ゼロの使い魔の奇妙な冒険   作:不知火新夜

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第1章
1話


あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

俺は『ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトル』を手に入れる為に行きつけのゲームショップに向かっていたと思ったら、何時の間にか地べたで寝ていた。

な…何を言っているのか分からねぇと思うが、俺も何をされたのか分からなかった…

頭がどうにかなりそうだった…

ザ・ハンドだとかスティッキー・フィンガーズだとか、そんなチャチなもんじゃ、断じてねぇ。

もっと恐ろしいものの(ry

「…あんた誰?」

 

何かすげぇ可愛い女子らしき声で現実に引き戻された俺は、一先ず状況を確認してみる。

此処に至るまでは、一応はさっきの通り。

そういや、俺の真正面に姿見みてぇな物体がふよふよと浮かんでいて、放置という訳にもいかずどかそうと触った途端、物凄い勢いで引っ張り込まれた…

余りの勢いだったが、俺のお気に入りの服で、今も着ている「ジョニィ・ジョースターのコスプレセット」は傷1つ無い。

流石ジョニィ・ジョースターの服、荒野という悪条件だろうと、タスクの切れ味を常に浴びながらも平気って訳か。

で、引っ張り込まれた俺は、黒だか白だか、赤だか青だか紫だか、もうとにかく多彩な色が入り混じった空間を漂っていたら先に真っ白な光が広がっていて、

 

そこに、ダァァァァァイヴ!

 

した、で冒頭に戻る。

しかし、周囲を確認しようにも砂煙が酷いな…なんかむこうに物凄くデカい建造物があって、近場には何十人かいそうな人影が見えるんだが…

だが酷かった砂も次第に晴れ、周囲の様子が少しずつ鮮明になってきた、ら、

 

俺の目の前に、さっきの声の主らしい超綺麗な少女が、こっち見ていた。

 

俺、平賀才人、17歳のジョジョオタクな高校3年生。

女性のタイプは「胸の大きい大和撫子」。

目の前の超綺麗な少女は、Perfectとは言い難いながらも、合格点はあげても良い位の、そんな存在だ。

 

ピンク髪?撫子の花はそもそもピンクだろうがっ!

目も黒くない?大和撫子=日本人というのは、酷い人種差別だなっ!

ちっぱい?これからに十分期待が持てるじゃねぇかっ!

そんな些細な事を全て吹き飛ばしてくれる魅力が、この少女には、あるっ!

 

「俺はサイト。サイト・ヒラガだ」

 

ただ流石にさっきの質問に答えないままというのは第一印象を悪くするだけ、俺の女性評はひとまず置いて、なんかフランスにいそうな外見だったから名前の方から答えた(聞こえて来たのが日本語だったろって突っ込みは無しだぜ?)。

答えつつも、改めて状況確認の為に周囲を見回す。

俺が寝ていた地べたはどうやら、周囲の草原から数十センチ陥没したクレーターみたいな物だった(なんで出来ているかは気にしない)。

人影らしき物が見えた所に目を移せば、やはりそこには沢山の人だかりがいた。

良く見ると俺と同年代、或いは若干前後する位の同じ様な服装の少年少女ばっかりで、唯一の例外といったら頭が寂しくなっている中年男性だけ、そして皆マントを羽織っていて、右手には杖らしき物を握っている。

ああ、ハリーポッターとかクイズマジックアカデミーに出てくる魔法学園みたいな感じだな。

建造物があったと思しき所にも目を向けてみる。

するとそこには、まるでお城の様なでかさを誇る石造りの建造物が…お…オレェ?

 

「なんかさっきと状況が変わり過ぎじゃねぇぇぇ!?」

「きゃぁ!?な、何急に叫んでいるのよ、この平民!」

 

OK、一先ずは落ち着け平賀才人。

目の前の美少女もびっくりして目を白黒させているじゃあないか。

…ん、今彼女、『平民』とか言っていなかったか?

平民って誰の…いや、俺の混乱の叫びに反応しての事だから俺だろ。

 

「『ゼロのルイズ』が『サモン・サーヴァント』で平民を呼び出したぞっ!」

「流石ルイズ、俺達が出来ない事を平然とやってのける、そこに痺れる笑えるぅ!」

 

更に周りも美少女を馬鹿にするかの如く囃し立てる過程で俺を『平民』と見ているみたいだ。

お前ら、後でシメる。

ともかく、俺をわざわざ『平民』と呼ぶからには『平民』以外の存在がいる、という訳で。

更に見回せば、人だかりの中に炎を纏ったデカいトカゲやら、生まれてこの方見た事が無いと言って良いモグラのデカいバージョンやら、挙げ句の果てにはドラゴンっぽいのまで…

…断言しよう、俺、中世ヨーロッパらしい世界観の、正に『ファンタジー』な世界に召喚されちまったみたいだ…

…帰れんのかな?

 

「ミスタ・コルベール!やり直しをお願いします!」

「ミス・ヴァリエール、それは出来ない相談だ」

 

俺がそんな一見すると中二病丸出しな結論を出していたら、ルイズと呼ばれた俺を召喚したらしい美少女と、コルベールと呼ばれた中年教師(恐らくそうだろ)が口論を繰り広げていた。

 

「どうしてですか!」

「春の使い魔の儀式とは神聖なる儀式だ。此処で召喚した『使い魔』によって、今後の君達の進むべき道が決まると言っても過言じゃ無いんだ。それをホイホイと変更を認めれば、この儀式の神聖さに関わる話になるのだよ」

「だからって、平民を使い魔にするなんて聞いた事がありません!」

 

話の流れから、『平民』である俺を召喚した事は物凄く異例で、且つルイズにとっては余程不満らしい。

…確かに俺はジョジョオタクである以外は周りとそんなに変わらねぇ高校3年生だ。

ドラゴンやら、サラマンダーやらと比べるべくも無く見劣りするだろう。

…だが、モグラとかとまで比べて且つ見劣りする結果、というのは頂けない。

どんだけ『平民』を下に見ているんだこいつら。

だが教師コルベールの話から、一度召喚するともう変更は出来ず、召喚した奴(ルイズにとっては俺)を使い魔にするしか無いらしい。

…いや、召喚された側の都合も考えろよ。

 

「…わかりました」

 

やがて観念したかの様にルイズは肩を落とし、だが直ぐに意を決したかの様に俺を見据えてきた。

…その意志の強さ、正に大和撫子だぜ!

 

「感謝してよね、平民のあんたが貴族にこんな事されるなんて、普通ありえないんだから…!」

「あー…まぁ、宜しくな」

 

ルイズにとっては不満だろうが、俺はこんな美少女の使い魔っていうのも悪くないかな、とあっさり受け入れていた。

これがコギャルっぽいビッチだったり、何より男だったりしたら受け入れるってレベルじゃねぇぞ!

 

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」

 

詠唱らしきフレーズを読み上げるルイズ、そうか、これが俺を使い魔にする魔法な訳だな。

詠唱を終えると同時に杖を俺の頭にコツ、と置き、そして…って…!

 

ズギュゥゥゥゥゥゥゥゥゥン!

 

契約って…キスだったのか!?

そりゃぁ、この世界では普通ありえないよな、見た目はともかく『平民』の俺と、『貴族』のルイズのキスなんて。

いやはや、役とk…いやいやいやいや…!

 

「っ!?」

 

等と今のルイズには到底聞かれる訳にはいかないバカなことを考えていた俺だったが、突如左手に襲い掛かる強烈な熱さで、思考を中断せざるを得なくなった。

 

「な、なんだ!?この猛烈且つ、力を送り込む様な熱さは!?」

「すぐ終わるわ。使い魔の『ルーン』が刻まれているだけ…っつう!?」

 

ああ、成程そうなのか…って!

熱い!物凄く熱い!滅茶苦茶熱い!だがこの熱さ、苦痛だけでなく、俺に膨大なエネルギーを与えている様な…

凄い…力が…漲ってくる!

…ん、そういえばルイズが短い悲鳴を上げていた様な…!

 

「どうした、ルイズ!」

「分からないわよ!急に何かが下から飛んできて、右手を…」

 

見ると、何か鋭い物体が掠めたのか、ルイズの右手に僅かばかりの切り傷があった。

だが出血は全く無いし、放っておいても大丈夫だろう。

…ん、待て、『下から飛んできて』?

咄嗟に周囲を確認してみると、そこには…

 

「…矢?」

 

そこには何故か、矢じりだけの『矢』があった。

…そういえば此処に召喚される前の空間で何か飛んできて、それが俺の右腕を掠めた様な…

いや…まさか、な。

 

「ふむ…珍しい形のルーンだな。少しメモさせて貰うよ」

 

そんな考えが過る内にルーンの刻み込みが終わった様だが、その形状を珍しがった教師コルベールが、俺の左手の甲をまじまじと眺め、紙…みたいな物に羽ペンでメモしている。

…気色悪っ!

 

「さてと、これで春の使い魔の儀式を終了する!今日は残りの授業時間を全て使い魔との親交を深める時間とする!解散!」

 

メモを終え、周りの生徒達にそう告げた教師コルベールは、空中に『浮き上がって』城らしき建造物へと向かって行く。

…まあファンタジーな世界だからな、人が、というか魔法使いが、空飛ぶのは常識か。

それを追うかの様に周囲もまた飛んでいく。

 

「ルイズ、お前はその使い魔と一緒に歩いてこいよ!」

 

みたいなセリフを残して。

…喧嘩売っているのか?

 

「さて、ルイズ…俺達はどうしようか?」

 

先程の中二病全開な結論が、人が空飛ぶ等といった魔法で証明されはしたが、もっと詳しく、この世界について知っておきたい。

そう思い、ルイズに指示を仰ぐが、彼女の返答は…その…

 

「ふん!さっさと私の部屋に行く…わ…きゃぁぁぁぁぁ!」

 

彼女の返答は俺の予想を大きく外れた。

…何故に叫ぶ。

 

「きゅ、急にどうした!?」

「あ、ああああんた、あんたの後ろ!」

「へ、後ろ?」

 

思いっきりテンパっているルイズに従い、後ろを振り向くと、

 

「…オレェ?何で…シルバーチャリオッツが?」

 

そこには、ジョジョ第3部『スターダストクルセイダーズ』に登場するスタンド使い『ジャン・ピエール・ポルナレフ』のスタンド『シルバーチャリオッツ』がいた。

…挙げ句、俺が気付いたのに合わせて、レイピアを持っていない左手で俺に敬礼していた。

試しにこのシルバーチャリオッツを、俺の中に戻る様イメージすると、それに従うかの様にシルバーチャリオッツは消えた。

それで直感した。

此処へ召喚される際に俺の右腕を掠め、ルイズの右手を傷つけたのは間違いなく『矢』であり、

 

俺とルイズは、スタンド使いとして覚醒してしまったという事を。


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