風に思わせてしまったなんて――ッッ!

 

 

「鏡治君。君は皆と同じ、同じクラスの大切な仲間なんだッ!!」

 

 

過ごした時間が短い?

じゃあこれからもっといればいいじゃないか!

 

 

「未熟な僕が言うものなんだけど――」

 

 

アギトは行く手を阻む氷の兵士をがむしゃらに殴りつけていく。

ただひたすらに悔しさと無力を撃ち殺す様に!

 

 

「僕は臨時だとしても、今は君たちの教師なんだッッ!!」

 

 

何が何でも守ってみせる。いや、守らなければならないんだ!

 

 

「その下らない理想と共に凍るがいい」

 

 

どんなにアギトの勢いがいいとはいえ、自分にはたどり着けない。

そしてアギトが敗北すればガタック達の心も折れるだろう。

今は仮面をつけているから分からないが、きっと仮面の奥では絶望の表情をうかべている筈。

雹はそれを想像してつい笑みをこぼしてしまう。絶望の表情こそ最高のオブジェ、早くその絶望を具現化させたいと彼女は願う。

 

 

「ぐぅううっ!」

 

「先生ッ!」

 

「センセーッ!!」

 

「翼……くん」

 

 

限界、しかし四人は諦めてはいなかった。

絶対に諦めないッ! だって、だって自分はそうだろ? 仮面、ライダーなんだから!!

 

 

「ッ!?」

 

 

雹は何かの音が聞こえてきたのを、その時確認した。

何かいやな予感がする、雹は冷気を強めて早急の決着をつける事にした。

しかしアギトは食いついてくる。余程鏡治の言葉が心に来たのだろうか? 彼の仮面の奥から嫌な光を感じざるを得なかった。

まさか、まさかコイツはまだこの状況で諦めていないのか!? そしてそれに呼応するように音はどんどんとコチラに近づいてくる。

 

 

「くッ!」

 

 

雹は先ほどのバーニングフォームを思い出す。

こいつらはいつ覚醒してくるのか全く検討もつかない、こんな事ならもっと早く殺しておけば――!

そして、雹はその音が何なのかを把握した。そう言えばアギトはそんな事を言っていた。

仮面"ライダー"と――!

 

 

「「「「!!」」」」

 

 

轟音、そして飛び散る氷の破片達。

それは完全に閉鎖された氷の牢獄を完全に破壊して現れた。稲妻よりも早く、悲しみよりも深く引き寄せる様に。

扉の上に開いた穴。そこは氷によって封鎖されていた筈だが、なんとそこから鉄の塊にのった『誰か』が轟音を上げて登場したのだ。

鉄の塊、雹にはそう見えただろう。そしてこのエンジン音、間違いなくそれはバイク。

 

バイクに乗って誰かが突撃してきたのだ。

ヘルメットをしている為、男か女かは分からないが体格を見ると男だ。

黒いコートを着ているその人は、氷の破片と共に冷凍庫に着地する。呆気にとられる雹やアギト達。

誰だ? 味方の中にも心当たりは無いが……

 

 

「―――久しぶりだな」

 

「!」

 

 

ヘルメットの男は、確かにアギトに向かってその言葉を告げた。一瞬の沈黙、だが同時に衝撃を受けるアギトと雹。

今の言葉を受け取るにこの男はアギトの知り合いと言う事、ならば敵と言う事だろう。雹はすぐに男に向かって氷兵士を向かわせる。

だが――

 

 

「ハッ!!」

 

 

男は最小限の動きで氷兵士の剣をかわすと、そのわき腹に掌底を打ち込む。

同じように向かってくる黒河童たちにも蹴りや拳で攻撃をさせる前に潰していく。

 

 

「な、なんだアイツはッ!」

 

 

いくらなんでも生身でココまでされると驚かざるを得ない。

そして雹が次に聞いたのはアギトの声だ。

 

 

「あ、貴方は――ッ!!」

 

 

現れた男が誰なのか、アギトは瞬時に理解した。だがそれはあり得ない筈なのに!?

何故、どうして彼がココに!?

 

 

「アギト、お前の(いのち)はこんな所で潰える程弱くは無いはずだ」

 

 

男はヘルメットを脱ぎ捨てると、コートを翻して何かの構えを取った。

同時に彼の腰部分が光り輝き、現れる"ベルト"。そんな馬鹿な! またコイツらは足掻くと言うのか!?

 

 

「せっかく絶望してくれると思ったのに――ッッ!!」

 

 

雹は強い怒りと恐れを覚える。

そして新たに現れた男に向かって冷気を発射した、それは半端な炎ならばかき消してしまう程の冷気。

だがアギトも、そして彼の炎もその程度の冷気ではかき消す事など出来はしない。それはまさに深く、より深く激しく燃える炎。

ディープ、ブレイズ――ッッ!!

 

 

「変身――ッ!」

 

「「「ッ!?」」」

 

 

アギト以外はその男が誰なのかを知る由もなかった。

かすかに葵には心のどこかに既視感があったがそれでもアレが誰なのかは分からない。

だが男が言った言葉、それが意味するのは彼もまた――

 

 

「き、貴様何者ッ!?」

 

 

雹の冷気をかき消しながら、彼は変身を完了させた。

 

 

「アギト」

 

「ッ!?」

 

「俺の名は、"アナザー・アギト"」

 

 

アギトよりも龍を意識させる生物的な姿、そしてなびくマフラー。

仮面ライダーアナザーアギト! 彼は、今再びアギトの前に姿を現したのだった。

そして――

 

 

「!」

 

 

一瞬で黒河童兵と氷兵士が切り刻まれて消滅した。

何が起こった!? 雹は驚きに声をあげる。アナザーアギトが何かしたとも思えない。

だとすれば現れた紫色の閃光がその正体だろう。どこへ行った? 雹は紫の影を追う、その時彼女の耳に聞こえる電子音。

 

 

『Clock Over』

 

「!」

 

 

そして雹は見つける、紫色の誰かがガタックの前に立っているのを。

 

 

「な……なんで――……」

 

 

ガタックは驚きに声を震わせている。対照的に軽い調子で笑うのは――

 

 

「ハハッ、大丈夫かい鏡治?」

 

 

仮面ライダー、サソード!

 

 

「し、神也ッ!?」

 

「んああ、御剣神也。ただ今参上ってね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ッ!?」」」

 

 

中庭、そこで絶体絶命だった椿たちにもある変化が訪れる。

いきなり銃声が聞こえたかと思うと、黒河童兵達が大きくのけぞっていったのだ。

 

 

「なになになになによ!?」

 

「今度はなんだよちくしょー!」

 

 

ねずみ男と椿がわちゃわちゃと吼える。今度は何が起こったんだ!?

誰かが銃を撃ち、それが黒河童兵に当たったと言う単純な結果。では誰がそれを撃ったのか――

 

 

「危なかったわね、大丈夫だった?」

 

「なッ!」

 

「は!?」

 

 

聞き覚えのある声がして、咲夜と椿は声の方を直視する。

見えたのは金髪のウェーブが掛かった少女と、長身の見るからに優しそうな少年。

 

 

「な……! ダイアナッッ!? ク、クロハッ!?」

 

 

忘れる訳が無い。

自分と同じ契約者の彼ら、二人は各々の武器を振るって黒河童兵を弾き飛ばす。

しかし何故ココにいない筈の彼らが!?

 

 

「約束したじゃないか、もし困った事があったら必ず助けに行くよ……って」

 

 

完全に口をあけて固まっている椿と咲夜に、クロハ達は手を差し伸べる。

 

 

「さ。さっさとアキラを助けて帰りましょう?」

 

 

ダイアナの言葉にコクコクと頷き、二人は確かにその手をとった。

それはまるで大きな希望、まぶしい光の様に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐぁああああぁああああああああ!!」

 

「ッ!!」

 

 

キバを拘束していた樹裏架が悲鳴をあげたかと思えば、ラ・セーヌやアササボンサンの体から火花が散る。

吹き飛ぶ三体の隙をついてキバは一度変身を解除、そして何が起こったのか周りを確認してみる。

どうやら三体に誰かが攻撃してくれたようだが、ココに来れる味方がいただろうかと。

すると自分の後ろに人影が二つ、血を抜かれて意識が朦朧としている為に目を擦って亘はそれが誰なのかを確かめた。

 

 

「え!?」

 

 

見えたのは銃を構えているスーツ姿の女性と、同じく茶色い髪でスーツを着た男性だった。

しかし女性の香水の香り、そして男性のオーラは忘れてはいない。

理の欠片が光ったかと思ったら――

 

 

「大丈夫かい? 亘」

 

「間に合った様だな、ここは俺たちに任せろ」

 

 

そう言って振り返る二人。

その表情は前にみた時よりもはるかに自信に満ちていたし、背中も大きく感じた。

亘はその事に軽く泣きそうになったが、何とか言葉を振り絞って笑いかける。

 

 

「サガさん! イクサさん!」

 

『どどどどうしてココにいるッスかーッ?』

 

 

この場に現れたのは、自分の試練の時に出会った顔ぶれだった。

どうしてココにいるのかは分からない。だけど、亘にはそれが何よりも大きな希望に見えた。

この状況を変えられる大きな力、それが今この世界に降り立ったのだ!

 

 

「さあ、立てるかい?」

 

「は、はい!」

 

 

イクサが亘に手を差し伸べる。亘は完全に泣いているが、それでも笑みを浮べて頷くとその手を強く掴んだ。

だが樹裏架達も既に状況をある程度理解していた、亘に味方ができたと言うこと。それは彼女たちにとっては面白くない事だ。

まだ変身はしていない。すぐにラ・セーヌは無数の蝙蝠となって、そして樹裏架はサボテンの針を発射して亘達三人を狙う。

 

 

「ッ!」

 

 

やばいッ!

亘は瞬間的に腕を盾にして目を瞑るが――

 

 

「甘いッ!」

 

 

まだ人間態ではあったが、サガが手を前にかざすと彼の紋章が具現化して三人を守る盾に変わる。

針も蝙蝠もそこに当たり、全てが無効化されて弾き返された。

 

 

「こ、これって……!」

 

「ああ、俺たちも王となった事で魔皇力の使い方を教えられた。これくらいなら楽にできるさ」

 

 

呆気にとられる亘。

そんな彼をイクサは引き起こすと、服についている草木を払ってくれた。

そして彼の両肩をポンポンと叩く。

 

 

「さあ、今度はコッチの番だ」

 

 

そう言って笑うイクサの腰にはベルト、サガの腰を見てもベルトが見えた。成る程、亘はニヤリと笑って頷く。

亘を中心にして右にはイクサ、左にサガが立つ。そして三人は同時に構えてその言葉を言い放った。

 

 

「「「変身ッ!!」」」

 

 

鎧が現れ、鎖が現れ、その姿を変化させる。

舌打ちを放つ樹裏架、どうやら現れた二人も同じタイプと言う訳か。

 

 

「さっきはよくもやってくれたな――!」

 

 

そう言って仮面ライダーキバは樹裏架をにらみつけた。

雰囲気が変わる樹裏架達、どうやら油断すれば危険と悟ったようだ。

そしてキバの両隣にいるのは、仮面ライダーサガと仮面ライダーイクサ!

 

 

「かまう事はねぇ樹裏架! 何体増えようが同じなんだよッ!」

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 

ラ・セーヌとアササボンサン、そして樹裏架は再び戦闘態勢に入る。

そうだ、どれだけ増えようが同じ。むしろ頂く血が増えた事を感謝すべきだろう。

しかしキバ達に怯む気配はない、完全に彼らは勝利を目指しているのだろう。

 

 

「デカイのは動きを封じる樹液がウザイです、あと蝙蝠野郎の分身にも気をつけてください!」

 

「ああ、分かった」

 

「では、行こうかッ!」

 

 

構え、そして走りだす三人。

樹裏架達もまた再び各々の攻撃でキバ達の進撃を止めようと試みるが――

 

 

「遅いッ!!」

 

 

サガの剣、ジャコーダーが鞭の様にしなり針や蝙蝠を弾き飛ばしていく。

しかしやはり針は無数に湧いてくる分コチラの動きをかなり制限してくる。

なんとかできないか? キバがそう思った時、イクサがそのフエッスルを取り出た。

 

 

「亘! これを君にッ!」

 

 

イクサがキバに向かって投げたのは紅色のフエッスルだ。

キバは詳細を聞こうかと思ったが、迫る針をとにかく何とかしたい。

詳細も聞かずキバは、イクサから受け取ったフエッスルをキバットへと差し出す。

 

 

『これ……ッ!』

 

 

キバットはもう効果が分かった様だ、フエッスルを噛んで効果名を宣言する!

 

 

『出てこいッス! エルドラン!!』

 

「!」

 

 

空間にヒビが入り、勢い良く割れたと思えばそこから巨大なドラゴンが現れたではないか!

緋色の目にくれないの鎧を纏ったワイバーンと言えばいいか。思わず怯むキバ、現れたドラゴンの咆哮に一瞬敵かと思ってしまった。

しかし現れたドラゴンはその口から火球を発射、次々にサボテンや蔓を焼き散せていく!

 

 

「ぐあぁあアアああああああああぁぁああぁっぁぁぁぁあああッ!!」

 

 

やはり草と言う都合上火には弱いらしく、樹裏架は悲鳴をあげて後退していった。

蔓等は樹裏架に繋がっているから完全に排除する事はできなかったが、サボテンに関してはほぼ全て焼き尽くす事ができた。

同時に消滅するドラゴン、あれは一体なんだったのか?

 

 

「エルドラン。私達の世界に存在する種族の一つ、ドラン族の一体さ」

 

 

イクサたちの世界は人間とファンガイアの二種類が世界を統率している。

だがアームドモンスターのガルル達、そしてキバット等を見れば分かるとおり存在する種族で見ればその数は約12程度と言われていた。

もちろん人間とファンガイア以外は希少種だったり、絶滅寸前とも言われている現状だが、なんとかして種を代々残している訳だ。

 

その中の一つ、"ドラン族"と呼ばれているものがある。

他の種族と比べて人語を話す、理解するものが少ない。

そして凶暴な性格の為に多くのドラン族は長い歴史の中で消えてしまった。

 

だが生き残っているドラン族はファンガイア達に助けを求め、共存の道を選択した。

言葉を話せるドラン族は多くの仲間を助ける事に成功したのだ。

このエルドランもその一体だ。エルドラゴンと呼ばれる種類だったが、イクサ達が魔皇力を与えた事で性格も温厚となり、今こうしてキバの味方になってくれた。

 

 

「エルドランはこの世界にやってくるときに勝手についてきてね。どうやら君が気に入ったようだ」

 

「そ、そうなんですか?」

 

 

どうやってイクサ達はココにやってきたのだろう?

それが気になったが、今は目の前にいる敵を倒すのが先だ。

せっかく自分に期待してくれているだろうドランが道を作ってくれた、そのチャンスを無駄にする事はできないだろう。

 

 

「だったら、しっかりやらねぇっとなッ!!」

 

 

思い切り樹裏架に蹴りを叩き込むキバ。

なんとか彼女は防いだ様だがそれでもその体を大きく壁に叩きつけて苦痛の声をあげる。

 

 

「くっ! ラ・セーヌ!!」

 

「わかってるよッ!!」

 

 

ラ・セーヌは樹裏架を助ける為に分身を向かわせるが――

 

 

「いかせると思うか?」

 

「ちぃいいッ!!」

 

 

サガの剣がしなり、そして鋭くラ・セーヌを貫く!

その動きはまさに蛇、どこに逃げようとも確実にその牙で獲物を捕らえるのだろう。

サガの剣は空中に散ったラ・セーヌの分身である蝙蝠を一体も逃がしはしなかった。

これはもう回避不可能、彼は目の前にいるサガを倒すことを決意する。

 

 

「「「死ねや人間がぁあああああああッ!!」」」

 

 

三体に分身して一気にマシンガンをぶっ放す!

さすがにコレは受けてくれると思ったのだが――

 

 

「……ッ!」

 

 

サガの結界に全ての弾丸が弾き飛ばされる。

またそれか! ラ・セーヌはイライラを隠す事無くサガを睨み付けた。

 

 

「いきなり現れて邪魔してくれるとはなぁぁぁ……ッ!」

 

「だいたいの事情は聞かせてもらった。悪いが、コチラはアキラを必ず助ける。その意思を曲げるつもりはない」

 

 

どれだけ、いくら力を込めようともサガの結界は崩れない。ラ・セーヌはさらに分身を増やしたが結局は同じ事。

もっと他にいい方法があったろうが、ラ・セーヌはただ真正面からぶつかっていくくらいしか思考が回らなかった。

それは焦り、怒り、苛立ちからくる思考。

 

 

「どいつもこいつも花嫁だの邪神だの! そんな事俺にとってはどうだっていいんだよ!」

 

 

問題なのはいつまでたっても自分達がこんな狭い城に閉じ込められていると言う事だった。

 

 

「コッチは自由に生きたいんだよッ!! お前らは邪魔なのよ!」

 

「共存に理解と、それから生まれる拘束は仕方ない事だ。お前もそれを理解し、受け止めろ」

 

「あぁ? んな綺麗事はたくさんだ! それにそれは共存じゃねぇ、支配だ!! 俺は人間に支配されるなんてまっぴらなんだよッ!!」

 

 

ラ・セーヌは回りに散っていた蝙蝠全てを自らの体に戻す。

どうやら相当キテいるようだった。今すぐにでも殺したいと言う欲求が伝わってくる。

 

 

「アササボンサンッ!」

 

 

それはラ・セーヌだけではない、樹裏架もアササボンサンも同じ気持ちだ。

一旦三体は後ろへ下がると、見せた事の無い陣形を組んだ。

 

 

「「「ッ!」」」

 

 

何かくる? キバたちは固まって防御体制をとるが――

まず樹裏架がアササボンサンの上に文字通り乗った、そして彼に根を張る。

アササボンサンが両手を広げるとそこからさらに根が展開していき部屋に広がっていく。

そして樹裏架が指を鳴らすと、根から草が生え、すぐに花が次々に咲いていった。

 

 

「私達はこの世界を支配する。必ず次の支配者は我等吸血妖怪となるッ!」

 

 

花から蜜が垂れてきたかと思うと、ラ・セーヌは一気に分裂。

闇を纏い、無数の蝙蝠となって蜜にぶつかっていった。

 

 

「樹液乱舞ッ!!」

 

 

花を媒介にして大量の樹液を発生させ、ラ・セーヌが全ての樹液を対象へと運ぶのだ。

ラ・セーヌは纏わせた闇で樹液を防いでいる為、防御できているがキバたちはそうではない。

なんとか回避しようと試みるが無駄だった。ものの数十秒でキバ達は樹液の群れに襲われて丸ごと閉じ込められる。

抵抗を許さぬ超スピード、ラ・セーヌ達は完全に固まった樹液に閉じ込められたキバ達を見て勝利の笑みを浮かべる。

 

 

「は……はは! どうだッ! これで――」

 

 

瞬間熱風、吹き飛ぶ三者と悲鳴を上げる樹裏架。

いきなり目の前が紅く染まり、全身に激しい熱と衝撃を感じた。

とにかく熱が弱点の彼女にとっては大ダメージとなっただろう。

もちろんラ・セーヌやアササボンサンも油断していた分大きな衝撃を受けてしまった。

何だ? 今度は一体何をした? 戸惑う彼らの前に立っていたのは――

 

 

「ぐっ! な、何故だ!!」

 

 

そう、キバ、イクサ、サガの三人が何食わぬ雰囲気で立っているではないか。

確かに閉じ込めた筈なのにッ! 思わず樹裏架は大きく舌打ちをして歯を食いしばる。

三人の内、イクサと呼ばれた者の容姿が若干変わっている事を見るに、彼女が何かをしたのだろう。

 

 

「悪いが、あまり時間はかけてはいられない」

 

 

イクサの仮面が展開、それはセーブモードからバーストモードに移行する際に発せられる衝撃波だ。

衝撃波の熱が樹液を全て溶かしてしまい、今こうして三人は樹裏架達の前に確かに立っている。

 

 

「くそぉおおッ!!」

 

 

ラ・セーヌが苦し紛れにマシンガンを乱射するが、全てサガが弾き飛ばしていく。

あまりにも動じない彼らに樹裏架達はある種の恐怖を覚え始めた。まるで自分達が勝つ事が当然だと思っている素振りだ。

そこに一片の焦りも迷いも無い。何がそこまで彼らの自信を増徴させていくのか? それが全く分からずに彼らは恐怖する。

 

 

「たった二人が増えただけで何故押されている! アササボンサン!」

 

「ウォオオオオオオオオオオ! 粘着樹液ッ!!」

 

 

先ほどまではどうする事もできずにヒットを許していた攻撃だが、今はもう違う。

亘の心に宿る希望、そして確かに見えた勝ち筋!

 

 

「バッシャー!」『バッシャーマグナムッス!!』

 

 

サボテンが全焼した事でバッシャーにフォームチェンジが許される。

イクサカリバーが放つ弾丸と水流弾は確実に樹液を撃ち落としていった。

歯軋りをして直接殴りかかってくるアササボンサン、しかしイクサは接近戦も特化している様でカリバーを剣に変えて彼を押し出していく。

妨害しようとしているラ・セーヌもサガに抑えられてしまいやはりまた押し出されていく連続。

 

 

「おのれ……ッ!! 何故――」

 

 

 

樹裏架の放つ蔓をバッシャーマグナムに供えられているカッターが切り落とした。

水を纏い高速回転するウォーターカッターに樹裏架は押されている、そして彼女はそれが納得いかない。

純粋な力の強弱ではない、アレほど弱く見えたキバが今は脅威でしかない。その豹変ぶりが何よりも腹立たしく、理解できなかった。

だが、そこでニヤリと樹裏架は笑う。調子に乗るものココまでだと――!

 

 

「コチラには人質がいる事を忘れるな!」

 

「人質?」

 

 

その通り、そう言って樹裏架はモニタを展開させる。

映し出されるのは入り口付近に止まっていた夏美達、この空間は全て樹裏架の体と言ってもいい。

ならば同時にそれはあの場にいる夏美達にも攻撃をしかけられると言う事だった。

 

 

「今すぐ武器を捨てて動きを止めろ。でなければ……この可愛らしい顔がすぐに干物になるぞ」

 

「………」

 

 

だがキバは――

まったく怯まず、かつ彼女をまっすぐに見て言放つ。

 

 

「それは無理だぜ樹裏架さん」

 

「ッ!?」

 

 

何を言っているのか。樹裏架は怒りからか、ならばと里奈達に向かって蔦を振り下ろした。

痛めつけてから血を吸ってやると。しかし――

 

 

「!!」

 

 

里奈の周りに黄金の光が現れて攻撃を防いでみせる。

魔皇力の結界、樹裏架はそのままサボテンや蔦で激しい攻撃をしかけるが結界は全くぶれる事は無かった。

それを見てほらねとキバは言う、あの結界は決して壊れる事は無いと!

 

 

「里奈ちゃんの想いは崩れはしない――ッ!」

 

「クッ……!」

 

 

モニタの向こうの里奈は、夏美や真由を守る為に戦っている。

その想いの強さ、何を疑う事があるのか。

だが樹裏架は言う、守り続ける事は勝利には繋がらないと。

確かに強固な結界も攻撃を加え続ければ壊れるのだ。いつか、必ず。

 

 

「確かに守るだけの盾じゃ戦いには勝てないかもね――」

 

 

だから、助け合う。

剣と言う戦う力を盾に合わせる。それは自分達が、それは大切な仲間が!!

 

 

「!!」

 

 

その時、里奈達を攻撃していた草木が全て消し飛ぶ。

どうした事か、樹裏架はつい叫び声をあげてモニタを見た。

そこには轟々と燃える赤き炎が、そして次々に潰れていくサボテン達、切り裂かれていく蔦――!

亘はそれを見てニヤリと笑った。

 

 

「悪いね樹裏架さん。コッチには――」

 

 

最強のシスコンがいるんだ。

 

 

「大丈夫か!? 真由ッ!!」

 

「うん……!」

 

 

ドアをぶち破ってきたのは双護、つまりはカブト達だった。

彼もまた真由がこの城付近に来たのを聞き、急いでコチラに来たと言う事だった。

閉ざされていた扉はサゴーゾが破り、草木はタジャドルが焼き尽くす。さらに重力操作やクロックアップで残りを始末して安全を素早く確保した。

それを見て大きく舌打ちを放つ樹裏架、亘はこうなる事が分かっていた? だからあんなに余裕だったとでも!?

 

 

「何故だ!? お前は――ッッ!!」

 

「ボクは――」

 

 

キバフォームに戻る。そして――

 

 

「里奈ちゃんを、皆を、仲間を、絆を信じているからだッ!!」

 

「うグッ!!」

 

 

樹裏架にキバの飛び蹴りがヒット。

仲間? それを信じたから強くなった? 馬鹿な、ありえない話だ。

それは純粋な力のせい、イクサとサガの実力に便乗しただけじゃないか!

 

 

「かもしれない。だけど、お前は仲間を信じたのか?」

 

 

三対三のチームワーク、その実力はキバ達が勝っている事は明白だった。

個々ではサガの自由自在な射程と範囲でラ・セーヌを完全に封じ込め、イクサの射撃と剣技がアササボンサンを完全に封殺する。

樹裏架も単体ならばキバには実力及ばぬといった所だ。そして団体ではサガが敵の動きを制限、イクサが全体的なサポート。

そしてキバが攻め込むという布陣になっている。

 

単純な話、樹裏架達は現在キバ達に負けている。では何をすればよかったのか? それは数だ。

もし今の樹裏架達に加えてランスブィルやペナンガランがいたのなら戦況はキバ達が不利となっていただろう。

支那夜叉は相変わらず全く動かずにコチラを見ているだけ。

 

 

「ボクはお前達の間にある壁を理解していない」

 

 

だが、もしランスブィルがやられている時に誰か一人でも助けに来ていたのなら――

 

 

「くっ! ヤツ等は吸血妖怪の誇りを捨てた愚か者だ!!」

 

「それでもお前の部下だろうがッ!!」

 

「!!」

 

 

キバの声と共に空間が弾け飛ぶ。

見えたのは巨大な月、美しくも強く輝く月だ。最後のウェイクアップ、キバ達は決着をつけるつもりだ。

 

 

「ボク達は、皆でアキラを助けるんだ!!」

 

 

カテナが開放されてヘルズゲートが展開。

翼部分は強靭な刃となっておりキバは迫る樹木達を全て蹴りで切り裂いていった。

ウェイクアップの光景に焦るラ・セーヌ達、流れは完全にキバが掴んでいる。

いきなり部屋に現れた巨大な月に、思わず喉を鳴らす樹裏架。

 

 

「決めましょう! イクサさん、サガさん!!」

 

「ああッ!」

 

「終わりだッ!!」

 

 

イクサもサガも必殺技を発動させる為のチャージは完了した。

ラ・セーヌ達も何かくる事は予測できたが――遅い! 遅すぎた!!

 

 

「アグゥァアアアアアアアア!!」

 

 

サガのジャコーダーがラ・セーヌを縛りあげる。同時に上空へサガの紋章が浮かび上がった。

あれは危険だと本能が告げ、ラ・セーヌは体を分散させて拘束を逃れ様とするが、その時おかしな事が起こる。

 

 

「おいおい――ッ! どうなってんだよ……ッッ!」

 

 

逃げ出せない、体を蝙蝠に変える事ができないのだ!

そんな馬鹿な事があっていい筈が無い、何かの間違いだと彼は力を解放するが無駄だった。

何をしてもジャコーダーから抜けられないのだ。

 

 

「魔皇力をなめるな、そんな小ざかしい技が通用する程甘くは無いぞ」

 

「何だとぉぉお……ッ!?」

 

 

魔皇力によって蝙蝠化が封じられた。

マシンガンで抵抗すればよかったのだろうが、ラ・セーヌはムキに拘束を解こうと暴れるだけ。

そんなものを待ってやるほどサガは甘くない、彼は飛び上がり紋章を通過する。拘束力がさらに強まり、ラ・セーヌは苦痛の声を上げた。

吊り上げられるラ・セーヌと着地して構えなおすサガ。

 

 

「こ、こんな馬鹿な……ッ!」

 

「教えてやろう吸血鬼、確かに支配と共存は紙一重だ」

 

「―――……ッ」

 

 

それを拒む気持ちはサガもよく分かる。

過去彼もまたそんな事を考えていた、そしてそれが間違いではないと信じていた。

しかしエルザドルとの戦いでその思いは揺らいだ。支配と共存のジレンマを超えなければ、待っているのは――

 

 

「滅びだけだッ!」

 

「アガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

サガはジャコーダを弾く。

するとラ・セーヌにサガの紋章が刻まれて一気に衝撃を叩き込んだ。スネーキングデスブレイク、彼の最大の技である。

衝撃が強すぎる、ラ・セーヌは耐えられずに気絶する。そして悲鳴をあげる者が一人。

それはアササボンサンだ。彼の前にはイクサがカリバーを構えて立っている、その背後に巨大な太陽を照らして。

 

 

「ウガアアアアアアアアア!! 止めろッ! 太陽だけは止めてくれぇええええええ!!」

 

 

目を覆いながらアササボンサンは後退していく。

イクサの魔皇力によって浮かび上がる巨大な太陽、その光が何よりもアササボンサンを突き刺した。

対してイクサはカリバーを構えて前進していく。

 

 

「これで沈めッ!」

 

「ウォアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

一閃がアササボンサンの体に刻まれるッ!

強大な光のエネルギーを受けてアササボンサンは地面に倒れた。イクサ・ジャッジメントは彼に裁きの一撃を刻み付けたのだ。

だがまだ終わってはいない!

 

 

「グオオオオオオオオオ! せめて貴様だけでもッ!! 粘着洪水ッ!!」

 

「!」

 

 

最後の切り札、それをアササボンサンは発動した。

彼の体が樹液となったのだ! そのまま彼はイクサを呑み込む様にして襲い掛かる。

これを食らえば一気に固まり、厚い樹液に覆われてしまうだろう。先ほどの比ではない量の樹液、食らえば窒息は必須だが――

 

 

「悪いな、私も学ぶ生き物なんでね」

 

「!!」

 

「切り札は――」

 

 

そういいながらイクサはベルトから青いフエッスルを取り出す。

 

 

「切り札は……最後まで取っておけってね!!」『フェイク・ガルル』

 

 

その音声と共にイクサの手にガルルセイバーが収まった。

アームドモンスターを呼ぶ事ができるフエッスルを彼女は新たに手にしたのだ。

そしてガルルセイバーを構えたイクサは、ハウリングショックを発動する。

衝撃波が樹液を全て吹き飛ばし、アササボンサンを再びフィールドへと引きずり戻した。

 

 

「あ……が――ッッ!」

 

「悪いが、負けられない理由があるんだ」

 

 

その言葉を聴いて何も言わずにアササボンサンは気絶する。

さあ、残りは――

 

 

「支配と共存の違いは確かに難しいかもしれない」

 

「……ッッ」

 

「だけど、理解を拒めば先に待つのは争いでしかないッ!」

 

 

何を偉そうに! 子供に、何も事情を知らないキバに何が分かるッ!!

樹裏架はそう言いながら無数の花びらを発射した。無数の花びらはキバの装甲を切り裂く刃となって彼に襲い掛かる。

 

 

「確かにボクは何も分からない。アンタからしてみればウザくて仕方ないだろうね」

 

「―――ッ!」

 

 

しかしその全ての花びらが急に勢いを失って文字通りただの花びらに変わった。

立ち尽くすキバと驚きの表情を浮かべて固まる樹裏架。

キバはそれが分かっていた、つまり何が起きたのかを完全に理解していた様で尚も話を続ける。

 

 

「だけど、何も分からないボクに伝える事はできる筈だ! ボクにアンタの思っている気持ちが受け止められる様に話せるはずだろッ!!」

 

「く……ッ! ―――ぁ」

 

 

苦悶の表情を浮かべて樹裏架はキバを見る。

何やら彼女の花がどんどんしおれていくではないか。

どういう事なのか、それは樹裏架も気になっている事。答えはキバットが口にする。

 

 

『魔皇力ッス』

 

「―――ッ?」

 

『樹裏架さんは亘さんの血をいっぱい吸ったッスよね。それがマズかったんスよ』

 

 

亘は変身時にキバットに自分を噛ませ、魔皇力を注入してもらう。

つまり亘の体には現在魔皇力が宿っているのだ。

 

 

『魔皇力は強力ッスけど、同時に取り扱いの難しいものでもあるッス』

 

 

つまり、それは時に毒となるという事。

 

 

『亘さんは元々魔皇力に耐性があったみたいッスけど――』

 

 

それはゼノン達が亘に与えた『サービス』だろう。

クウガになる時に必要とされる『アマダム』をユウスケが無視しているのもその一環である。

とにかく亘は魔皇力に体を蝕まれる事は無かった。だがしかし樹裏架はそうではない、体に侵入した魔皇力が毒となって今効いてきたのだ。

 

 

「うぐ……ッ!」

 

「共存に互いの理解と信頼は必要だ、そこは互いに引けない部分があるかもしれないけど話し合えばきっと互いに何か変わる筈だ!」

 

 

キバは今まで魔皇力の存在を軽視していたが、サガの結界を見て自分も真似できるのではないかと考えた。

魔皇力を"使う"と言う事を意識して集中してみる。するとできた、手に魔皇力が集中していくのを感じる。

 

 

「フッ! ハァアアアアアア!!」

 

「―――ッッ!!」

 

 

キバは飛翔し、固まっている樹裏架に紅く光った拳を叩き込む。

魔皇力を拳に込めて叩き込む"ブラッディ・パンチ"。吹き飛ばされる樹裏架、魔皇力がさらに彼女に進入していく。

その力に樹裏架は吸血樹の姿を失い、元の人間態に戻ってしまった。キバはそれを確認すると足に力を込めて飛翔する。

 

 

「ウォオオオオオオオオオオオオ!!」

 

 

キバと月が重なり合い樹裏架は思わずその美しさに心を奪われた。

しかしそれが終わりだった、樹裏架が我に返った時にはもう全てが遅かったのだ。

それを理解してか、彼女は哀しい笑みを浮かべてキバに視線を向ける。

 

 

「……我ら吸血一族と人間は理解し合えない――」

 

「違うよ樹裏架さん。吸血一族とか人間なんて関係ない、"聖亘"と"樹裏架"が助け合えるかだろ?」

 

 

種族じゃない、そこにいる者を――命をどうするか?

この手は他人を傷つける為にあるのか、それとも他人の手を握る為にあるのか。

それを決めるのは自分自身だと。

 

 

「『ダークネスムーンブレイクッッ!!』」

 

 

キバに踏み潰されるようにして蹴りつけられる樹裏架。

地面に叩きつけられたときにキバの紋章が地面に刻み込まれた。

 

 

「私は……私の……選択は―――……」

 

 

樹裏架はそこで気絶する、転がった鍵を回収して三人は勝利を確信した。

 

 

『共存か……』

 

「………」

 

 

そこで初めて支那夜叉が動きだして三人の前に現れる。

彼は動かないでいたものの、会話や戦いはしっかりと確認していたようだ。

夜叉の使い魔である支那夜叉、キバは以前夜叉に完全敗北を教えられた。つい拳を握り締める力が強まる。

 

 

『我らは、妖怪の中でも特殊なものだった』

 

「………ッ」

 

 

夜叉の分身にしては彼は饒舌だった。

支那夜叉は樹裏架と自分やペナンガランにあった壁を説明する。

妖怪と一口に言ってもそれはやはり多種多様なものだ。その中で、樹裏架達は人の血を吸って生きる吸血妖怪と言われる種族だった。

鬼太郎の件がある前から生きていた彼女達は、"吸血妖怪部隊"と言うチームを組んでいた非常に強力な妖怪集団である。

その連携力と実力で多くの血を味わったものだと。しかしいつまでもそんな事が続く訳が無かった。

 

鬼太郎の件があり、妖怪と人間は共存の道をたどる事を決意して世界のあり方を決めたのだ。

それは同時に彼女達にとっては大きな問題。人の血を吸うなと言われたのだから、早い話が食事をするなという事である。

そんな馬鹿な話があっていいわけが無い。当然樹裏架やラ・セーヌ達は抗議を示したのだが――

 

夜叉、ペナンガラン、ランスブィルは違った。

彼らは人を襲う事をきっぱりと止めて世界のあり方に従う事を決意。

人との共存を望む彼らは、血の滲むような努力をして日の光や血を吸う問題をなんとかして克服していった。

 

 

『だがやはり樹裏架達はそれが面白くなかったのだろう、その結果がこれだ』

 

「………」

 

 

だけど、とキバは口を開く。

 

 

「いつか……いや必ず分かり合える筈さ。ボク達が、そうであったように」

 

 

イクサとサガは顔を見合わせて頷く。

それを見て支那夜叉は彼らが自分達と過去同じような立場にあった事を理解した。

そしてそれを乗り越えた事も。今、彼らは手を取り合ってアキラを救おうとしている。

 

 

『そうだといいが。少年、名はなんと言う?』

 

「聖……、亘」

 

『そうか……。亘、では見せてくれ。私に君の選択が、君の力が正しいという事を』

 

 

その言葉と共に支那夜叉は構え、走り出す。

イクサもサガも手伝う事はしない、キバが彼を真っ向から受け止めるために!

 

 

「ああ、分かったよ――」

 

 

キバは再び手に魔皇力を集中させる。

それを見ても支那夜叉は動きを止めない、むしろその足を速めた。

 

 

「お前は、必ずボクが超えて見せる。夜叉ァッッ!!」

 

 

ブラッディパンチが支那夜叉を捉え消滅させる。

そして、その事実を本体である夜叉は感じていた。

 

 

「………」

 

 

前回はコチラの勝利で終わったが、今のキバは絆とやらで何かが変わった様だ。

夜叉とて樹裏架の気持ちは分からなくはない、だがしかし人と手を取り合わなければならないと言う事は強く理解できる。

その為に何を選択するのが正しいのか? 邪神や共存の問題を突き詰められてくすぶる自分達、アキラと世界を救うと言う愚直な願いを込めて戦う彼ら。

勝つのはどちらか? 夜叉はいずれくるキバとの戦闘に備え力を蓄えるのだった。

 

 

 

 




ちょっとキバに与えられたオリジナルを少し説明させてもらいます。

・エルドラン

専用フエッスルを発動させる事でドラン族のエルドランが出現。
炎や突進でキバをサポートしてくれます。


個人的にキバの歌はドッガフォームのテーマが一番好きなんですよね。
確か一回も流れなかったどw

あと僕もそこまで詳しくないんで、もしかしたら間違ってるかもしれないんですがトゥルーアイって原作じゃ見られた時点でアウトらしいね。
一応この作品では目と目が合えばアウトになります。

あと見たヤツの動きを止めるって設定らしいけど、どう考えても描写的に見られた時点で死んでるんだよな相手。
かなり強い魔皇力でできた宝石が埋め込まれてるらしいので、それが原因でしょうね。

とまあ、こういう設定的なものを見るのも面白かったりします。

はい、じゃあ次は金曜か土曜。
それでちょっとその後は予定があるので、間隔あいてしまうかも。
申し訳ありませんが、気長にお待ちください。

ではでは

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