ゼロの使い魔の奇妙な冒険   作:不知火新夜

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ハルケギニアへの召喚、スタンド使いとしての覚醒、ルイズの使い魔としての契約、ギーシュとの決闘、ヴァリエール家でのスタンド騒ぎ、デルフリンガーとの出会い、キュルケとのいざこざ、フーケ討伐、フリッグの舞踏会…才人にとって、様々な出来事が巻き起こった一週間(という名の第1巻+α)だった。そして今また、新たなる出来事が…


第2章
14話


フーケを捕まえてから数日経つかたたないか位の今、ルイズ、及び使い魔である俺の評価はうなぎ上りだった。

それに最も貢献したのは、フーケのゴーレムを一撃で爆破してみせた事だろうが、俺がギーシュとの決闘でボコボコにし、ルイズを馬鹿にした奴はボコボコにしてやるとメッセージを発したのも功を奏したのだろう、それらを経てから表だってルイズを『ゼロ』呼ばわりする奴は見掛けず、逆に恐れられているかの様に目を避けるのが多くなった。

それに対して俺は特に何とも思わなかった…こっちが下と見るや傲慢になる癖してちょいと脅した位で態度を豹変させる様な奴らの評価なんぞに浮かれてもしょうがないからな。

だが一方でルイズはここ最近…何やら複雑な表情を浮かべていた。

…何かあったのか?そういえば最近…何か懐かしい夢を見た、とか言っていた気がするが。

まあ、それはともかくとしてだ、

 

「ヤァッ!」

 

ビュン!

 

俺は今学院の中庭で、先程放り投げて宙を舞う枯れ枝に向けてデルフリンガーを居合抜きし、薙いだ。

その枝は地面に着くその瞬間、

 

パカン

 

綺麗な断面で真っ二つになる。

更に、

 

「フッ!」

 

ヒュン!

 

デルフリンガーの、その抜き身の本体を真上に放り投げ、

 

クルクルクルクルクルクル…

 

背負っていた鞘を左手で掴みつつバトンの様にスピンさせ、

 

バッ!

 

チィン!

 

上に掲げると同時に、刀身を下に落ちて来た本体が納まる。

格ゲーマニアなら知る、サムライスピリッツの主人公、覇王丸が勝利ポーズで見せた曲芸である。

…何で俺がこんな事をやっているのか、と言うと、

 

「使い魔の品評会?」

「そうよ。2年生は全員参加なの」

 

ルイズの話によると、その年度の2年生が召喚した使い魔を全校にお披露目するイベントとの事だ。

その場で使い魔の個性を活かした芸が披露され、その出来栄えを評価するのだとか。

…それを説明するルイズがやけにハイテンションな為か、まくし立てる様な口調だったので、

 

「やけにテンション高いな。何かあるのか、その品評会に?」

「その品評会に、トリスティンの王女様であるアンリエッタ姫様が直々に観覧しに、この学院を訪れる事になったのよ!」

 

…成る程、この国のトップの展覧試合という訳か、そらぁテンションも上がるな。

ルイズの話だとアンリエッタ姫は、既に亡き先代の国王の1人娘、国王亡き後のトリスティン国民にとっての象徴で、その美しい容貌と清純で慈愛に満ちた人柄から人気が非常に高いとのこと。

ヴァリエール公爵家の娘であるルイズも幼い頃、姫の遊び相手をしていて、王家に取り入る等の欲とか無しに、純粋に敬意と友情を抱いていたそうだ。

…テンションの高さがより納得出来た、この国の象徴的存在とかの前に、深い尊敬と友情を抱いている存在の前でヘマを冒す訳には行かないからな。

俺としても、王国のトップだとかの前に、幼かった頃とはいえ共に遊び、今でもルイズに尊敬と友愛の想いを抱かせる方の前でヘマは出来ない、が…

 

「でもどうするのよ?シルバーチャリオッツは、スタンドはお父様に止められているし、アンタ他に何か特技あるの?」

「まあそこだよな。何を演目にするか、そこが問題だ」

 

そもそもスタンドは見世物じゃあない、仮に口止めされていなくとも、ルイズはそんな提案をしなかっただろうし、提案されても『だが断る』でバッサリする所である。

それに、

 

「だが安心しろ。俺には他にもかくし芸がある。コイツを使って、な」

「お、俺の出番か、相棒?」

 

俺の力は何もシルバーチャリオッツだけでは、スタンドだけではない。

フーケを捕まえたあの日、オールド・オスマンから伝えられたルーンの力。

始祖ブリミルの使い魔の一角、『神の盾』『神の左手』ガンダールヴ…そのルーンが、俺にもある。

ガンダールヴはあらゆる武器を使いこなし、その類稀な身体能力で敵をバッタバッタと倒して行き、ブリミルの身を守ったとの逸話が残っている。

その『あらゆる武器を使いこなす』力…それをかくし芸として活用するなら…

 

「はぁ~、相棒の世界にはこんな芸があるのか。面白れぇ所なんだろうなぁ」

「まあ、な。これは結構メジャーな奴なんだが」

 

そして冒頭にバイツァダストする。

ちなみにデルフリンガーには、俺のいた世界の事や、ハルケギニアに来た経緯、そしてスタンドについて教えてある(し、それについて固く口止めしている)。

その時の驚き様と言えば、仗助がトニオの料理を食べた億泰の変貌ぶりを見た時位だったなw

…まあそれは良いとして、どうやらガンダールヴの効果は『武器を使う時』に発揮する様だ。

背負っているデルフリンガーで居合抜きするにはどうするか、放り投げたデルフリンガーをどの位置で鞘を構えれば落下の勢いで納刀されるか…思い描く次の行動1つ1つ、最適な動作に導いてくれる様な感じだった。

グレードだぜぇ、コイツは…

…そういえば1つ、デルフリンガーの驚き具合に気が向いて聞きそびれていた事があった。

それは、

 

「そういやぁデルフリンガー…お前、俺の事を『使い手』とか言っていたよな。まああの時はお前がスタンドを見ていた事に頭一杯だったから気づくのが遅れたが」

「ああ、そういやぁそうだった。俺もあん時、相棒やその主人である娘っ子の他に2人、スタンドとかいう奴も見えたが、透けていた事におでれぇた物だから言うのが遅くなっちまった」

 

幾らスタンド使いでも、発現していないスタンドを見る事は出来ない…それを『透けている』とは言え見る事が出来たのは、スタンドと魔法共に『精神力』によって力を成す故だろうか?

…おっと話が逸れた…俺が気になっている事、それはコイツが俺を『使い手』と呼んだ事。

思い当たる節はある、それは『ガンダールヴ』…というか、これしか思い当たらない。

だがそれならデルフリンガーは一体どんな剣なのだろうか?

 

「いやな、ずっと昔にお前さんみたいな奴に握られて、一緒に戦った…様な気がするんだ」

「気がするんだ…って、随分とまぁ曖昧だな」

「仕方ねぇだろ。俺が何時から此処にいるのかすら忘れちまったんだからよ」

 

幾ら名刀といえど何百年の時を経てもまともに使える奴は殆ど無いと言って良いし、千年も経てば大抵は土の中に埋もれ、原型を留めなくなっている物だ。

記憶もコイツの言った通りで、人間でも何十年という時を重ねれば、記憶と言うのは薄れてしまう物だ、インテリジェンスソードであるコイツでも、例外では無い。

ガンダールヴが活躍したのも今から6000年前、もし当時デルフリンガーが存在して、当時のガンダールヴが使っていたとしてだ、そこまでの年代を経てしまえば、固定化が掛けられていようと効果は弱くなっているに違いなく、現存する訳が無いし、してもそれを示す証拠は見つけられないだろう。

だが今それが、錆びだらけとは言っても使用に十分耐えられる頑丈さを持って俺の手元にあるのなら…

…駄目だ、考えたら考えるだけで複雑になってくる、止めだ。

 

「まぁ、その話は追々考えるとしようぜ」

「あいよ、気長に待とうって奴だな」

 

------------

 

そしてアンリエッタ姫が学院に来る時までキングクリムゾンする。

その様子は、最高に豪華絢爛って奴だった。

まず姫が乗っているらしい馬車は、その造りは勿論だとして、引っ張っているのがユニコーンだった…此処でもファンタジー路線に則っていたとは、グレートだぜぇ…

それを取り囲む、騎士団らしき集団もまた立ち振る舞いや服装等々、華麗さと威厳に満ちていた。

そしてその道の両脇に、片膝付いて出迎えるこの学院の生徒や教師陣…これは、ルイズは勿論俺達使い魔も同じだ…の緊張と歓喜に満ちた雰囲気…

それらは全て、今は馬車の中で到着を待つ姫の地位と人望の高さによって成し得ていると言えるだろう。

…そんな、大名行列ですら足元にも及ばない姫の出迎えの行列に感心していると、既に馬車は到着し、通るであろう赤絨毯が敷かれ、後は馬車から降りるのを待つだけとなった。

そして、

 

ガチャ

 

とうとう、その扉は開かれた…

 

バァーーーーーーーーーーン!

 

艶のある紫掛かった長髪、王国のお姫様のステレオタイプと言うべき清楚な顔立ち、すらりと均整のとれた体躯を最大限にアピールする純白のドレス、それに隠されながらも存在を主張する巨大な胸…

まだその人となりを全て理解した訳ではないが、それでももう俺は答えを出せる…91点のExcellentだ…!

俄然燃えて来た…やってやるぜ、姫の為に、ルイズの為に、最ッ高の『剣術』をなっ!


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