無と無限の落とし子(にじファンより移転)   作:羽屯 十一

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前話の前書きで、あと一話シャギードッグ編をやってからFate編に入るって言いましたが、実はあの前書きは前話を執筆する前に書いた物で、結果的に前話にてシャギードッグ編は終了してしまいました。

というわけで、今回からFate編に突入します。
しかし短い……




第参章 1 運命の夜は始まる (Fate編)

 

 

 時間はいつの間にか過ぎてゆく。

 何かに夢中になっていれば尚更だ。

 人間の時間には限りがあるが、俺という存在に時間の括りは無い。

 さて、どれ程知ればこの熱は冷めるのか。

 はて、どれ程経験すればこの心は落ち着くのだろうか。

 それはきっと遠い先になるだろう。

 

 ふむ。

 

 なってみてから考えることにしよう。

 

 

 

          外世界 大樹一番地 大図書館所蔵『とある暇人の日記』より

 

 

 

 

・――――――――――

 

 

 

 

 

 Main Side 黒川冬理 In.

 

 

 

 現在俺はノりにノっていた。

 

 塊と別れて直ぐにあの世界を離れた俺は、帰ってくるなりその勢いを止めずに目星をつけておいた別の世界へ飛び込んでいった。友達との別れに柄にも無く熱くなっていてその熱が冷めないように走り続けたかったのだ。

 

 今度は一つ一つの世界に長居せず、世界を変える目標もお座成りにして能力を集めては次の世界へと駆け抜けた。

 

 魔術っぽい色の世界ではチュールの右手と呼ばれた男とその仲間を相手に戦い、鋼色をした機械の世界では巨大ロボットに乗って宇宙空間で切り合い、マーブル色の世界ではひたすらに人々のために戦うαの部隊に感動し、その一員として戦列に加わった。

 

 どの世界でもそこに生きる者は皆懸命に生き足掻いていた。

 

 そんな連中を見ていれば嫌がおうにもこっちも熱くなる。

 

 そんな訳で、今俺はランダムな葉に欠片を落とそうとしていた。

 もちろんランダムといっても、目の前の色とりどりの世界の数々は物語の世界ばかりを集めたものだ。

 どれを選んでもいい。

 

「う~ん……よし、これにしよう!」

 

 あまり悩まずに決めてしまう。

 今までの経験上、金属を連想させるようなハッキリした色合いは科学文明が発達していて、暗い色彩の薄ぼんやりした色は魔術関連の発達した世界だった。

 例のαの部隊と会った世界は、アレはまぁただ単に混じりすぎてマーブルだっただけだが。

 

 決めた世界にいつもの如く欠片を掌からつまんで落とす。

 米粒大の宝石にも見える欠片が葉っぱに落ちていく。――と、その時。

 

 しゅぱんっ!

 

 と、いきなり直ぐ隣にある黒っぽい葉っぱから、真っ黒い色をした細い舌の様な物が伸びて大切な欠片を掻っ攫っていった。

 

「…………はっ? 何あれ何あれ、気持ちワル!?」

 

 いきなりのショッキングな出来事に正直ドン引きである。

 

「え、え? あの世界ってなに? なにがいるの? どんな怪奇世界よ?」

 

 流石にまさか自分が出入りしている世界の中に、あんな捕食者(プレデター)じみた世界があるなんて考えてもみなかった。もしあんな世界が沢山あったら、これからの旅に支障が出まくるであろう事は間違いない。

 

 それに自身も迂闊に手を伸ばしてアレ巻き付かれたりしたらイヤ過ぎる。

 

「いやいや、それよりも欠片が飲まれた!」

 

 小さいとはいえ、実はあれ単体で物語の世界一つを賄えるだけの”素”が内包されている。取られたから諦めようではちと済まない物だ。直ぐにでも取り返す必要がある。

 

「あれ、取り返すも何も俺の分け身なんだから俺の意識を移せばいいんじゃね?」

 

 いい考えじゃん、と思ったのもつかの間。

 アレに入るって事は必然的にあの黒い舌っぽい代物と出くわすという事だ。最悪巻き付かれているやもしれん。

 正直な話、世界の外にまで飛び出すようなデンジャラスなブツで、おまけにあんな気持ち悪いのに世界内で捕まったら思わず自殺してしまうかもしれん。あの、何と言うか、蛙の舌と虫の舌を合体させて触手風味に仕立てたような……いや一瞬だけ見えたんで見間違いだろう、うん!

 ――逃避しても変わらないのが現実の嫌な所。

 

(ぐぅぅぅぅぅ…………!)

 

 悩む。悩む。

 時間も無い。あまり時間を空けてもし欠片が世界やあの気持ち悪いのに消化されたら事だ。

 

「ええい! ここは行くしかないか!」

 

 少しやけっぱち混じりの気勢を上げて気合を充填。

 覚悟を決めて不吉な色合いの世界へ墜ちた欠片へ意識を移した。

 

 

 

 Main Side 黒川冬理 Out.

 

 

 

 

 

 

 

 

 Another Side ??? In.

 

 

 

 それらは一つのシステムだった。

 ただただ効率的に運用され、壊れるまで動き続ける意思無き歯車。

 

 だが、その中に例外が混じっていた。

 

 ソレは明らかに後から不正に付け足された歯車であり、他のシステムに侵入して己の餌を選び出して消化し、製作者の望むものを作り出す役目を負っていた。

 

 ある時のこと。

 システムはある程度は勝手に決まってゆく餌の選別が終わり、それらの消化にかかろうとした際、自分達システムを覆う壁のほんの少し向こう側に、これ以上ないほどの”材料”となりうる物がある事を感知した

 

 システムは組まれた仕組みに従い、より良い”材料”を全力で確保しようとした。

 

 結果、前回の消化時に作成された失敗作の残滓を全て使用し、何とか壁のこちら側に引きずり込むことは出来た。 が、対象には一切の直接干渉が出来ず、次善の策として自身に備えられた本来の消化プロセスにて処理する事を決定した。

 

 現在の餌は八つ。

 

 そこに新たな餌が放り込まれた。

 

 

 

 Another Side ??? Out.

 

 

 


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