仮面ライダーEpisode DECADE   作:ホシボシ

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プロローグ

 

 

 

どうも、はじめに軽い注意をまとめました。

ちょっと長めですが、気持ちよく読んでもらうための前書きだと思ってもらえればなと思います。

 

 

(1)

この小説は、ディケイドをメインとした仮面ライダーシリーズのクロスオーバー二次創作となってます。

しかし多くのオリジナルキャラクターや、原作と同名のモノでも設定が大きく異なる場合があります。

主要キャラクターに一部原作キャラと同名のキャラがいますが、基本的に完全パラレル。ほぼオリジナルと考えて頂ければ幸いです。

(例・小野寺ユウスケ等

 

 

(2)

あくまでも仮面ライダーメインですが、多重クロスとある様に他のアニメ、ゲーム作品からのキャラクターも割と登場します。

詳しくはその編や、キャラが出た時に記載させていただくか、別の場所に作品名をまとめて記載します。タグもまた別に増やすかもしれません。

多くの場合はオリジナル要素が多数含まれている可能性があり、ゲストキャラか半オリジナル扱いとなる場合が多いです。

 

 

(3)

基本的にライダーに変身するキャラクターはほぼ全員オリジナルとなっています。

演者さんをイメージさせる用語等が一部出てくるかもしれませんが、実在の人物とは何の関係もありません。

気をつけますが、皆さんのイメージを壊してしまう可能性があります。そこはご了承ください。

 

 

(4)

恋愛要素や、他作品の公式でないカップリング描写があります。(例・良太郎×ハナ

 

 

 

はい、とりあえず以上が最初の注意となります。

上記の要素が苦手の方はお手数ですがバック、またはよく注意してください。

 

 

さて、いろいろと長くなってしまい申し訳ありません。

どんな作品でも受け入れてやる! と言う方がいらしたらスクロールお願いします。

せめてこの作品が良い暇つぶしになってくれれば幸いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは一体どこだ……? 俺を自由にしろ!!」

 

 

全ては、ここから始まったのかもしれない。彼が意識を取り戻せば運命の輪は回り始める。

固定された四肢、そしてゾッとしたのは自分の肉体が異形となっているおぞましい光景だった。

昨日まで当たり前のように過ごしていた、使っていた自分の体が昆虫のソレになっていた時、一体どれだけの人間が精神を保っていられるのだろうか?

 

 

『我々の求めている人間は知能指数600、スポーツ万能の男。そう、君は選ばれた栄光の青年なのだ!!』

 

 

選ばれた者は人でなくていい。今まで過ごしてきた人生を否定し新しい世界へと翼を広げるのだ。

彼はもう人間ではない、人としての生活には戻れない。青年は緑色になっている自分の体を見てそれをなんとなく察知した。

 

 

「ぐアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 

 

青年の体に5万ボルトの電流が駆け巡る。

並みの人間ならば一瞬にして黒焦げの死体に変わる筈だが、既に人を超越した彼は火傷一つ負うことは無いだろう。

しかし脳がまだ人として機能している為に苦痛と痛みだけは人並みに感じてしまう。

 

 

「さあ、脳改造をはじめよう」

 

 

脳改造、洗脳、つまりもう彼は彼でなくなるのだ。

記憶や人格を左右する脳を改造するためには、それに耐えうる肉体をまずは用意しなければならない。

よって脳改造は最後に行うのがルールであった。

 

 

「―――ッ! ふざ……けるな! し、死んでも、貴様らの思い通りの人間になるものかぁッ!!」

 

 

 

彼はこの後、巨大な悪と戦う運命を背負う。

そして戦いは戦いを生み出し、それは新たなる戦いを作り出す要因となる。

戦い続ける運命を背負ってまで、彼らは彼らでいたかったのだ。

 

 

「変身!」

 

 

ある者は笑顔を守る為に戦い――

 

 

「変身!」

 

 

ある者は神と人の狭間で戦い――

 

 

「変身っ!」

 

 

ある者は戦いを終わらせる為に戦った――

 

 

「変身!」『Complete』

 

 

ある者はジレンマに苦しみながらも戦い――

 

 

「変身!」『ターン・アップ』

 

 

ある者は運命を変えるために戦い――

 

 

「……ッッ!」

 

 

ある者は心を教えるために戦った――

 

 

「変身」『HENSHIN』

 

 

ある者は天の道を行く為に戦い――

 

 

「変身ッ!」『SWORD・FORM』

 

 

ある者は未来を守るために戦い――

 

 

「変身」『キバっていくぜーっ!!』

 

 

ある者は種族を守るために戦った。だが理由は無くていい、それは結果でしかないからだ。

愛を、街を、欲望を、友を、希望を、己の道を守る事で人は戦える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、音が聞こえる。それは人々の話す声。それは車が走る音。それは生活が出す騒音。

今日も世の中にはいろいろな音が溢れている。空は青く、人は歩き、いつもと変わらない毎日が始まるのだ。

 

それは当然の事で、誰もそれを疑うことはしない。

今日も誰かが一日をいつもの様に過ごすのだろう。誰もが特別な事など起きる訳が無いと思っていた。

学校に行く人、会社に行く人、休日の人――……

 

でも、今日は少し違った。

 

その毎日の音が聞こえる中、一つだけ異質な音が聞こえたのだ。

それは言葉だが、その音声はとても不気味に聞こえる。人の声じゃなく、何か……嫌な風に澱んでいる。

とても異質で嫌な音に感じただろう。その音声が告げるのは始まり。

 

 

『ATTACK・RIDE』

 

 

男の声でもない、女の声でもない。まして人の声でもなくソレは告げられた。

どこにいてもその音声は鮮明に聞こえただろう。少なくとも、今この『世界』にいる人々には聴こえた。

 

 

何を?

 

 

そう、世界の――

ではなく。一つのストーリー、それは物語の―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『BLAST』

 

 

終わりを。

 

ビルが消えた。そう感じた人がどれだけいただろう。

否、正確には消し飛んだのだ。街の中に存在する数々のビル、その一つが消滅した。

 

何故? どうなっている? 多くの人は今起こった事を理解できずにその場に立ち尽くすだけだった。

街の中、交差点。そこにただ立つだけの人達、そんな彼らを時間は待ってくれない。

ほら、時が経てばまた音声が告げる始まり。

 

 

『ATTACK・RIDE』

 

 

誰もがその事実を受け入れる事ができなかっただろう。一瞬、まさに一瞬でその場にいた多くの人達が炎に包まれた。

絶叫が聞こえる。人は理解をし、そして錯乱するだけとなった。かろうじて炎に包まれる事をさけた人は逃げ、走る。

生きるためにだ。しかし、そんな彼らに聴こえる音声。

 

 

ああ、また一瞬。

 

 

また一瞬で逃げた人達は灰となった。文字通り砂の塊に変わった彼ら。

どれだけ逃げようとも無駄なのか? 辺りを見ればビルだけでなく、街全体が炎に包まれている。

希望が消えていく、絶望に塗りつぶされていく毎日、そしてまた誰かが叫び声を上げた。

 

彼らはその視界にソレを捉える。今までどれだけの人生を歩もうとも、それを見る事はなかったかもしれない。

それはまさに化け物と言うにふさわしい容姿を備えた集団だった。どんな姿なのかを知らせる者はいない。

何故ならもう誰も息をしていないからだ。恐怖が、世界を書き換える。まさにそれは絶望のエピソード。

 

 

「―――――」

 

 

どれだけ時間が経ったか、人はどれだけ恐怖したのか?

もう世界が世界としての形を失おうとしていた頃、全ての終わりを告げる音声が流れた。

 

 

『FINAL・ATTACK・RIDE』

 

 

人の助けを求める声が、その音にかき消される。

 

 

『DE・DE・DE・DECADE』

 

 

もう何も無かった。街も、人も、生命すらそこには無かった。ただの荒野がその『世界』の結末となる。

それがこの世界の物語、終わり迎えしエピソード。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

プロローグ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい! 見たか夏美(なつみ)!!」

 

「はぃ。みましたー……」

 

 

テレビの中では仮面の戦士が怪人と死闘を繰り広げている。

素早い動きで敵を翻弄する戦士。同時に画面の外にいる少年のテンションも跳ね上がる。

 

 

「やっぱキバはカッコいいな!! たまらねぇ! なあ夏美!」

 

「でしゅね……ぇ」

 

 

とは言え、少年・(つかさ)の隣にいる従姉妹・夏美は違う様だ。先ほどから何度も頭をガクリと落としては立て直している。

当然と言えば当然なのかもしれない、時計を見れば短い針はすでに1を指そうとしているじゃないか。

 

 

「あ、終わった」

 

「まじですかー……! じゃあーねれ―――」

 

「はい、じゃあ次のDVDを――」

 

「ないのねー……」

 

 

夏美は諦めたように笑うと、重いまぶたをこするのだった。

こりゃ、あと一時間は寝られないかも。夏美はため息をついて、うなだれた。

 

 

 

 

それは、1と2

 

青い空が見える。少年はぼんやりとそれを見ていた。

どこまでも続く青い空は見れば見るほど雄大に見えて、思わず吸い込まれそうだ。

尤もそんな事は無いのだと知っているから少年は何も思わない。でもそうやってベランダから空を見ながら何かを考える事は嫌いじゃなかった。

 

 

「そういえば兄貴はさぁ」

 

「ん? 何かなユウスケ」

 

 

兄の(つばさ)はぼんやりと新聞を見ている。

弟の部屋で何をやっているのやら。そんな事を言ってみると、翼は苦笑して頭を下げた。

 

彼が見ているのは昨日の新聞。翼は毎日の新聞を一通りチェックするのが日課だった。

とは言え古い新聞はユウスケの部屋にまわされるので、見逃したときはこうして弟の部屋にやってくるのだ。

翼が言うには世の中の動きを知っておくのは面白いしタメになるらしいのだが、どうにもイマイチ理解できないものもある。

 

 

「いいよ持っていって。おれテレビ欄か四コマしか見ないし」

 

「世の中の出来事を知るのは面白いよ、ユウスケももっと視野を広く持つべきだと僕は思うけどな」

 

「はぁ……ところで兄貴はさ、いつおれ達の学校にくるんだよ」

 

「あはは、まだ先さ。実習の為に準備とかもしないといけないしね」

 

 

そんなものか。ユウスケは納得して頭を下げる。

するとポニーテールの少女が視界に飛び込んできた。鞄を持って、少女は自分を手招きしている。

 

 

「ユウスケー! 学校行くわよー!」

 

「分かったよ。少し待っててくれー!」

 

 

隣に住んでいる(かおる)に誘われて、ユウスケは兄に別れを告げる。

 

 

「ああ、早く兄貴の大学に行きたいよ」

 

「僕はお前の高校に戻ってみたいけどね」

 

「ふぅん、そんなもん? 大学楽そうなのに」

 

「大変だよ。それにいつだって大人は過去に縋りたくなるものさ」

 

「ああ、なるほど」

 

 

しかしいつまでもダベってはいられない。

一日の始まりだ、ユウスケは気分を改めて玄関に向かうのだった。

 

 

「………」

 

 

弟を見送った翼。

自分も用意をしようとしたとき、それが落ちてしまう。

下を向いていたせいだろう。メガネだ、かけていたメガネが床に落ちてしまった。

 

 

「―――ッ」

 

 

翼はメガネを拾い上げると、再びそれをつけて歩き出す。

そして笑みを浮かべて自分の支度を始めるのだった。はたして、その笑顔には……どんな意味があるのだろう?

 

 

 

 

 

それは3

 

一方、あるアパートの一室。

 

 

「やべー! マジ遅刻しそーなんですけどッッ!!」

 

「はい……はい。大丈夫です」

 

 

「ええと! ピンどこやったっけなー? あああ、やべー! 焦る、焦る!」

 

「ええと……て、テレビの音です。はい……はい。オレは大丈夫なんで、おばさんも体には気をつけてください。―――はい、はい。じゃあまた」

 

 

 

焦る少女、美歩(みほ)。そしてそんな彼女の近くには少年、真志(しんじ)がいた。

彼は誰かと電話をしていた様で、何故か少し複雑な表情を浮かべている。

 

正直あまりいい表情では無い。不快と言うのが近いだろうか?

何故彼がそんな顔をしているのかは分からないが、どうやら美歩はそんな事はお構いなしの様だ。

制服姿の真志とは違ってまだ彼女はパジャマである。今度遅刻したら反省文だとか言われてたはずなのに、実にいいご身分だ。

 

 

「おせぇよ美歩、先行ってるぞ」

 

「うぉい! ちょっと待ってくれてもいいじゃんかよ真志ぃ!」

 

「オレがここにいたらお前着替えられないだろうが。それに生活指導の連中に目ぇつけられんのはゴメンだぜ」

 

「薄情者! 鬼畜! それでもチ●コついてんのかーっ!!」

 

「女が言う言葉かよ……ちなみにサラブレッドがついてんぜ」

 

 

まあ、そう言う事だから。

そう言って真志は同居人に手を振ると、そそくさと玄関から外に出て行ってしまう。

美歩も自分の事が手一杯の様で、彼を気にする事は止めて支度に取りかかった。

こうして皆同じ朝がやってくる。起きて、食事して、学校に行く。それは彼らも例外ではない。

 

 

 

 

それは、6と9

学校に続く道を四人の男女が歩いていた。車椅子の少女を中心にして、四人は楽しそうに談笑している。

 

 

「?」

 

 

しかしその中の一人。アキラは先ほどからチラチラと自分を見てくる少年、我夢(がむ)の事が気になっていた。

用があるなら言えばいいのに。アキラは気になって仕方ないので、直接本人に言ってみる事に。

 

 

「あっ! えっと………ッ!」

 

 

しかし、何故か彼は顔を赤らめてうつむくだけ。

ますます意味が分からないと首を傾げるアキラに、車椅子に乗っていた里奈(りな)が微笑みかける。

 

 

「きっとね、我夢君はアキラちゃんに見とれてたんだよ」

 

「!!」

 

 

真っ赤になって言い訳を始める我夢と、冗談だろと軽く受け流すアキラ。

そんな二人を車椅子を押していた亘《わたる》は苦笑しながら見ていた。どうやら今日も二人の関係に進展は望めないみたいだ。

しかし、先ほどから従姉妹に電話をかけているが全く出ない。体操着を忘れたからもって来て欲しかったのに。

 

 

(仕方ないな、誰かに借りるか)

 

 

亘はため息をついて仕方が無いと割り切る事に。

もしかしたらまだ寝てるのか? そんな事を思っていたら、ふいに誰かに話しかけられる。

 

 

「やあ、おはよう」

 

「咲夜先輩! おはようございます!」

 

 

後ろからやってきたのは親しい先輩、咲夜(さくや)。今日も一段と美しく、凛としている姿がカッコいい。

綺麗な髪が風になびき、画になっている。咲夜は四人と軽く話しをすると、遠くで手を振っている友人の元へと向かって行った。

そうして話をしていると校門が見えてくる。さあ学校の始まりだ。自転車で来る者、歩きで来る者。

 

 

そして―――

 

 

それは7

 

 

「行ってらっしゃいませ、双護(そうご)様。真由(まゆ)様」

 

 

学校から少しだけ離れた場所で、その兄妹は車から降りた。

高級車と言う事で、中に乗っていた二人の身分もソレ相応の物だと言う事が伺える。

制服もピッシリとしていて一つもシワが無い、カバンも新品の様に綺麗だ。

 

 

「ああ、ありがとう。帰りはいつもの時間で頼む」

 

「行ってき……ます」

 

「かしこまりました。では、失礼します」

 

 

そう言ってドライバーは二人に頭を下げると、その場から離れる。

それを二人は感謝の意を込めて見送った。

 

 

「………」

 

「ばい……ばぁい…」

 

 

ただ、決定的に違う事があるとすれば。

妹は手を振りながら笑顔で車を見送っているのと、兄はただ無表情でそれを見ているだけだと言う事。

 

 

「真由、いい一日になるといいな」

 

「うん。そう……だね」

 

 

笑顔の妹を見て、兄もそこで始めて笑顔に変わった。二人は高校生ながらも手を繋いで学校を目指す。

通常の通学路とは少し違う為に周りには誰もいない。他の生徒がいない中、二人は微笑みながら歩く。

まるで二人だけで世界が完成している様に。

 

 

 

 

それは4と5

 

 

皆が登校してくる時間となり、徐々に学校が騒がしくなっていく。それを中庭で彼らは感じていた。

中庭には綺麗な花が多く咲いていて、本来ならば担当の者が毎日交代制で水をやる決まりになっていた筈。しかし、いつも水をあげていたのは同じ少年である。

いつからだろう? 忙しいから代わって欲しいと言われ、それを受け入れてからと言うものいつのまにか毎日の日課となってしまったのは。

 

 

「嫌なら言えばいいのに。ここって確か園芸部か家庭部担当だろ? どっちもまあ過疎ってるっつうかオワコンっつうか」

 

 

そこには水をあげている少年の他にも生徒がいた。

その中の一人は学校には似つかわしくない、携帯ゲームを持ってきて普通にプレイしている。

 

 

「DQN集団って訳でもないだろうによぉ、俺でも勝てそうだわ! ……嘘、冗談、たぶん負ける」

 

「そうだよ拓真! 嫌なら嫌って――」

 

「いいんだ。僕、花は好きだし……」

 

 

そう言って苦笑する少年、拓真(たくま)。彼本人がそれでいいと言ってしまったら、何も言えない。

幼馴染の友里(ゆり)と友人の椿(つばき)は複雑な表情を浮かべながらも、彼の水やりを手伝うくらいしかできなかった。

 

 

「友里ちゃんも、椿君も教室に戻っていいよ。僕が後はやっておくから」

 

 

二人を気遣っての言葉。しかし二人は同時に首を振る。

 

 

「ううん、拓真をおいてはいけないよ。あたしも手伝うから……ね!」

 

「俺、ここでゲームしてるからお構いなく。教室でゲームしてたら先生に見つかるかもだろ? ってこのキャラかわええ! ブッヒィィィイイイイ!!」

 

 

理由は違えど、どうやら一緒にいてくれるらしい。

拓真はその事に感謝する様に笑うと、再び花に水をやるのだった。

 

 

 

 

 

とまあ、こんな具合にいつもの日々が流れるものである。

だが、これまた今日は少し違っていた。

 

それは11

 

校庭にある体育倉庫、イレギュラー達はそこにいた。

薄暗い体育倉庫には複数の人間が気絶している。外傷は特に無く、眠らされたと言った方がいいかもしれない。

彼らを気絶させたイレギュラー達はその瞳に学校を映してニヤリと笑う。

 

 

「さあ、始めようか! 後はボク達が教師に変身して彼らをおびき出すんだ」

 

「変身? できるのですか?」

 

「ええ。怪盗さんから既に道具は預かっているわ。これで彼らの担任に変身しましょう!」

 

 

イレギュラーの一人は転がっている人間の一人を凝視する。そう、気絶させられていたのはこの学校の教師だったのだ。

彼ら誰も見ていないこの場所で声高らかに物語の開始を宣言する。いや訂正しよう。誰も見ていない? 本当にそうなんだろうか?

 

 

「じゃあ、始めようか。まずはプロローグだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、8

 

始まるエピソード。そして、招かれるのはゲスト。

それもまたイレギュラーなのか、はたまた決定された必然なのかは分からない。

しかし事実と言う真実は鮮明に記されるだけだ。

 

 

「何……あれ?」

 

 

まさにそれは、別世界でエピソードの開始が告げられた頃だった。

野上(のがみ)良太郎(りょうたろう)が、時の列車デンライナーからそれを確認したのは。

良太郎の言葉と、雰囲気が変わったオーナーの様子に一同はこの現象がただ事ではないと言う事を理解する。

 

 

「トン……ネル?」

 

 

良太郎の隣でハナは思わず息を呑んだ。

普段どおりにデンライナーを走らせていた頃、一同はそれを見つけた。

線路の先に一つの分岐点があったのだが、その線路の先には真っ黒な闇しか見えない。

トンネルの様に存在している空間。そしてそこから流れる異常なオーラ、雰囲気、闇と言うよりも無と言った方が近いか。

 

 

「おいおい、ありゃヤベェんじゃねーか」

 

 

イマジンとしての直感が告げたのか、モモタロス達に戦慄が走る。

確証なんて無い、だがしかしあそこに行く事はヤバイと言う事は理解できた。

はたして、その線路の先には何があるのか? 気になる所ではあるが、あまりにも危険すぎる。

 

 

「しかぁし……あのまま放置と言う訳にもいきません」

 

 

オーナーですら分からない現状。とはいえ、時の運行に関係すると言う事もまた理解できる事実だった。

カイが仕掛けた罠と言う事も考えにくい。いや、それももちろん可能性の一つとして十分な意見ではある。

だがどうしても一同にはそれが罠だとは思えなかった。もっと、何か……大きな力が働いている。そんな気がしてならなかったのだ。

もちろん確証などどこにもないが……。

 

 

「んー、じゃあさ! とりあえずちょっと見るだけ見ようよ!」

 

 

好奇心旺盛なリュウタロウスが言う。

少しだけトンネルの向こうを確認してすぐに戻ってくれば対策が立てられるのではないか?

なるほど、一同はもうそれしかないと賛成した。

 

 

「では、あの線路に乗りま―――」

 

 

だが、そのときだった。

 

 

「うっ! うわああああああああああ!!」

 

「きゃあああああああああああ!!」

 

 

一瞬、まさに吸い込まれると言う表記だろう。線路に乗り換えたデンライナーは一瞬でトンネルの中に入っていった。

完全に消え去ったデンライナー。もう、その存在は完全に消滅する。

 

 

 

 

 

 

 

こうして、全ての歯車は狂い、そして歪に合致する。

紡がれる物語。さあ、この言葉と共に開始を告げよう。

 

 

 

 

 

はじまり、はじまり。

 

 

 




はい、キャラクターについての詳しい紹介は次回で行っていきます。

あとこの作品はですね、他サイトで連載していたものを修正の都合や活動の都合で移転&軽く改定したものとなります。
まあですので、もしも前のサイトで見ていただいた人がいてもなるべくハーメルン以外のサイトの名前を出すのは控えていただければなと!

いろいろ未熟な点があるかもしれませんが、楽しんでもらえればなと思ってるのでよろしくお願いします。

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