無と無限の落とし子(にじファンより移転)   作:羽屯 十一

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 このたび、ようやくサーヴァントの能力基準帯を決定いたしました。


 決め手はライダーの宝具『騎英の手綱(ベルレフォーン)』と、アタラクシアで出場したバゼットさんでした。

 『騎英の手綱(ベルレフォーン)』はペガサスに跨り、バリアを展開して突進、直線上の目標に対して物理攻撃をかけるというもので、作中では最高クラスの宝具とされています。その速度は敏捷Bランクに直感A持ちのセイバーに満足な反応すら許さず、魔力切れを覚悟でエクスカリバーでの正面迎撃を決意させるほど。
 この突進時の最高速度が時速400~500キロと、あちらこちらの解説サイト様で拝見しました。

 これにプラスして、バゼットさんの戦闘能力との対比があります。
 外伝であるアトラクシアにて、彼女がセイバーを含め全てのサーヴァントと戦闘を行ったと話す描写があり、その中で、持ちサーヴァントであるアヴェンジャーが身体能力的に人間と殆んど変わらず一太刀で切り伏せられる可能性が高いとして、バゼットさんが前衛としてサーヴァントと交戦する事があったようです。
 バゼットさんはサーヴァントと比較して具体的な能力が作中で挙げられており、それを資料として参考とします。

・拳撃の速度はプロボクサーの二倍の時速80キロ。
・下半身は魔術により散弾銃に無傷で堪えられる程の防御力があり、上半身は拳で全て防ぐ。
・拳は最高の魔術師たるキャスターの魔術すら粉砕し、複数相手なら火器必須という化け物10体ほどに囲まれてもカウンターで秒殺できる反応速度。

 これでおそらく防戦とは言えサーヴァントと殴り合いが出来るので、

・ベルレフォーンの速度より圧倒的に遅い。
・80キロのストレートを最高とする近接打撃で捉えられる速度。

 この二点を考慮して素の運動速度を設定します。


 機動性 Bランクで時速70キロ前後。
 運動性 魔力噴射などのスキルや魔術で、大跳躍などを補佐する
 筋力  Bランクだと片手で1トンを軽く超える

※ただし、セイバーのように元の身体能力が一般人の少年を下回るようなのは例外とします。



 基本的にEランクくらいになると、人間と大して変わらないようなんでこんなもんかなーと。

 ちなみに実在の格闘家で最強クラスはパンチ500キロ、回し蹴りで1トンである。
 機動の方も相撲取りの突進が時速9キロ、バスケット選手の跳躍初速で時速23キロ。近代力学に基づいて全身を走る事だけに調整した短距離ランナーのオリンピック選手で、ようやく時速40キロです。勿論この40キロというのは全身の筋肉を十秒程度で酷使し切った結果となります。

 低すぎじゃね? と思う方も多いでしょう。確かに野球の球速に比べたらそう思うかもしれません。ですがあれは来る場所も投げるタイミングも分かった上で、体から離れた位置に飛んできます。僅かとは言え離れた分だけ球は見え易く、捉えやすいものです。
 しかし近距離で人間サイズが無理なくそれだけの速度を出せた場合、当然ながら速度の緩急にフェイント、左右への方向転換に体裁きが加わります。はっきり言ってこれに人間が反応するのは無理だと思われます。
 さらに、これより大きく速いとなるとビルを駆け上がりながら戦うシーンが一瞬で登りきったり、士郎や凛、バゼットさんが瞬殺されたりします。

 もし音速近くに設定した場合は発生する運動エネルギー自体も跳ね上がるので、作中の描写のように面と向かって切りあうよりも、ペガサスのように加速をつけて遠方から一瞬で轢き殺した方が何ぼか威力がでかくなってしまいます。武器に比べて質量自体が大きいですんで。

 サーヴァントに人間が絶対勝てないというのも、並ぶ者が居ないほど積み上げられた戦闘技術・経験にプラスして、特化して鍛えた人類の最高値をそれぞれの値で約2~3倍も上回り、挙句に宝具なんて物を持ってたらその言葉も頷けるかな~、と納得して頂ければ。


 ランクによる違いについては、あまり大きくないが、正面からぶつかった時に十分有利になる程度と推察。
 ランサーとアーチャーには筋力と敏捷でそれぞれ2ランク、合計4ランクの開きがあり、かつアーチャーは本人曰く”まったく才能の無い二級品”との近接戦闘能力しか持ち合わせていない。事実、最初の遭遇戦で令呪により手加減せざるをえないランサーに一方的に短時間で23回も武器を弾き飛ばされている。全力での戦闘となれば、アーチャーの双剣を弾き飛ばしてそのまま槍が刺さるのではないだろうか?
 当然双剣なら片手持ちというハンデまで付いている。回転は上がるだろうが、力については両手で持つ剣に比べて半減である。

 それ以上に差があるセイバーとバーサーカー戦でも、防戦一方とは言え戦えていたので、ランク差による実能力の差はそれほど大きくないと考えました。


※あくまでも素の能力です。ランサーのゲイ・ボルク投擲時の助走のように、全霊の一撃を繰り出す場合には、膨大な魔力を使用しての筋力強化や宝具のプラス補正などによって瞬間的に大きく能力がアップします。





第参章 14 ヒトトキ (Fate編) + サーヴァント能力の考察

 

「あぁ、やっぱり……」

 

 その日の夜、サクラさんが起きないんで昼間の残り物を食った後、俺は部屋で一人唸っていた。

 間桐邸撤退時に出くわしたセイバーたちとの戦闘中で、一点、気になる事があったんだが、サクラさんの爺さんを殺してから暇になり、これ幸いと部屋に(こも)って物語の知識に検索をかけてみたのだ。結果、少々残念な事が判明した。

 

「英霊ってあくまで歩兵なんだな」

 

 まぁ銃の無い大昔の人間や御伽噺の登場人物が召喚されるから、それも仕方が無いのだろう。英霊とは功績を残した人霊が、信仰などを得る事によって格が一ランク上がった存在だ。

 つまりは人間の上位互換。

 しかも信仰やらを餌に格を上げただけあって、自身の名前や物語を知る者の少ない、または居ない地域ではえらくパワーダウンするらしい。

 

 基本的に過去の英雄が呼ばれるため、剣や槍といった原始的な武器による戦闘が主となる。剣を握る英雄なら遠距離は攻撃できず、アーチャーやキャスターといった例外的なクラスでさえ威力・射程共に対物ライフルの限界程度でしかない。ま、使い手が使い手なので、精度の方は桁違いなのだが。

 いっそ宝具とかいう必殺技的なものを使えば話しは少し違うのか?

 実際に交戦したセイバーが持っていた黄金の剣。あれが最高ランクの宝具だったのは驚いたが、それでも俺がいた世界の現代戦では威力以外、戦術兵器以下でしかない。

 

 火力という点でも俺が見てきた他の世界と比べると、やはり低い。

 必殺! とか叫ぶとちょっとした都市ほどのクレーターが出来たり、本気を出すだけで辺り一面がマグマの海になったり、キレると星を破壊出来るようになったりする訳では決してないのだ。

 それでも一固体が持つ能力として破格なのは確かなのだが……。

 

 

 だがそれもしょうがないだろう。

 この世界では惑星という”星”自体が意思を持ち、己を殺しうる存在を片端から潰して回っている世界だというのだ。当たり前だが、そんな状況で技術が真っ当に発展するはずもない。

 

 魔術にしても、やっているのはあくまで世界に刻まれた魔術基盤を利用しているに過ぎず、根本的なところが発展していない。根源を目指して研究などしてはいるようだが、何世代も掛けてルービックチューブを解いている様なものだ。

 マナ(大源)やオド(生命力)、そしてそれらを魔術回路で変換した魔力の使い方を研究するのではなく、既にある魔術基盤の組み合わせを考えているだけだ。

 それでは視点が近過ぎる。

 

 

 

「ふぅ」

 

 知識の検索が一段楽する。

 

 正直なところ、この世界ではあまり得る物は無さそうだ。

 調べたとおり、純粋に能力で考えたらサーヴァントとはそれほど強力な存在ではない。

 これは一つの事実だ。

 この世界には”星”自体が生み出した吸血種と呼ばれる種族がいるが、その中でも強力な固体を27祖と呼ぶらしい。文字通り27の席に吸血種が座るのだが、その第一位『プライミッツ・マーダー』は押さえ込むのに聖杯にクラスへと押し込まれていない、世界が召喚した、世界がバックアップする守護者が七騎は必要らしい。

 この戦力差は単に七分の一どころではない。比類ない武功を立て、世界に認められた戦士達が七人で協力してなのだ。

 

 

 では英霊とはその程度なのか?

 

 否。

 

 それは違う。たとえ聖杯にクラスという枷をはめられたとしても、彼らは十分に強力な存在である。その本当に恐ろしいところは、彼らを英雄・反英雄として成り立たせる偉業を打ち立てるだけの魂の強さだ。

 どれ程彼我(ひが)の力に差があろうとも臆する事無く戦いを挑み、敵を打ち倒す。どれ程彼我に戦力差があろうとも怯む事無く戦いを挑み、一人で一国の軍勢を止めてしまう。

 

 確かに彼らの個体能力は優れているだろう。だがそれは巨人族と並ぶ剛力か? 数千・数万人に匹敵する武力か? それはありえない。彼らは優れてはいるが、あくまで人間なのだ。

 それでも夢物語と、不可能と断じられる(わざ)を成し遂げてしまう。

 限りなくゼロに近い可能性をひたすらに追い求め、常識を突き倒し、道理を蹴飛ばして手を伸ばし、遂には掴み取った存在なのだ。

 彼らの強さは俺が手に入れようとして得られる類いのものではない。

 

 

 他にも概念兵装という概念を行使する物品は強力だが、俺は既に四つ前の全竜(レヴァイアサン)の世界で遥かに優れた概念技術を学んでいる。

 唯一ランサーが持っている槍の因果逆転の呪いが少し気になるが、あれは魔力効率自体は良いが、あくまで対象が心臓を持つ生物に限るという余計な制約がくっついている。残念だ。貫く場所を指定できれば対人間用としてかなり使えたのだが…

 

「ま、しょうがないわな」

 

 もともと狙ってこの世界に入った訳でも無し、そこはすっぱりと諦めよう。良さそうなのがあったらラッキーというくらいで。

 

「サクラさんは目を覚ましたら、食事中にポロッと洩らしてた”先輩”とやらの処に行くのかな? メデューサの姉も探さないとだけど、それは戦争後で良い。と、なるとだ、サーヴァントで遊ぶのは当然として、バゼットの逆襲の露払いくらいかねぇ。

 

 ………ありゃ?」

 

 これは…。

 

「ヌル」

『お察しの通りです。昨夜、市街地にて交戦したサーヴァント二騎とそのマスターと(おぼ)しき人間二人の反応が、距離約三千より近づいております』

「アクティブ・パッシブ問わず、探知魔術に引っ掛かった可能性は」

『No, ありえません』

「……間桐邸とライダーが捕捉された地点から直線で結んだか?」

『妥当かと』

 

 まぁ元とはいえ家族だった人間が攫われたと思ってんだ、必死にもなるか。

 こっちにサクラさんがいる以上、遠距離からいきなり屋敷ごと吹き飛ばしたりはしないだろう。

 手としては、遠距離からアーチャーの狙撃による奇襲を仕掛け、迎撃に戦力が出たところをセイバーがマスター達を連れて一気に接近、サーヴァントが残っていた場合は一対一の形を作って、少年少女がその間に救出といったところか?

 

 手で目を覆い、苦笑が零れる。

 

「ハッ、―――やれやれだ」

 

 

 





※また細かい事を作者が愚痴ります。
 やかましいよこんにゃろー! おんなじ事を前にも言ったじゃん! て思わない優しい人だけ見ていってくださいませ。








 以前にも書いたけど、相変わらずサーヴァントの幸運値がどの基準で付いているのか判らない。

 セイバーがマスター変更で魔力を潤沢に供給されるようになっただけで、B~A+へ都合2ランク相当上がっている。これはマスターの供給魔力量かマスター自身の幸運値か、どちらにしろマスターが関係していると考えられる。
 だが幸運が低い事が若干トラウマに近くなっている赤い弓兵の存在がその説に待ったを掛ける。なにせ凛がマスターで幸運値が最低のEランク!

 他にも、ライダーは偽臣の書が焼けた後、軒並みアップしたステータスを尻目に幸運だけDランクから最低のEランクへと華麗なる逆進化を遂げている・・・。
 マスターが不幸少女の桜だから下がったのだと言われているが、それでは凛がマスターのアーチャーの幸運値がやはり説明できない。

 ハッ!? まさか・・・、まさか!?
 アーサー王の碌でもない人生をA+とする程の凛の運勢をもって大幅上昇してなお、あの惨状なのか・・・? そうだとしたらエミヤシロウ、お前はいったい前世で何を仕出かした?


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